「今日、ナニカノハズミデ生きている」 ◆FRuIDX92ew
エドガー達は城へ向かう。積もりに積もっている雪の所為もありその足取りは重い。
フロリーナが起き上がり、城へ向けて移動を開始してから両者とも一言も口を開いていない。
無口が生み出す重苦しい空気が更に足取りを重くさせる。
エドガーは、危険を賭してフロリーナを試した。
自分の命というチップを差し出し、確認の意味も込めて彼女を試した。
自らが先導して雪を掻き分け、歩く道を創り進む。
当然、背後は無防備になる。「誰かを殺したい」と思っている人間ならこのスキに付け入らないはずがない。
後ろから槍のようなもので一突きすればひとたまりもないだろう。
この条件を揃えた上で彼女が本当に殺し合いに乗り切っているのかをエドガーは試した。
もちろん無様に殺されるつもりもない。彼女が黒だった場合。望まぬ血が流れることにもなるだろう。
なんにせよ無傷で済むことはない。だから、背後の警戒は怠らない。
しかし、もし彼女が白なら。殺し合いに乗らずに抗うことを選んでくれるかもしれない。
賭ける物は大きいが、得られるものは大きいと自分では思っている。
「まったく……どこかのギャンブラーみたいだな」
自分ですら聞くことが難しいほどの小声でそう呟く。
自分の中の悪魔と天使と自分の三つの思考を巡らせながらフロリーナは考える。
自分の中の悪魔はフロリーナにこう告げる。
「フロリーナ、今がチャンスよ。このウザったいキザ野郎を後ろから一刺ししてあの世に送ってやるべきだわ。
貴方の実力があれば造作もないことよ? アルマーズも手に入るしヒヨコの恨みも晴らせる。
しかもアイツはご丁寧に武器まで渡してくれたわ、殺してくださいといわんばかりの行動よ?
リン様と
ヘクトル様を助ける為に全てを殺すと決めたんでしょう? だったら、生きている奴にとどめを刺さないのは傲慢よ?」
自分はリン様を助けたい。ヘクトル様を助けたい。
そのためにはありとあらゆる危険要素を取り除かなければいけない。
目の前のエドガーさんが、何かの弾みでリン様やヘクトル様を殺す事だってありえる。
事実、それは私自身で経験している。あれがもしヒヨコではなく弓矢の類のものだったら――――
二度とないチャンスかもしれない、殺すのならば今を逃すとわけにはいけない。
もし、今逃せば殺せないだけでなく、後々の障壁となる可能性もある。
行動を起こせば簡単な話である。背後から急所一点に絞込んで射止める。
ただ、それだけのこと。
そこから斧を奪い、ヘクトル様に届ければ少なくともヘクトル様は生き残れるだろう。
アルマーズを手にしたヘクトル様がそうそう負けるはずはない。そう信じているのだから。
自分の中の天使はフロリーナにこう告げる。
「本気でここにいる全員を殺せるとでも思ってるつもり? ネルガルだってヘクトル様一人で倒したわけじゃない。
貴方やリン様、ヘクトル様みんなが力を合わせて倒したのでしょう? あなた一人粋がったところでどうにかなると思ってる?
もしそうだとしたら究極の大馬鹿だわ。殺し合いに乗ったところでリン様もヘクトル様も死んでしまったらどうするの?
最悪貴方が殺してしまうことになるかもしれないのよ? 逆に、貴方が人殺しだと分かれば平気で切り捨ててくるかもしれない。
フロリーナ、これはチャンスよ? こんな場所で殺し合いに乗ってない人に真っ先に出会えたんだから。
いい? 相手が魔王だろうと何だろうと構わないわ。魔王を倒そうと考えてる人たちと協力するのよ。
そこにアルマーズを持ったヘクトル様やリン様が加わればなんだって倒せるわよ。馬鹿なことをしちゃいけないわ、よく考えて」
自分はリン様を助けたい。ヘクトル様を助けたい。
もし殺す側に回れば軽蔑どころか見捨てられ、敵対することになるかもしれない。
よく考えればあの魔王は「最後の一人になるまで」と言っていた。
リン様とヘクトル様が残ったところで、どちらかを殺さなければならない。どちらかを選ぶ覚悟が自分にあるだろうか?
