2月も中ごろを過ぎると朝夕の寒さも馴染んでくる。
暖房の効いた部屋にいると外の寒々とした景色に現実味が感じられない。
まるでテレビ画面に映し出された架空の風景にすら思える。
それもそのはず、温度差から生じた結露によりガラス窓はじっとりと
濡れているため季節風が枯れた街路樹の枝をゆらしている風景も
どこか幻めいて遠い過去を見ているように感じられていたからだろう。
そんな結露のフィルターをつけた窓辺で薔薇水晶は頬杖をつき、ぼんやりと
外を眺めていた。
……もうすぐ、この中学も卒業……4月からは新生活だっ…えへへ
【咲花 散る】
電車で1時間ほどの距離にとても都心に近い場所とは思えないほど青々と茂った葉を宿した
木立が立ち並ぶ広大な私有地がある。そこは国道から少しそれた脇道をそれほど急ではない坂を上り
きった小高い山の中腹にあった。周りは淡い桜の花びらが散り、地面を風に運ばれ音も無く
滑っていく。その花びらが古めかしい作りのコンクリートの塊に当たって止まる。
そのコンクリートは精悍な門の一部。そこには『私立薔薇乙女学園』と刻まれた歴史を感じさせる
表札があった。
濃紺ではなく黒色に真新しい白いスカーフに同じく黒いプリーツスカート。それにおろしたての
ピカピカと光っている靴。いたってオーソドックスな女子高生と言ったところだろうが、ブレザー
全盛期の今となってはいささか古さを感じさせる制服を着た少女たちは体育館で入学式のスピーチを
聞いていた。
……退屈だな…
白いスカーフの端を小さな指で摘みながら薔薇水晶は演壇から長々と私立薔薇乙女学園の校風、歴史などを
話す教師にあくびを必死でかみ殺していた。そんな薔薇水晶が4度目のあくびを我慢していた頃、ようやく
スピーチが終わり、それぞれがAクラスBクラスCクラスと3つの列になって始めての教室に入っていった。
1-Aと書かれたプレートがあるドアから出席番号順に席につくと担当の教師がさっそく出席を取る。
呼ばれた生徒は担任から生徒手帳とカギを手渡された。
この学園は入学するとよほどの事情がないかぎり強制的に寮生活がまっている。いわゆる全寮制というやつで、
そのための部屋のカギが入学と同時に手渡されるのである。もちろん生活に必要な私物は厳しいチェック
の後に各自部屋にもって行くことになる。血気盛んな年頃である少女たちにとっては退屈このうえない高校生活
だろうが、この学園は全国でも非常に競争率のたかい名門校。卒業生の中には有力な女性政治家になった者、数々の
賞をとった女流作家や音楽家が多く含まれている。しかも街から離れた山の中の全寮制となれは親として大切な
娘に変な虫がつかないというだけで両手を上げて喜ぶ者がおおい。薔薇水晶の親もその中の一人であるのは簡単に
想像できた。
「ということで君達は今日からわが校の寮で生活をしてもらいます。各自のカギをもったらさっそく部屋に
荷物をもって新しい生活のスタートです。そこに君たちの先輩がいますのでよく先輩の忠告やアドバイスに
耳を傾けてください。そして先輩たちに負けない淑女となるよう勉学、スポーツともに努力してください」
「はい」
教師の言葉に彼女達は答える。その「はい」という返事とほぼ同時にチャイムが鳴り出した。
「それでは荷物をもって寮に行ってください」
大き目のトランクにリュックサック、それにスポーツバックをもった薔薇水晶は校舎から3分ほど
離れた洋館風の寮にむかってクラスメイトたちと話しながら歩き出した。
「こんにちは、私、桑田由奈。よろしくね」
「…あっ、わ…私、薔薇水晶、よ、よろしく」
「薔薇水晶って、綺麗な名前だね」
「あっ、ありがとー…えへへ」
「ねぇ、薔薇水晶、相部屋になる先輩ってどんな人なのかな?」
「…ん~~?…わ、わからない」
「そうだよね~、なんでもパートナーになる先輩のほうがクジ引きで私達の部屋番号を
引くらしいから行ってみないと解らないってウワサだしね~」
「…そ、そうだね……」
「いい先輩だったらいいのにね~」
「う、うん」
「あっ、あれが寮?なんだかヨーロッパにあるお屋敷みた~い、あっ、そうそう私の部屋は313号なんだ、
薔薇水晶の番号は?」
「わ、私の番号は……303号室だよ」
「ちょっと離れているね、また後でどんな先輩に当たったか教え合おうね」
「う、うん。解った」
「じゃ、薔薇水晶。また後でね~」
「うん、また後で…」
薔薇水晶と同じくらいのバックをもった桑田由奈は313号室に向かって歩くと、ドアに前に立ち少し緊張した
面持ちでコンコンと小さくノックし、ドア越しに「桑田由奈です、失礼します」と言うと部屋へ入っていった。
それと同じような光景が各ドアの前で見られた。薔薇水晶も緊張した表情のままドアを2回ほどノックする。
「はぁ~い、新入生でしょ~。開いてるわよぉ~」
中からやや大人びた声が聞こえる。その声、喋り方からしてあまり素行のよろしくない人物像を想像した薔薇
水晶は普段以上にどもりながら「失礼します」と声を掛けてドアを開けた。
「入学おめでと、私の名前は水銀燈。今日から1年間いっしょに過ごす3年生よぉ~、よろしくね」
そう言った水銀燈は窓辺に腰掛、黒いプリーツスカートから白く伸びる細い足をくみ、新緑の若葉を揺らす
そよ風に銀色の髪をサラリとなびかせながら微笑を向けていた。
「………はっ、はい。私は、ば、薔薇水晶。よ、よろしくお願いします」
ドア越しの声からは想像できないほどの美しい少女が目の前にいた。春の優しい陽光に照らされて笑う水銀燈に
薔薇水晶は言葉を失った。この年代の少女にある理想の女性像、自分もああ成りたいと想像する姿が目の
前で笑っているのだ。急に胸の鼓動が感じられた薔薇水晶は荷物を両手にもったまま固まってしまった。
「ふふふ、どうしたのぉ?なにしてるのぉ~?はやく荷物を置いたらぁ?そのままじゃ重いでしょぉ」
「は、ハイ!!」
水銀燈の笑い声まじりの言葉に薔薇水晶は慌てて足を進めるが、両手に重い荷物と、おまけに背中には大きな
