汝、無垢なる刃、デモンベイン ◆iDqvc5TpTI
ロードブレイザーは呆れ果てていた。
何とも人間はしぶといものだと。
バニシングバスターが直撃していたのなら北にそびえていた山脈のように塵一つ残さず消滅していたはずだ。
それが人間としての原型を留めているということは大方ルシエドの力でバニシングバスターを逸らそうとしたのだろう。
全く、無駄な努力をするものだ。
なるほど、即死こそ免れはした。
が、代償として腹部はその殆どを失っていた。
上半身と下半身が繋がっているのが奇跡なくらいだ。
放っておいてもまず助かるまい。
魔神は念のために止めをさしておこうと大地に降り立つ。
アシュレーの肉体での彼の仲間を殺せたことは大きな収穫だった。
これでアシュレーは新たな罪を背負った。
罪悪感もまたロードブレイザーの力となる負の感情だ。
万一レベルだった身体のコントロールを取り戻される可能性は億が一レベルへと激減した。
倒れ伏した
トッシュへと近づいて行けば行くほどロードブレイザーは上機嫌になっていた。
だからだろう。
ようやく追いついき状況を把握し、トッシュを護らんとして立ち塞がったゴゴにロードブレイザーが取引を持ちかけたのは。
「私は今気分がいい。お前には私が世界を焼き尽くす物真似をする栄誉を与えよう。
承諾するのならお前だけは生かしておいてやる。悪い話ではなかろう?」
オディオじきじきに呼ばれたとはいえロードブレイザーは厳密には参加者ではない。
一人勝ち残ったところで優勝者としては扱われないかもしれない。
だったら一人くらい正規の参加者を残しておいてやるのも悪くはない。
自身が殺そうが、他人が殺そうが、誰かの死はロードブレイザーの力となるのだから。
他人を切り捨てれば自分だけは生き残れる。
そのことに無様に心かき乱されることを期待していたロードブレイザーの耳をゴゴの静かな声がうつ。
予想外なことだったが、その声に含まれていた感情は困惑でも自己愛でもなく
「俺には真似しきれない人間だろう」
苦渋と羨望だった。
それもロードブレイザーの力となる感情の内の二つだ。
魔神は特に気分を害することなく先を促す。
「俺には帰りを待っていてくれる人がいない。
大切な人のもとに帰るという物真似もできなければ、傍らにい続けるという物真似も護るという物真似もできない。
どころかその感情を心の基盤にしているアシュレーの物真似のことごとくが不完全なものとなってしまう」
ぎりりと歯を食いしばる音がした。
災厄にとっては心地よい人が自らの限界に屈する音だ。
ここぞとばかりに魔神は囁きかける。
「くくく……。ならばやはり私の真似をすべきだ。
アシュレーを救う理由などお前にはなかろう?
むしろ好都合ではないか。 アシュレーが我に飲まれこの世からいなくなってしまえばお前が苦しむこともなくなるのだか「だが」!?」
有無を言わせずゴゴが割り込む。
己が命を握っている魔神に対し臆しもせず自分の矜持を叩きつける。
ロードブレイザーはいつの間にか会話の主導権を奪われていた。
「だからこそアシュレーの物真似は面白い。
俺という個人のままでは持ちえぬものを持っているからこそあいつの物真似は面白い。お前と違ってな」
「なんだ、何を言っている」
「分かりやすく言ってやろうか」
覆面で顔が見えていないはずなのにロードブレイザーにはゴゴが浮かべているであろう表情がありありと伝わってきていた。
笑っている。
こいつは焔の厄災を前にしてあろうことか笑顔を浮かべていた。
それも親愛の情が籠ったものでも、作り笑顔でもなく、
「ロードブレイザー、お前はつまらない。
世界の破滅だと? そんなことを考える奴はケフカで既に足りている」
ニヤリと唇を釣り上げて物真似師はロードブレイザーを嘲笑っているッ!
「我が提案を受け入れぬと。生き延びれる唯一のチャンスを逃がすというのかッ!?」
「くどいッ! 俺が誰の物真似をするかは俺自身が決めるッ!」
未だかってこのような人物がいただろうか?
