『闇の帝王(グリンデルバルド)』
(キャラ) 平賀才人、ターボババア、ゲラート・グリンデルバルド
「ここ、日本………だよな。ハルケギニアじゃねーよな……」
頬を何度か抓ってみる。
最初に目を覚まして、懐かしい日本の教室にいた時は夢を見てるんだと思ってた。
森口っておばさんに殺し合いをしろ、命の授業だ。何て言われたからなおさらだ。
でもこうして知らない島で目を覚まして。
ハルケギニアじゃまず見ない建物が並び立ってるのを見ると、どうやら夢じゃないらしい。
間違いない。
虚無の魔法使い(メイジ)ルイズに異世界ハルケギニアに召喚された俺、平賀才人は今日本に帰ってきている。
その経緯はどうしようもなく最悪だったが。
『全くとんだ里帰りになったもんだね、相棒』
「言うなデル公、悲しくなってくる」
目が覚めた時、傍に遭ったデイパックに入っていた相棒、デルフリンガーに相槌を打つ。
どうやらこいつも連れてこられていたらしい。
適当に何か武器はないかと探って、先ず引き当てたのがこいつだった。
森口っておばさんの事、何か知らないかと尋ねてもこいつも俺と同じで寝て起きたらここにいたとの事だ。
何の情報も手に入らなかったのは残念だけど、1人じゃなかったのは心強いから良しとしよう。
『それで相棒、ガンダールヴの力でもおまえさんの首に嵌められてる火薬についちゃ何も分からねぇのか?』
「………あぁ、お前に触るとルーンは反応するけど……
首輪に関してだけはチカっとも光らねぇ。くそっ、一体どうなってんだ」
ルイズとの契約で貰った、どんな武器でも扱えるって言うガンダールヴのルーン。
それを使えば、今首に嵌められて俺の命を握ってる首輪の事も分かるんじゃないかって、そう思った。
爆弾だって、相手を殺すための武器だからな。上手くいけば中の構造まで分かると踏んでた。
でも、俺の期待を裏切って首輪を触ってもガンダールヴのルーンは反応しなかった。
どうやら、対策されてたらしい。無駄に準備の良い真似しやがる。
「ッと待てよ、ルイズの奴もここに連れてこられてんじゃ…」
取り合えず自分の状況を確認してから、真っ先に思い浮かべるのは俺をハルケギニアに召喚した張本人。
虚無の魔法使い(メイジ)で、一応俺の御主人サマの女の子の事だ。
俺みたいに、ただ異世界に連れてこられただけでもヤバいのに、殺し合いなんてとんだ歓迎会の真っただ中。
パニくって危ない相手に自分から喧嘩売っててもおかしくない。あいつ成績はいいらしいけど大分ポンコツだし。
それを想像すると、こうしちゃいられない。取り合えずルイズがいないかどうかだけでも確認しねぇと。
そう思ってデルフを握って駆けだそうとした、その時だった。
がさっ
今いるアスファルトで舗装された道路の脇にある生垣の陰から。
何かが動いて物音を立てるのを、俺は聞いた。
直ぐにデルフを構えてゆっくりと近づいてみる。油断はしない。
生垣の大きさ的に多分人間じゃない。動物か何かだとは思うけど……
それでも人っ子一人いない。今まで歩いてても鳥や虫一匹も見ないこの場所で初めて出会う動物だ。
念のため確認して起きたかった。
がささっ!がさっ!
生垣の陰にいた影の持ち主も、俺が気づいた事に気づいたらしい。
特に逃げる様子も見せず、生垣から出てくる。堂々と。
そしてそいつの姿が街灯に照らされて…ようやく俺の目にも見える様になった。
現れたそいつの姿は…俺も良く知っている動物ではあったけど、どう考えても色々おかしい奴だった。だって。
「………招き猫?」
普通の猫じゃないことは、一目見ただけで分かった。
だって二足歩行してるし、どう見てもぬいぐるみっぽい。
ギーシュが作る青銅のゴーレムみてーな、誰かが魔法で作った代物なんだろうか。
でも何でこんなとこに?それに、俺につけられてるのと同じ首輪をしてる…?
首を捻りながらふらふらと、俺はそいつに近寄ってみる。
その時の事だった。
ど
か
ッ
!
