いわゆるマーダーには向かない性格 ◆n95k6APn4k
一面に広がる夜の雪景色。
故郷であるイリアでは珍しくもない光景だけど、ここの雪にはイリアと違って
ただ無機質で、気分が悪くなるほど冷たいだけ。
月明かりで照らされる雪達が、私を恐怖の中に手招きしてるようで、不気味だった。
怖い。今も恐怖で、心臓が張り裂けそうになる。
あの魔王オディオの眼光に晒され、私は動けなくなった。
首を飛ばされた人達の無惨な姿を見て、絶望が私を包み込んだ。
人が死ぬところなんて、今までも嫌と言うほど見てきてるはずなのに。
逃げられない――ネガティブな想いだけが私の中を渦巻く。
どうすれば。私はどうすればいいんだろう。
私は一人ぼっちだ。いつも一緒だったヒューイも、ここにはいない。
身体が震える。全身の寒気が治まらない。この雪と気温のせいだけじゃなかった。
私はどうすれば……リン……
ヘクトル様……
……そうだ。この島に召喚されたのは私だけじゃない。
私の大切な人達もまた、同じようにこの殺し合いに参加させられている。
リン、いえリンディス様。そして、ヘクトル様。
こんなことに巻き込まれて死んでいい方ではない。
私は震えを抑え、立ち上がった。
リンディス様やヘクトル様、エリウッド様や多くの仲間と共に厳しい戦争を戦い抜いて、
私だって強くなれたと、少しは自信が付いたと思う。
だから……こんなことに屈するわけにはいかない。
私の望み。それは……
リンディス様とヘクトル様、お二人をお守りすること。
そのために、私はどうすればいいの?
今、自分にできることは……?
私は考えた。大切な人を守る術を。
私なりに、考えに考えて……そして、決意した。
手に握られた、一本の槍。
これがあれば、戦える。戦ってみせる。
ヒューイもいないし、空と同じように戦えないかもしれないけど。
私は、覚悟を決めた。
自分の手が、血に汚れる覚悟を――
◆ ◆ ◆
孤島を舞台に、最後の一人になるまで殺し合い。あまりにも悪趣味で馬鹿げている。
こんな真似をする奴は、それこそあの外道・ケフカくらいのものだと思っていたが。
だがあの魔王オディオとやらは、ケフカとは違う類の人間であることは見て取れた。
ただの悦楽のためにこの殺戮の宴を開いたようには、私にはどうにも思えない。
上手く表現できないが……何かの怨念のようなものすら感じ取れた。
彼に恨まれるようなことをした覚えはないのだがな。
参加者名簿に目を通す。
そこには、我が自慢の弟・マッシュを始めとする、仲間達の名前も記されていた。
ティナ、セッツァー、ゴゴ。そして……
シャドウの名も。
瓦礫の塔脱出の時に姿がなかったため、彼の身を案じていたのだが。
そうか……彼は生きていてくれたか。
仲間の生存を喜ぶ……しかし、それに浸っていられるのは一瞬でしかなかった。
そのすぐ下に記されていたのは……忌まわしき、ケフカ・バラッツォの名。
……何の冗談だ、これは。嫌な汗が額に滲む。
奴は我々がこの手で倒したはずだ。あの瓦礫の塔での最終決戦で、確実にとどめを刺した。
あの男の異常なしぶとさを考えても、生きていたなどとは考えにくい。
……まさか、これもあの魔王オディオの手によるものだというのか。
奴すらも蘇らせ、駒として扱えるだけの力を持っているとでも――?