ロードブレイザーを恐れるでもなく、否定するでもなく、見下し、哀れむ人物が。
身の程知らずにも程がある。
ロードブレイザーは悔いた。
気まぐれとはいえこのような下等生物に生き残る機会を与えようとした己を恥じた。
「ほざいたな、矮小な生命風情がッ! ならば貴様の言うつまらない存在の手で無様に死ねえいッ!」
両翼より生じさせた焔の中に愚かしい物真似師が消える。
最初からこうしていればよかったのだ。
ロードブレイザーは八つ当たり気味に焔をもう二発撃ち込む。
ただでさえ大きかった火の勢いは増し、森や教会も熔解させていく。
ここまでやればトッシュのように火に強くとも死んでいるだろう。
そう高を括っていたロードブレイザーの耳に、
自身が真似したい人物を自らの手で選び取った物真似師の声が響いた。
▽
「ラフティーナだとッ!? いや、違うッ! だが、だがこれはッ!
こいつから感じる忌々しい光は、あの愛のガーディアンロードそのものではないかッ!」
女神と間違われるのも無理はない。
ゴゴを護り、魔神の焔を跳ね返したのは美しい女性だった。
宝石のように輝く髪と肌という喩えが、喩えではなくそのまま事実として当てはまる。
衣服を一切纏っていないのも頷けよう。
彼女の桜色のオーロラとでも評すべき髪や肌の美しさはありとあらゆる衣服や装飾品に勝っているのだから。
彼女は力強き者でもあった。
女性の両手に光が生じる。
とある道化師も使った究極魔法。
それを女性は一度に二つも詠唱していた。
最後に彼女は人間ではなかった。
幻獣でもなかった。
人間と幻獣とのハーフだった。
名をティナ・ブランフォードという。
「ティナ、また会えたな」
喜色を隠さずにゴゴがティナへと話しかける。
返事はない。
分かっていたことだ。
幻獣が魔石として残すのは力だけなのだ。
今ここにいるティナも、ティナが蘇ったわけではないことくらい百も承知だ。
だから十分だ。
言葉もなく、顔も向けず、だけど頷いてくれただけで十分だ。
ゴゴは物真似を開始する。
ティナの物真似を。
人と幻獣の狭間で揺れ、愛することを知った少女の真似を。
「アシュレー、忘れないで。愛するということを。あなたを待っている人達を」
もう二度とすることはないと思っていた声真似ができることをゴゴはトッシュに感謝しつつ、アシュレーに語りかける。
「マリナさんだけじゃない。あなたには二人の子ども達もいるのよ?
そしてあなたが護りたい世界は、あなたが護りたい日常はこれからも広がり続けていくわ」
アシュレーの子どもたちも誰かと恋し、誰かを愛するのだろう。
そうして人間は子どもを産み、後へ後へと託していく。
親から子へ、子から孫へ、孫から曾孫へ。
アシュレーの護りたかった世界、日常はこうして続いていく。
アシュレーだけのファルガイアはどんどんどんどん広がっていく。
ああ、そうか。
それは確かに護りたくなるほどに素晴らしいことだ。
ゴゴは一歩、アシュレー・ウィンチェスターという人間とティナ・ブランフォードという人間への理解を深めた。
物真似師としての最奥へと一歩、近づいた。
「だから、戻ってきて! 魔神に打ち勝って!
今ある命だけじゃなく、これから生まれてくる命もたくさんある。それを守るためにも!
あなたは、あなたの家に帰ってあげて!」
その願いを叶えることができなかったティナの分までも。
マッシュやエドガーや
シャドウ、ナナミやリオウに
ビッキー、
ルッカにトカの分までも。
誰かが帰ってこないことの寂しさを知ったゴゴは目をつむり一度祈る。
次に目を開けた時にはゴゴの左右の手にもアルテマの光が宿っていた。
連続魔とアルテマと物真似による法外火力なアルテマ四連。
現段階でゴゴのできる最高の物真似の一つ。
「く、黙れ、黙れえッ!! バーミリオン、ディザスタァァァアアアアアッ!!」
「『アルテマッ!!』」
ロードブレイザーの最大火力とアルテマの光がぶつかる中、ティナの声が聞こえたのは。
きっと気のせいなんかじゃない。
▽
いつからだろうか?
