抗いし者たちの系譜-再始の聖女- ◆iDqvc5TpTI


――その焔に、私は全てを奪われた。

全ては、全て。
自分を可愛く着飾りたい。
おいしいものを沢山食べたい。
家族とたわいのないおしゃべりをしたい。
友達ともっと遊びたい。
恋人と手をつないで歩きたい。
あんなことやこんなこともしていつかは子をなしたい。

そんな女の子なら誰しもが一度は描く囁かな夢。
なんら特別なこともない、平穏な、ただの日常。

そのどれか一つすら、アナスタシアには叶えることができなくて。
最後にたった一つ残った死なせたくないという願いを護るために。
最初に抱いた死にたくないという願いさえも奪われた。

(私は、『わたし』であることを、奪われた)

だからだろう。
アナスタシアは震えていた。
カタカタと、カタカタと。
みっともなくも、全身を震わせていた。
全身を濡らしていた川の水などとうに蒸発しているのだから。
今、彼女の身を濡らしているのは恐怖の汗に他ならない。

再誕した焔の厄災――紅蓮は。
かつて対峙したロードブレイザーと比べるのもおこがましい程衰えているというのに。
アナスタシアは、全盛期のロードブレイザーに立ち向かったあの頃ですら感じたことがないような恐怖に。
為す術もなく全身と全心を犯されていた。

カタリ。カタリ。カタカタカタ。
恐怖に侵されているのはアナスタシアだけではなかった。
剣が、聖剣ルシエドまでもが震えていた。
それは、彼女の身体の震えが、両手を伝い剣を震わせているということか。
違う、そんな物理的なものだけではない。
アナスタシアが手にしているのは、ただの剣ではない。
ガーディアンブレード――読んで字の如くガーディアンが変化した剣だ。
手にしたものの心の影響を大きく受けてしまうのだ。

(――ッ。いけないッ!)

なればこそ、この始末。
聖剣ルシエドが軋みを上げる。
ルシエドを成り立たせる感情は“欲望”であって、“恐怖”ではない。
むしろ負の感情である“恐怖”では、デミ・ガーディアンである厄災の力となってしまう。

「『おや、おやおや、おやぁ? 私の口の中に広がるこの香しき風味は正しく恐怖!
 この俺自慢の長き舌でなければ絡めとれぬほどの無尽の恐怖ッ! 』」

新生した焔は、宿敵であるはずの聖女から、己に利する力を感じ取り、心底可笑しそうに声を張り上げる。
人間の負の感情を力とするかの者が言うのだ。
アナスタシアが、今この瞬間に抱いている恐怖が、無尽というのは、あながち嘘ではないのだろう。
無論、宿敵たる剣の聖女の心を揺らすためのブラフという可能性もある。

「『はてさてこれほどのご馳走を私に振舞ってくれるのは何方様と見回してみれば、な、なんっとッ!
 そこにいらっしゃるは聖女様! これは異な事! 愉快痛快快刀乱麻! 恐れていると、恐れているとッ!?』」

しかしながら、他ならぬアナスタシア自身が、紅蓮の言葉は真実なのだと認めてしまっていた。
そうだ、その通りだ。
アナスタシアは恐れている。

「『そんなはずはねえよな、そんなはずはねえよなぁッ!
 貴様は勝者、私は敗者ッ! 貴様は英雄だ、俺が求めてるように身を犠牲にしてまで世界を救った英雄様だッ!』」

あれほどまでに求めていたはずの過去の自分、その再現が。
行き着く場所にまで、行き着いてしまうことを恐れている!