リュックサックまで背負っている。バランスを崩した薔薇水晶は大きくよろけた。
「あっ、危ないわねぇ~。大丈夫ぅ?」
窓際で座っていた水銀燈はとっさに薔薇水晶を前から抱きしめるかたちで受け止めた。細く長い銀色の髪が
薔薇水晶の頬に触れる。その感触と抱きしめられ目の前から聞こえる水銀燈の声に閉じていた目を開けると、
そこにはやや心配そうな目がまぶたのすぐ近くにあった。スルリと伸びた形のよい鼻筋、小さな薄紅色の唇、
そこから覗く白い歯、水銀燈の顔が互いの息が感じられる距離にある。それを確認すると薔薇水晶の頬は
一気に熱気を帯びて赤く染まっていった。
うつむき、頬をそめた薔薇水晶の顔を覗き込むように見た水銀燈はクスッと笑う。
「どうしたのぉ、黙っちゃってぇ~」
「…ふぅ、んん…」
水銀燈の声に薔薇水晶は言葉にならない返答をしてしまう。それを聞いた水銀燈は
同じようにクスリと笑いながら薔薇水晶の前髪を優しく人差し指ですくうようになでる。
「ふふふ、テレ屋さんなのねぇ~、可愛い子。ふふふ」
「…あ、あぅ……」
またもや返答に困る薔薇水晶から手を離した水銀燈は床に落ちたスポーツバックを手にし、
2つ並べられているベッドの脇に置いた。
「ここが私と貴女のベッドよぉ~。ちょっと近いけど我慢してねぇ~。それからトイレと
お風呂はこっちの部屋にあるわぁ。冷蔵庫はここ、小さいけどキッチンもあるからぁ~
簡単なお料理もできるわよぉ」
水銀燈が部屋の案内をしている間中、ずっと後ろについて廻る薔薇水晶は先ほどの恥ずかしさに
終始うつむきかげんになっていた。
それに気付いているのか、いないのか?とにかく水銀燈は手短に説明し終えるとニコリと笑いながら
薔薇水晶に向き合う。
「私達3年生はこのあと学年集会があるのよねぇ~、だから少し席を外させてもらうけどぉ、何か
質問はあるかしら?」
「あっ……い、いえ………あ、あの…先輩は、その…す、好きな食べ物は何んですか?」
水銀燈の言った質問の意味とはあまりにも場違いな質問をしてしまった薔薇水晶は先ほどから染まっている
頬をより赤くしてその場でモジモジと戸惑いを見せた。
…あぁ、なんてバカな質問をしたんだろう? 水銀燈先輩はきっと呆れているに違いないわ……
そんなことを思っていると一呼吸おいてクスッと小さな笑みとともに水銀燈の声が聞こえる。
「ふふ、そうねぇ~。別に嫌いな物はないから、何でも好きよぉ~、椎と言えばヤクルトみたいな、
乳酸菌が入った飲み物が好きねぇ~。あれ、子供っぽくて何だか変かなぁ?」
「…い、いえ、そんなこと無いです。わ、私も大好きです…」
「そう、それじゃ良かったわぁ~。今夜にでも一緒に飲みましょ~、それじゃまた後でねぇ~」
「…は、はい……」
薔薇水晶の場違いな質問に笑顔で答えた水銀燈は軽く手を振りながら長い銀色の髪をサラリとなびかせながら
ドアを開けて出て行った。
「…ふぅ~~~………」
その後ろ姿を見送った薔薇水晶は大きく息をつくと、そのままベッドに腰を下ろす。
…あぁ、なんだか綺麗で優しい先輩でよかった……でもでも、どうして私はあんな変なことを聞いちゃったんだろう?
変な子と思われていないかなぁ~~?
腰掛けたままゴロリとベッドに横たわった薔薇水晶の脳裏には水銀燈の笑顔と声が繰り返し思い出されていた。
そして抱きしめられた時に感じた肌の温もりに15歳の胸は小さな鼓動を確かに感じ取っていた。
その日の昼食時、食堂でバターを練りこまれたロールパンとパスタを持った薔薇水晶を呼ぶ声が聞こえた。
「ねぇ、ねぇ、私だよ、薔薇水晶。こっちの席が空いてるよ、一緒に食べよう」
壁に面した4人掛けのテーブルで1人の少女が手をふっている。薔薇水晶と同じ1年生で313号室に入った
桑田由奈である。薔薇水晶も由奈に手を振ると彼女のテーブルに腰を下ろす。
「ねぇ、薔薇水晶の先輩ってどんな人だったの?」
「う、うん。綺麗な先輩さんだよ…」
「へぇ~いいなぁ~。私なんか暗~い人だったよ~、ところで名前は何て言う人なの?」
「…えぇ~っと、名前は…水銀燈って人だよ」
「えぇ~、水銀燈って、あの水銀燈??」
「えっ?由奈ちゃん…先輩のこと知ってるの?」
「知ってるも何も、水銀燈先輩ってあのメルクール財閥のお嬢様よ、知らなかったのは薔薇水晶
だけじゃないの~?」
「えぇ~~っ、そ、そうだったんだ……」
由奈の言葉に思わず食べかけのロールパンを落としそうになった。
メルクール財閥と言えばこの国を代表する巨大複合企業。いろんな分野で世界シェアNO1をいくつも持ち、
あらゆる場面で世界をリードし、各国の政治家や王族などに太いパイプをもつコングロマリットカンパニーである。
そんな雲の上に位置する人の親族、それも現会長の娘と同じ部屋で過ごすと知った薔薇水晶は驚き以上に何やら
水銀燈に対してより強い憧れを抱いた。
そしてその憧れが恋に移行するのに大した時間はかからなかった。
午後から始まった授業も教師の言葉などたいして耳に入らず、思い出すのは今日会ったばかりの2歳年上の先輩の
顔ばかり。転びそうになって抱きしめられた感触が蘇るたびに薔薇水晶の体は熱気を帯びたように火照ってくる。
それは顔色にも表れているようで由奈が心配し、熱でもあるのかと薔薇水晶に保健室へ行こうと声をかけた。
その頃、保健室では白衣にかかった艶のある長い黒髪の女性がイスに座ったまま足を組みなおしている。
その足の動きに短いタイトスカートから大人の女性がもつ色気がチラリと感じられた。
「で、水銀燈が世話をする子ってどんな子なの?」
「可愛い子よぉ~、なんだかモジモジしてて凄くテレていたわぁ~」
「へぇ~、入学した頃の水銀燈みたいな子って訳ね、私も見てみたいわね」
「私ってそんなにモジモジしてたかしらぁ?」
「してたわよ、だって私が水銀燈の世話をしたんだから間違いないわ、あの頃の水銀燈は可愛いかったわ」
