ある『暗殺者』の終わり、そして、ある『勇者』の始まり ◆jtfCe9.SeY
淡くて、白い、儚い光が広がっていく。
それは、あたしの左手の薬指にはまっている指輪から放たれていた。
必死に縋った先に、あった指輪。
はめて、強く願った、
ジャファルを救う力が欲しいと。
そしたら、途端に光って、その瞬間、あたしの力も満ちてきたのだ。
だから、必死の思いで、私は何度も、何度も、呪文を唱えて。
そして。
「…………ニノ……?」
あたしは、愛してる人を、救えたんだ。
ジャファル、ジャファル、ジャファル!
傷一つ無い、大好きな人が、あたしを見つめている。
あぁ、あぁ……ああ。
良かった……良かった……本当に……良かったっ
「生きてる……生きているよぉ……ジャファルが……生きている」
大好きな、人が、生きていた。
あたしの傍で、生きている。
もう、それだけで、よくて。
「そんなのどうでもいい! なんでだ……なんで俺を……ニノ……ニノの傷が……ニノが死んでしまう」
大好きな人の顔が歪んでいた。
ジャファルを救う為に。
あたしはもてる限りの力を費やした。
自分の傷を回復できないぐらいに。
だから、あたしは、ここで死ぬのだろう。
「御免ね……あたしから、一緒に居たいと願ったのに……あたしだけ、先に逝っちゃうよ」
「なんでだ、俺に、そんな価値なんて、無い! ニノに救われて、ニノの命を犠牲にしてまで、生きる価値なんて」
「あるよ、ジャファル」
ジャファルは勘違いしている。
しかも、とても簡単なぐらいの答えなのに。
だって
「貴方は、あたしにとって『最も価値のある』大切な人。救いたい、大好きな人なんだもん」
「……あぁ…………」
大好きな人。
愛してる人。
ジャファル。
何も、感情を見せない彼だったけど、そんな、彼が
「……嫌だ、嫌だ」
少年のように、泣いていた。
大好きな人が、死ぬのが嫌で。
愛してる人が、死ぬのが哀しくて。
涙を、流していた。
「俺はニノは、生きて欲しくて……だから……だから……」
「ううん、もういいの、ありがとう」
「いいわけが……っ!?」
それでも、まだ言葉を紡ごうとしていた大好きな人の口を。
あたしは、思いっきり口で塞いでいた。
想いを、形にするように。
長い間、そうしていて。
やがて、名残惜しかったけど、ゆっくりと離す。
多分、残された時間は、少ないから。
だから、残された、時間で。
ジャファルが、生きていけるように、あたしの想いを、言葉を口にしよう。
「ねぇ、ジャファル……ジャファルは、私を救ってくれたね」
「結局救えない……」
「ううん、救ってくれたよ」
そう、自分の命を懸けて。
死にそうな私を全力で救ってくれた。
思い浮かぶのは、あの雷の勇者。
あの人は、勇者だった。
でもね、あたし、思うんだ。
あたしの大好きな人。
あたしを、救おうとして、自分の命すら捨てようとする、人。
あたしが、苦しい時、あたしを救ってくれた、人。
愛してる人。
それが、ジャファル。
だからあたしにとって、貴方は
「救いたい大切な人を、大好きな人を、全力で救ってくれた、ジャファル、貴方はね」
ただひとりの。
「あたしの『勇者』だよ」
あたしにとっての勇者様。
あたしはね、ずっと
「今の今まで、あたしを救って、救い続けてくれたジャファルは、きっと『勇者』なんだよ」
貴方に『救われ続けていた』
「だからね、今度はあたし以外も、救って欲しい」
「違う! 俺が救いたいのは、お前だけだ! ニノだけなんだよ……」
「ありがとう、でも、聞いて」
これは、祝福なのかな?
これは、呪詛なのかな?
これは、あたしの愛なのかな?
これは、独りよがりをおしつけてるだけなのかな?