「『となるとこれは、あれか。敵に塩を贈るという奴か。素晴らしいかな、騎士道ッ!
 魔王にそうしたように、俺の全力を受け止めてその上で凌駕したいとッ!?』」 

前方の厄災、後方の命。
間に立つのは自分、ただ一人。
人類最後の砦。
唯一の希望。
ここで引けば、誰かが死ぬ。
ここで立ち向かえば、自分が死ぬ。
アナスタシアを成す二つの欲望――“死にたくない”“死なせたくない”
その二つを同時に叶えることの能わない善悪の彼岸。
選ぶしかないのか、自分か他人かを。

「『よかろう、受けて立つ。元よりそれこそが俺に残された二つの宿願のうちの一つ。
 全てを殺し去った後に、決着を。決着をつけるために、全てを殺すッ!
 さあ、さあ、さあ、剣の聖女よ、俺が望みし英雄よ』」

ああ、ああ、あああ!
なれば、こここそが境界線。
アナスタシア・ルン・ヴァレリアの過去と未来の、死と生の、聖女と少女の境界線――This is the END!!

「『今一度、護ってみせろッ! 死んでみせろォォォオオオオオオッッ!』」

主の意を受け、カエルフレアが起動する。

「紅ううるぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

カエルフレアの大口から、暗黒の焔が放たれる。
ネガティブフレアだ。
アナスタシアはその焔を防御するということが、どういう意味かを知りながらも、避けることが叶わなかった。
彼女の後ろには、ちょこが、ジョウイが、何よりもゴゴがいるのだ。
人々の悲しみや怒りを喚起させる魔炎はたとえ火の粉であってさえ、今のゴゴに猛毒足りうる。

だけど。

「ああああああああああああああああッ!」
「……おねーさん!?」

果たしてそれが猛毒なのは、ゴゴにとってだけだろうか。
聖剣を盾に焔を凌ぐアナスタシア。
目を逸らしたくとも逸らせない視線の先には、紅蓮が――ロードブレイザーにして、カエルたる者がいる。
遥か昔に彼女の命を奪い、今この現世で親友の命を奪った仇がいる。
そのような存在を前にして、怒りも悲しみも抱かないというのなら。
それこそ、聖女と呼ばれるような人間だけであろう。
アナスタシアはそうではない。
自身が散々嘆いてきたように、彼女は、聖女などという存在ではない。
人間だ。
ただの人間だ。
泣きもすれば怒りもする、ただの人間なのだ。

「大丈夫、大丈夫よ、ちょこちゃん。
 お姉さんはこれくらい、平気へっちゃらよッ」

どんな時でも諦めなかった一人の少女の口癖を借りて、精一杯強がるも、アナスタシアの心中は刻一刻と弱気へと傾いていた。

(『貴女はマリアベルさんの仇を取りに行くものだとばかり思っていました』かあ。
 ジョウイくんには、ほんと、痛いところをつかれちゃったなあ)

ゴゴを、ユーリルのイノリを、護りたかったというのは嘘ではない。
それは確かにアナスタシアをして、強者たる魔王と一戦を交えさせ、乗り越えさせる程の願望ではあった。
けれど同時に、それは“逃げ”でもあったのではないか。

アナスタシアは、わたしらしく、自分らしくありたかった。
マリアベルの親友として、マリアベルの大好きなアナスタシアでありたかった。
そのアナスタシアは、怒りや悲しみから戦いを放棄して、護られてばかりいる少女でもなければ。
怒りと悲しみのままに戦う少女ではなかった。

ああ、そうだ、そうなのだ。
アナスタシアは戦いたかった。
奪うのではなく、護る為の戦いをしたかった。

だから、アナスタシアはゴゴを護ることを、如いては魔王と戦うことを選んだ。
怒りや悲しみ、そして憎しみに負けて、奪う戦いをしてしまいかねないカエルではなく。
リルカやブラッドのことがあるとはいえ、比較的負の感情に飲まれないで済む魔王と戦うことを選んだ。

それはなんて愚かなイージーモード。
明日を生きることにすら事欠く荒野の住民たる少女に、そのような甘えが許されるはずはないというのに。

そのツケがこのザマだ。
カエルにしてロードブレイザーでもある紅蓮は、アナスタシアにとって完全なロードブレイザー以上に、最悪の相手だった。
闇の焔に誘発され、自らの覚悟に疑念を持ってしまったアナスタシアから、護りの加護が失われる。
エアリアルガードだけではない。
輝く盾の紋章による戦いの誓いが破却され、正しき怒りは、大罪たるただの憤怒に堕とされる。
アナスタシアにとっては、前者よりも後者の喪失のほうが辛かった。
これでアナスタシアは正真正銘身一つで厄災に挑まねばならなくなった。
共に魔王と戦ってくれた少年が残してくれた力は、随分と心強いものであったというのに。
残り香さえも放射され続ける焔によって消え失せてしまった。

