最強も煙も高い所が好き ◆jU59Fli6bM



孤島の南西、そこに海の脇に寄り添うようにして立つ一つの灯台があった。
海を眺めるには丁度いいが、あいにくこの状況下でやるにもってこいとは言い難く、
有効に使おうと思えば誰もが本来とは逆向きに立つだろう、そんな灯台だった。

そして、その中に二人はいた。
前述の話を違うベクトルに覆しながら、息を荒げて座っていた。

「ゼェ……ハァ……、くっそぉ! 悔しいぜッ! 最後の一段、あそこで突っかかるなんて!」
「だから暗くて危険だって言ったのに……。まあ怪我しなかっただけマシだろ!」

そう、この2人が今の今までしていたこと、それは灯台の階段を下から頂上まで一気に駆け上がる……
言うなれば"かけっこ"をしていた。
体力づくりに欠かせない、合宿で神社の階段を走るあの感覚と言えば分かりやすいだろう。
人々が殺し合う状況下だという現実を意識していないのか、それとこれとは別の話なのかは定かではない。
ただ、この灯台を上る際に高原が一番に思いついたのがこれだった。その点は流石と言うべきか。
そう、理由など至極単純。
彼らにとって灯台は、人探しと同時に競争ができる画期的な建造物だったのである。

「……っと、この部屋は本当に頂上か? 何かたくさん物があるな……」

息も整い、ランタンを掲げたマッシュが呟く。
2人の目に映るのは、埃だらけの鬱蒼とした空間。しばらく人の手が入っていないように見える。
彼は知らなかったが、部屋の脇にはコンピュータと呼ばれる機械が並んでいた。

「おおーい! マッシュ、いつまでそこにいるんだ。まだ上があるぞ!」

明快な声につられるように振り向くと、奥で日勝がはしごから降りてくるのが見えた。
どうやらいつの間にか頂上へ上っていたらしい。

「やっぱり夜じゃ、辺りがどうなってるかなんて全然分からないな。明かりがつけばよく見えるんだが。
そっちは何か見つけたのか?」

マッシュの隣まで歩いてきた高原がそこで足を止める。マッシュは肩をすくめながら答えた。

「いや、この部屋の機械はよく分からないし、他に使えそうな物も無いな……」
「そうか……、ん?」

高原がランタンを突き出し、目の前にある白く背丈ほどの高さの機械を撫でる。
瞬間、その顔がきょとんと不意を突かれたような表情へと変わった。
マッシュがその様子に気付き、声をかける。

「どうした?」
「ん……。これ、俺の世界の機械と似ていると思ってな。あいつ、人だけでなく建物まで持ってこれるのか?」
「そうか、どうりで見ない機械だと思ったぜ。……お前、扱えたりするのか?」
「いや、使い方は知らねえが……」

高原そこまで言って言葉を切り、にいと笑みを浮かべた。

「少し……、いじってみるか!」
「……壊すなよ?」

言うが早いが行動に移す高原。
それに呆れながらも見ていたマッシュは、しばらく眺めていた後に上へと登っていった。

梯子を登った先は屋上だった。
見上げると何か大きいレンズのようなものが見え、塔の外周より少しつきだした床に柵が生えている。
マッシュはそこに寄りかかりながら眺望してみた。が、やはり高原の言った通り暗くてよく分からない。
辛うじて光をいくつか見つけたが、それが街かどうかも怪しい。
気になった事と言えば、森らしき場所のところどころで炎が上がっていることくらいだ。

「……まあ、こんなもんか。早く夜明けねぇかなあ……」

――まさか、このままずっと夜だったりしないよな?