白衣を着た黒髪の女医がイタズラっぽく笑いながら言うと、水銀燈は少し頬をプクッと膨らませた。
「なぁに、じゃ今の私は可愛くないのぉ?」
「そんなことないわよ、十分可愛いわよ。ふふ、こんなに頬を膨らませちゃって、まだまだ水銀燈は
子供ね、さぁ、こっちにいらっしゃい」
「あぁ、めぐぅ…」
「ふふ、今はめぐ先生でしょ」
めぐと呼ばれた女医は水銀燈の腰に手を回すと、そっと引き寄せる。
水銀燈も自然と力を抜いてめぐの行為に目を閉じる。
「あぁ、めぐぅ」
「だから今は先生でしょ」
そう言いながら腰に回した手が静かに水銀燈のスカートに伸びていく。形のいいヒップを撫でるように
スカートを捲り上げると、水銀燈は「はぁ」と小さく息をはく。
「あぁ、めぐぅ、わ、私ぃ…」
「いいのよ、水銀燈。貴女は本当に綺麗だわ」
いつの間にかめぐの左手は水銀燈のヒップから白いパンティーを膝の辺りまで脱がしていた。そして右手は
くびれた細い腹部から背中に回し、セーラー服の中に滑り込ませた。そしてそのまま服の中でブラのフック
を外すと、クスリと小さく笑いながら水銀燈のはちきれんばかりの乳房を優しく愛撫する。
ピンっとたったピンク色の乳首を少し乱暴気味に摘むと、今まで声を殺していた水銀燈から歓喜にも似た
吐息が声と共に漏れ出した。
「ダメよ水銀燈。ここはまだ昼間の学校。誰かに聞かれちゃうわ、ふふふ」
そう言いながらめぐの右手はヒップからじっとりと湿った前部に移動し、一番敏感な部分を刺激した。
「んんん!! あぁ、あぁ」
指の動きに水銀燈は肩で息をし、なんども声を殺そうと努力する。そんな歓喜と苦悶交じりの表情を
めぐは楽しんでいるかのようにも見える。愛撫が進んでいくと、たまりかねた水銀燈の膝がガクガクと
快楽によって笑い出す。その時、保健室のドアをコンコンとノックする音が2人の耳に入った。
「はい、誰?」
「1年生の桑田です、失礼します」
由奈が保健室のドアを開けるとそこにはノートを持った水銀燈がめぐに小さくペコリと
頭を下げているところだった。
「それじゃ柿崎先生ぇ、また後ほど」
そう言うと、水銀燈はドアの前で立っている由奈にチラッと視線を向ける。整った顔立ちに
ミステリアスな銀髪が歩を進めるたびに肩の辺りで左右にゆれている。思わずハッと息を呑む
容姿に由奈は慌てて水銀燈に頭を下げた。
その下げた視線の中を横切っていく水銀燈の足がとまる。
「あら、貴女は薔薇水晶ねぇ、どうしたのぉ?どこか具合でも悪いのぉ?」
「…あっ…す、水銀燈先輩……あ、あの~…えっと………」
由奈の後ろにいた薔薇水晶を見つけた水銀燈は足を止めて声を掛けた。
まさか保健室で水銀燈と出会うとは思いもしなかった薔薇水晶はただモジモジとするだけ。
「あ、あの~。先輩、なんだか薔薇水晶が熱っぽいみたいなので保健室に連れてきました」
「貴女の名前は?」
「あっ、由奈。桑田由奈です」
「そう、桑田さんね、ありがと。で、薔薇水晶は大丈夫なのぉ?」
由奈に笑顔でお礼を言った水銀燈はモジモジとうつむいている薔薇水晶のひたいにそっと手を当てる。
前髪をかきわけ、ひたいに感じる水銀燈に薔薇水晶の体はよけいに火照りだす。
「あらぁ、本当ねぇ。なんだか熱っぽいわねぇ~。柿崎先生に見てもらうといいわぁ」
「…は、はい」
「じゃ、私は用事があるから行くわぁ。あっ、それから桑田さん、私のルームメイトを連れてきて
くれて感謝してるわぁ、本当にありがとうね」
「は、はい、そ、そんな、当たり前のことをしたまでです」
「偉いわぁ。それじゃ、また後でね。それと薔薇水晶は無理しちゃぁダメよぉ」
「…は、はい…す、水銀燈先輩……」
手を振り去っていく水銀燈に火照った薔薇水晶はどこかポワ~ンとした目つきで手を振り替えしていた。
そんな薔薇水晶の表情をめぐはニヤリと笑いながら見ている。
「さぁ、薔薇水晶さんね。こっちにいらっしゃい、熱を計るわよ」
「…は、はい」
「それから由奈さん、あとは大丈夫だから教室に戻ってもいいわよ。もうすぐ授業始まるでしょ」
「は、はい。それじゃ、失礼しました。 あっ、薔薇水晶、また後でね、バイバイ」
「…ありがと……バイバイ」
由奈が出ていくと薔薇水晶は脇の下に体温計を挟む。しばらくするとピピピっと電子音が鳴り、
体温計をめぐに渡した。
「う~ん、別に熱はないようね、薔薇水晶ちゃん、熱っぽい他にどこか痛むところとかあるの?」
「……い、いえ、別にないです」
熱が無いのに授業を受けずに保健室に来ている薔薇水晶は少しバツの悪い顔をして下を向いていた。
おそらくサボリと思われたのかと考えているようだ。そんな表情を見ためぐは薔薇水晶の心境を察し、
まるで友達に話しかけるようないたって軽い語りで喋りだした。
「大丈夫だよ薔薇水晶ちゃん。きっとアレだよ。ほら、この学園って全寮制だし、入学したてで心境的に
疲れたんだね。今は少し眠ったら良くなるよ」
「……えっ、あ、あの…ありがとうございます。で、でも私…」
「いいのよ、保健室はいろんな使い方があるんだから、ほら、そこのベッドで横になるといいわ」
そう言うとめぐはベッドの布団をめくり、枕を軽くポンポンと叩いてみせた。
薔薇水晶はそんなめぐの言葉に少しニコリとしながらも遠慮がちに静かにベッドに体を横たえる。
「担任には言っておくから今は休むといいわ、それから悪いんだけど、これから会議が1時間ほど
あるのよね。何かあったらそこ、その壁にかかっている電話で01番を押すと職員室にかかるからお願いね」
「…はい、わ、解りました」
めぐに布団を掛けてもらった薔薇水晶は小さくコクリとうなずいた。
めぐはそんな薔薇水晶の笑顔を確かめるとなにやら机の上に広げられていた書類を手にし、保健室を出て行った。
誰もいなくなった保健室のベッドの上。授業中なのか廊下からは遠ざかっていくめぐの
足音だけが微かに聞こえるだけ。それを聞きながら薔薇水晶は2回ほど寝返りをうつ。
……あぁ、柿崎先生はああ言ってくれたけど、私のことサボリって思っているのかな……?
