花園に潜む魔物 ◆rfP3FMl5Rc



きゃっきゃ、きゃっきゃと、少女達の楽しげな声が花園に木霊する。
事情を知らぬ者が見れば、それはさぞや微笑ましい光景だろう。
背の高い方、艶やかな黒髪を風に靡かせるがままにしている少女は、
できたばかりの花で編まれた輪飾りをもう一人の人物の首にかけてあげ、ご満悦だ。

「えっへん。思ったとおり、ゴゴさんにぴったり!! 似合うよー」

清楚な外見に反し、ぽややんとした笑みだったが、そこがまた可愛らしいところでもある。

「ありがとー、ビッキーちゃん! じゃあ、わたしからも、はい!」

花の冠と共に返って来た声は、不思議なことにビッキーと呼ばれた少女に瓜二つ。
双子かと一瞬首を捻りがちな程だが、その容姿は似てもつかない。
なのに。
その声は、その雰囲気は。
共に語らい笑い合う少女のそれそのもの。
けれども。
どんなに物真似が生き甲斐でも、ゴゴにはゴゴ自身の心もある。

できればそう、人が多い場所に行きたいとゴゴは思う。
このまま花園で草花のまねをし続けるのも悪くはない。
自ら動くことはないと言われる植物も、時の経過とともに移ろい行く。
何も春夏秋冬といった大きな区別の中でのことではない。
朝、日が射せばそちらに向いて花弁を伸ばし。
昼、絶頂を迎える陽光に歓喜し葉を震わせ。
夕、陰る世界の中その身を休ませ。
夜、光なき闇を背に眠りにつく。
存在する限り変化しないものはない。
故に物真似道に終わりはなく、ゴゴの生の試みは時と場所を選ばない。
……本来ならば。
困ったことにこのバトルロワイアルと呼ばれる催しには時間制限がある。
例えゴゴが最後まで生き残ったとしても、優勝者は元の世界に返されるという。
ゴゴはこの場でも物真似をして過ごすと決めた。
その最後が死か優勝か、はたまた他の結末か。
神ならぬ身ではわかりはしない。
が、一つだけどの最後でも変わらないのは、遠からずこの地を離れるということ。
ビッキーが言うには、あのオディオという男はテレポートを使って自分たちを集めたらしい。
時間をも越える可能性がその能力にはあるとか。
しかも、ビッキーはその力で時をも超えれるという。
彼女の話に出てきた反乱軍や都市同盟のことをゴゴは全く知らないことも踏まえれば、自分と彼女は違う時代の人間、
もっと突飛もない考えだと別世界の人間かもしれない。
ビッキーだけではない。
もしかすれば、この島には、様々な時間や世界から集められた人や物が集っている可能性さえもあるのだ。
この機を逃せば会うことも難しい者達がだ。
そう考えるゴゴの心がじわじわと焦がれてくる。
もっともっと島を動き回って色んなとこを見たい。多くの人と会いたい。
かって打倒ケフカの旅についていったのにも同等の打算もあった。
ティナ達はあの荒廃した世界で唯一の飛行手段を保持し、世界を巡り歩いていた。
一人一人が個性があり、人数も多く、真似し甲斐もあった。
まさに一緒に旅するにはうってつけの人材だったのだ。
一通りは真似しきった人間達だが、さて、普段とは違う環境に置かれた今、彼らもまた別の一面を見せてくれるだろうか?
楽しみだ。
無論、まだ見ぬ者達も興味深い。
未知とはそれだけで尊いものだ。
想像もしえなかった性格や外見、行為を行う者と出会い、彼らの真似をし尽くすことを想像するだけで胸が躍る。
遂に誘惑にゴゴは耐えきれなくなった。
だからこそ、珍しいことに物真似では無く、ゴゴは自らの言葉をもってビッキーに提案した。