とぼとぼと一人砂漠を歩いていた
ちょこの耳にその歌が聞こえてきだしたのは。
静かで、途切れ途切れではあるけれど。
優しい、優しい歌だった。
幼子をあやし、幸せな夢を見せてくれる歌だった。
子守唄だ。
「ちょこ、知ってるの。ちょこが怖がったり寂しがったりして眠れない時に父さまも歌ってくれた……」
けれどどこか違う気がした。
歌詞が知らないものだとか、声が知らない人だとか、そんなんじゃないどこかが。
ちょこの知っている子守唄とは違っていた。
「なんでだろ。この人の子守唄もとってもとっても安心できるの。
父さまが歌ってくれたのといっしょのはずなの。気になるの」
ちょこは歌を追いかけ始めた。
淋しげだった歩調は常の少女の元気なものへと戻っていた。
まるでそのことを喜ぶかのように。
子守唄は少しずつ、少しずつ、よりはっきりと聞こえるようになっていた。
その度にちょこの中で確信が生まれていく。
やっぱり父さまの歌とは違うと。
でも、父さまの歌とは違うけどこれはきっと子どものための歌なんだと。
ちょこは走った。
走り続けた。
不意に、歌に混じって別の誰かの声が聞こえた。
――幻獣召喚《ハイコンバイン》――ティナ・ブランフォード
「ティナおねーさん?」
それが歌を歌っているおねーさんの名前なのかな。
ちょこはなんとはなしに思った。
なんとはなしに思って、けれどどこか引っかかるところを感じた。
「ティナおねーさん、ティナおねーさん、ティナおねーさん?」
おかしいなと何度も何度も呟けど違和感は消えてなくならない。
しっくり来ないものを抱えて、ちょこはもやもやとしたまま戦場へと辿り着いた。
辿り着いて、その人を見て、これまでに生じていた疑問が一気に氷解した。
「おかー、さん……?」
自身の口から零れた言葉にちょこは驚く。
彼女は母親を知らない。
物心ついた時からずっと父親とだけ繰り返す時間の中で過ごしてきていた。
少女と表裏一体であるアクラだってそうだ。
ただ父だけを求めて生きていた。
ちょこという少女の世界に母親は完膚なきまでに存在していなかったのだ。
なのに。
「ティナおかーさん、ティナおかーさん、ティナおかーさん」
少女はティナのことをそう呼ぶ。
ティナがおかーさんなのだと確信して呼ぶ。
今まで使えなかった分を取り戻すかのように、嬉しそうにおかーさんと呼びつづける。
別にどこもおかしなことはない。
ちょこは子どもなのだから。
子どもがおかーさんのことを分からないわけがないのだ!
『マリナさんだけじゃない。あなたには二人の子ども達もいるのよ?
そしてあなたが護りたい世界は、あなたが護りたい日常はこれからも広がり続けてく』
そして少女はおかーさんの声にもう一つ知る。
おかーさんが訴えかけている相手がおとーさんであることを。
シャドウと同じで子どもが待っているということを。
「ねえ、アクラ。アクラも知ってるよね。
父さまのいない寂しさは。父さまのいてくれる温かさは」
ちょこはもう一人の自分に思いのままを伝える。
「ちょこは母さまを知らないけれど、きっと母さまがいたら二倍寂しがったり、二倍温かかったりしたと思うな」
だからね。
少女は続ける。
「やっぱりみんなおうちに帰れるのが一番なの! アクラも分かるよね。力を合わせてくれるよね」
分かりきった問いかけだった。
ちょこもアクラも元は同じ一人の少女で、誰よりも家族を愛していたのだから。
羽が舞う。
翼が広がる。
四つのアルテマの光芒へと一つの優しい闇が力を与える。
「闇に、還れ……」
▽
破壊の力のはずだ。
押し寄せてくる5つの魔法はどれもロードブレイザーの力となる破壊の力のはずだ。
それならば。
それならば何故ッ!
究極の光は還元の闇もこうも愛に溢れているのだッ!?