でも、また水銀燈先輩に触れられたよ……あぁ、先輩…水銀燈先輩………
水銀燈のことを思い出すと引いていた熱気にも似た感情が薔薇水晶の胸を高鳴らせる。
両手でグイッと掛け布団を引き、顔を隠すようにした薔薇水晶はいろんなことを考え出した。
……ど、どうしちゃったんだろ私…? 水銀燈先輩のことを考えただけでこんなにも恥ずかしい…
そ、それに、何だか、何だか………なんだかHな気分になっちゃうよ……い、いけないよ、こんなの
変だよ……だって私と水銀燈先輩は、女同士なんだもん……ダメだよ、こんなの…………
ダメだと思う気持ちが持ち上がるほど淫靡な気持ちが強くなる。そんな相反する心境の中、いつの
間にか布団をつかんでいた手が自らスカートの中に滑り込んでいく。
……あぁ、ダメっ! そんなのイケナイんだもん……あぁ、ああっ
始めは太ももを撫でていた指先がパンティーの隙間から忍び込み、じとっと湿った箇所を撫でていく。
その中でも一番敏感に反応する小さな突起を中指が触れると真っ赤な顔をした薔薇水晶の体はベッドの
上でクの字に曲がった。
「はぁ、はぁ…あぁ、先輩、水銀燈先輩…大好き、大好き」
もう押し殺していた熱い吐息は言葉となり、自ら慰めている行為に恥じらいも感じられずただただ押し寄せては
駆け巡る快楽に身を任せていた。
「んっ……んんんっっ!! あっああぁ…………はぁはぁはぁ……」
ピンと伸びたつま先から力が抜けていく。しばらくまどろみにも似た感覚のまま薔薇水晶は保健室の
ベッドの上で深呼吸に近い息をしていた。
……あぁ、私、こんな所で、しちゃうなんて………私、水銀燈先輩のことを考えたらオカシクなっちゃうよ…
ベッドの中で乱れたスカートを直しながら薔薇水晶は軽い罪悪感を覚えた。
それは同じ女性である水銀燈に大してもった淫らな妄想、それだけではなく感情を抑えきれず学校内の
保健室で自慰行為に及んでしまったことに対して背徳行為すら感じたのだ。
……もうダメっ、こんなのはこれっきりにしよう
そう考えた薔薇水晶を強く目を閉じた。物音が聞こえない静かな保健室、一気に火照りが体から抜けていった
ためなのか閉じたまぶたからいつの間にか軽い寝息を立てて薔薇水晶は眠りだした。
……あれ?
知らないうちに眠っていた薔薇水晶はひたいに誰かの手を感じて目を覚ました。
「あらぁ、目が覚めたのぉ?ゴメンねぇ~。どぉ?熱は下がったぁ?」
「…あぁ、せ、先輩!」
そこには薔薇水晶のひたいに手を当てている水銀燈の姿があった。
イケナイはずと決めていた薔薇水晶の胸が水銀燈の顔を見た瞬間、ドックンと大きな音を立てた。
「あらぁ?まだ熱が下がってないのぉ? お顔が赤いわよぉ」
「そ、そんなこと無いです…ね、熱は下がりました……だ、大丈夫です」
「そぉ? あんまり無理しちゃぁダメよぉ」
突然の水銀燈に頬を染めた薔薇水晶。彼女を見下ろす姿勢で水銀燈はひたいに置いた
手をそっと動かして薔薇水晶の髪を優しく撫でた。
「…せ、先輩?」
「貴女の髪って子供みたいにサラサラしてるのねぇ~」
「…せ、先輩の…か、髪も凄く綺麗……」
「ふふ、そう言ってもらえたら私も嬉しいわぁ」
つい今しがた水銀燈を想い描き、自ら慰めた体がうずく。見上げる視線は優しくも淫靡な笑みを
浮かべる瞳の奥へと吸い込まれていきそうに感じられる。
このまま時間がずっと水銀燈を感じていたい。そう思った時、保健室に設置されているスピーカー
からチャイムが鳴り出す。その音が合図のように静まり返っていた廊下が途端に騒がしくなる。
「ふふ、5時間目が終わったようねぇ、柿崎先生ももうすぐ帰ってくると思うから、まだ熱っぽいなら
先生に言って薬をもらうといいわよぉ」
「は、はい……ありがとうございます…水銀燈先輩」
薔薇水晶のお礼を聞きながら水銀燈はクスッと笑い。ドアのほうへと足を進めた。
手がドアを開けようとした時、布団を持ち上げてベッドから起き上がった薔薇水晶はためらいがちに声をかけた。
「…あ、あの先輩?」
「ん? なぁに?」
「……あ、あの…その……授業中なのにどうして、ほ、保健室へ?」
ドアを半分ほど開けた水銀燈はその問いかけに今度は声に出して小さく笑みを浮かべる。
「ふふふ、だって貴女は私のルームメイトなのよぉ、心配するのはあたりまえでしょぉ?」
息が止まる感覚とはこういうのを言うのだろうか? 水銀燈の言葉に文字通り薔薇水晶はハッと
息を呑み、そのまま力なく摘んでいた布団はフサッとベッドに落ちていった。
胸を打つ激しい動悸を確かめるように薔薇水晶は小さな手を胸の前で静かに組んだ。
「じゃ、後で部屋でね。ふふふ」
「…は、はい」
保健室のドアがピシャリと乾いた音を立てて閉まってからも暫くは動けない薔薇水晶がいた。
1時間ほど保健室で休んでいた薔薇水晶は少しバツの悪そうな顔つきで教室に戻る。
そんな薔薇水晶を見つけた由奈がすぐに声を掛けてくる。
「大丈夫?」
「えっ…う、うん。もう大丈夫だよ…えへへ」
目を細めテレ笑いをする薔薇水晶の表情を見ると、体調も元に戻ったように感じられた。
2人が当たり障りの無い会話を2~3話していると、もう次のチャイムが鳴り、授業が始まった。
