癒しの乙女達と魅惑の支給品 ◆b1F.xBfpx2



褐色の肌に流れるような紫紺の髪の黒き百合―ミネアは神殿の中にいた。その手に持つのは、
参加者達に渡された支給品の一つである地図。光源無しで確認するのが困難であった為、彼女は危険を承知で
支給されたランタンの灯を灯したのだった。
(私の現在いる場所は、おそらくC-8という場所でしょうか…)
壁の少ない神殿から見える外の景色と地図の内容を照らし合わせて、現在位置を把握する。
次に参加者の名簿を開いて内容を把握する。一見淡々と行動しているように見えるが、それは同時に何か辛い現実から
目を背けようとしているようにも見えた。
(クリフトさん……)
思うのは先ほどの広間で死んでいった仲間の事。無残に殺された人を蘇生させようと懸命に呪文を唱えようとしたのは、
神官である彼らしい行動だった。なのに、あの魔王を名乗った青年は、遊び飽きた玩具を捨てるかように彼の首を刎ねたのだ。
アリーナさん…きっと今泣いているかもしれないわ)
首を刎ねられた彼が密かに愛していた姫…アリーナは彼が死ぬところを目の前で見てしまったのだ。それが彼女にとってどれだけショックの大きいことなのかは計り知れない。
彼女もこの島のどこかに飛ばされているのなら、誰かが支えてやらなければ…
そのためにも、今は出来る限りの情報を集め、早く彼女や仲間と合流しなければならない。
ミネアは再び名簿に目を向ける。その時、誰かがすすり泣く声が聞こえはっと周囲を見渡した。


「うっうっ…先生…」
アリーゼは神殿の中央に設置されたテーブルの下で泣き続けていた。どうしてこんなことになってしまったのか、何故殺し合いなんてしなければいけないのか。
彼女自身、今までいくつもの困難を乗り越えてきていたが、さすがにこの理不尽な状況には耐えられなかった。
気が付いたらあの大広間にいて、オディオという男に殺し合いをしろと言われた。最初何がどうなっているのかわからなかったので、彼の言葉も
理解出来なかったが、直後に彼に逆らった男が殺され、男を生き返らせようとした(それも信じられなかったが)聖職者風の男の人も殺されて、
初めて今置かれている状況に気が付いたのだった。そしてすぐまた闇にのまれて、気が付いたら此処にいたのだ。
そこは自分のよく知った場所――集いの泉だった。
そこで、自分のいる場所を理解し傍に置かれたデイバックを見た途端、急に感情が溢れだした。不安、恐怖、疑問…いくつもの感情がこみ上げてきて、
涙となって頬から伝う。僅かな理性で人に見えるところにいるのは危険と判断してテーブルの下にもぐり、現在に至るわけである。
「私……殺し合いなんてっ……どうしたら…」
最近は改善されてきたものの、元々人見知りが激しく慣れない環境に弱い彼女には、この殺し合いというゲームは酷だった。
不安に押しつぶされながらただただ泣く事しかできなかった…。
「先生……」
「……どうしたの?」
ふいに声をかけられて、思わず「ひっ!」と声を上げてしまう。今の自分は武器も持っていない。もしこの人が殺し合いに乗ってたら…
そんな恐怖に駆られたアリーゼは、腰を抜かしながらもずるずると後ずさりした。
「こっ殺さないで……」
僅かな勇気を振り絞ってか細い声で拒絶する。しかし、それに対して女性と思われる声の主は、優しい言葉で返した。
「大丈夫よ、私はあなたを殺したりしないわ。だから落ち着いて…ね?」
暗い神殿の中で彼女の持ったランタンが、二人の姿を照らし出した。



「…落ち着いた?」
「は…はい…怖がったりして、すみませんでした…」
「気にしなくていいわ。こんな状況じゃ怖くなっても仕方がないもの」
ミネアの優しさに安心したアリーゼは、彼女に寄り添うように備え付けられた椅子に座っている。
彼女を落ち着かせながら、お互いの情報を交換することにしたのだ。
話をしていくうちに、お互いが全く別の世界の住人であることが判明した。異世界の存在が身近にあるアリーゼはそれほど驚かなかったが、
ミネアの方はかなり驚かされた。自身も魔界と呼ばれるような地底世界に行ったことはあるが、完全な異世界となると話は別だった。
この殺し合いに参加している者達は、皆異世界から召喚されているのだろうか…だとしたら、あの魔王オディオという人物は、一体どれほどの
力を持っているのだろうか…。
「……ミネアさん?」
彼女の深刻な顔に、アリーゼが心配そうに顔を覗き込む。
「あ…ううん、大丈夫よ。少し考え事をしていただけだから…」
ミネアもそれに気付き、心配かけまいと明るく答えた。

