三人でいたい ◆iDqvc5TpTI
甘かった。
変わった帽子を被った女の子から引き離しつつ逃げ切るだなんて、あの
ルカ・ブライト相手にできるはずがなかった。
燃え残っていた木々を盾にしようにも、次の瞬間には炎を纏った剣の一振りで全て切り倒されていた。
前回戦った時も確かにわたし達の3倍くらい早かったけど、こんな瘴気の刃を発する技なんて見た覚えがない。
ルカ・ブライト。
運よく手に入った情報から導き出した
シュウさん必死必殺の策で、不意打ちした上に18人がかりでやっと倒せた敵。
それをわたし一人でどうこうしようとするのは不可能なくらい分かってる。
ほら、今だってリオウの真似をしてトンファーを回転させて剣を受け流そうとしたけど上手く行かずに失敗しちゃった。
痛い。
斬られた左腕を熱が伝い、一瞬後に感覚がなくなる。
痛い。
胴に繋がってはいるものの、一部炭化した腕は言うことを聞いてくれなくなった。
痛い。
回復しようにも水の紋章が刻まれているのも左腕で。
痛い。
手放したくなかったのに落としてしまった左の天命牙双は、地を転がっていく。
痛い。
焼け斬られたおかげで出血が止まったのがせめてもの幸いだと思い込む。
痛い。
どれだけ痛くても、残るもう一方だけは離しはしない。
だいじょうぶ。
だいじょうぶだから。
だいじょうぶだよ!!
わたしはいつでも元気だもん。
天命牙双を構えながら繰り返すのは、何度も何度も自分自身に言い聞かせてきた言葉。
大切な弟と大切な友達が――リオウとジョウイが戦うのが悲しかった。
そして、リオウが傷つくのが嫌だった。
闘って、傷付いて、武器を振るって、人を殺めて。
その度に本当は悲しいのに、決して表に出すことなく笑顔を浮かべている彼を見るのが辛かった。
どうして?どうしてリオウなの?
何度も、何度も、心の中で天へと訴えた。
わかってる。理由は痛いほど身に染みている。
ゲンカクじいちゃんが都市同盟の英雄だったから。
輝く盾の紋章をその手に宿していたから。
何よりも、リオウは誰よりも優しかったから。
幼いころはそのことが自慢だった。
わたしの弟は優しくて強いんだって無邪気に誇ってた。
でも、いつからだろうか。
その優しさが、怖くなった。
どこか遠くへ連れて行ってしまう気がしたのだ。
会ったばかりの人のために。
さっきまで喧嘩していた相手のために。
時には人でない動物や魔物のためにさえ。
自分の身と心が傷つくことをも厭わず助けようとするリオウを。
人の幸せを願う弟は、自身は幸せにはなれないんじゃないかって。
大丈夫、大丈夫と言い聞かせ、馬鹿な考えだと振り払っても振り払っても、不安は押し寄せてきた。
だからわたしはもう居ないゲンカクじいちゃんに誓ったんだ。
お姉ちゃんは、どこにもでもついていって、絶対守ると。
ああ、なのに。
いったい何をやってるんだろ。
すぐにでもリオウの傍に行ってあげなきゃと思う心を押しとどめて、見知らぬ女の子を助けてる。
リオウのような優しさも、ジョウイのような理想もない。
ゲンカクじいちゃんの技や、
トッシュさんの力にも及ばない。
わたしは、弱い。
でも、でも、でもでもでもでも!
弱いことはいけないことなの?
そうは思えない。
こんなことを思うのはお姉ちゃんとしては失格かもしれないけど。
わたしは強くなくても、優しくなくてもいいから、リオウには幸せになって欲しかった。
助けを求める多くの人を見捨ててでも、リオウには、ううん、リオウとジョウイとわたしの三人で、
ずっと、ずっと、ずっとずっとずううううううう~~~~っと一緒に居たかった!
だったらわたしはどうして二人を探しに行かないで、あのルカ・ブライトに立ち向かっているの?