マッシュの頭の中で一抹の不安がふと浮かぶ。

――いやいや、そんな理不尽なことがあってたまるか。

そして、そんな不安を払うかのように首を振り、下へ戻ろうとして振り返った。

すると、その直後。
マッシュのまわりを、目も眩むような図太い光の束が包んだ。
そのままマッシュの不満に応えるかのように辺りを侵食し、闇が追い払われる。

「うおっ、まぶしっ! な、何だぁ!?」
「すげえ! やったぞ、マッシュ!」

目を凝らして前を見ると、下へ続く穴から高原が顔を出し、喜び勇んでいた。
そして、マッシュに向かって鼻高々に叫ぶ。

「見ろよ、適当にいじってみたら光ったぜ! やっぱり灯台なだけあるな!」
「と、灯台ってそういうもんだったのか……。じゃあ、これで辺りが……!」

マッシュは何かに引っ掛かったかのように途中で言葉を切る。そして、辺りを見回した。
その目線は闇夜を貫く光の束と、下の景色を往復し、目の前の高原へと移る。

「こんなに明るかったら、逆に見た誰かがここに来るんじゃねえか?」
「そうだな、つまり仲間を集めつつ遠くを観察できる! 一石二鳥って奴だな」
「……いや、 俺らみたいな乗ってない奴以外にも」

遠くの景色である山や塔は見える。だが、灯台下暗し、周りが相変わらず真っ暗でよく見えない。
つまり誰かがここに近づいても気付かない可能性がある。マッシュはそれを僅かに危険視していた。
しかし、高原はその限りではなかった。


「ん? 別に俺はいいぜ。強い奴と戦えるついでに、殺戮を繰り返す奴をぶちのめせるって事だろ?
お前だってそんな奴には対抗できるはずだ。自信持てよ!」
「……いや、どんな奴がいるか分からないだろ。お前は魔法や飛び道具にも対抗できるのか?」

マッシュの指摘に高原の動きが止まる。
しばらく彫刻のように固まって思案を巡らせる高原。
彼の頭の中ではサンダウンのハリケンショットやキューブのレーザーが飛び交っていたのだが、マッシュは知るよしもな

いだろう。
その様子を見て、マッシュは思わずため息をつく。
この殺し合いの最中では慎重になるに越したことは無い。ここは周囲を確認できたらすぐに明かりを消そう。
そう言おうと近づくと、高原が先に口を開いた。

「それは困るが、あいにく消し方が分からないんだよな。ここは狭いし、銃なら待ち構えてれば大丈夫だろう」

彼の出した答えは簡潔だった。


結局、街から離れていて行き場もないため、夜が明けるまでここで過ごすことに決まる。
人を呼び寄せるのに慎重だったマッシュが最終的に折れたのだ。
高原のスタンスを受け入れ、しぶしぶ納得する形だったが。

「兄貴がこの辺りに来ればいいけどな……」

辺りの真っ暗な草原を見渡す高原の横で、マッシュの目はどこか遠くを見ていた。

【I-1 灯台 一日目 黎明】
高原日勝LIVE A LIVE
[状態]:全身にダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:鯛焼きセット(鯛焼き*4、バナナクレープ*6、ミサワ焼き*4、ど根性焼き*2)@LIVEALIVE、死神のカード@FF6

、基本支給品一式
[思考]
基本:ゲームには乗らないが、真の「最強」になる。
1:仲間を探すため、灯台で待機(エドガー最優先)
2:オーラキャノンの習得……できるのか?
3:レイ・クウゴとはもう一度手合わせしたい。
4:武術の心得がある者とは戦ってみたい
5:オディ・オブライトは俺がぶっ潰す(?)
[備考]:
※名簿を確認、自分とマッシュの仲間を把握。
※ばくれつけんを習得。 オーラキャノンの可能性については後述の書き手さんにお任せします



マッシュ・レネ・フィガロファイナルファンタジーVI
[状態]:全身にダメージ(中)
[装備]:なし
[道具]:スーパーファミコンのアダプタ@現実、ミラクルショット@クロノトリガー、表裏一体のコイン@FF6、基本支給

品一式
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:首輪を何とかするため、機械に詳しそうなエドガー最優先に仲間を探す
2:高原に技を習得させる(?)
3:ケフカについてはひとまず保留
[備考]:
※名簿を確認、自分と高原の仲間を把握。

※灯台は現代にあるような無人灯台です。
※灯台の明かりの種類は他にもあるようです。主催によって使いやすい設計に。

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003:Body Language 高原日勝 052:正に悪夢、アクム
マッシュ


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最終更新:2010年06月25日 23:04