……柄にもなく、思考が弱気に傾いている気がする。
今は、オディオの理由や都合、ケフカ復活の真意を考察する場合ではないだろう。
どんな理由があろうが、こんな理不尽を馬鹿正直に受け入れてたまるか。
わざわざ奴の言う通りに殺し合いに乗ってやる道理など微塵もない。
打倒オディオ。そのための対策を練る。
そうとなれば、少しでも多くの戦力を集める必要がある。
まずは一刻も早く、5人の仲間との合流を図りたい。
それに、最初に召喚された部屋の中には、私の仲間以外にも腕の立ちそうな連中は多く見られた。
彼らも可能な限り味方に付けたい。私同様、殺し合いに抗う意思を持った者がいると信じて。
だがオディオへの対抗戦力を集めたところで、それだけでは勝てない。
首に装着された首輪だ。これがある限り、我々は奴に手出しはできないのだ。
ならば、こいつの解除も急務といえよう。
首輪は機械仕掛けのようだし、そうなれば……やはり機械屋である私の出番だろうな。
こいつを解析するべく、そのための設備・資材を探すことも考えたい。
あとできることなら、同じように機械の知識に詳しい者とも合流できればいいが。
そういえば、あの部屋で私の近くにいた眼鏡の女の子が思い出される。
いかにもなメカニック然としていた風貌。見るからに、機械関連のスキルを持っていそうだった。
是非ともお近づきになりたいところだ。
あとは……ケフカの打倒。
奴が本物だとすれば、十分に警戒しなければなるまい。
もし奴の取り込んだ三闘神の力が健在だとすれば、危険どころの騒ぎではない。
奴の力は、世界を一度壊した。あの悲劇を、二度も繰り返させるものか。
とりあえず、こんなところか。大体の行動方針は決定した。
……何? やけに場慣れしていないかって?
そうだな。こう見えても、それなりの修羅場を潜り抜けてきたという自負はある。
崩壊後の世界の中で、海賊の真似事までして見せた私の適応力を舐めてはいけない。
それに私も国王の端くれ。水準以上の判断力と決断力は持ち合わせているつもりだ。
さて……まずは自分に支給された道具を確認することにする。
万一敵に襲われた時にも対処できるよう、身を守る術は確保しておかねばならない。
自分に支給されたアイテムは二つ。
巨大な斧と、小型の重火器。他の連中がどういったものを支給されているかは知らないが、
武器としてはかなり強力なものを引き当てていることは間違いない。
無論、こいつで人を殺すような真似は避けたいところだが。
まず、巨斧のほうだが……
かなり重量があり、こいつを使いこなすには相応の腕力と技量を要するだろう。
斧を武器として使ったことはない。この物騒な得物、私に使いこなせるか。
いや……生き延びるためにも、使いこなして見せねばなるまい。
それにしても、不思議な斧だ。月明かりに照らし出される刃は、危険な輝きを放っていた。
素人目にも、一般に出回っているような凡百の斧とは違う、特別な斧であることが見て取れる。
……この悪趣味な殺人ゲームなどには、過ぎた代物だ。
そして重火器……小型のバズーカ砲か。
我が機械王国フィガロでも、見たことのない技術系統の火器だ。
どうやら民間で造られた物のようだが、技術的にはかなり洗練されていると見た。
未知の機械を前に、マシーナリーの血が疼く。
その場に腰を据え、私はバズーカを手に取り調べ始めた。
武器として十分に使いこなせるよう、性能を熟知しておく必要がある。
いや、あるいはそれ以上に――
今思えば、それは殺戮の舞台に放り込まれた不安を紛らわせる意味もあったかもしれない。
つい機械いじりに没頭してしまった私は、一時的に周囲の状況に気を配ることを怠ってしまった。
ちょうど、バズーカの引き金に手をかけた、その時――
がさり、と雪を踏む音が聞こえた。
背後からだ。それもそう遠い距離ではない。
また同時に、自分に向けられた鋭い視線にも気付く。
――それは敵意、と呼んでも差し支えはない。
「誰だ!?」
反射的に振り返り、その敵意を発する対象に砲口を向ける。
「あ……」
そこには、一人の女の子が立ち尽くしていた。
紫の髪で、肩当と胸当を身に着けた、どこか気弱そうで……
私がその少女について判り得たのはそこまでが限界だった。
それは時間にして、ほんの1秒にすら満たない。
そして、それ以上の時間を取ることはできなかった。
私は、無意識のうちに神経を張り詰めすぎていた。
彼女に振り返った瞬間、つい剣を握る要領で手に力を込めてしまった。
……引き金に指をかけた状態で、だ。
その迂闊な行動で導き出された結果、それは――
――暴発。
惨劇が、起きた。
ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ
「きゃあぁぁっ!?」
「うぉわっ!?」
ほぼ同時に、私と少女の口から驚愕の声があがった。
無理もない。砲口から発射された弾は、こちらの予想の斜め上をいく代物だった。
ピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨピヨ
ヒヨコだ。大量のヒヨコが、前方に撒き散らされる。
ヒヨコの形をした弾が、バズーカの砲口からマシンガンの如く連射される。
……何だこれは。
あまりにもカオスなその光景に、私はバズーカを構えた姿勢のまま呆然と立ち尽くしていた。
「い、痛い痛い! いやぁぁぁぁぁ!!」
少女の悲鳴で、私は我に返る。
目の前では、少女が涙目で、しゃがみ込み両手で庇うように頭を押さえていた。
そしてそこに容赦なく降り注ぐ、ヒヨコの雨あられ……
「い、いかん! 止まれッ!」
必死で止める術を探すも、ヒヨコは際限なく砲口から飛び出してくる。
くっ、どうなっているんだ!? こいつはどうすれば止められ――
べちーん!……と、爽快感すら漂う派手な音がした。
それと同時に。
「ぶべっ!?」
如何とも形容しがたい少女の声が響き渡った。
思わず、少女に向き直る。
「……あ」
ヒヨコの一体が、彼女の顔面に綺麗に直撃したようだ。
少女は目を回し、顔を真赤に腫らしてその場に倒れこんでいた。
その一発を最後に、ヒヨコの発射も止まっていた。
……やれやれ、なんというザマだ。
……待てよ?