それから二人は自分達の現在位置や殺し合いに参加している自分達の知り合いの事、これからの行動方針などについて話し合った。
「それじゃあお互いの知り合いは、私はユーリルさん、アリーナ、トルネコさん、ピサロさん、ロザリーさん。
 アリーゼちゃんはアティ先生、アズリアさん、イスラさん、ビジュさんね?それで、その中で注意した方がいいのは
 ビジュさんとイスラさんにピサロさん。ここまではいいわね?」
「はい、ビジュは多分こういうことには喜んで参加してしまいそうな感じがします。イスラは…何を考えているのかよくわからなくて…
 でも、二人共とっくに死んでいるはずなんです。なのにどうして…?」
「私の世界には、死者を蘇らせる呪文や道具があるの。あのオディオという人が私達を集められたのなら、私達の世界の道具を手に入れることもできるんじゃないかしら?
 とりあえず、その二人に会った時は気をつけるようにしましょう。ピサロさんもロザリーさんが無事なら大丈夫だとは思うけど、
 もしロザリーさんに何かあった時は、十分注意した方がいいと思うわ。」
ピサロは元々人間を憎んでいる。もし参加者の誰かにロザリーを殺されでもしたら、彼は暴走して皆殺しをするだろう。それだけは避けたいところである。
しかし、ロザリーを保護するにも、非力な自分達が大きく行動するのは危険だ。それにアリーゼの保護者であるアティと合流して、彼女を安心させてあげたい。
「……あの、ミネアさん」
ミネアが悩んでいると、アリーゼが声をかけてきた。その顔には何か決心したような雰囲気もある。
「あの…私は大丈夫ですから、先にロザリーさんを探しましょう。」
「え?」
思いがけない言葉に、一瞬戸惑うミネア。しかし、アリーゼを彼女の回答を待たずに続ける。
「このまま放っておいて、ロザリーさんが殺されたら、ピサロさんが乗ってしまうかもしれないんでしょう?だったら先にロザリーさんを見つけて、
 ピサロさんを安心させてあげた方が良いです。先生もアズリアもとても強いし、きっとまたすぐに会えますから…だから早くロザリーさんを…」
「わかった、わかったわ。あなたがそれでも大丈夫だと言うのなら、そうしましょう。でも、まず自分の身を守れるようにしないといけないわ。
 探す前に私達が死んでしまったら、元も子もないでしょう?」
なおも喋り続けようとするアリーゼを落ち着かせ、お互いの支給品を調べるように促した。焦る気持ちもわかるが、焦っていても良い事はない。


まずは自分達の身を守れるようにしなければならない。場も静かになったところで、二人は支給品の確認をすることにした。
先にミネアが支給品を取り出す。出てきたのは、なんだかよくわからない鉄の道具と紫色の綺麗な宝石、それに首飾りだった。
「それって…もしかしてサモナイト石ですか?」
横で見ていたアリーゼが、宝石を指差しながら言った。
「サモナイト石?」
「はい。召喚術を使う時に使う魔法の石なんです。…ちょっと貸してもらえませんか?」
そう言ってアリーゼが手を差し出したので渡すと、彼女は宝石を両手で包み、瞑想を始めた。
「……やっぱりサモナイト石です。これは…天使ロティエルですね。」
「天使?その宝石で天使が呼べるの?」
はいと答えて、目を開けたアリーゼがサモナイト石を返す。そして、サモナイト石について説明した。
サモナイト石とは、アリーゼの世界であるリィンバウムに隣接した4つの世界のゲートを開き、そこに住む住人を召喚するのだという。
リィンバウムではサモナイト石は貴重ではあるが一般に認知されているものらしい。改めて、異世界の力の凄さを思い知らされた。


次にアリーゼが支給品を確認する。彼女の支給された品は、工具セットに毒蛾を模した装飾のされたナイフ、そして……
「………」
「…あの、これって一体…」
二人ともなんともいえない顔で、最後の支給品を見つめている。アリーゼの持つその品とは……





ブラジャーだった





どうみても女性用の下着にしか見えないそれを手にしたまま、二人は暫く何も言えないでいた。
すると、ブラジャーに引っかかっていた紙切れのようなものがすり抜け、カサリと地面に落ちた。
それに気付いた二人が紙切れを広げる。そこには短い文章でこう書かれていた。



『みわくのブラ…装備することでいろじかけの成功率UP』




【C-8 神殿(集いの泉@サモンナイト3) 一日目 黎明】

【ミネア@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち】
[状態]:健康、唖然
[装備]:無し
[道具]:ブラストボイス@ファイナルファンタジーⅥ、天使ロティエル@サモンナイト3、サラのお守り@クロノトリガー、基本支給品一式
[思考]
基本:自分とアリーゼの仲間を探して合流する(ロザリー最優先)
1:いろじかけって……
[備考]
参戦時期は6章ED後です。

【アリーゼ@サモンナイト3】
[状態]:健康、泣いた事による疲労(小)、唖然
[装備]:なし
[道具]:工具セット@現実、毒蛾のナイフ@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち、みわくのブラ@クロノトリガー、基本支給品一式
[思考]
基本:自分とミネアの仲間を探して合流する(ロザリー最優先)
1:あっあのぅ……
[備考]
参戦時期はED後です。どのEDかはお任せします。(ただし、イスラEDではありません)

時系列順で読む


投下順で読む


GAME START ミネア 036:剣と炎と召喚師
アリーゼ


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年06月19日 04:17