俺の顔面に、招き猫の無駄に勢いのある蹴りが突き刺さった。
完全な不意打ち。たまらずもんどりうって、ぶっ飛ばされる。
道路をゴロゴロ転がりながら今俺を蹴っ飛ばした張本人?張本猫の方をみると、奴は腕組みをして。
「ワシにガン飛ばしてんじゃねぇぞ、クソだらぁ」
無駄によく通る声で、俺にそういった。
●
現れたのはとんでもねークソ猫だった。
態度は無駄にデカいし、自分の事を大妖怪ターボババアとか何とか言ってやがる。
何で招き猫が妖怪でババアなんだよ、行灯の油でも舐めてろっての。
そう言ったらもう一発蹴りやがった。
「……で?その大妖怪ターボババア様が俺に何の用だよ?」
「オメェさっきこのクソだらぁな首輪の事が分かるかもしれねぇっていってたろ。
わしゃITにはさっぱしだからよォ、ワシの代わりにお前がこれ外せるなら殺さないでやってもいいぜ」
妖怪がITとか言うなよ。
ターボババアの話を聞いてまず思ったのがそれで。
次に思ったのが態度がデカすぎるだろこの招き猫、だった。
少なくとも、人に物頼む態度じゃねぇ。
「ふざけんな。人の顔にドロップキック食らわせたドラ猫の頼みを聞いて俺に何の得があんだよ」
「得、ねぇ……」
却下したらこのクソガキが!とか言いながら襲い掛かって来ると思ってたけど。
予想に反してババアは目を細めてニヤケながら俺を見上げてくる。
そのムカつく表情に何だよその顔は、と言おうとした時だった。
ババアのシルエットが突然ブレて。
「は?」
ど
か
ッ
!
俺の脛に、またドロップキック。
ガンダールヴのルーンが働いてない状態の俺には目にも止まらぬ速さだった。
「痛ってぇ!?」
不意打ちの衝撃と脛の痛みに思わず後ろに足がもつれて。
二歩、三歩倒れはしないまでも体がよろめく。
いきなり何しやがる。そう思ったのとほとんど同時だった。
「───アダバケダブラ<息絶えよ>」
緑色の光が、俺の丁度肩の数センチ先を駆け抜けていった。
何だ、と思うよりも早く。
背中のデルフが俺に向かって叫ぶ。
『構えろ相棒!今のはヤバいぞ!』
その言葉に反射的に手が背中のデルフリンガーの柄に伸びる。
掴むと同時にルーンの光が輝いて、意識が研ぎ澄まされていく。
ただの男子高校生平賀才人から、伝説の使い魔ガンダールヴへと変わる。
タッチの差だった。あと一秒遅かったらデルフが血相を変えて(どこか顔かよく分かんねーけど)ヤバいという魔法を喰らっていただろう。
そう思いながら地面をゴロゴロと転がって、追撃の魔法を躱す。
そして、転がった先でデルフリンガーを抜きながら、俺は魔法を撃った相手をここで初めて見る。
「……魔法使い(メイジ)、か」
魔法を撃ったのは、ふざけた化け猫招き猫じゃなかった。
視線の向こう、二十メートル程先に立っていたのは金髪の男。
杖を構えて、メイジであるのは一目で分かった。それも、多分ただモンじゃない。
デルフの柄を握り締めながら、俺は現れた男に「誰だアンタ」と尋ねる。
尋ねられた男は左右で色の違うで目をギラギラと輝かせながら、名乗った。
ゲラート・グリンデルバルド。
それが奴の名前だった。
●
此方は名乗ったんだ、君の名前は教えてくれないのか。
杖を降ろしながら、グリンデルバルドは俺にそう言った。
その言葉につられるみたいに、俺は「平賀…平賀才人」と名乗り返す。
その間、デルフは下せなかった。
「そうか、サイト。先ほどは無礼な真似をしたな。
興味深い話をしていたものだから気になってしまってね。少し試させてもらった」
「……試す?」
「そうだ。君はマグル(魔法を使えない只人)のようだからな。君の語っていた言葉が真実であるか…
危険のない呪文で試させてもらった。私も今使える魔法を把握したかったのもあるがね」
少しは魔法使いと交流があるようだから分かるだろう。