よく考えたら、単に砲口の向きを彼女から逸らせばよかっただけの話か……?
昭和ヒヨコッコ砲。
ヒヨコ弾なる怪しげな弾を連続発射する小型バズーカ砲……らしい。
この中のどこにあれだけのヒヨコが入っているのかは定かではない……
そのナゾに満ちた構造については、とりあえず後々調べるとして。
これを全弾相手に直撃させれば、魔導アーマーの力に匹敵する殺傷力を有する……かもしれない。
一発ごとの威力はそれほどでもなかったのが、今回は幸いだった。
気を失ったままの少女の腫れて赤くなった顔を、濡れたタオルで冷やしてやる。
大した怪我ではなくてよかったと思う。
こんな間抜けな武器で殺された日には、死んでも死に切れまい。
それにしても、先程無様に晒した自分の醜態……自己嫌悪すら抱く。
機械の使い方を誤り暴走させた上、女の子に怪我までさせてしまうとは……
せめてもの名誉挽回、アフターケアは万全に行っておかなければなるまい。
彼女を落ち着かせるためにも。
少女の介抱を続けながら、私は思う。
この出で立ち、見習いの騎士か傭兵か。
だが彼女の無垢で幼い寝顔は、あまりにも戦士には似つかわしくない。
こんな子にまで殺し合いを強要させるとは……と、オディオへの憤りは込み上げてくる。
それでも……警戒はしておいたほうがいいだろうな。
何故なら、彼女は――
「ぅ……ん……」
少女の目から、涙が一筋零れ落ち、月の光で輝いた。
……やれやれ。こういうものを見せられると、どうにも弱い……
「ヒヨコ……ヒヨコが……ぅぅ……」
……すまん、私が悪かった。
ヒヨコが……大量のヒヨコが襲い掛かってくる。
そして今も、私の頭の上をヒヨコがくるくると回ってるような気がする。
ヒヨコが怖い。ああ、蜂に追いかけられた苦いトラウマが蘇ってくる。
私が悩み、固めた決意が、こんなに簡単に跳ね返されてしまうなんて。
これは、ヒヨコの神様が下した私への天罰なの?
そう……人の道から外れようとしている、私への。
……だけど、私はもう決めたの。
どんなことをしても、お守りするって。
リンディス様。
私の仕えるキアランの公女様にして、私が守るべき人。
そして何よりも、私のかけがえのない大切な親友。
ヘクトル様。
オスティア侯弟にして、私がずっと憧れてきた人。
こんな私を受け止めてくれた……大切な人。
なんとしても、お守りしたい。お二人を、私の大切な人達を。
そのためには……自分の手を汚すことも厭わない。
ごめんね、リン……きっと軽蔑するよね、こんな私を。
でも、それでも構わない。生きていて欲しいから、死んで欲しくないから。
お二人を守るために、私は他の皆を手にかける。
リン、ヘクトル様……お二人以外の、全てを……
ふいに、女の子の顔が頭を掠めた。
――ニノ。
戦いの中で、友達になった女の子。
お母さんに裏切られて、親しい人達との戦いを余儀なくされて。
そんな辛い、私なんかよりもずっと辛い過去を背負っているのに。
あの子は気丈にもそれに負けず、明るい笑顔を振りまいている。
私に……できるの? 彼女を、手にかけることができるの?