テレポートの力で人の多い所に連れて行ってほしい、と。

瞬きの紋章。
ビッキーが宿すその紋章の効果は所謂テレポート能力だ。
まさに、この場所から逃げ出すにはうってつけと言えよう。
しかし不安なのは首輪だ。
孤島外は最初から進入禁止エリアなため、外部に転移したところで即爆死しかねない。
ただ、ここで一つ疑問が生じる。
ビッキーのテレポートは普通のそれとは趣を違えている。
彼女は意図してではなく、偶発的にこそあるが、時間転移すら使える紋章術師なのだ。
その跳躍範囲もまたべらぼうに広い。
果たして魔王は時間的にも物理的にもそれほどまでの広域を支配下においているのか?
人によってはこのことから、考察を進めたかもしれない。
しかし、そこはビッキー。

「なんだー。そーゆーことなら、わたしにお任せだよー」

がさごそと取り出したるは一枚の地図。
ちなみにこの二人、マイペースに物真似したり遊んでたりしたため、地図に目を通すのは今が初めてだったりする。
というか、未だに何も決めていないし、支給品すら見ていないのだが、それは置いておく。

すぐにビッキーの目についたのは一つの施設。
お城だ。
ビッキーが直前まで関わっていた戦争でも実に100を超える人物が、都市同盟のリーダーであるリオウのもとに集っていた。
似たような戦いを他にも経験したことのあるビッキーには、お城=人の集まるところという印象ができあがっていたのだ。
よって当然ビッキーが定めた目的地はそこ。
地図上には城は二つあったが、本拠地として居候していたサウスウインドと対を成している北の城に縁稼ぎ込みで跳ぶことにする。

「きっとごちそうも待っているー!」
「うん、そうだねー!」

ついでに、宴会での御馳走を食べようとした途端に、この地に飛ばされた悔しさからの未練もほのかにあいまっていたりする。
そんな主の意を受けて輝きだす紋章から、ゴゴは眼を放さない。
ビッキーの特技だというテレポートを実体験しておくことは、物真似をするにあたってこの上ない資料となるからだ。
じゃー、行くよー、と息巻いて答えビッキーは

「えええーーーーーーいっくしゅん」

小さなくしゃみをした。
途端二人の視界が激しくぶれる。
いや、はたまたぶれているのは世界のほうか。
果たして、鬼が出るやら蛇が出るやら。
天に舞うやら、地に落ちるやら。
転位どころか召喚すらし兼ねないのが、ビッキーのテレポート失敗時の現象で。
その中でも特にひどい事態を起こしかねないトリガーを弾いてしまったのだから。

それでも、一つ分かっているのは。
今回の下手人が何かということくらいだ。
彼女たちの現在地は、E-9 花園。
周りには色とりどりの花々、一面まさにお花畑。
だからまあ。
花粉が山ほど空気中に含まれているのは当たり前のことで。
ビッキーがくしゃみをしてしまったのも仕方のないことだったのだ。

「あれ? あれ? あれれ??」

光に包まれ行く中、可愛らしく小首を傾げるビッキー。
傍らのゴゴも何が起きたかを理解できてはいないがのだが、とりあえず

「ひくちゅ」

物真似の手始めにくしゃみをしてみるのであった。




【E-9 花園? 一日目 深夜】



【ビッキー@幻想水滸伝2】
[状態]:健康
[装備]:花の頭飾り
[道具]:不明支給品1~3個(未確認)、基本支給品一式
[思考]
基本:決めてない。どうしよう。
1:ゴゴとお友達になりたい。
2:お城にゴー!
[備考]
参戦時期はハイランド城攻略後の宴会直前



【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:ビッキーの物真似中、健康
[装備]:花の首飾り
[道具]:不明支給品1~3個(未確認)、基本支給品一式
[思考]
基本:数々の出会いと別れの中で、物真似をし尽くす。
1:ビッキーの物真似をする。
2:人や物の多い場所に行ければいいな
[備考]
参戦時期はパーティメンバー加入後です。詳細はお任せします。


※北の城にテレポートしました。
 が、くしゃみをしたことで何らかの影響があるかもしれません。
 目的地が違う、自分は跳ばずに何か・誰かを呼び寄せる、1時間先くらいに跳ぶ等。お任せします。
 オディオの制限で、会場外転移や、大幅な時間転移はないかと。過去には跳べません。


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ビッキー


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最終更新:2010年06月26日 20:37