それよりもここで手を組んで、あの魔王を倒すために動くべきなのだろうか。
確かにかつて数々の困難を乗り越えた先でネルガルを倒した。数々の仲間を失ったものの目的を達することは出来た。
ここでも、同じことが言えるかもしれない。全員とまでは行かないが、力をあわせて動けばきっとあの魔王を倒すことも出来るかもしれない。
しかし、それも可能性の話。魔王の力が想像することもできない領域にまで達していたのならば。
ありえない状況を揃えても勝てないのならば?
自分は考える。
この状況でどう行動を起こすのがベストなのか?
自分の望みはヘクトル様とリン様が生き残る事。
望みをかなえるだけが目的ならば二人が生き残らなくても良い。自分が優勝すれば良いのだから。
もしくは二人のうちのどちらかが生き残ってくれれば良い。それでも望みはかなうのだから。
しかし、本当にあの魔王が願いを叶えてくれるのかどうかはわからない。
涙を呑んでヘクトル様やリン様を殺した上で、もし何もなければ自分は只の道化師である。
三人生き残った上で魔王も打ち倒す、そんなハッピーエンディングじゃ終われないことぐらい良くわかってる。
じゃあどうすれば良いのか? それは分からない。
今ここでやっぱり殺しておくべきなのだろうか? 槍に力を込めるもやはり貫く気になれない。
今ここで協力を要請しておくべきだろうか? 開けた口からは言葉は出ない。
エドガーに誰かがチラついて見えるからだろうか? それだけとは思えない。
フロリーナは気がついた。
最初にした決意は自分に言い聞かせるだけの上っ面の物でしかなかった事。
アルマーズを見て思い出した決意も、表面だけのものだったのかもしれない。
殺し合いに乗っても良い、今ここで協力してもいい。
ただ、もう少し落ち着いて考えたほうが良いかもしれない。
焦って物事を決めても、何も良いことはありはしない。
エドガーさんには感謝している。もう一度、冷静になって考える機会をくれたのだから。
「まさか、バカな……!!」
フロリーナが「もう少し考える」ことを選んだすぐの事である。
目の前には立派で大きな城が建っていて、それを見てエドガーは口を覆っていた。
「フィガロ城……だと?!」
エドガーは慌てて一人城内へと駆け込んでいく、後からフロリーナが落ち着いた足取りでエドガーの後を追う。
「バカな……そんなわけが……嘘だッ!!」
城内を慌しく駆け巡るエドガー。呼吸が荒くなり、額には汗が滲んでいる。
「いや……失礼、見苦しいところを見せてしまったな。
ともかく、ここが私の城と同じというなら……情報交換に適した場所がある。そこで情報交換しよう」
エドガーはフロリーナを城内の一室へと案内する。
部屋割り、物の位置、通路の幅。ありとあらゆることに関して完璧に模倣されたこのフィガロ城もどきにエドガーは焦りを隠せない。
だから、気がつかなかった。フロリーナが少し、ほんの少しだけさっきと違うことに。
その後、場所を移して情報交換自体は行われた。
が、フロリーナの「男性恐怖症」が災いして思う様に情報交換することは出来なかった。
見ず知らずの男性相手には口すら聞こうとしないフロリーナから情報を引き出せたのは、エドガーのテクニックがあったからかもしれない。
「……オホン、まあまとめてみよう。
フロリーナ、君が探しているのはリン、ヘクトルこの二人。そして
ジャファルというのが危険な人物である。
私が探しているのはティナ、マッシュ、ゴゴ、セッツァーの四人。あと
シャドウというのもいるが、多分大丈夫だと思う。
無いとは思うが万が一のことを考えて一応警戒してくれ。最後にケフカ、こいつだけはダメだ。何があっても絶対に信用するな。
特徴はさっき言ったとおりだ、もし見かけたら注意を怠らないでくれ」
エドガーは勿論、信用を得るためにありのままを喋った。嘘をつく要素はどこにも無い。
ただ、シャドウに関してだけは彼が選んだ「修羅の道」にどうにも引っかかる節がある。
だから、シャドウに関しては少し曖昧な表現を使った。
