正に悪夢、アクム ◆FRuIDX92ew
灯台の上から人探しを始めて早数十分、人影らしきものは一切現れない。
「そういやマッシュ。お前奥義とか持ってるのか?」
ふと、人影探しに疲れたらしい高原が口を開く。
「ん? まあ、ダンカン流奥義は……あるけどな」
ほんの少し面倒くさそうにマッシュは答える。
「ふーん、実は俺さ。奥義って言う程の技が無くってさ――」
ダンカン流奥義「夢幻闘舞」
それは死んだはずのマッシュの師であるダンカンから直接自身に刻まれた奥義。
師の数十年、いや人生の全てが詰まったといえるその技は正直今でも使いこなせている自信はない。
そういえば、あの時も楽しくてしょうがなかった気がする。まるでさっきの高原との戦いのように。
突き出す拳、蹴り上げる脚、一挙一動が楽しいとすら感じられた時間だった。
自分の目の前の人間、
高原日勝は爆裂拳をいとも容易く習得して見せた。
彼ならこの奥義も、いやそれすらも超える技を……?
それ以前に自分は師の様に誰かに何かを教えるほど大きな人間になれているだろうか?
「――おーい、マッシュ? おーい、もしもーし」
肩を叩きにきた高原が少し心配そうな顔をしてこちらを見ている。
自分でも気がつかないうちに相当考え込んでいたようだ。
とっさに笑顔を作り、大丈夫だと高原に返事をして人探しに戻る。
「それで、どんな奥義なんだ?」
息つく間もなく高原が再び問いかける。
何故だかかつてのマッシュ自身を見ているような気分になってくる。
「そうだな……お前がオーラキャノンが使えるようになったら教えてやるよ」
「えーっ、オレもまだまだってことかぁ?”オーラ”なんてオレに使えるのかな……?」
この場所で、自分も師匠のように生きていくことが出来るだろうか?
死んでいると思われても、不死鳥のごとく蘇ることが出来るだろうか?
「おいマッシュ! 人だ! 人影が見えるぞ!」
今度は深く考え込む前に高原の大声が脳に響く。
高原が指を指した先で、灯台の光が人影らしき姿を一瞬だけ捉えていたらしい。
マッシュ自身は確認が出来なかったが、高原自身は見たと言い張っている。
自分も確認するまでは降りるつもりは無かったのだが、そんな隙すら与えずに高原は灯台を駆け下りる。
「……考え事してる場合じゃない、か」
灯台が生み出す一筋の流れる光。
その光を手でさえぎりながら光を放つ灯台へと僕は進む。
誰かと馴れ合うつもりでもなくただ自身の目的のため、僕は灯台へと進む。
一定の周期で僕を照らし出す光が僕の機嫌を損ねていく。
とはいえ、立ち止まっている余裕は今の僕には無い。
灯台に人が集まる前に自分の用件を済ませて誰かに会う前に灯台を立ち去る。
誰もいないうちに灯台に着く事ができれば不可能ではない。
だから、出来るだけ早く。僕は灯台へと進む。
ふと、前方に二つのぼんやりとした光が見える。
恐らく支給品のランタンによるものだろう。灯台にたどり着いた人間か? それとも灯台を動かした人間か?
そこにいるのが誰であろうとかまわないが、姿を見られるのは都合が悪い。
これから灯台に人が集まるとなると、このまま灯台を目指すのは得策とは言えない。
工具や設備を見送るのは惜しいが、灯台を見送らざるをえない。
少し離れて、夜が明けてからもう一度灯台に近寄ってみよう。
僕は静かに身を翻し、灯台とは違う方向へと歩き始めた。
僕のその姿を、灯台はしっかりと照らし出していた。
「なあ高原、本当に人影なんてあったのか?」
半ば呆れ顔で辺りを見渡すマッシュ。
木か何かを人影と間違えたのではないだろうか?
何せタイミングは灯台が照らした瞬間というわずかな時間しかない。
灯台の近くまで来れば……話は別かもしれないが。
先に下りてきて待ち構えよう、というのもなかなか無理のある話だとは思う。
それに、ランタンを持っている今の状況は自ら場所を教えている危険な状況でもある。
高原の言う「見えた人間」に早く接触して、灯台の中に引き込む。
……この時点でも十分危ないのだが、もう四の五の言っている状況ではない。
これで「見えた人間」が殺し合いに乗っていようものなら……。
こうはなって欲しくない。
そんな考えを持っているときは大概そのなって欲しくない展開が待っている。
ならばなって欲しくない展開を逆に望めばその展開を避けられるか?