「きっと、また哀しい、戦争が起きる。あたしやジャファルみたいな、両親を失った子が沢山出来てしまう」
でも、それでも。
あたしは、言葉をつむぎ続ける。
「それだけじゃない、闇の中でもがき続ける人が、また沢山出来るかもしれない」
あたし達や、あたし達の家族のような人たちが。
きっと、出来てしまうかもしれない。
だから、そういう子達を救う、勇者になってほしい。
「だから、ジャファル……貴方に、そういう人たちを、救って欲しいんだ」
「……俺に、出来る訳が無い……そういうのは……オスティア侯の役目だ」
「ううん、闇も知って、人の温もりも知っている貴方しか出来ない事だよ、だって」
ねえ、ジャファル。
あたし達は、闇に住んでいたけど
「闇にしか生きてなかった、あたし達が、愛し合えた。それが、きっと、『希望』になる」
「希望……?」
「当たり前のように、人に恋して、愛して、生きていく事。それが誰にも出来る事を、証明し続けて」
あたし達の出逢いはきっと無駄にじゃない。
あたし達の愛は、きっと無駄にならない。
「あたし達のような別れをこれ以上作らない為にも、貴方が、そんな弱い人達の、『勇者』になって」
あたしの大好きな人。
あたしの愛してる人。
「あたしの、『勇者』」
ジャファル。あたしはずっと好きだから。
ジャファル。あたしはずっと愛してるから。
「あたしは、貴方が犯していた罪を、許せない。だから、この願いは祝福であり、呪いだよ」
ジャファルの罪はきっと重い。
許されるものじゃない。
だから、ジャファルを勇者として誰も認めないだろう。
でも、あたしは、それでも、勇者だと思う。
あたしの『全て』を『救ってくれた』から。
「…………だから、頑張って生きてね……」
「……ニノ!?」
そして、身体から、力が抜けていく。
もう、終わりだった。
だからね、ジャファル。
「ジャファルは、幸せに、なれると、信じてるよ」
「何故だ……」
それは、あの雨の日の別れと一緒で。
ジャファルの涙が見える。
あたしの身体に縋りながら、あたしを引き止めるように。
そんなジャファルを想いながら、返事を返す
「あたしが……幸せだったから」
ジャファルと過ごした時間。
ジャファルが傍に居た時間。
こんなちっぽけだった自分が、こんなにも、幸せになれたんだ
「あたしすらも幸せできる人だから……ジャファルが他の人を救うのは簡単で、その中でジャファルは幸せになれるよ」
そんな簡単にいかないと思う。
でも、そう思いたい。
でも、そう願いたい。
だって、あたしの大好きな人なんだから。
「ジャファル、ありがとう。あたしに愛をくれてありがとう。温もりをありがとう」
感謝しても、感謝しきれないだろう。
一人で生きたあたしに、愛をくれたのだから。
愛を教えてくれた、ジャファルには生きてほしい。そう思うから。
そして、はめていた指輪をジャファルの指に、はめる。
「大好き、愛してる」
それしか、言葉が出なかった。
だから、唇を重ねた。
それで、充分だった。
ああ、あたし、幸せだったなぁ。
走馬灯のように、色んな人の顔が浮かんで。
「ニノ……大好きだ、愛している」
大好きな、人の言葉が聞こえた。
あたしは、笑った。笑えた気がした。
そして、闇が、訪れた。
でも、その闇が、おもいのほか温かい事を。
あたしは、愛してる人から教えて貰った気がしたから。
「ねぇ……本当に、幸せだったよ、ジャファル」
ありがとう。
そして
「誰よりも、誰よりも、この世界で、貴方を愛しているよ」
だから、頑張ってね。
ずっと、見守ってるから。
「ジャファル……ほんとう、だいすき、あいしてる―――えへへ、ずっと傍にいるからね」
【ニノ@ファイアーエムブレム 烈火の剣 死亡】
【残り13人】
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ちっ……まずは、
ヘクトルを討つぞっ! 旦那っ!」
「解かった」
「くっ……」
淡くて儚い優しい光が満ちる中、セッツァーは冷静に判断を下す。
ヘクトルおろか、
ピサロでさえもあの光に、見惚れていた。
それほどまでに、温かな光だったのだ。
だが、ずっとそうしている訳にもいかないのだ。
今、明らかなイレギュラーが発生している以上、状況そのものは張り詰めている。
故に、セッツァーはまず確実に、ヘクトルを殺す事を選ぶ。
まず、これだけは先のことを考えても、やらなければならないのだ。
そして、そのままピサロの刃とセッツァーの槍が、ヘクトルを貫こうとした、その時
「……………………!」
疾風の如く、飛び込んでくる一つの影。
次第に収まってきている淡い光を纏いながら。
「……ジャファル!」
左手に逆手に持った鋭い和刀で、槍ごとセッツァーを吹き飛ばし。
「……それが答えかっ!」
右手に持って、薄く、されど絶大な切れ味を持つ西洋剣で、ピサロを吹き飛ばした人物。
「ジャファル……お前生きて……?