この島にはトッシュさんが居る。
わたしが、ううん、リオウやジョウイ、
ビクトールさんや
ビッキーちゃんも頑張らなくていい。
あの人なら一人でだって絶対、絶対、ぜえっ~~たっいルカ・ブライトにだってもう一度戦って勝ってくれるんだから。
ふさわしい人が居るなら任せるべきなのだ。
本当は死の恐怖に突き動かされて逃げ出したかった。
すんでのところで拾った命。
戻ってくるあの子を迎えなきゃいけないから捨てるわけにはいかないのに。
見てしまったなら、見捨てることはできなかった。
困ってる人や女の子は助けなきゃねって、リオウに教えたのはわたしなんだし。
それに、何よりも。
声が、聞こえた気がしたから。
忘れもしない大切な弟の泣き声が。
これまでも沢山聞いてきた誰かを救えず嘆くリオウの声が。
バトルロワイアル。
死が隣り合わせな閉ざされた世界。
うん、やっぱりオディオには文句を言いに行かないと。
こんなに狭くて、死者を知らせる放送まであるなんて。
救えずに手から零れた命の死を知らないで済ませることはできないってことで。
ここでわたしが逃げてさっきの子が死んだら、余計にリオウを悲しませることに繋がっちゃう。
わたしは、リオウが傷つくのが嫌。
身体だけじゃなくて、心が傷つくのだって見たくない!
リオウが辛そうなのが、辛いもん。
私は、『お姉ちゃん』なんだからー!!!
再び誓いの言葉を心の中で口にする。
ちっぽけな理由だと目の前の巨悪は笑うかもしれない。
けど、これ以上に自分を鼓舞する言葉は見つからない。
挫けないで居られるのも。みんながみんな、わたしがみんなのお姉ちゃんだと思えばこそ。
だいじょうぶだいじょうぶだいじょうぶだいじょうぶ。
リオウだけに背負わせたりしないから。
みんな、みんな、守ってみせるから。
泣きやんでよ、ねえ……
――そんな小さくも切なる願いさえ、
「さあ、輝け、浄火の紋章よ!!!!」
狂皇子は蹂躙する!!!!
「な、なによ、あれ……っ」
ナナミを助け返そうと追いかけて来た
ルッカは絶句し、目を疑う。
男が不思議な石を掲げると共に現れしはタイムゲートを思わせる黒き歪み。
深淵の底で爛々と輝くは、一切の慈悲を捨て去った一対の碧の瞳。
漆黒の闇を抉じ開けて、甲冑で包まれた巨大な二本の腕が這い出でる。
否。
腕だけではない。
続く胴と一体化した頭部も、強靭な4本の足も、地を叩く長き尾も。
文字通り徹頭徹尾その全身が金の彩色がなされた白き鎧に覆われているのだ。
頭上に光輪を冠したそれは、あまりにも荘厳で、あまりにも破滅的で、あまりにも大きかった。
聖鎧竜スヴェルグ。
強大な悪魔と戦う為に7人の大天使が己の魂を聖鎧に封じひとつとなった姿。
霊界・サプレスにおける最高位の存在にして、召喚師が制御しうるぎりぎりの強大な力。
立っていられるのが不思議なくらい傷だらけな少女に対し放つには過剰すぎる絶対者がそこにいた。
「ふ……ふははははははははははははははははははははははははは!!!