このような異常な場所で自分が何ができて何ができないのか……把握しておくのは重要だ。
不躾な手段になったのは此方の落ち度だが、だからこそ君に提案したい事がある。
そう、グリンデルバルドは俺に続けた。
「私は君の話を信じよう。そしてその上で提案させてもらう………私の下で働いてみる気はないか?」
一切淀みなく、堂々とした態度で。
グリンデルバルドは俺にそう言った。
「私は魔法使いだ。君達マグルにできない事ができる。それなりに腕が立つ自負もある。損はさせない」
確かにな。
俺は口に出さないまでも、グリンデルバルドの言葉を否定できなかった。
俺もガンダールヴとして何度もメイジと戦ってきたから何となくわかる。こいつ、強い。
モヒカンの様に逆立った金髪に、左右で色が違うオッドアイ。
ルイズの父親が着てたような高そうな仕立ての黒い服。
俺が戦ってきた中で個人じゃ一番強いだろう元ルイズの婚約者ワルドと比べても…多分、強い。
そんな奴が力を貸してくれるってんなら、悪い話じゃない様に思える。
「私ならば君の力を適切に扱える。そして戒めを外すことに成功すれば、君は英雄だ」
これに関しちゃ、多分嘘は言ってない。
このグリンデルバルドっておっさんは、本気で自分ならガンダールヴの力を上手く扱えると思ってるんだろう。
そもそもこの首輪にガンダールヴの力が通用するかは分からねぇけど、通じたらこのおっさんは自分が一番上手く扱える。
本気でそう思ってるし、そう言うのも理解できる程度にはメイジとしての腕はありそうだった。
「……返事を聞こうか」
杖は下ろしたまま、じっとこっちを見ながら。
グリンデルバルドは俺を見てくる。
俺は奴の視線を見返しながら、少し押し黙って。
十秒程後に、返事を返した。
「俺と俺の相棒(デルフ)で"全会一致”だぜ、グリンデルバルド」
弾かれた様に駆けだす。
グリンデルバルドもまた、俺の動きを見た瞬間動き出す。
けど、遅い。この距離ならガンダールヴの俺の方が早い。
飛んでくる光の線を数ミリの所で躱して、奴の懐に入る。
デルフの峰を振りかぶりながら、俺は奴の問いに対して応えた。
「おととい来な」
デルフの刀身は届かず。
奴は黒い影みたいになって、俺の前から姿を消した。
そして、数メートル隣に現れた後尋ねてくる。
どうして、提案を断ろうと思った?と。
そのグリンデルバルドの問いかけに、俺は指を二本差しながら教えてやる。
「一つは危険はない何つって『死』の魔法何て人にぶっ放してきた事と───」
グリンデルバルドが都合のいいこと宣ってる間に、デルフがしっかり小声で教えてくれていた。
最初に撃って来たのは、死の魔法。喰らったら相手を確実に殺す魔法だってな。
つまり平民だから魔法の種類何て分からないだろうと、こいつは俺に嘘をついてたことになる。
多分、デルフがいなけりゃ騙された。
そしてもう一つは、
「アンタ、無礼な真似をしたとか不躾な真似をしたとか言いながら、俺に一度も謝ってねぇだろ」
心底見下してるのか。
それとも、平民(マグル)相手に謝ったら死ぬとでも決めてるのか。
このおっさんは一度も俺に謝ってない。受けたら死ぬ魔法を撃った上で、俺に嘘までついた上で、だ。
この時点で、俺の答えは決まってた。
「……ふむ」
グリンデルバルドは、俺の言葉を否定しなかった。
悪びれもせず、鼻を鳴らして俺の言葉を聞き流して。
そして、この場にいるもう一人…いや、一匹に続けて尋ねた。
「……君はどうかね?協力者は多い程良い」
奴が尋ねたのは、さっき俺の脛を思いきり蹴ってきやがった招き猫。
自称ターボババアは、相変わらずムカつく表情でよっこらせと身体を起こして。
ある意味予想してなかった返事を、グリンデルバルドに返した。
「そうさなぁ?このクソ生意気なガキ殺したら考えてもいいぜぇ。ワシに協力しないらしいからよォ」
───このクソ猫が!