迷っちゃダメだってわかってるのに。
でも……あの子の笑顔が過ぎる度、心が締め付けられるように痛くなる。
私は――
「……ぅ……ん……?」
飛んでいた意識が戻った。
私は、ゆっくりと目を開ける。
月の明かりが罪悪感を感じさせるほど眩しくて、そして……
「気が付いたかな、お嬢さん」
私の前には、見たことのない男の人の顔があった。
目と目が合った瞬間――私は全身が強張り、そのまま完全に硬直してしまう。
そう、まるでヒヨコ……じゃない、ヘビに睨まれたカエルのように。
「ひ……っ!?」
ああ、ダメ。いつもこう。
男の人を前にすると怖くなって、身体が拒絶してしまう。
私は固まった右手をなんとか動かして……その手に槍が握られていないことに気付く。
「ぁ……ぁ……」
顔が青ざめる。目には涙が滲む。
その手に武器も何もない私は、あまりにも無力。
どうしよう。私は殺されるの? それとも――
いや、怖い。助けてリン……お姉ちゃん……ヘクトル様――!
「待ってくれ、怯えなくてもいい。
君に怖い思いをさせてしまったことは、心から詫びさせてもらう。すまなかった」
……返ってきたのは謝罪の言葉だった。
この人の言葉は多分、紳士的と呼べるものだと思うけど。
「あ、あの……え、と……あ、あなた、は……」
ただ、私の中に根付いた男の人への抵抗が、それを素直に受け止められない。
ましてや、ここは殺し合いの真っ只中。見ず知らずの人を簡単に信用できるわけない。
「ああ、レディに対して自己紹介が遅れるとは失礼した。
私はエドガー・ロニ・フィガロ。魔王オディオ打倒のための仲間を探している」
だけど、この人……エドガーさんの口にした言葉が、私を揺れ動かした。
オディオの打倒……そういえば、その発想はなかった。
でも、そんなことができるの?逆らえば、首を飛ばされるのに。
何より、遠くから見ているだけでも、私は動けなかったほどなのに……
「よければ、君の名前も聞かせてくれないだろうか?」
「わ、私は……
フロリーナ……
イリアの天馬騎士見習いで……その、今は、キアラン侯爵家に仕える、身です……」
言われるがままに、私も名乗る。気付けば、やっぱり私は状況に流されてた。
「フロリーナか……素敵な名前だ。ここで君と出会ったのも何かの縁。
君さえよかったら、私と共に行動しないか?」
「え? いや、あの……」
「この物騒な場所を、君のような美しいお嬢さん一人で歩かせるには忍びない。
是非とも、君を守らせてはもらえないだろうか? 先程の侘びの意味も兼ねて、ね」
え、えーと、この人何言ってるんだろう、頭でも打ったんだろうか。
どう返答すべきか、私は言葉を詰まらせる。
もしこの人の言う通り、オディオを倒せるのなら……私は――
その時。
エドガーさんが携えている一本の斧が、私の目に入った。
あの斧は……知っている。
天雷の斧『アルマーズ』。
ヘクトル様が、過酷な試練の末に手にした神将器の一つ。
どうして、これがここに?
「ん? この斧を知っているのか?」
私の視線に気付いたのか、エドガーさんが尋ねてくる。
「い、いえ……何でも、ない……です」
気付かれないように、慌てて誤魔化す。
深呼吸を一つ。落ち着いて、落ち着くのよフロリーナ。
そうよ……私はリンディス様とヘクトル様を守る。私はそう決めたはず。
気をしっかり持って。ヒヨコやエドガーさんに惑わされちゃダメ。
エドガーさんの持つアルマーズは、揺れ動いていた私の決意と覚悟を思い出させてくれた。
「わ、わかりました……お、お願いします……」
震えを抑えて、エドガーさんの申し出を受け入れる。
アルマーズは、ヘクトル様の大きな力になる。見逃すことなんてできない。
何とかして、ヘクトル様の下に届けなくちゃ……
しばらくの休息の後、私達はこの場所を発つことになった。
「いつまでもここにいるわけにもいかない。
まずはここから近いA-3の城に向かい、そこで互いの詳しい情報交換を行おう。
目立つ場所だけに、他の参加者が集まっている可能性もあるからな……
と、大丈夫か、立てるか?」
エドガーさんが、手を差し伸べてくる。
少し間を置いて……私は丁重にお断りした。
「あ、あの……自分で、立てますから……」
そう言って、さっきのヒヨコでまだ半分抜けたままの腰を隠しながら、私は立ち上がった。