「『ふむどうした。何を泣きそうな顔をしている? 我が焔による浄めでは不満か? 
 確かに全盛期の私を知る貴様にとってはこの程度、ただのぬるま湯に過ぎぬか。
 それは失礼したッ! 俺も高みの見物などはせず、薪をくべさせてもらおうではないかッ!』」

その上、駄目押しとばかりに浴びせかけられるフォルブレイズの業火。
アシュレーに倣って聖剣ルシエドを二刀召喚し、なんとか防ぎきるも、そこまでだ。
もはや聖剣に魔王戦で見せたような圧倒的な力は備わっておらず、攻勢へと転じられない。
次々と迫り来る天をも焦がす焔の壁を祓えず、押しとどめることで精一杯の彼女の前方は、いつしか、紅蓮一色に染まっていた。
さもありなん。
ルシエドが司る欲望は、“明日の自分を欲し望む、現状を変えようとする力”だ。
過去の再現を前にし、過去に縛られていては、その力を発揮しきれはしまい。

いや、そもそも。
“新しい自分”を歩みだしたはずが、“過去の自分”を仮面として貼り付けることを選んだ時点で、アナスタシアは誤っていたのかもしれない。
過去の自分を見つめ直すことは推奨されるべきであろう。
そうすることで、自分が封じてしまっていた自分や、失くしてしまった自分に気付けはする。
しかしながら、“今までの自分”を捨ててしまうのは、大間違いだ。
どれだけ惨めだろうが、どれだけらしくないと思おうが。
“今までの自分”も間違いなくアナスタシア自分自身で、“本当の自分”の一側面なのだ。
それをすてるなんてとんでもない!
それでは単に、過去“から”逃げてばかりいたのが、過去“へと”逃げるようになっただけではないか。

なんて、なんて、なんて矛盾!
過去の焼きまわしを恐れているというのに、その過去へと逃げ続けようとするこのジレンマ!
だが安心するといい。
矛盾とはいつしか相討ち壊し合うもの。
そしてここには、壊すことに特化した紅蛙がいるではないか。

歓喜せよ、“剣の聖女”よ。
新生とは、破壊をもって成し遂げられるもの。
聖女は過去の再現を恐れているが、魔神はその再現を破壊する。
再現を破壊した上で、更なる最悪を顕現させる!
故にこその災厄。
最悪にして災厄たる紅蓮の焔!

「『さあ、約束をまずは果たそう、宿敵よッ!』」

紅一色だった世界が、黒に染まる。
ロードブレイザーの煤ではない。
影だ。
太陽を覆い隠し、新たな太陽と化したカエルフレアの巨大な影だ。

「『言ったはずだぞ、全てを殺し去った後に、決着を、とッ!』」
「ッ、まさかッ!?」

正解だと言わんばかりに焔の壁が解除されたことで、アナスタシアは最悪の光景を光景を突きつけられる。
赤一色の世界の先には紅蓮しかいなかった。
焔の壁を目隠しにして、紅蓮はカエルフレアを跳躍させていたのだ。

「させな――「『お前の相手はこの私だぞ、剣の聖女よッ!』」くううッ!」

すぐさま身を翻し、ゴゴ達を助けに向かおうとするも、紅蓮に斬り込まれ阻まれたアナスタシアの頭上を、カエルフレアは跳び越えていく。
巨体に似合わぬ軽やかな挙動だが、何もおかしなことはない。
カエルは元来火を噴くものではない。
跳ぶものだ。
跳んで、翔んで、超重量で押し潰しつつ、全身の焔で焼き殺す。
圧殺と焼殺の合わせ技こそ、カエルフレアの本来の用法なのだ。
そしてその猛威に晒されるのはアナスタシアではなく、彼女が護ろうとしていた人達だ。
初めから紅蓮はちょこ達を狙っていたのだ。
護らせないこと。
アナスタシア・ルン・ヴァレリアに護らせないこと。
それこそが紅蓮が描いたアナスタシアへの必勝パターン。
それは単に、アナスタシアに命懸けで彼女の大切なものを守り切られてしまった魔神の意趣返しに留まらない。
アナスタシアの力の源たる欲望は“死にたくない”“死なせたくない”の二つから成り立っているのだ。
では、もしも守る対象を奪うことで、“死なせたくない”という意思だけでも無為にすれば。
二柱により支えられていたアナスタシアの欲望の力は、転がるように激減し、紅蓮の焔を脅かすに足らぬものとなるっ!