そう毒づく暇もなかった。
デルフの柄を握り締めなおし、俺はガンダールヴの力を全力で引き出す。
それが合図だった。
「───そうか。では、そうしよう」
グリンデルバルドの杖から光が走る。
●
「ちっくっしょう……!」
防戦一方。
戦いが始まってから俺の状況は、その一言に尽きた。
このおっさん強すぎる。ワルドみたいに分身もしてないのに雨あられの様に魔法を撃って来る。
つまり、一発でも喰らって足を止めたら終わり。その後は集中砲火を浴びることになっちまう。
最初に撃って来た死の魔法を警戒して速攻で攻めなかったのが災いした。
「おい伝説の剣!」
『いかにも俺は伝説の剣だが、何だね伝説の使い魔』
「何か…何かないか!このままじゃ殺されるッ!!」
『さてね、さっきの緑の光の魔法は俺にも防げねぇ。それ以外なら防いでやるから死ぬ気で凌ぎな』
くそッ!ワルドの時もそうだったけど、つくづく都合のいいパワーアップとは無縁だなこの伝説の剣!
そう思いながら必死で飛んでくる魔法の光をなんとか躱す。
ガンダールヴの反応速度と身のこなしがなければとっくに喰らってるだろう。
だけど、それもどんどん危なくなって来た。
多分あと2,3分もしたら一発喰らって、そうなったらさっきの即死魔法を喰らわなくても終わりだ。
『まぁ落ち着けよ相棒、奴さんの事が少しわかって来た」
「あぁ!?そんな悠長なこと────」
『落ち着けって、さっきから景気よく種類の違う魔法を撃ってるが、死の魔法についちゃ奴さん最初以外撃ってねぇ」
それがどうしたんだよ!そんなもん無くてもあいつには充分だよ!
そう叫びたかったけど、同時にデルフの指摘に俺の中にも引っかかるものを感じた。
殺し合いで即死魔法何て使えるなら、使う魔法はそれでいいんじゃないか?だって当てれば勝ちなんだから。
他の今バカスカ撃ってる魔法何て必要ない。なのに何で。
『まぁ一つはさっきあの男が言ったみたいに自分の手札を確認したいんだろうな。つまり相棒の事を舐めてるのさ』
「そのッ!言い方だともう一つが───うおおおおおおおっ!?」
さっきまで走ってた地面が突然爆ぜた。
爆風を躱して、爆ぜて飛んでくる砂利をデルフで何とか叩き落す。
一息つく暇もない。速攻で次の魔法が飛んでくるのを、ごろごろと転がって躱す。
青色のパーカーが土埃で汚れるが、気にしてる暇はなかった。
『もう一つは、奴さんにとっても気軽に打てる手じゃねぇって事だ。
勿論さっき二連射してたあたり必要なら撃つのも躊躇わないが、無駄撃ちはしたくない。それぐらいに精神力を消費するんだろう』
「それはッ!そうかもしれねぇけど……!」
それが分かった所で、今この戦いを打開できるとは思えない。
そんなもの使わなくたって、あのおっさんは十分俺を殺せるからだ。
そして俺がどんだけ逃げ回っても、あのおっさんは絶対にデルフの届く間合いに入ってくれない。
剣の届く間合いなら俺の方が速さは上だ。でも魔法を常に撃って涼しい顔をしてるグリンデルバルドが手を緩めてくれるとも思えない。
『焦るんじゃねぇよ、ガンダールヴ。お前さんは俺を振るう事だけが脳の使い魔だったか?』
「それはそうだけど……けどさぁ!」
一応、剣以外にも武器はある。
でも、よっぽど"運"がねぇと、どの道使った所であいつには通じる気はしなかった。
考えなしに撃ったところで、避けられるか防がれて終わりだ。
『いいか相棒。奴はそう遠くない内に必ず痺れを切らす。ちょこまか逃げるお前さんの退路を必ず断ちに来る。それが合図だ』
その時に全部の力を集中させろ。娘っ子にもう一度会いたいならな。
デルフは俺にそう言った。つまりはそれまでは何とか自力で逃げ回るしかないらしい。
絶望的な気分になった。後半の部分がなければ。
デルフの言う娘っ子、そう言われて思い浮かぶのは一人だけだ。
──この、馬鹿犬!
──嘘つき。嫌い、嫌いよ。
───私を、1人にしないで。
世界でたったひとりの御主人様。
意地っ張りで凶暴で焼きもち焼きで強情で、死ぬほど可愛くない。
でも、不思議なもんだと思う。
折れかけた俺の心をいつも奮い立たせてきたのは、何時もアイツだった。
くっと笑って、俺は駆け出した。
●
デルフは相手が痺れを切らすまで待てって言ったが、このままじゃジリ貧だ。
多分実際に奴が痺れを切らすまで保たねぇ。なら、どうすればいい?