教師が苦手な数式を黒板に書くさいに発するコッコッと言う音がいつもなら睡魔を連れてくる呪文のように
も感じらる薔薇水晶だが、今回は教科書に目を配るふりをしてずっと水銀燈のことを考えていた。
……あぁ、どうしよう?今夜からずっと先輩と同じ部屋、な、何を話したらいいのかな?
また変なこと聞いちゃったらどうしよう?また笑われちゃうよ~
そんな心配をしている時に限って授業はあっと言う間に終わっていく。ガヤガヤと雑談が花咲く放課後、
由奈は薔薇水晶に部活動の見学に行こうと誘い、2人で何箇所か見てまわった。
最後の演劇部の稽古を見終わったのは夕暮れも過ぎ、群青色になった空には星が数えれるくらいになっていた。
「お腹すいたね、薔薇水晶」
「…うん、何か食べよう。わ、私、お腹ペコペコ…」
全寮制の薔薇乙女学園は部活動や生徒役員をしている生徒のため食堂は夜9時まで利用可能であり、広大な敷地を
有し、山の中腹にあるため日用雑貨なども食堂の横にある販売部で購入できる。販売部と言っても取り扱う品物は
普通のコンビニエンスストアより多い。お嬢様学園を名高いだけあり、ボールペン1つをとってもブランド品など
が目に付く。そこで夕食を終えた薔薇水晶と由奈はチョコを買って部屋に戻ることにした。
ガチャ。 ドアを開け、部屋に入るとハンガーにかかっている水銀燈の制服が目に入った。
……あっ、先輩。もう帰ってきていたんだ……
そう思ってゆっくりとドアを閉めているとキッチンのほうから水銀燈に声が聞こえてきた。
「おかえりぃ~。食事は済ませてきたのぉ?」
「は、はい……ピ、ピラフと……コ、コンソメスープを食べました…」
「そぉ、美味しかったぁ?」
「…は、はい」
声がするキッチンの方へ行くと、イスに座った水銀燈はなにやらスケッチをしている。足を組み、じっと
見つめる先にはテーブルの上に置かれた木の人形が祈りをささげているポーズをとっている。
「…せ、先輩…絵が上手ですね」
「そぉ? お世辞でもそう言ってもらえると嬉しいわぁ」
「…お、お世辞じゃないです。ほ、本当に…上手だと思います」
薔薇水晶が言ったセリフはお世辞などではなかった。美術に関しては素人同然の目から見ても水銀燈
の書く絵は素晴らしいものに映った。
しかしその絵を水銀燈は気に入らないかのように少し大きめのため息を付く。
「どうもダメだわぁ~」
「…えっ、ダ、ダメなんですか? 凄く…綺麗だと思います」
「ん~、でもねぇ。絵に動きが感じられないわぁ。やっぱり人形より本物の人をデッサンしたほうが
リアリティを感じられるわぁ~。 あっ、もし良かったら私の絵のモデルになってもらえるぅ?」
「…わ、私がですか?」
「そうよぉ、この部屋に他に誰がいるのぉ?」
「…えっ、で、でも……」
「大丈夫よぉ、そんなに疲れるポーズなんて取らせないからぁ。ね、こっちに来て頂戴」
「…は、はい…先輩」
手招きする水銀燈の前に行くと、楽な姿勢でイスに座るよう言われる。薔薇水晶はセーラー服の
スカートの上に両手を置く、いたってオーソドックスな姿勢で座る。
「それでいいわぁ、じゃ、あまり動かないでねぇ」
「…はい」
しばらく水銀燈はじっと薔薇水晶を見つめる。壁にかけられた時計の秒針がチクタクチクタクと
小刻みな音を告げる2人だけの殺風景なキッチン。
さきほどから感じる水銀燈の視線に薔薇水晶の心は激しく揺さぶられていく。
「ねぇ、ちょっと顎を上げてくれるぅ?」
「…こ、こうですか?」
「ん~? もうちょっとかなぁ?」
「…こ、こんな…感じですか?」
「うぅん、こんな感じよぉ」
ペンを置いた水銀燈はイスから立つと薔薇水晶の下顎にそっと指をもっていく。そしてゆっくりと顔を上げていく。
それはまるで今からキスをするかのようにも見て取れる。薔薇水晶の顔がゆっくりと上がるたびに髪がパラリと
はだけて後ろに流れていく。それをもう片方の手でなぞる水銀燈の指先が耳たぶに触れたとたん薔薇水晶の体は
ビクンッと甘い感触に震えた。
「ふふ、どうしたのぉ、うつむいちゃってぇ? 顔を上げないとポーズが決まらないわよぉ?」
「……ん…うぅ…」
水銀燈に耳たぶを触られた薔薇水晶は真っ赤になった顔を見られたくなかったのか、肩を
すぼめてうつむいてしまった。
そんな薔薇水晶の心境を察した水銀燈は少しイタズラっぽくニヤリと笑うと、耳たぶに触れて
いる指先を首筋へと移動させる。
「…ひゃっ! うぅ……」
微妙に指先の一部が肌に触れながら薔薇水晶の首筋にある産毛をなでていく。
その感触にすくめていた肩をよりちぢ込ませた薔薇水晶から甘い声がもれる。
クスッ。 それを耳にした水銀燈は首筋をはわせていた指を持ち上げ、髪に隠くれていた
薔薇水晶の耳をあらわにする。そしてその耳に顔を近づけて囁く。
「ふふ、耳まで真っ赤になってるわねぇ、こういうのってキライぃ?」
「……ふうぅ……うぅ…ん」
目を閉じた薔薇水晶は耳にかかる声と甘い息にまともな返答は出来ない。
ただただ水銀燈の指の動き、声、息が薔薇水晶の体を支配していく。
「ふふふ、ほぉんと可愛い子ね。 ふぅ~~~」
「あっ……あぁぁ……」
力を入れて体を強張らせていた薔薇水晶の耳に意図した息を送り込む。