いいぞ、思いの他使える道具だったようだな!!!!」
そう、これはあくまでルカにとっては試射に過ぎなかった。
ナナミと戦いつつルカが見据えていたのは、狼ことトッシュとの再戦。
プライドをも上回る憎悪が、ルカに冷静に思考することを許していく。
敗因の一つである獲物の差はついさっき克服した。
炎の槍は苦い記憶もあり好かなかった上に、本来のルカの武器は剣だ。
殺意を押し付けてくるのが鬱陶しいことに目を瞑れば、この剣はあの男の業物とも十分打ち合える。
ちょっとした術の起動媒体を兼ねているのも面白い。
だが、立ち塞がる壁はもう一つあった。
相性だ。
ルカ・ブライトを最凶足らしめる剣術と紋章術の融合によるいわば、紋章剣。
彼の世界でも類を見ないその絶技だが、どうもトッシュには効き目が薄かった。
恐らく火封じの紋章でも宿しているのだろうと推測する。
加えて、攻撃が通りにくいルカに反して、魔法ではないトッシュの剣術の数々は確実にルカに傷を負わせていた。
言うなればトッシュはルカ・ブライトの天敵なのだ。
その現状を打開する為にルカが選んだのが炎以外の力による戦力の増強。
幸いにも彼には一つ心当たりがあった。
意に沿わぬ物だったとしても、その時は己が手でけりをつければいいと思って使った道具だったが、結果は見ての通り。
連射性・持続力こそないが、一撃の威力なら獣の紋章にも匹敵するだけの力をルカは従えた。
「さあ、手始めに薄汚れた都市同盟の女の魂を清めるのだ、聖鎧竜スヴェルグッ!!!!!!!!」
白亜の竜の両腕が大きく開かれる。
彷徨う子羊を抱き迎えるためではない。
悪魔を、堕落せし人間を葬らんが為に。
「つっ、逃げるわよ!」
動くこともままならないまでに血と体力を失ったナナミにルッカは急いで駆け寄り手を引く。
酷い火傷を追った少女が眼で何で逃げてくれていないのか問いかけてくるも、無視。
見ているだけな無力な自分が嫌で科学を志したからだと喉まで言葉が登ってきているが、今は逃げるのが先だ。
ふらつくナナミを強引に背負いルッカは全速力で歩を進める。
しかし、元々体力があるとはいえない身で自分と大して変わらない体格の人間を負ぶった少女の速度は悲しいほどに遅い。
聞き取れぬ異界の咆哮を伴って左右より迫る巨椀から逃れえるには程遠いものだった。
スヴェルグの掌から紫電が迸り、ルッカ達の行く手を遮る。
前方だけではない。
二人を中心に球状にマナの光が形を成して行く。
まずい。
この光のうちに囚われたら終わりだと悟ったルッカが必死に光の扉が閉まりきる前に抜け出そうとあがく。
あがく。
――閉まる
あがく。
――閉まる
あがく。
――閉まる
あがく。
――閉まる。
あがく、あがく、あがく!
……――閉じた
二人の姿だけでなく悲鳴も想いも飲み込んで、希望の光射さぬ無限牢が完成する。
その光景を見届けていたルカは邪悪な笑みを湛えて叫ぶ。
既に亡きこの力の素たる支給品の持ち主へと。
川原にて惨殺した少女。
他人を生かすために自らの命を捨てた少女。
その優しさゆえに広域を巻き込みかねないスヴェルグを使うに使えなかった少女。
馬鹿な奴だ。
最高位の召喚術をなすのに要した疲労をものともせず、ルカは大声で嘲笑う。
死の間際、沈黙が解けた時になら、至近距離から直撃できたろうに。
「お前は一人の人間を救ったが」
ルカの命に従い、スヴェルグが背にハイロウを展開し、両の手で空間ごと牢を握りつぶす。
世界を焼く極光が晴れた後には、塵一つ残っていない。
「同時に生かしてしまったおれは貴様も含め3人の人間を殺したぞ! まだまだこの先何倍にも増えるがな!!!
ふははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」
降り注ぐ光の雨と空間の欠片に背を向ける。
人という存在より解放された地に、止まる意味はない。
後数分で始まる放送を聞いた後は神殿にでも向かうとしよう。
剣が交わる音の聞こえるがすぐ西にも興味を惹かれはしたが。
それ以上に、神殿にいるであろう人間を殺すことは、邪魔をしてくれたあの男への意趣返しになる。
最悪な人物にまで聞こえていた拡声器の主の悲しむ姿を思い描き、ルカは東へと進路をとる。
――ルカは知らない。その拡声器の主本人も神殿に居ることを
狂王子が去り、スヴェルグも虚空へと消え去った地は漸く一時の平穏を迎える。
取り残された柄が血で滲んだ左の天命牙双だけが、唯一そこに誰かが居た証であった。
【C-7 東部 一日目 早朝】
【ルカ・ブライト@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]疲労(中)、精神的疲労(大)、ダメージ(小)
[装備]皆殺しの剣@ドラゴンクエストIV、魔封じの杖(4/5)@ドラゴンクエストIV 、聖鎧竜スヴェルグ@サモンナイト3
[道具]フレイムトライデント@
アークザラッドⅡ、工具セット@現実、基本支給品一式×3、不明支給品0~2(武器、回復道具は無し)
[思考]基本:ゲームに乗る。殺しを楽しむ。
1:神殿の中にいるであろう人物を殺し、あの男(アキラ)への報復をする。
2:会った奴は無差別に殺す。ただし、同じ世界から来た残る4人を優先
3:あの狼(トッシュ)は自分の手で殺したい。
[備考]死んだ後からの参戦です 。
※皆殺しの剣の殺意をはね除けています。
※召喚術師じゃないルカでは、そうそうスヴェルグを連続では使用できません。
※C-7 東部に天命牙双(左)が転がっています。
――ルカは知らない。断罪の無限牢内に乱入した珍妙な二人組みがいたことを
それは、本当にいくつもの偶然が重なった末の出来事だった。
毎回の如くでたらめな時間、でたらめな場所へと繋がったビッキーのくしゃみ。
サモナイト石が開いた異界への通路に引っ張られたのか、よりによって無限牢内の内側へと二人はテレポートしてしまったのである。
触れただけで消滅を免れない必殺の檻。
いつも通り転移後の状況を理解できていないビッキーだけなら、そのまま犠牲者が一人増えただけだったに違いない。
そうならなかったのはひとえにゴゴが居たからだ。
真似たのだ、転移後すぐにゴゴがビッキーのテレポートを。
それが状況判断した上での行動なら、やはり圧殺される方が早かっただろう。
考えることを要せず、単に息をするように真似をしたが故に、辛くも粉砕される前に牢内の人間全員は牢外へと飛べたのだ。
奇しくも再転位の先はビッキーが最初に目指していた北の城――フィガロ城。
こうして冗談みたいな話だが彼らは助かった。
――なけなしの体力を無限牢に奪われたナナミを除いて
「ちょっと、返事をしなさい! 勝手に助けておいて、勝手に死ぬなんて承知できるわけないわよ!」
深い闇に落ちていた意識が覚醒していく。
薄ぼんやりとしか開いてくれない目が映す世界は、なんだか色あせていてつまらないけど、わたしを揺さぶってるのが誰かはわかった。
ルカに襲われていた眼鏡の子だ。
良かった。
守りの霧、ちゃんと発動できてたんだ。
がんばったかいあったな。
うん、えらい、えらい、わたしの左腕。
でも、でも、でも、どうせなら、土の紋章宿しておけば、わたしも……助かったのに。
「ナナミちゃん! ナナミちゃん、ナナミちゃん!」
続いて聞こえたのは懐かしい声。
知っている人の声だ。
ビッキーちゃん。
明るくて、テレポートが得意で、でも失敗も多くて。
一緒に居るととにかく楽しい子だ。
ああ。そうだ、だめもとで頼んでみよう。
「ねえ、ビッキーちゃん。リオウのとこまでテレポート、して欲しいな……」
「えっ……。ごめん、ごめんね、ナナミちゃん」
困らせちゃって、ごめんね。
うん、どこに居るかも、分からないもんね。
会いたい、会いたいよ、リオウ、ジョウイ……。
朝日に照らされた城壁が見える。
前にジョウイを待った外壁になんか似てると思う。
リオウ、ジョウイ、わたしはここだよ?
帰ってきてよ。
ずっと、ずっと、ゲンカクじいちゃんの家で待ってたんだよ?
二人が揃って帰って来てくれる日を夢見て。
二度あることは、三度あるって期待して。
「だめ、目を瞑っちゃだめ!」
「なんの、なんのためのサイエンスよ! 私はまた何もできないの!?」
声が、遠くなる。
三人でいたい。
それだけなのに、叶わないのかな。
叶わない、よね。
そんな幸せなことが起きるくらいなら、あの二人が争うことなんてあるはずないもん。
目が、重たくなってきちゃった……。
「ナ……ミ、ナナ……、……ナナミ!」
ほら、ね。そんなに、上手く、い、くわけ……え?
うそ?
うそ、うそ、うそ、うそ、うそ!!
目は碌、に見えな、くて、耳もよく、聞こえ、ないけど、この雰囲、気はもし、かしてリオウ?