答えは一つ。痺れを切らすタイミングを早めてやるしかない。
ダメージは与えられなくてもいい。とにかくびっくりさせてやる。これ以上時間をかけるのは面倒だって、そう思わせる。
運がいい事に、俺にはそれに向いてる支給品に心当たりがあった。
「があああああああああッ!!!」
また地面をごろごろと全力で転がってから。
叫びながら俺は半身の耐性で全力でグリンデルバルドから逃げ出す。
あえて隙だらけの背中を見せて、仕留められると、そう思わせる。
「へっ」
狙い通り、グリンデルバルドは俺を仕留めようと俺の背中に杖を向けて、俺に注意を引き付けている。
半身になって、奴が追ってきていないか確認しているフリをした俺の背中。
そこに森口から支給されたデイパックがない事にまだ気づいた様子はない。
俺が、さっき叫んで転びながら口を開けたデイパックを奴の頭の上数メートルの高さに投げた事に気づいていない。
奴がそれに気づいたのは、自分の顔に影が差してからだった。
「地球舐めんな、ファンタジー」
───ドォォォオオオオオンッ!!
奴の脳天に降り注いだのは日本国陸上自衛隊の文字が刻まれた兵器。
総重量50トン近くになる、俺がルイズに召喚されてから配備されたらしい主力戦車。
10式戦車が、グリンデルバルドの脳天目掛けて降り注ぐ。
「プロテゴ───チッ」
ここで初めて、奴の表情が変わった。
あいつが扱うバリアーみたいな防御の魔法でも、数メートルの高さから落ちてくる戦車を受け止めるのは厳しいと、そう思ったんだろう。
慌ててどんどん大きくなる影の範囲から、さっき俺の剣を避けた瞬間移動の魔法で難を逃れた。
だけど、ここで奴の雰囲気が明確に変わった。
自分の手札の確認よりも、明らかに面倒だって思いの方が勝った表情だった。
「もういい。概ね一部の魔法以外は問題なく撃てることが分かった」
君は用済みだ。
そう言って、ぱん、と奴が両手を打ち鳴らす。
その音が響いた次の瞬間、俺の逃げていた道の先に建つ両脇の建物が爆発した。
ズ、ンと腹の底まで響く揺れと音と一緒に、瓦礫が道を塞ぐ様に降り注いでくる。
ここだ、そう思った。
「うぉおおおおおぉおおおおおおらァッ!!!!」
地面を全力で蹴って方向転換。弾かれた様に駆けだす。
逃げるためじゃない。真っすぐ。一直線に。
目指すのはふんぞり返ったグリンデルバルド真正面。
デルフの峰を叩き込んで、一発で勝負を決めて見せる。
「──愚策を通り越して憐れみすら湧いてくるな。サイト」
ムカつくけど、グリンデルバルドがそれを黙って見逃してくれるわけがない。
杖を振り上げて、物凄い速さで魔法を撃って来る。
だけど、その光は緑じゃなかった。デルフの読み通りだ。
───いいか、相棒。奴さんは必ず死の魔法を撃つ前にお前の足を止めに来る。本命を当てるためにな。
つまり、その一発は死の魔法じゃねぇ。
それならどんな魔法であろうと、デルフの力で吸い取れる。
アクシオ、そう唱えた奴の魔法を吸収する。どんな効果か知らねーが、魔力そのものを吸い込めるデルフの前には意味がない。
さっきよりも深く踏み込んで、剣の間合いに。グリンデルバルドの正面に出ようと───
「あぁ、散々見せてくれたから知っていたよ。その剣が魔法の武器である事も。魔法を吸い取れる力があることも」
グリンデルバルドの姿が掻き消える。
さっき俺が斬りかかった時に使った、移動の魔法だろう。
距離を詰められれば必ずいったん距離を取る。そう読んでたぜ。
「相棒、右後ろ17歩の位置だ」そう俺に教えてくれるデルフの声を聞きながら、俺は懐のもう一つの武器を抜き放つ。
グロッグ17と言う名前の自動拳銃。それを俺はグリンデルバルドに向かって容赦なく連射した。
後ろから俺を撃ち抜くつもりだったんだろう。奴は驚いたのか一瞬杖を振るう手が止まって。
「…哀れだ、実にな。"そこ"がマグルの限界だ」
そう言いながら両手を広げた奴の声が響き。
カンッ!