「ちょこちゃんッ!」

今更過ぎる呼びかけをすれども、もう遅い。
強襲するカエルフレアを前に、どうしろといえばいいのか。
いかにちょこの魔力が膨大だとはいえ、相手はそれ以上の回復力を誇る厄災の現身だ。
一撃で消しされるものでもなければ、どれだけ削った所で次の瞬間には復元されるのが関の山だ。
半端に撃ちあうのでは、威力を減退させることもできない。
かといって逃げようにも、相手は山一つに匹敵する巨体によるボディプレスだ。
攻撃範囲外まで逃れようとするのなら、要する距離は数秒で駆け抜けられるものではない。
いや、常人離れしたちょこの身体能力なら、或いは、助かったかもしれない。
けれども、意識のないゴゴやこの期に及んで気絶を装うジョウイを連れていくことを少女が選んだ時に、その僅かな可能性すら零となった。
小さな身体で必死になって、ゴゴとジョウイを引きずり走りゆくも、カエルフレアの影からちょこ達は逃れられない。
逃げられない、逃げられない、逃げられない、ならば。
逃れられないのなら、どうすればいいのか。

「だめ、だめなの。ちょこ、一人ぼっちはもういやなの。
 みんなにだって、一人になって欲しくないの。ジョウイおとーさんや、ゴゴおじさんを、おうちに帰してあげたいの。
 だから、だから、だから」

仲間を放置して逃げれば、自分一人は助かるのに。
それでも、弱い考えを放棄してまでも、繋いだ絆を失いたくないというのなら、どうすればいいのか。
ちょこは知っていた。
ある一人の父親がたどり着いた答えは、確かにちょこの心に刻まれていた。

「死んでも、助けるの…………!」

半端に撃ち合えば再生されるというのなら。
この身全ての魔力を振り絞った全力の一撃で完全に消し去ってしまう他はない。
しかしそれは諸刃の剣だ。
村一つと数多もの魔族を一瞬にして滅ぼし、人の魂を弄び、数百年にわたり溶けることなき幻覚を与え、時の輪廻すら支配する程の力。
それほどまでの力を唯一度に全て振り絞り攻撃に注ぎ込んだならば。
なるほど、魔神さえも滅ぼし得るだろう。
かつて剣の魔女が魔王を打ち破ったように。
圧倒的な力に耐え切れない器ごと滅ぼすことで。
魔王ですら無い魔人が、魔神を滅ぼすには、それでも安い代償だと言わんばかりに。

「来て、アクラ!」

ちょこはその代償を承知した上で、もう一人の自分に呼びかける。
もう一人のちょこたるアクラも、その代償を承知した。
彼女、アクラは、正直、アナスタシア・ルン・ヴァレリアのことが嫌いだった。
父を愛し、その父に見向きもされなかった少女は、それ故に、アナスタシアがちょこのことを、見ていないのだと気付いていた。
だから、これまで、アクラは、アナスタシアの前で、自らの姿である、ちょこの真の姿を晒させることをよしとしてこなかった。
けれど、それもここまでだ。
アナスタシアはぎこちないまでも、本当の自分で、ちょこに向かい合おうとした。
それなら、ちょこもまた、ちょこの全部で、アナスタシアと向かい合うべきだ。
ちょこはアクラで、アクラはちょこで、ちょこはちょこなのだ。