負の念を力とするロードブレイザーには猛毒にしかなりえない正の念。
バーミリオンディザスターと拮抗するその眩い光にロードブレイザーは恐怖した。
魔神を脅かしたのは外からの魔法だけではない。
装備したままだった魔石がどうしてか急に光ったかと思うと、内的宇宙のウィスタリアスまで輝きだしたのだ。
まずい。
ロードブレイザーはことここにきて自身が追い詰められていることを悟った。
屈辱を呑み込み、魔神は逃亡を選択。
魔法と焔がぶつかっているのとは逆の方向へと翼を広げ、
その先に
――剣者がいた
▽
夢とも現とも思える世界。
意識と無意識の狭間。
生と死との境界に。
男は一人存在していた。
白い闇に包まれて。
ここがどこか、自分が誰かも分からぬままに彼は立っていた。
胴の左半分を吹き飛ばされ、腸を臓物を黒く墨色に染めながらも。
ただ一つのことを成さんが為に地に膝を着くことを拒んでいた。
そこまでして男は何を願う?
彼の者の命を留め続ける未練とはいかなるものか?
護ることか?
違う。
救うことか?
違う。
それは確かに男が心底望むことではある。
生死の理を曲げて尚叶えるに値する想いではある。
だが無理だ。
無理なのだ。
男には誰かを護ることなど不可能、救うことなど不可能。
男にできることは今も昔も一つだけなのだ。
一つ。
ただ一つ。
それは何だ?
護ることか?
否。
救うことか?
否。
決まっている。
斬ることだ。
誰かを斬る以外男にできることなどなかったのだ。
だったらその行為に全てを託せ。
トッシュという人間の想いを、力を、命を賭けろ。
斬ることで護れ。
斬ることで救え。
斬ることで道を拓け。
して、その為に何を斬る?
して、その為に誰を斬る?
オヤジだ。
オヤジを斬らねばならない。
何よりも。
勇者に殺されてしまったのならオヤジは単なる悪として扱われる。
正しい戦いにより討たれた世界の敵として記憶される。
それは、駄目だ。
それだけは、許せない。
モンジは優しい男だった。
邪悪なんかではない、強く誇り高いトッシュの父だった。
モンジを世界の敵にしたくないのなら、本当のモンジを知るトッシュが。
他の誰でもないトッシュ・ヴァイア・モンジが斬らねばならないのだ。
白い闇のみが広がっていたはずの世界に二刀を手にした剣鬼の姿が滲み出る。
そうだ、そうだった。
どうして忘れていた?
トッシュは嗤う。こんな大事なことを忘れていた自分を嗤う。
戦っていたのではないか、冥府魔道に落ちたオヤジと。
モンジが動く。
両の剣を突き出して。
モンジが駆ける。
押さえつけられていたダムが決壊するかのように、怒涛の速度をもって。
土を穿ち、その間合いを一間で詰める。
対するトッシュは不動。
不思議な感覚だった。
護りたかった人に剣を向けているというのに迷いも戸惑いもなかった。
救いたい家族を殺さねばならぬというのに悲しみも辛さもなかった。
仇たる敵と相対しているというのに怒りも憎しみもなかった。
静かだった。
ただモンジとモンジの剣だけが世界の全てだった。
――斬る
一足一刀の間合いに入り対の刃が振り抜かれる。
神速を超えた魔速、人ならぬ身になって得た人外の秘剣が十字を描きトッシュを四散させんとす。
刹那、遂にトッシュが動く。
後足が弾け、大地を蹴り押し、強引に身体ごと必殺の一太刀を前方へと押し込む。
パレンシアタワーでの一騎打ちにて終ぞ掴めなかった好機。
攻防一体の二刀流、その両の剣が防御を捨て攻撃に回され、トッシュの剣が魔を絶てる唯一のチャンスを逃してなるものか!