渇いた音を立てながら、俺の放った銃弾は全てバリアーの様な奴の魔法に弾かれる。
畜生、俺の方が絶対早かっただろうが。あの銃撃の不意打ちは最後の望みだったのに。
そう毒づきながらデルフを握り締めなおす。もう同じ手はグリンデルバルドには通用しないだろう。
それでも諦めるつもりなんてない。最後まで足掻き切ってやる。
そう決めて、グリンデルバルドの前に半ば特攻じみた突撃をしようとしたその時、
タンッという音と一緒に、グリンデルバルドの肩口から血が噴き出た。
…は?と惚けた声を上げたいけど、そんな暇は当然ねぇ。
だけど、同時にここだ、とも思った。
正真正銘ガンダールヴの力を全脚力に注ぎ込む。
何でかは分からない。表情的に、グリンデルバルドも予想外だったのか初めて驚いた表情をしている。
直ぐに我に返って俺を迎え撃とうとするけど、生憎肩の風通しが良くなったのは杖を握っていた方の手だ。
その速さはさっきよりも確実に。ずっと遅かった。
トロいぜ、グリンデルバルド。
そう心の中で吐き捨てた後。
俺は、全力の回し蹴りを奴に叩き込んだ。
●
「若造(グリンデルバルド)。テメェが喰らったのは跳弾って奴だ。そこのクソだらぁのガキが撃ったな」
俺がグリンデルバルドを蹴っ飛ばして、数秒後。
さっき俺を殺せって言いやがった招き猫は腕を組みながらそう言った。
跳弾ってのは確か、撃った球が建物や看板何かの障害物に跳ね返る事だったはず。
つまり偶然グリンデルバルドは弾くのには成功して、だけどその後障害物に跳ね返った弾丸を浴びてしまったって事らしい。
そんな都合のいいことが起きたのか?ってそれを聞いた時はそう思った。
「そう、偶然だ。だがてめぇワシが何でこんな姿をしてるか疑問に思わなかったか?
日本の招き猫って奴にはな……なんかいいことを招く力があるんだよ。ま、テメェにとっちゃ凶だけどな」
俺が思った通り。
普通なら、外した弾丸がその後相手にちゃんと当たるなんてのは偶然だったらしい。
でも、だからこそ。
「偶々てめぇが弾いたタマは威力を保ったまま突き進んで、偶々てめぇに当たる角度で跳ね返った。偶然な」
だが、その偶然はワシがいる事によって"必然"になる。
腕を組んで、目を細めて。
ここまで手を出さず、高みの見物を決めていた化け猫ババアは、グリンデルバルドにそう言った。
「……マグルよりは見込みがあると考えていたが、君がそちらに着くとは意外だったな」
俺もそう思ってた。心の中で密かに相槌を打ちながら、グリンデルバルドを見る。
俺に顔面を蹴られて、口の端や肩口から血を流していても、奴は冷静なままだった。
けど、さっきよりも目は鋭く見えた。
「わしゃ考えるっつっただけだ。人に協力してほしいならよぉ、
他人を利用できるかできないか値踏みする目で見ねぇで、敬語使って頼めやクソだらぁ」
てめぇの失敗は一つ。
年上に対するリスペクトがなかった事だ。
「あと何がグリンデルバルドだ。横文字使って老人騙そうって魂胆が見え見えだぜ」
グリンデルバルドは多分名前なだけだし、失敗一つじゃねぇじゃねぇか。
そう言ってやりたかったけど、此処は我慢する。
「………何故と思ったことはないか」
グリンデルバルドは、裏切りスレスレのババアの言葉にも怒らなかった。
流れる血もそのまんまに、ターボババアを睨んで尋ねてくる。
「力を持つ我々が何故無秩序に増え、その子供が持っているような醜悪な武器…
お互いにそれを向け合い、飽きもせず殺し合うマグル達から存在を隠し生きねばならないと」
私はそんな世界を変える。力ある者が自由を謳歌できる世界。
魔法使いがマグルを正しく支配する世界。そんな世界を作り上げる。
まるで演説みたいに、グリンデルバルドは話し続ける。
(こいつ……ハルケギニアのメイジじゃないのか?)