そんな考えを持とうものなら「待ってました」と言わんばかりに用意されたシナリオが舞い降りてくる。
つまり、神がいるのだとすればとんでもなく性根の曲がったクソ野郎だということだ。
時に、今神がいるとすれば。考えている事の更に上の最悪のシナリオを用意してくる。
性根どころか存在が曲がったクソッタレ野郎だということだろう。
「避けろ高原!」
突き刺さる数発の稲妻をなんとか避けきる二人。
咄嗟に出た言葉はそれだけ、それだけで動ける高原はさすが現役格闘家といったところか。
ただ、完璧な回避動作を取る事は出来ず高原はランタンを落としてしまった。
稲妻が焦がした平野に高原のランタンが落ち、わずかに火が立つ。
「高原、どうやら俺たちは」
言葉が途中で途切れる。立て続けに襲ってくる稲妻を避けるのが今は精一杯だからだ。
わずかに出来た時間の間にランタンを置いておいた。二人ともランタンを無くしては今後の夜に差支えが出る。
それに、持ったまま稲妻を避けても格好の餌になるだけ。稲妻を避ける程度ならランタンが無くとも何とかなる。
現状は襲撃者はこちらの大体の位置を把握しているが、こちらは襲撃者の位置を把握できない。
その上襲撃者は魔法を心得ているか魔法を使う手段がある。遠距離攻撃が出来る分こちらが圧倒的に不利だ。
こちらも位置さえ分かれば手段がない事はないのだが……。
「ああ、だが、それならそれで話は別だ。まず姿も見せずに襲ってきてるクソ野郎をぶっ潰す!」
高原、マッシュの両名が周囲へと気を集中させる。
そして、灯台の光が高原たちの目の前をゆっくりと照らし出していく。
「見えた!!」
その高原の声に振り向いたとき、既に高原の姿は無かった。
灯台を駆け下りたときよりも早く、一陣の風を残しどこかへ向かって走り去ってしまった。
先ほど言っていた人影をもう一度確認したのだろうか?
それが襲撃者の正体だったならば、高原の後を追うべきなのだろう。
「……おかしい」
マッシュの頭の中に疑問が浮かび上がる。
何がおかしいのかは分からないが、何かがおかしい。
今起こった全ての事象を頭の中でもう一度整理する。
襲撃者はどこにいるのか? 雷はどこから来たのか?
高原が指差した方角はどちらだったか? 高原はどちらに走り去って行ったのか?
マッシュの中でそれらが結び付いた時には、何もかもが遅かったのかもしれない。
「高原! 違う! そっちじゃ――――――」
叫びは、届かない。
パリンと、何かが割れる軽い音。
高原がランタンを落とした場所から閃光が走る。
白一色に視界が染まり。
マッシュは意識を、手放した。
高原は何を見たのか?
灯台が照らし出す一瞬だけの視界に、高原は黒髪の青年を確かに見たのだ。
高原が見た人影は一人だけ、そう一人だけだった。
そして青年=襲撃者と結びつけるのは簡単なことだった。
高原が人影を見た瞬間、その人影が身を翻したことだ。
高原はそれを「姿がバレたから逃げた」と認識し、襲撃者だという結論に達した。
走り出して間もなく、後ろで爆発音がした。
「マッシュ!」
咄嗟に振り返り短く叫ぶが返事はない。
恐らくは姿を見られた襲撃者がさっさと始末をしてしまおうと大体の位置に爆発を巻き起こしたのだろう。
爆発は凄かったが、マッシュはあの程度の爆発で死ぬ人間ではないとは思っている。
一刻も早く襲撃者をぶちのめし、マッシュの下へ帰る。それが一番の策。
襲撃者らしき人物を視界に捕らえた。更に加速し、距離を一気に詰める。
追っていた人物も高原に気がついたようで、咄嗟に振り返り剣を振る。
高原の気迫を感じての護身の為の行動だったのだが、それが高原の中で「襲撃者」であることを決定付けた。
剣を避けきった後、高原はファイティングポーズをとり襲撃者と向き合う。
それと同時に、襲撃者も剣を構えこちらへと向き合う。
「一つ聞く、何で俺たちを襲った?」
高原の落ち着いた声に、襲撃者の眉がわずかに動く。
「……何を言ってるんだ? 僕が君を襲っただって?」
襲撃者は答えた、「知らない」と言わんばかりに。
「そうか、分かったぜ。お前がそう言うなら……」
大きく息を吸い込み、高原は言葉と同時に駆け出した。
「ぶっ潰す!!」
襲撃者と決め付けられたイスラも動く。
とにかく、目の前の男の誤解を解くにしろ何にしろ。
まず、黙らせる。
【H-2 平野南部 一日目 早朝】
【
イスラ・レヴィノス@サモンナイト3 】
[状態]:健康。
[装備]:魔界の剣@ドラゴンクエストⅣ 導かれし者たち
[道具]:不明支給品0~1個(本人確認済み)、基本支給品一式(名簿確認済み) 、ドーリーショット@
アークザラッドⅡ
[思考]
基本:首輪解除と脱出を行い、魔王オディオを倒してアズリア達を解放する。
1:目の前の男(高原)に対処、危険分子であるなら排除。
2:首輪を解除する為に必要な道具または施設を求めてI-1へ向かう。
3:途中危険分子(マーダー等)を見かけたら排除する。
4:極力誰とも会わず(特にアズリア達)姿を見られないように襲われたり苦しんでいる人を助けたい。
[備考]:
※参戦時期は16話死亡直後。そのため、病魔の呪いから解かれています。
【高原日勝@
LIVE A LIVE】
[状態]:全身にダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:鯛焼きセット(鯛焼き*4、バナナクレープ*6、ミサワ焼き*4、ど根性焼き*2)@LIVEALIVE、
死神のカード@FF6、基本支給品一式(名簿確認済み、ランタンを紛失)
[思考]
基本:ゲームには乗らないが、真の「最強」になる。
1:襲撃者(イスラ)をぶっ潰す。
2:オーラキャノンの習得……できるのか?