――斬る
爆ぜた雷の如き一刀が解き放たれる。
天空に舞う桜の花すら両断する速く鋭い一閃。
敵の先の機を奪いし刃は二刀を追い抜き空に煌く。
されど約束されたはずの勝利は不条理に阻まれる。
トッシュの敵は人ならぬ魔。
人界の摂理も常識も振り払い、全力で振り下ろされたはずの刀が人を超えた膂力により引き戻され一息で盾へと転ずる。
ここに勝負は決する。
トッシュの渾身の桜花雷爆斬は身体能力で勝る魔人の両剣の盾を貫くことは叶うまい。
二刀で受け止められ、うち一刀で跳ね除けられるのが関の山だ。
魔技を再現できるはずもない人の身ではルシエドを戻すよりも先に、残る一刀にて斬り伏せられて終る。
努力は絶対の前に灰燼と帰し、人は魔の前に膝を着く。
打ち合うのであれば。
正面から打ち合うのであれば。
――――
魔剣ルシエドが“ほどける”。
実体が霞み陽炎のように揺らめく。
いかな達人といえど形無き剣を受け止めることは叶わず護りの剣は空しく空を切る。
心を無にし、その刃さえも無と帰した剣客の剣が双璧を超え懐に入り込む。
無念無想。明鏡止水。風光霽月。
怒りも憎しみもなくただ一念でのみ動いていたトッシュは遂に剣聖の域へと脚をかけた。
一徹の心。
無我ではなくその対極であったが、雑念を全て排除した点においては無我にも等しい心境――そこから出ずる一剣。
何も考えず、己を無とし。
己を無とし、世界と合一。
さすれば敵に心を読まれることはなく、己だけが敵の全てを掌握する。
――見える
過った前回とは違い気の収束点を明確に捉えられている。
モンジが託してくれた剣の最奥は、仲間達がそうしてくれていたようにトッシュが切るべき敵をしかと示していた。
ならばこれより先はトッシュの仕事だ。
擬似的な無我を破棄し魂を再燃させる。
――斬る
刀身が蘇る。
“斬る”という想念を刃としルシエドが再び猛る。
ガーディアンブレードは想いを喰らい力に変える武器だ。
無我にて振るえば刃を保てなくなるのも道理なれば、炎の如く燃え盛る一念で振るえば万物を断つのもまた道理ッ!
「あばよ!!」
トッシュは斬った。
モンジを――魔を――ロードブレイザーを一刀のもとに断ち切った。
受け継がれし秘剣紋次斬りにて。
悲劇の物語はここに書き換えられるッ!
▽
焔の災厄、ロードブレイザー。
彼の魔神を災厄たらしめている一因はその不死性にあった。
概念的な肉体は物理的攻撃を一切受け付けず。
魔法の域に達した超科学ですら肌の皮一枚を傷付けるの関の山。
そもそも負の意志が存在する限り無限の再生力を誇る彼にはいかな致命傷も致命傷足り得ない。
ロードブレイザーを倒さんと放たれる一撃一撃は、込められた怒りや恐怖、殺意や破壊の意思により彼を満たすだけに終るのだ。
故に無敵。
故に不滅。
剣の聖女がロードブレイザーを討滅ではなく封印で留めざる得なかったものこの不死性のせいだった。
数百年の時を経てロードブレイザーは遂に後のない死をもたらされかけることとなったがあれは例外中の例外だ。
ロードブレイザーの力の根源たる負の念。
それらを相殺しきるだけの世界中の人々の一丸となった希望の念が相手だったからこそロードブレイザーは真の意味で敗れたのだ。
こんなことはあってはならない。
「馬鹿な……」
ロードブレイザーが。
星一つの全生命と釣り合うだけの力を秘めたデミガーディアンが。
たかが一人の人間に敗れることなど!
「ぐっがァァァアアアアアッ!」
ロードブレイザーの身体が霧散していく。
よりしろであるアシュレーの血肉を失った今、オーバーナイトブレイザーの姿を維持するだけの力がロードブレイザーにはなかった。
天をも焼かんとしていた黄金の炎は輝きを失い黒くどす黒くくすぶり続けるのみ。
強固を誇った装甲は罅割れ醜い中身を露呈させていた。
必死に残る力を掻き集め凝縮することで作り上げた紫色の筋肉を剥き出した白いボディを。
オーバープロトブレイザーとでも言うべきおぞましい姿を。
「認めん、認めんぞッ! ガーディアンブレードを手にしていたとはいえたかだか人間一人にこの私がッ!」
正確に言えばロードブレイザー自身が敗れたわけではない。
追い詰められはせども致命傷を与えたのはロードブレイザーの方だ。
だが、だがしかし、トッシュが切り拓いた道はロードブレイザーにとっては終焉へと導かれうるものだった。
「それは違うぞッ、ロードブレイザーッ!」
奴が、来る。
先刻までロードブレイザーの生命線だった寄り代が。
かってロードブレイザーに絶望を与えた人間の代表格が。
剣の英雄がやってくるッ!