とくと見ておくがいい、アナスタシア・ルン・ヴァレリア。
“本当の自分”になるとはどういうことか、その一つの姿を。
闇の心である“過去の自分”を捨てず、光の心である“今の自分”に受け入れることで、“新たな自分”となった少女の覚醒<アクセス>を。

「闇へと還れ……ヴァニッシュ!」

――翼が、舞った

アナスタシアは思わず息を飲んだ。
ちょこ達にカエルフレアが直撃する光景に、ではない。
宙に座し、円環状に召喚した闇の力をもってして、“灼熱の火球”をただ一人で留める“聖女”の姿を目にしてしまったからだ。
奇しくもそれは、キャストを変えただけの焔の7日間の再演だった。
アナスタシアがあれほどまでに恐れた、“一人の少女が大切な人達を護るために命を捨てなければならない”光景だった。
だというのに。
おかしな話だ。
“剣の聖女”と呼ばれ、更にそのことを忌避していた自分が、あろうことか、他の誰かに“聖女”を重ねるなどと。
しかし同時に、アナスタシアは得心が行きもしていた。

(ああ、そっか。みんなが私に、“聖女”を見るわけだ)

今この瞬間、紅蓮と剣を交えていることさえも忘れて、見入ってしまいそうな程に。
勘違いしてしまっても仕方がないくらいに。
自らの命を燃やし尽くしてまで、誰かを護るために、厄災の蝦蟇に立ち向かうちょこは美しかった。
そして、そんな“過去の自分”の自分の再演たるちょこの姿を綺麗だと思えたから。
アナスタシアは、“過去の自分”のいいも悪いも含めた、全てを受け入れることができた。
“剣の聖女”を認めることができた。

(そうよね。もうわたしは、あなたに認めてもらっていたんだよね、ユーリルくん)

“救った”のだと。
望もうが望むまいが、進んでだろうが嫌々だろうが関係ない。
“剣の聖女”は、かつてのアナスタシアは。
一人ぼっちで戦い続けて、その果てに命まで捧げなければならなかったけれど、それでも。
それでも、護りきったのだ。
大切な人達を、護りたかった人達を、救いたかった人達を。
アナスタシアは護ることができたのだ。
それだけで十分だったなんてことは、欲深いアナスタシアには口が裂けても言えないけれど。
でも、“剣の聖女”に、あの日の自分に、ありがとうって、伝えるくらいはいいのではないか。

(ありがとう、私。わたしの大切な人達を護ってくれて。それと行ってきます)

たった一言。
自分への、たったの一言で、“剣の聖女”は、一人ぼっちで泣いていた少女は、真に救われた気がした。
だったら後は、これからだ。
捨てるのでも逃げるのでもなく、

(わたしは、私を、剣の聖女を超えていくッ!)

乗り越えるだけだ。
最悪の災厄がもたらした、誰も護れず、アナスタシアも死ぬという悪趣味な未来を。
みんなを護り、アナスタシアも死なないという、伝説を超えたハッピーエンドで塗り替える!
それがアナスタシアの目指す“新しい自分”。
みんなを護りきった“過去の自分”と、死にたくないと願う“今までの自分”を合一した先にある“本当の自分”。
マリアベルに誇れるだけではなく、自分自身にも誇れるアナスタシア・ルン・ヴァレリア!
その姿を見てもらうためにも、その未来を掴むためにも。

「ちょこちゃん、死なないでッ!」

プロバイデンス。
聖剣の光がアナスタシアとちょこを包む。
すぐさま紅蓮にネガティブフレアで打ち消されはするものの、その祈りは思わぬ形で叶うこととなる。

「――そうだ、貴様にはまだ、黒き死の風は吹きすさんでいない」

ヴァニッシュとカエルフレアがせめぎ合う天と地の狭間に。
ちょこのすぐ傍ら、“炎を纏った大岩”と対峙する形で身を浮かべ。

その男は、ジャキはそこに居た。


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139-3:私がわたしを歩む時-I'm not saint-(後編) アナスタシア 140-2:抗いし者たちの系譜-逆襲の魔王-
ジョウイ
ちょこ
ゴゴ
カエル
魔王



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最終更新:2012年02月16日 21:42