グリンデルバルドの話を聞いて。
まず俺が思ったのはそれだった。ハルケギニアのメイジ達はルイズも含めて全員貴族だ。
大体無駄に偉そうで、存在を隠して生きてるなんて話が出るとは思えない。
どうしても引っ掛かる部分はあったけど、同時に納得もした。
このグリンデルバルドって男は本気で魔法使い以外を人間だと考えてない。
だから魔法使いならともかく、俺にみたいなルーン以外はただの人間と協力なんてありえない。
こいつにとっては、平民は言葉を話せるだけのサルでしかないから。
「家畜(マグル)を憎んでいる訳ではない。別の種族だ。
───家畜(マグル)が魔法使いより劣っているとも言わない。価値がないのではなく、別の価値があるのだ」
だからこそ、間違いは正さねばならない。
マグルの傲慢さ、権力への欲、そして暴力を粛清し、新しい世界を構築する。
それを達成する為なら、誰にも邪魔はさせない。
グリンデルバルドは俺と、デルフと、ターボババアにそう宣言した。
ごくりと喉を鳴らして、つばを飲み込む。血を流してるとは思えない迫力だった。
「興味ねぇな。ワシはワシだ。人間なんぞに隠れて生きてきたつもりはねぇ」
そして、そんなグリンデルバルドの言葉をターボババアは一言で突っぱねて。
言い終わると同時に招き猫の置物の体から、何かが出てくる。
マジでデカい鼻。クソデカい蜘蛛の巣みたいなギラギラした目。人間も丸のみにできそうな大口。
直感的に、何となくだけど。これがこのババアの正体って確信できた。
「気に入らねぇクソガキはブッ呪い殺すし、車も電車も追い越して、美味いもんは平らげる。そんだけだ」
言いたいことを言って、ターボババアはまた招き猫の体に収まる。
その姿や受け答えを見て、ちょっとだけもしかしてコイツ本当に大物なのか…?と俺は思った。
対するグリンデルバルドの方はというと、冷淡な目で俺たちをじっと見つめて。
「………そうか。ならばその選択、必ず後悔することになる────」
そう言うが早いか、杖を振り上げて。
思わずつられて身構え、俺はデルフを構えたが魔法は飛んでこず。
ただ青い炎がグリンデルバルドの周りに集まって………風が吹き抜ける。
そして、炎と風が止んだころには、もうヤツの姿は何処にもなかった。
「デルフ…」
『あぁ安心しな相棒、あの男は退いたよ』
「そっか………」
デイパックに戦車をしまった後、デルフの言葉に気が抜けてどっかり座り込む。
多分あいつが自分の状態を確かめるなんてことはせずに本気だったら殺されてただろう。
何とか切り抜けられたのは、運が良かっただけだ。
そう思って息を吐いて。
「安心する前にワシにいう事あんだろボケが」
そんで、ぐさっとクソ猫のドロップキックが顔面に突き刺さった。
「これでてめぇはワシに借りができたよなぁ?ドでけぇ借りがよぉ」
「ぐッ…て、てめぇこの化け猫…最初っからそれが目的で」
「当たり前だ。でなきゃてめぇ何ぞ助けるかよ」
ぐ……!
正直言って殴りたかったけど、助けられたのは事実だ。
ここは俺が大人になるしかない。首輪を外したいのは俺も一緒だ……
そう、俺が大人に……
「まずは跪いて拝み倒しながら、ありがとうございますターボババア様って100回言え、
その後スーパーにでも行ってジュースとハードチップルありったけ買ってこいやクソガキ」
───なれるか。
「調子に乗ってんじゃねぇクソ猫!お前さっきグリンデルバルドに俺のこと殺せって言ってただろうが!!」
「上等だクソガキィ!!ボキャボキャにしてやるからかかってこいやクソだらぁ!!」
俺はターボババアに飛び掛かった。
【平賀才人@ゼロの使い魔】
[状態]:疲労(中)
[装備]:デルフリンガー@ゼロの使い魔、グロッグ17(残弾12/17)&予備弾倉×3@現実
[道具]:基本支給品一式、10式戦車@現実
[思考]:脱出してルイズの元に帰る。殺し合いには乗らない。
1:同じ脱出派の参加者を探す。
2:ルイズがこの会場にいないか心配。いれば最優先で探す。
3:ガンダールヴのルーンをうまく使えば、首輪の中の構造が分かるか…?