「ナナミちゃん、ひっく、もう一回くしゃみしたら呼べたよ、リオウさん」
「くしゃみって、なによ、それ、非科学的、すぎる、じゃない……」
帰って、きた。
帰ってきて、くれた!
リオウ。リオウ、リオウ!
ごめんね、リオウ。
おねえちゃん、リオウの昔っから使ってる武器、片方落としちゃった。
でも大丈夫。
もう片方は何とか守り抜いたから。
ほら、受け取ってよ。ね、ね、ね。
「いいから。武器なんていいから。少し休もう」
だめ、駄目だよ。
お姉ちゃんは、だい、じょうぶ、だいじょう、ぶだから。
いつかのように、もう少し一緒に待とう。
ジョウイは、ちゃんと帰っ……てくるよ
朝……弱いから、きっと寝坊して、るだけ。
帰りを……待って、いてくれている、誰かがいないと、拗ねちゃう、よ。
あ、れ? なんだか、眠く……。
リオウの、寝坊に加えて、ジョウイの……朝の弱さまで、うつっちゃった、のか、な。
「ぼくがナナミの代わりに待つから。ちゃんと、ジョウイが来たら起こすから」
い、っしょ。代わりにじゃなくて、一緒に、まと。
うん、わかってくれたんだ、ね。
じゃあ、お姉ちゃん、少し眠るけど、だいじょうぶ、だから。
あ、その前に、一つ、忘れ、てた。
「ちょっと、だけ、おねがい……」
うん、うんうん、うんうん。
お願い、聞いてくれて、ありがとう。
やっぱり、わたし、ゲンカクじいちゃんの子どもで、よかった。
リオ、ウのお姉……ちゃんで、よかった。
ジョ、ウイと友達で、み、んなといっしょで……
……に……会……て……よかっ
【ナナミ@幻想水滸伝Ⅱ 死亡】
【残り44人】
リオウは合わせていた手を解き、頭を上げる。
後悔に駆られ無力さを嘆く時間も。
哀惜の念に堪えかねず死者を惜しむ時間ももうおしまいだ。
彼の前には小さな墓。
間に合わなかった彼にできた精一杯のこと。
こうしている間にも、他に苦しんでいる人がいるかもしれないと理解しつつも、作らずにはいられなかったけど。
穴を掘るのに適した道具もなく、随分と手間取ってしまった。
それは優しさ故なんかじゃない。
多分、誰よりも、自分の心を鎮めたかったから。
負けないという意思を挫かれたくなかったから。
「ぼくは……行くね」
目的地は決めてある。ここから一番近い施設。
アナベルやキバ将軍達の時と同じく、亡くした者の意思を継いでリオウは再び歩き出す。
リオウを見送るように朝日に照らされ光を帯びる墓石代わりの石には一つの名前が彫られていた。
――少年は"二度”間に合わなかった
ナナミが死んだのは、リオウが雪原に足を踏み入れた頃のことである。
【B-3 雪原 一日目 早朝】
【リオウ(
2主人公)@幻想水滸伝Ⅱ】
[状態]:健康
[装備]:閃光の戦槍@サモンナイト3
[道具]:魔石『マディン』@ファイナルファンタジーⅥ、、基本支給品一式
[思考]
基本:バトルロワイアルに乗らず、オディオ打倒。
1:信頼できる仲間を集める。ジョウイ、ナナミ、ビクトール、ビッキーを優先。
2:ルカ・ブライトを倒す。
3:首輪をなんとかしたい。
4:エイラが残した『黒』という言葉が気になる
[備考]:
※名簿を確認済み。
※参戦時期は獣の紋章戦後、始まりの場所へジョウイに会いに行く前です。
「ごめん、ビッキー。ダメだった」
「ううん、ぐすっ。いいの……。ありが、えう、とう、ゴゴ……」
ナナミの最後の言葉に応え、リオウじゃないと気付かれてしまった俺はビッキーに振り返る。
死に瀕したナナミの為にリオウの真似をして欲しいと頼まれた時、俺は少し悩んだ。
俺はリオウという男に会ったことがない。
ビッキーが世話になったというその青年のことは聞いてはいたが、それはあくまでもビッキー視点のリオウ像だ。
無意識な面も含め、脚色され、本物とは異なるとこが多々あるのは想像に易い。
そんな虚像を、虚像としてでなく本物のリオウとして真似るのはどうも気が退けた。