「……ニノの為にも……死んでもらっては困るんだ、オスティア侯」
左の薬指に、約束の、愛の指輪をはめて。
暗殺者だった男―――ジャファルは世界最後の日に、立っていた。
「その剣は……あの店で手に入れたものか!」
吹き飛ばされながら、ピサロはジャファルに向かって、叫ぶ。
ジャファルが右手に持つ、西洋剣。
それは、ある魔石を削って、出来た神剣。
絶大の薄さと軽さを、誇りながらも圧倒的な破壊力をもたらす魔剣。
所有者の力を高めて、所有者の力量以上を引き出す、神装。
それは、神々の黄昏を名に冠した、剣。
そう、ジャファルが持つのは、最強の剣、ラグナロク。
「今は、一撃で仕留める事に、拘らない……全力でいくぞ」
ジャファルは暗殺の為に、ナイフを使用し、それを好んでいる。
しかしながら、別に剣が扱えないわけではない。
むしろ、戦いが長引く戦場では、剣を振るう機会は多くあった。
どんな状況にも、対応できるように育てられてきた。
だからこそ、今、ジャファルが振るうべきは、二振りの剣。
ジャファルが殺した少女の愛刀、マーニ・カティ。
神々の黄昏を冠する神剣、ラグナロク。
二つとも驚くぐらいに、軽い。
これならば、行動が制限される事は無い。
瞬殺性を捨て、継戦性と破壊力を手に入れた、ジャファルのスタイル。
二振りの剣を持って、今、目の前の仇名す敵を、討つ。
「ニノは死んだ、もう居ない。失った命は二度と戻らない」
反芻するように、言葉を紡ぐ。
ああ、そうだ、死んだ命は戻らない。
戻ったとしてもモルフのような抜け殻だ。
「けど、ニノは望んだんだ、俺に生きるようにって。俺達な哀しい恋をする人がもう増えないようにして欲しいって」
だけど、ニノは望んだ。
ジャファルに生きてほしいと。
だから、ジャファルは此処にいる。
「闇の中にもがき続ける人を、救う『希望』になれって言ったんだ」
闇の中で、もがき続ける人達の希望になれと。
大好きな人が言ったんだ。
「俺のした事は、罪は、赦されない。 何れ罰を受ける事になるだろう……だが、まだそれは先だ。先にならなきゃならない」
ジャファルがニノの為に殺した事は赦されない。
何れは罰は受けるが、今はまだ。
「でも、今はそんな事どうでもいい。罪とか贖罪とか、罰とか信念とか、遺志とか、闇とか、光とか、本当に、もう全部どうでもいい!」
けど、そんな事、今は、もう全部どうでもいい。
今は、ただ、ただ。
「幸せだ、『救われた』といってくれた、ニノの為に。大好きな、愛しているニノの為に!」
ただ、ただ、『愛』の為に。
「ニノが言ってくれたんだ」
きっと他の人は、ジャファルを『それ』だと認めないだろう。
ジャファルは相応しくないといい、受け入れないだろう。
けど、それでいい。
だって、それでも、大好きな、愛してる人だけは、彼を認め、こう言ってくれるだろうから。
「だから、俺はなってやる」
――――世界最期の日にある『暗殺者』が死んだ。
――――だが、或いは、それはこうとも言えるのかもしれない。
「ニノの為に、ニノが望む『勇者』に……」
小さな、愛の指輪が、また光ったような気がして。
ジャファルは、強く宣言する。
「俺がー――――『勇者』になってやる!」
――――そして、世界最期の日に、ある『勇者』が生まれたのだった。
RPGキャラバトルロワイアル。
第138話。
【C-7とD-7の境界(C-7側)二日目 朝】
【ジャファル@
ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:健康
[装備]: マーニ・カティ@ファイアーエムブレム 烈火の剣、ラグナロク@FFVI、黒装束@
アークザラッドⅡ、バイオレットレーサー@アーク・ザ・ラッドⅡ 導きの指輪@ファイアーエムブレム 烈火の剣
[道具]:聖なるナイフ@ドラゴンクエストIV、毒蛾のナイフ@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち、潜水ヘルメット@ファイナルファンタジー6
影縫い@FFVI、アサシンダガー@FFVI、、基本支給品一式×1