今の私にできる抵抗なんて、そのくらい。
リンを、ヘクトル様を守る。
そのために、他の人達はみんな殺す。
それが、私の決意。
……。
私、こんなことで大丈夫なのかな……
◆ ◆ ◆
少し話してわかったが、彼女は男性を極端に苦手としているようだ。
おどおどした喋り方と必要以上の怯え方、殺し合いで不安になっているだけではないように思える。
とはいえ、久しぶりのせいか、私の口説きのテクニックも錆付いているようだな……
さて、彼女についてわかったことといえば、もう一つ。
残念なことに、彼女はこの殺し合いに乗ってしまっているようだ。
私の目とて節穴ではない。
彼女は思っていることが表情に出すぎる。これほどポーカーフェイスから程遠い子も珍しい。
私の持つ斧『アルマーズ』を見た時もそうだ。
彼女は誤魔化していたが、その目の色が少なからず変わったのを私は見逃してはいない。
大抵の人間なら、少し勘を働かせれば、彼女の真意はすぐに読み取れるだろう。
フロリーナ。
確かに彼女は気弱で、戦士には似つかわしくない少女ではある。
それでも、実力的には一人前と呼べるだけのものを持っていると思う。
この雪の中を、あの重い槍を抱えて、気配を消して歩ける程度の実力は。
……無論、あれだけの接近を許したのは、私が警戒を怠っていたせいもあるのだが。
いずれにしても、彼女は今後も警戒する必要はある。
だが私は、そこまでわかっていながら……あえて、危ない橋を渡ろうと思う。
「フロリーナ、これを君に返しておく」
そう言って、私は彼女の持ち物を返す。
そう……彼女が武器として持っていた、槍もだ。
「え……」
目を丸くする仕草に、思わず笑みが浮かぶ。本当に、わかりやすい子だ。
ちなみに、彼女の持ち物は調べさせてもらっている。他に武器らしき物はなかった。
この槍以外に警戒すべき道具はないと見ていい。
彼女は思っていることが表情に出すぎる。
殺し合いに乗る意思とは別に、強い迷いや葛藤があることもまた見て取れた。
本人は覚悟を決めたつもりかもしれないが……まだ、悪魔に魂を売り渡しきれてはいない。
それ故に、私は彼女の良心を信じ、槍を返した。
無理に理由をつけて身を守る術を取り上げては、逆に疑心を煽りかねない。
この極限的状況下で、そういった行為は彼女にとっては逆効果ではないかと判断した。
殺し合いに乗る――
私としては、その点を責めるような真似はしたくない。
あの惨劇を目の当たりして、平静な思考を保てる人間は多くはないだろう。
怖くなって一人で隠れるか、あるいは正気を失い殺人に走ってしまうか。
それが、普通の反応だ。私のように抗おうとする者の方が、むしろ珍しいだろう。
ただ……彼女はそういった混乱のためだけに殺し合いに乗っているとは思えないのだ。
その辺の事情は、追々尋ねてみるとして。
ここは一つ、彼女のあの涙を信じてみたいと思う。
……やれやれ。私も甘い……
【A-4 雪原 一日目 深夜】
【エドガー・ロニ・フィガロ@ファイナルファンタジー6 】
[状態]:健康
[装備]:アルマーズ@ファイヤーエムブレム烈火の剣
[道具]:昭和ヒヨコッコ砲@LIVEALIVE、基本支給品一式
[思考]
基本:ゲーム阻止・打倒主催
1:A-3城へ向かう
2:フロリーナと情報交換(彼女への注意は怠らない)
3:仲間と合流・戦力の結集
4:首輪の解除。そのための資材・人材の調達。眼鏡の少女(
ルッカ)が気にかかっています。
5:ケフカを警戒・打倒
[備考]:
※参戦時期はクリア後
※フロリーナの真意に漠然と気付いています
【フロリーナ@
ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:健康。顔面に軽度の腫れ
[装備]:デーモンスピア@ドラゴンクエスト4
[道具]:不明支給品1~2個(確認済。武器は無し)、基本支給品一式
[思考]
基本:リン、ヘクトルの生還
1:リンとヘクトルを除く全参加者の殺害
2:アルマーズをヘクトルに届ける
3:ニノに対しては……保留
[備考]:
※ニノとは支援が付いています。
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最終更新:2010年12月29日 22:09