その瞬間、薔薇水晶の口からは明らかに女である声が漏れ、一気に体の力が抜けていく
のが感じられた。
ふふふ、もう感じてきちゃったみたいねぇ~~、可愛いわぁ
よりイタズラな笑みを浮かべた水銀燈は真っ赤に染まった頬に軽く唇を当てる。
チュッ。 水銀燈の唇に火照った頬の熱が伝わると小さな音がした。
その音の意味を薔薇水晶は頭で理解するよりも早く体が反応をしめした。
「……ふうぅぅん…あぁ」
腰から下にかけて無くってしまったかのように力が入らない。朝礼で襲われる貧血にも
似た白い世界に薔薇水晶の意識は飲み込まれていく。
パラリ。いつのまにか白いスカーフが薔薇水晶のセーラー服から音も無く床に落ちていた。
力が入らないはずなのに水銀燈の手が立つように力を入れると、自然と不思議な暗示にでも
かかったのか、薔薇水晶は感覚すらおぼろな足でイスから立ち上がっていた。
「…あぁ……せ、先輩……うぅ…」
「いいのよぉ、そのまま力を抜いてていいのよぉ~うふふ」
イスから立ち上がった薔薇水晶だが、下半身に力が入らないため水銀燈にもたれ掛かる。
赤く火照った頬が水銀燈の豊満な胸の柔らかさを感じ取る。
そしてふれた顔のすぐ近くで水銀燈の色っぽくも怪しい声が聞こえた。
「こういうのってキライぃ?」
先ほどと同じ質問をする。
それに対して薔薇水晶は目を閉じたまま小さく首を横に振る。
「ふふ、じゃぁ私の事はスキぃ?」
「…あぁ……うぅ………す、スキです……お、お姉様……」
閉じてた目を開いた薔薇水晶は自然と溢れた涙でぼやける視界の中で優しい笑みを浮かべる水銀燈を
見上げ、吐息混じりに言った。
水銀燈のことを「先輩」ではなく「お姉様」と呼んでいる自分の言葉にすら気付かない薔薇水晶の感情は
甘く淫靡な水銀燈の笑みによって麻痺したかのようにも見える。
「私のことお姉様って呼んでくれるのぉ?」
「……は、はい…お、お姉様…」
「ふふ、嬉しいわぁ、貴女は本当に可愛い子ねぇ~」
水銀燈の両手は薔薇水晶の頬を包むように触れると、そのまま互いの顔を近づいていき、
2人のまぶたが触れそうな位置で唇は1つに重なる。
「ん、んんっ」
「…ん……ん~」
絡み合う舌からは、小さな子供が夢中でキャンディーをなめている時にも似た音が重なった唇から漏れ聴こえる。
2人の口内で互いの唾液が音を立てながら行き来するだびに薔薇水晶の頭の中は真っ白になっていく。
だがその反面、水銀燈のなめかわしい舌の動きを感じる毎に薔薇水晶の体は敏感にもなっていった。
小さく開いた2人の唇から混ざり合い、1つになった唾液の筋がツツーっと伸びて音も無く千切れる。
「…あぁ……お、お姉様……スキ…大好き」
「ほぉんと、いい子」
見つめた2人の唇がもう1度重なると、水銀燈は薔薇水晶の腰に手を回し、セーラー服を慣れた手つきで
脱がはじめた。
バサリと今度は音を立てて薔薇水晶の肌の温もりが残るセーラー服が床に落ちた。
そこにはキッチンの淡い照明器具の明かりに照らされた白い素肌が見えた。
その肌の上を水銀燈の指がブラのホックへと滑っていく。
「…あぁっ……あっ、う、うぅぅ…ん」
「ふふ、綺麗なお肌ぁ。ふふふ」
「あっ…あぁん……」
外されたブラの隙間から忍び寄った水銀燈の手は、乳房を這うように上っていくと、ツンッと硬くなった
小さなピンク色をした乳首に触れ、そのまま指先で弄ぶ。
その行為に今まで感じたことの無い感触が薔薇水晶の中で生まれつつあった。
「…あぁ……ダ…ダメ…うぅん…」
「あらぁ?ダメなのぉ? じゃ、止めようかなぁ~?ふふふ」
「えっ…?……あぁ、イ…イヤ……お姉様…」
「ふふ、どっちなのぉ?止めてほしいのぉ?それとも…ふふふ」
「あぁ…ほ、ほし………い…」
「ふふ、どっちなのぉ?」
「…あぁん……ほ、欲しいです…お姉様」
「素直ないい子ねぇ~。ねぇ、こっちにいらっしゃい」
水銀燈に身をゆだねた薔薇水晶は脱がされたセーラー服もそのままに手を引かれるまま隣の部屋へと行く。
そこは2つ並べられたベッドに各自2人分の机、それにベッド脇に小さなテーブルが1つ。
照明のスイッチが入っていないため、明かりは今までいたキッチンからの漏れた光とレースのカーテン越し
に入ってくる月明かりが白いシーツをより浮かび上がらせている。
誘われるまま薔薇水晶はそのシーツの上で横になる。
「ほんとうに可愛いわぁ」
「…お、お姉様も…綺麗です…」
ほんのり零れた月明かりを背にする水銀燈は今まで以上に妖美な雰囲気をかもし出している。
まるでこの世のものとは思えない。そう思った薔薇水晶はシーツの冷たさも忘れて火照った体をもてます。
「…あぁ、お、お姉様……綺麗」
ほのかな明かりに浮かび上がった水銀燈はゆっくりとトレーナーを脱ぎ捨てていくと、薔薇水晶の目は
豊満であり形の良いバストに釘付けになる。
そんな薔薇水晶の幼さが垣間見える胸を水銀燈は焦らすようになぞり、クスッと笑いながら話しかけた。
「ねぇ、私の事をお姉様って呼ぶんだったらぁ、私は貴女の事なんて呼ぼうかしらぁ?」
「…えっ?…う、うぅ~ん……あぁ、あん…あぁん…うぅ」
水銀燈の指が乳房の周りをゆっくり円を書くように触れていくと、薔薇水晶は水銀燈の問いかけに開いた