[思考]
基本:ニノの為に『勇者』になる。
1:ヘクトルと共に、セッツァー、ピサロを倒す。
[備考]
※ニノ支援A時点から参戦
※セッツァーと情報交換をしました
※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。
【セッツァー=ギャッビアーニ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:好調、魔力消費(中) ファルコンを穢されたことに対する怒り
[装備]:デスイリュージョン@アークザラッドⅡ、つらぬきのやり@FE 烈火の剣、シロウのチンチロリンセット(サイコロ破損)@幻想水滸伝2
[道具]:基本支給品一式×2 拡声器(現実) フレイムトライデント@アーク・ザ・ラッドⅡ ゴゴの首輪
天使ロティエル@サモンナイト3、壊れた蛮勇の武具@サモンナイト3
小さな花の栞@RPGロワ 日記のようなもの@??? ウィンチェスターの心臓@RPGロワ
[思考]
基本:夢を取り戻す為にゲームに乗る
1:ジャファルを倒す
2:魔王、ピサロと連携し、ヘクトル・ゴゴを倒す
3:C7制圧後は南下し、残る参加者を倒す
4:ゴゴに警戒。
5:手段を問わず、参加者を減らしたい
※参戦時期は魔大陸崩壊後~セリス達と合流する前です
※ヘクトル、
トッシュ、アシュレー、ジャファルと情報交換をしました。
※ジョウイからマリアベル達の現在の状況を知りました。その他の情報については不明です。
【ピサロ@ドラゴンクエストIV】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(中)、心を落ち着かせたため魔力微回復、ミナデインの光に激しい怒り ニノへの感謝
ロザリーへの愛(人間に対する憎悪、自身に対する激しい苛立ち、絶望感は消えたわけではありません)
[装備]:ヨシユキ@
LIVE A LIVE、ヴァイオレイター@WA2、クレストグラフ(ニノと合わせて5枚。おまかせ)@WA2
[道具]:基本支給品×2、データタブレット@WA2、双眼鏡@現実 点名牙双@幻想水滸伝Ⅱ、解体された首輪(感応石)、 バヨネット
天罰の杖@DQ4、小さな花の栞×数個@RPGロワ メイメイさんの支給品(仮名)×1
[思考]
基本:ロザリーを想う。優勝し、魔王オディオと接触。世界樹の花、あるいはそれに準ずる力でロザリーを蘇らせる
1:ジャファル達を打倒。
2:セッツァー・魔王と一時的に協力し、ヘクトル・ゴゴを撃破しつつ南へ進撃する
3:可能であれば、マリアベルとニノも蘇らせる
[参戦時期]:5章最終決戦直後
[備考]:確定しているクレストグラフの魔法は、下記の4種です。
ヴォルテック、クイック、ゼーバー(ニノ所持)、ハイ・ヴォルテック(ニノ所持)。
※バヨネット(パラソル+ディフェンダーには魔導アーマーのパーツが流用されており魔導ビームを撃てます)
【メイメイさんの支給品(仮名)×1】
メイメイさんのルーレットダーツ3等賞。メイメイさんが見つくろった『ピサロにとって役に立つ物』。
あくまでもメイメイさんのチョイスであるため、それがピサロが役に立つと思う物とは限らない。
【ヘクトル@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(中) 左手首に傷 左目消失
[装備]:アルマーズ@FE烈火の剣
[道具]:ビー玉@
サモンナイト3、 基本支給品一式×4
[思考]
基本:オディオを絶対ぶっ倒して、オスティアに戻り弱さや脆さを抱えた人間も安心して過ごせる国にする
1:ジャファルと共に、セッツァーとピサロを倒す。
2:つるっぱげ、ダブル銀髪を必ず倒す。
3:ゴゴと
ちょこから話を聞きたい。
4:アナスタシアとセッツァーを警戒。
[備考]:
※
フロリーナとは恋仲です。
※セッツァーを黒と断定しました。
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最終更新:2011年12月26日 20:49