俺自身の信条もある。
誰の物真似をするかを俺以外に決められるのはあまり好きではない。
……ないのだが。
その時の俺はビッキーの真似をしていた。
俺と友達になりたいと思っている少女の真似をだ。
困った。
つまりそれは、ビッキーの真似をしている俺も彼女の友達として振るわねばならないということだ。
世界を救おうとするティナ達と旅した時も、一度、似たようなことがあった。
崩れ落ちる瓦礫の塔から脱出しようとした時、セッツァーにセリスの真似をしろと対象を指定されたのだ。
俺を仲間として扱う彼らの真似をしていた俺に。
結局今回も俺が至った結論はあの時と同じだった。
友達を助けるのは友達にとっては当たり前のことなのだから。
まあ、やはり失敗してしまいはしたが。
悔しい。
いつか、本物のリオウに会って真似しきりたいものだ。
「ナナミちゃん、せっかく、せっかくまた会えたのに……」
「私がついていながら……! 回復アイテムの一つでも入れておきなさいよ!」
ビッキーが泣いている。
知り合いだったらしい。
ルッカも泣いている。
助けてもらったそうだ。
なら、俺はどうだ。
俺はこの少女、ナナミとは一切縁がない。
泣いてやる義理も、涙する理由もない。
けれども、俺は今リオウだ。
どんなに下手でも、どんな理由でも、一度始めた物真似はやり通そう。
俺が真似することなく逝った少女を惜しみ、涙を流そう。
俺に出会えてよかったと言ってくれた少女のために。
――ちょっとだけ、おねがい……。ねえ、ねえ、ねえ、寝る前に教えて。あなたの、名前
俺は、ゴゴ。物真似師だ。
【A-3 北の城(フィガロ城) 一日目 早朝】
【ビッキー@幻想水滸伝2】
[状態]:健康、悲しみ、大泣き
[装備]:花の頭飾り
[道具]:不明支給品1~3個(確認済み。回復アイテムは無し)、基本支給品一式
[思考]
基本:決めてない。どうしよう。
1:ナナミちゃんが、ナナミちゃんが……
[備考]
参戦時期はハイランド城攻略後の宴会直前
【ゴゴ@ファイナルファンタジー6】
[状態]:ビッキー視点のリオウの物真似中、健康
[装備]:花の首飾り
[道具]:不明支給品1~3個(確認済み。回復アイテムは無し)、基本支給品一式 、天命牙双(右)、
ナナミのデイパック(スケベぼんデラックス@
WILD ARMS 2nd IGNITION、基本支給品一式)
[思考]
基本:数々の出会いと別れの中で、物真似をし尽くす。
1:しばらく泣く
2:人や物を探索したい
3:本物のリオウに会ってみたい
[備考]
参戦時期はパーティメンバー加入後です。詳細はお任せします。
【ルッカ@
クロノ・トリガー】
[状態]:わずかながらの裂傷、疲労(中)、悲しみ
[装備]:オートボウガン@
ファイナルファンタジーVI、17ダイオード@
LIVE A LIVE 、サラのお守り@クロノトリガー
[道具]:なし
[思考]
基本:首輪を解除する、打倒オディオはそれから。
1:ナナミ……
2:あの男(ルカ)はどうにかしないと
3:
ミネアと
アリーゼを探したい。
4:改造、首輪解除するための工具を探す。オートボウガン改造したい。
5:どこかで首輪を探す。
6:オートボウガンに書かれていた「フィガロ」の二人を探す(マッシュ、エドガー)
7:
クロノ達と合流、魔王は警戒。
8:17ダイオードの更なる研究 。
9:魔王に『お守り』を返す。
[備考]:
※バイツァ・ダスト@WILD ARMS 2nd IGNITIONを使用したことにより、C-8東側の橋の一部が崩れ去りました。
※参戦時期はクリア後。 ララを救出済み。
※C-9の中心部にルッカの基本支給品一式入りデイバッグが放置されています。
※機界ロレイラルの技術の一部を解明し、物にしました。
時系列順で読む
投下順で読む
最終更新:2015年04月25日 20:16