「僕たちは、どんな時でも独りじゃないッ!!」
ロードブレイザーはアシュレー・ウィンチェスターの身体を失った。
けれどもそれはアシュレーの身体が破壊されたからではなかった。
破壊されたのはアシュレーとロードブレイザーを繋いでいた根ともパイプとも言える負の気の流れ。
トッシュはアクセスにより表出化した収束点を断ち切ることで魔神と人間の分離を成し遂げたのだ。
結果ロードブレイザーは未だ不完全な形で現世へと逃れなければならなくなり、
「アシュレー、ウィンチェスター……。その姿、その姿はッ!」
アシュレーは魔神から開放され万全の力を発揮できることとなる。
これまでロードブレイザーを押さえることに割いていた魔剣の力を。
果てしなき蒼の力をッ!
「アティが最後に残してくれたこの力で」
白と蒼に彩られた長衣をはためかせ。
蒼き魔剣を手にした人間が砂漠を歩む。
「トッシュが、ゴゴが、ちょこが、ティナが呼び覚ましてくれたこの心で」
その姿は魔神が恐れし英雄に似てはいれども。
風に流れる髪の色は白く。
背には蒼き光輪が輝いていた。
「ロードブレイザー、お前を討つッ!」
蒼き剣の英雄《セイバー》アシュレー、
ここに抜剣せり!
【F-3 砂漠 一日目 真夜中】
【アシュレー・ウィンチェスター@
WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:健康(抜剣により回復)、クラス:蒼き剣の英雄(サモナイ3でいう蒼き剣の勇者)
[装備]:果てしなき蒼@サモンナイト3、解体された首輪(感応石)
[道具]:基本支給品一式×2、ランダム支給品0~1個(確認済み)、バヨネット
焼け焦げたリルカの首輪、魔石『マディン』@ファイナルファンタジーⅥ
[思考]
基本:主催者の打倒。戦える力のある者とは共に戦い、無い者は守る。
1:ロードブレイザーを今度こそ倒す
2:フィガロ城でA-6村に行き、座礁船へ
3:テレパスタワーに類する施設の探索と破壊
4:ブラッドなど、仲間や他参加者の捜索
5:セッツァー、
アリーナを殺した者(ケフカ)には警戒
[参戦時期]:本編終了後
[備考]:
※ロードブレイザーが内的宇宙より完全にいなくなりました。
※蒼き剣の英雄アシュレーは剣の英雄アシュレーの髪の毛を白く刺々しくして背に蒼い光輪を背負った姿です。
あくまでも姿が剣の英雄に似ているだけで武器の都合上使用可能スキルは蒼き剣の勇者のもののみです。
(暴走召喚・ユニット召喚・威圧・絶対攻撃)
またあくまでもアティが残した力による覚醒なので効果が切れるともう二度と覚醒不可能です。
変身がどの程度もつかなど思うところはお任せします。
※バヨネット(パラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます)
【ロードブレイザー@WILD ARMS 2nd IGNITION】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、オーバープロトブレイザー
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
基本:皆殺し
1:アシュレーを殺す
2:殺し合いの場に破滅をばら撒き負の念を吸収して完全復活を果たす
[参戦時期]:本編終了後
[備考]:
※ロードブレイザーとして復活しきるには力も足りず時期も早すぎたため現状本来の力を出し切れていません。
無論島に負の念が満ちれば満ちるほど力を取り戻していきます(強化&回復)。
オーバープロトブレイザーは黒炎を纏ったプロトブレイザーっぽい姿です。
頭部にはロードブレイザー時の翼が生えています。
元がロードブレイザーなのでナイトブレイザー、オーバーナイトブレイザー(魔剣ルシエド除く)、
ロードブレイザーの技を使用できる可能性がありますがお任せします。
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2010年11月09日 13:20