口からは答えではなく、甘い吐息が零れる。
それを見ている水銀燈はクスクスと笑いながらじょじょに指先を乳房の上へと円を書きながら移動させる。
「ふふ、あっ、そうだぁ。薔薇水晶は中学の時に何て呼ばれていたのぉ?」
「…あぁん………ば、ばらしー…です…あん…」
指先の動きに合わせて零れるあえぎ声から自身の中学時代のあだ名を言う。それを聞いた水銀燈は先ほどより少し
大きな声でクスッと笑う。そして乳房の上へと達した指先で硬くなった乳首を摘み、そっと上へ引っ張り上げた。
「…あぁぁ、あぁん……お、お姉様…お姉様ぁぁ…」
ピクリと体を強張らせた薔薇水晶は涙でうるんだ瞳で水銀燈を見上げる。
クスクス。 笑みをこぼす水銀燈は引っ張っていた指を離すと、幼さが見える薔薇水晶の乳房は弾けるゼリーのように
プルルっと震えて元に戻った。
「ふふふ、ばらしーって呼ばれていたのぉ? 可愛いぃ」
そう言うと、水銀燈は薔薇水晶の胸を今度は優しく撫でていき、唇を重ねた。
サラリとした長く柔らかい髪が薔薇水晶の顔を隠す。その隠された中で2人の吐息は
混ざり合い、絡んだ舌からは淫らな音が聞こえる。
「私、ばらしーの事…スキよぉ~」
「あぁ、お、お姉様ぁ……私も大好き………」
そう囁き終わった水銀燈の唇は硬くなった薔薇水晶の乳首にそっとキスをすると、そのまま舌の上で
転がす。
「あぁあああんっ…あぁ………」
乳首を舌で愛撫されることなど生まれて初めての薔薇水晶は思わず身をよじりながら歓喜にも似た甘い声を出した。
水銀燈はその声を聞くと、指をゆっくり移動させ、スカートにたどり着く。
そしてスカートの中に手を滑り込ませていき、柔らかく弾力のあるふとももを下から擦りあげていく。
「あッ!!」
指先がパンティー越しに敏感な部分に触れると薔薇水晶の声は弾けた。
そこで水銀燈の指はいったん敏感な部分から離れる。
「しーっ、あまり大きな声を出しちゃうと他人に聞かれちゃうわよぉ~」
「…はぁはぁ……あぁ…お、お姉様…ご、ごめんなさい………」
「ふふ、ほぉんと、素直でいい子ねぇ~。でも窓を閉めたら大丈夫よぉ」
「……ほ、本当に?」
「えぇ、この寮は建てつけは古いけどぉ、防音と空調は完璧なんだからぁ」
そう言うと水銀燈は軽く薔薇水晶のひたいにキスをしてベッドから手を伸ばし、20cmほど開いていた
窓をピシャリと閉めた。その途端に夜のひんやりとした空気が止まり、2人のいるベッドの上を中心に甘く濃厚な
香りが広がりだす。
「大好きよ、私のばらしー」
「あぁ、お、お姉様ぁ……あっ、あぁぁ…あぁん…」
水銀燈は素早く指先を先ほど触っていたパンティーに戻すと、そのままパンティーの上からでも確認できるほど
湿り、かたち作られている秘部を愛撫していく。
筋の上を何度も往復する指の動きに薔薇水晶の呼吸は荒く、口ではなく肩で大きく快感を飲み込み、甘い吐息を
吐き出していた。
「ふふふ、体も素直でいい子ねぇ~。ほぉら、もうこんなになっちゃってるわよぉ~」
「…あぁん、お、お姉様ぁ……あぁん、あんあん……は、恥ずかしいぃ………」
いつの間にかスカートは下ろされ、グッショリと濡らし秘部を浮かび上がらせているパンティー1枚の薔薇水晶。
その最後の衣類に手をかけた水銀燈は思いもしないものを見つけてついつい吹き出してしまった。
「あらぁ?これなぁに? うふふふ…あはははは~~、かぁわいい~~」
「…あっ……こ、これは………イ、イヤァ……恥ずかしいよぉ~」
脱がそうとしたパンティーにはグッショリと愛液で濡れたウサギのプリントがあった。
まるで幼い子供がはくようなパンティーを身に着けていた薔薇水晶に水銀燈は笑いながら話す。
「可愛いわねぇ~ばらしー。ウサギが好きなのぉ?」
「…うぅ……う、うん、…ウサギさん……好きです…うっ、うっ…うぇぇ~」
こんな展開になろうとは夢にも思っていなかった薔薇水晶はお気に入りのウサギのパンティーを履いていた
ことをすっかり忘れていたのだ。高校生にもなってウサギのパンティーを履いていることに恥ずかしさと、
水銀燈に笑われた事に対する恥ずかしさが薔薇水晶の瞳を潤ませる。
「泣くことないわよぉ~、だってばらしーはこんなにも可愛いんだからぁ~」
「…えっ、えっ…えっぐ……ほ、本当ですかぁ……?」
「えぇ、本当よぉ」
「…お、お姉様……本当の本当に…?」
「えぇ、本当の本当よぉ」
「…本当の本当の………本当に?」
「もぉ、本当の本当の本当に可愛いわよぉ~」
グスンと鼻を鳴らす薔薇水晶から水銀燈は一気にパンティーを剥ぎ取る。
そしてあらわになった部分に指を這わしていくと、薔薇水晶の愛液は指先にまとわり付くほど溢れてくる。
ふふふ、もうメチャクチャにしたいほど可愛いわぁ~
ザザ~。春先の一際強く冷たい夜風が木々を揺らし、窓をたたいて行く。気温は恐らく10度に達していないだろう。
そんな夜、水銀燈が振る指のタクトに薔薇水晶は白いシーツを波打たせながら甘く熱い淫靡な吐息の演奏を
繰り返し繰り返し何度も奏でて夜は深けていった。
「……んん?………ん?………」
布団をすっぽりとかぶった薔薇水晶はレースのカーテンから微かに差し込む
淡い陽光と、窓の外で囀る小鳥の声で目がさめた。
…あれ?