3:武術の心得がある者とは戦ってみたい(特に
レイ・クウゴ)
4:
オディ・オブライトは俺がぶっ潰す(?)
[備考]:
※マッシュの仲間把握済。
※ばくれつけんを習得。 オーラキャノンの可能性については後述の書き手さんにお任せします
舞台は用意されていた。
一人の男のために。
幸運は待っていた。
一人の男の事を。
なにもかも、なにもかもが。
一人の男の考えどおりに動いた。
なにもかも、なにもかも。
ビジュが考えたのはサンダーブレード振ることによって起こる雷による牽制。
本来はこの牽制の雷から一気に詰め寄り切りかかるつもりだった。
この暗闇の中、灯台をつけた上にランタンを携帯しているアホどもに一気に斬りかかるために。
だが、その雷は思わぬ結果を呼んだのだ。
アホどもの片方がランタンを落とし、小さな火が立った。
直感的にデイパックの中にあった「ガスのつぼ」へと手が伸びた。
幸運はまだ終わらない。
突然、一人が急に駆け出し始めた。
場所がバレたのだと思い咄嗟に剣を構えるが、こちらに向かってくると思いきやそんな気配はまったくない。
何もかもが上手く行き過ぎて笑いがこみ上げてくるが今は我慢する。
そして、巻き起こった火に向けて勢いよくガスの壷を放り投げる。
軽い音と共に爆発音が鳴り響く。
爆発の規模はそれほどでもないが、結構な威力を誇っているはずだ。
笑いが、こみ上げてくる笑いが止まらない。
気を失った青年の目の前に来たとき、笑いの感情が頂点を迎えた。
「フフフッ、ハハハハッ、ハァッハッハッハッハッハァーーーーーー!!」
片手で顔を抑えながら高笑いするビジュ。
数分間の高笑いの後、ビジュはゆっくりと剣を真上に振り上げ。
「死ね」
青年の首めがけて一気に振り下ろした。
振り下ろした?
「ッ……誰だァ?!」
いや、振り下ろせなかった。
自分が先ほどまで操っていたのよりも鋭い雷がその身に襲い掛かってきたからだ。
ビジュは咄嗟に飛び退き、辺りを見渡す。
「人殺しの悪党に名乗る必要は……」
視界の先の赤髪の少年はモップを構え、倒れた青年をかばうように言う。
「無い」
それが、もう一つの戦いの始まり。
【I-2 灯台付近 一日目 早朝】
【ビジュ@サモンナイト3】
[状態]:軍服黒焦げ、全身に熱の余波による軽度のダメージ
[装備]:サンダーブレード@FFⅥ
[道具]:基本支給品一式
[思考]
基本: 皆殺し(アティ、
アリーゼ、
ちょこ、アナスタシア、弱者を優先的に)
1:赤髪の少年(
クロノ)を殺す、その後倒れてる青年(マッシュ)も殺す
[備考]
※参戦時期は不明。お任せします。(ただし、死亡前です)
※ちょこやオディオ他を召喚獣だと思っています。
【クロノ@
クロノ・トリガー】
[状態]:疲労(中)、半乾き。
[装備]:モップ@クロノ・トリガー、魔石ギルガメッシュ@
ファイナルファンタジーVI
[道具]:基本支給品一式(名簿確認済み) 、
トルネコの首輪
[思考]
基本:打倒オディオ
1:軍服の男(ビジュ)と戦う。
2:打倒オディオのため仲間を探す(首輪の件で
ルッカ優先、
ロザリーは発見次第保護)
3:魔王については保留
[備考]:
※自分とユーリルの仲間、要注意人物、世界を把握。
※参戦時期は魔王が仲間になっているあたり(蘇生後)、具体的な時期は後の書き手さんにお任せします
※オディオは何らかの時を超える力を持っている。その力と世界樹の花を組み合わせての死者蘇生が可能。
以上二つを考えましたが、当面黙っているつもりです。
【
マッシュ・レネ・フィガロ@ファイナルファンタジーVI】
[状態]:全身にダメージ(特大、詳細は不明)、気絶
[装備]:なし
[道具]:スーパーファミコンのアダプタ@現実、ミラクルショット@クロノトリガー、表裏一体のコイン@FF6、基本支給品一式(名簿確認済み)
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:首輪を何とかするため、機械に詳しそうなエドガー最優先に仲間を探す
2:高原に技を習得させる(?)
3:ケフカについてはひとまず保留
[備考]:
※高原の仲間を把握済み。
※灯台は現代にあるような無人灯台です。
※灯台の明かりの種類は他にもあるようです。主催によって使いやすい設計に。
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最終更新:2010年06月28日 21:04