一方フロリーナはリンとヘクトルを探しているのは事実であったし、ジャファルが危険なのも事実である。
きっとジャファルならこの殺し合いには躊躇わずに乗るだろう。そう、ニノもこの場所にいるのだから。
自分がどちらの位置につくかどうかは分からない、だからニノのことは伏せておいた。
「今、ハッキリと分かっている事」だけ。フロリーナはエドガーに喋った。
「ふむ……なるほど。
……フロリーナ、もし良ければ少しついてきてほしい」
情報交換が終わったと判断したエドガーが席を立ち上がり、フロリーナを何処かへと誘う。
フロリーナは出来るだけ怪しまずにその誘いを受け入れる。
エドガーはフロリーナをどこかへと案内している途中に、ポケットをくまなく探していた。
それは呼び出した用件に必要な物なのだが、どうにもエドガーのポケットに入っている気配が無い。
「おかしいな……いつもここに入れているはず――――」
城の頂上に着いたときだった。思わずエドガーとフロリーナは息を呑む。
そこから目視できるほどに、炎が森林を飲み込んでいた。
この調子で炎が森林を飲み込み続ければ、燃え尽きるまでにそう時間はかからない。
「フロリーナ、急いでここを出よう。あそこで……物凄いことが起きている!」
そういって焦って階段を駆け下りるエドガー。それについていくフロリーナ。
エドガー自身としてはもう少しこの城に居たかった。
「なぜフィガロ城がここにあるのか?」
「なぜ魔王はここにフィガロ城を持ってきたのか?」
そして「フィガロ城だとすれば蒸気機関は動くのか?」
この三つを考えてみたかったからである。しかし、山火事を見てその考えが吹き飛んでしまった。
あそこに仲間がいるかもしれない。そんな感覚に襲われて居ても経ってもいられなくなってしまったのだ。
結局、蒸気機関の有無を確認しないまま。エドガーはフロリーナと共に城を飛び出した。
フロリーナは考える。
もう少しだけ悩むことにしよう。
殺し合いに乗るなら誰かを殺して、決意を固くする。
口先だけではない、もっと固い決意を手に入れるために。
きっとあの山火事の現場に行けば、誰かを殺すチャンスぐらいいくらでもあるはず。
その時になっても殺せないなら――――自分は何が出来るんだろう?
ともかく、今はまだ決めなくて良い。
焦ることも無い、じっくりと何をすれば良いのか決めれば良いのだから。
だからもう少しだけ、悩むことにしよう。
私は、冷酷非道の殺人鬼になれるのだろうか?
私は、何がしたいのだろう?
【A-3 北の城(フィガロ城) 一日目 黎明】
【
エドガー・ロニ・フィガロ@ファイナルファンタジー6 】
[状態]:健康
[装備]:アルマーズ@ファイヤーエムブレム烈火の剣
[道具]:昭和ヒヨコッコ砲@LIVEALIVE、基本支給品一式
[思考]
基本:ゲーム阻止・打倒主催
1:山火事の現場(D-7周辺)へ向かう。
2:仲間と合流・戦力の結集。シャドウに関しては少しだけ警戒。
3:首輪の解除。そのための資材・人材の調達。眼鏡の少女(
ルッカ)が気にかかっています。
4:フィガロ城起動を試みる
5:ヒヨコッコ砲の改造?
6:ケフカを警戒・打倒
[備考]:
※参戦時期はクリア後
※フロリーナの真意に漠然と気付いています
※A-3の城はどうやらフィガロ城と瓜二つのようです。蒸気機関が動作するかは分かりません。
※コインが没収されていることに気がつきました。
【フロリーナ@
ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:健康、顔面に軽度の腫れ
[装備]:デーモンスピア@ドラゴンクエスト4、ダッシューズ@FINAL FANTASY6
[道具]:不明支給品1個(確認済。武器は無し)、基本支給品一式
[思考]
基本:??????
1:山火事の現場(D-7周辺)へ向かい、そこでどうするか決意を固める。
[備考]:
※ニノとは支援が付いています。
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2010年12月29日 22:17