当初は見慣れない部屋に少し困惑した薔薇水晶だが、すぐに昨日から寮生活が始まった
事を思い出す。
…う、うわぁ~!
それと同時に昨夜、生まれて初めて性的絶頂を覚えた事が脳裏に蘇ると、薔薇水晶は
顔を真っ赤にして被っていた布団の中に潜り込み、隠れてしまった。
…あぁ…あぁ、ど、どうしよう? わ、私……お姉様と……
もちろん布団の中に隠れたとは言え、身に着けている衣類はなく淫らに波打つシーツと
乱れた頭髪だけが昨夜の行為をまざまざと物語っている。
水銀燈の甘い息、言葉。そして女性同士での快楽という名の背徳行為に嫌悪感を覚えるどころか、
反対に薔薇水晶の体の奥はじわりと熱くなっていく。
…あぁ、お、お姉様………あっ、そうだ。 お姉様はどこ?
まるで周りを警戒する草食動物のようにヒョコっと布団から顔だけを出した薔薇水晶はキョロキョロ
と部屋を見渡し、水銀燈の姿を確かめようとする。
しかしそこには水銀燈の姿どころか、気配すら感じられない。
となりのキッチンからも物音すら聞こえない。しばらく耳をすましていた薔薇水晶はモソっと上半身を
持ち上げてみた。
「あっ…手紙だ」
2つ並んでいるベッドの真ん中には目覚まし時計と卓上カレンダーが置かれている小さなテーブルが
1つ設置されている。その目覚まし時計の立てかけるようにして置かれた手紙に目を通す。
…ふん~~、今日はお休みなのにお姉様は生徒会なんだ……た、大変なんだなぁ……
生徒会長である水銀燈は新入生に合わせて休みを返上し、生徒役員会議を行っているむねを手紙に
書いていた。それを読み進め、最後の文章を見た薔薇水晶は目を閉じて、手紙をギュッと胸に当てた。
~~早く会議が終わったら一緒にお昼を食べましょう。 私の可愛いばらしーへ 水銀燈より~~
…あぁ、お姉様………大好き…
しばらく手紙を抱きしめていた薔薇水晶はお昼までの時間を見るために視線を時計に向ける。
これと言って特徴の無いデジタル時計が示す時刻は朝の10時過ぎであった。
…12時まで2時間くらいあるよ……そうだ、お掃除しようかな…
そう思い自分がいるベッドを見てみる。薔薇水晶がいる箇所を拠点に乱れたシーツがいく筋もの
波を作り、1つのベッドに2つの枕。そのうちの1つ、水銀燈が使っていた枕に長い銀色の髪が
キラリと輝いていた。
「お、お姉様の…」
水銀燈の髪の毛を見ていると、先ほど感じた感覚が薔薇水晶の体に蘇る。
ドクンと鼓動する心音と共にジワリと熱い感情が下半身を襲う。
…あぁ、わ、私、こんなにも濡れちゃってる………
不意に湧き出た感情を薔薇水晶の指は確かめるように探り当てようとする。そのたびに描かれていくのは
昨夜の行為をなぞる記憶。
水銀燈に摘まれた乳首の感触を自らの指で呼び起こす。
「あぁ、あぁ……い、いい…」
小さな唇から発せられる吐息。その息使いに呼応して、より敏感な部分を刺激していき、自然と足が左右に
広がっていった。
「うぅん……あぁ、あぁ…」
指が敏感な部分をなぞっていく毎に粘着質な音が小さく聞こえ、薔薇水晶の頭の中は色彩を失っていく。
断続的に女の色をふんだんに含んだ吐息をつきながら自身の腕の動き、指の速度を真っ赤な顔をした
薔薇水晶は見つめている。
…あぁ、だ、ダメだよ……お姉様の事を考えたら……私、Hな子になっちゃうよぉ……
「あっ!! あぁぁん……あぁぁッ!!」
なぞっていた指先が静かに濡れた中に入りだすと、思わず布団の中で押し殺そうにも押さえ切れない
声が出てしまう。
ゆっくり、慎重に進入していく自身の指先に身もだえ、荒くなる吐息。
そんな頃、生徒役員会議を終えた水銀燈は生徒会室から寮に戻る途中、2階の踊り場で後ろから
声を掛けられた。
「こ、こんにちは。水銀燈先輩」
その声に足を止め、振り返る。正午近い太陽は校舎を照らしている。それは明るい日差しだが、
窓や清掃道具入れのロッカーの影が伸びて、光と影を明白に分けている。そのちょうど影にあたる
所に1人の少女が立っていた。
あら? この子は昨日ばらしーと一緒にいた子だわぁ。確か名前は……
「こんにちは、私は桑田由奈です」
水銀燈に頭を下げながら由奈は影の部分から1歩ほど前に出てると、ニコッと明るい表情を見せた。
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