※参戦時期はルイズと再契約を行った原作八巻終了時、九巻開始直前。
【ターボババア@ダンダダン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~3
[思考]:何が命の授業だよ。こっちはもうキャンパスライフ堪能する年じゃねぇんだ。
1:生意気なクソガキはぶっ殺すが、殺し合いは面倒くさいので乗らない。
2:クソだらぁな首輪を外すために生意気なガキ(才人)を脱出のため利用する。
※参戦時期は原作17巻で、力を取り戻した直後。
●
……侮りすぎたな。
肩に空いた穴の処置をしながら、ゲラート・グリンデルバルドは独り言ちる。
最大の誤算はアダバケダブラ、姿くらまし、インペリオ<服従せよ>など一部の魔法の消費が大幅に上がっていた事だ。
少なく見積もって10倍以上。勿論その程度であれば一度や二度の戦闘では問題ないとはいえ。
無駄打ちはしたくない。そう考えるに十分な魔力、精神力の消費量だった。
更に、グリンデルバルドが負っていたハンディはそれだけでなかった。
「ここでも……君は私を阻むのだな、アルバス」
グリンデルバルドは振るっていた杖。それは普段彼が常用していた死の秘宝、ニワトコの杖ではなかった。
森口から下賜された支給品で有り、かつて愛し、血の契りを交わし、そして袂を分かった因縁の男。
アルバス・ダンブルドアの杖だった。
魔法使いにとって、魔法使いが杖を選ぶのではなく杖が魔法使いを選ぶという言葉が示す通り。
他人の杖を自身が選んだ杖以上に使いこなすことは難しい。例外は勝者にこそ忠誠を示すニワトコの杖だけだ。
ダンブルドアの杖も例にもれず、いやむしろダンブルドアの杖だからこそよりその誓約は重く働いた。
恐らく、普段彼が使っているニワトコの杖で平賀才人と交戦していれば、彼は才人の殺害に成功していただろう。
「私はこれまでも、これからも……君の敵になるつもりはない。だが止まることもまた、ない」
必ず生還し、マグルの世界を焼き尽くす。そのためならば手段は選ばない。
例え魔法使いであっても阻むもの、自分に迎合せぬ者は必要ない。死あるのみだ。
故にマグルと手を結ぶことなどありえない。支配し利用する、それだけだ。
魔法使いとマグルの間にある関係性は、『支配』と『屈従』以外にあってはならないのだから。
例えこの地で万が一果てるとしてもそれだけは捨てるわけにはいかない。
最愛の男と袂を分かっても選んだ、己の矜持なのだから。
命惜しさ矜持を捨てた魔法使いなど、マグルにすら劣る。
そう本気で考えているからこそ彼はやはり人類の敵対者であり。
ヴォルデモート卿の台頭まで最も強く恐ろしいと畏怖された、先代の『闇の帝王』として、バトルロワイアルに臨む。
【ゲラート・グリンデルバルド@ハリーポッターシリーズ】
[状態]:健康、魔力消費(小)
[装備]:ダンブルドアの杖@ファンタスティック・ビーストシリーズ
[道具]:基本支給品一式、不明支給品0~2
[思考]:生還し、マグルの世界を焼き尽くす。
1:手段は優勝か脱出か問わないが、自分に迎合しないものは殺す。
2:マグルとは手を結ぶことはない。あるのは支配のみ。
※参戦時期は『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』終了時点。
※その為容姿はジョニデグリンデルバルドです。
※即死魔法、姿くらまし、服従魔法などを筆頭に一部の魔法の消費魔力、精神力が多大なものとなっています。
【デルフリンガー@ゼロの使い魔】
平賀才人の相棒とも言える大剣であり、意思疎通が可能なインテリジェンス・ソード。
担い手の技量を触れられるだけで看破できたり、意思疎通が可能であるだけでなく。
城一つ吹き飛ばす威力を誇るヘクサゴンスペルの魔法でも吸収可能な魔法吸収能力、
また吸収した魔力を用いた担い手の強化能力や瞬間移動などの効果も有する。
本人(本剣?)の時系列は才人と同時期(原作8巻、アニメ二期終了時点)
【10式戦車@現実】
陸上自衛隊に配備されている国産主力戦車。重量約44トン。乗員三名。
燃料、弾薬の有無については後続の書き手にお任せします。
【ダンブルドアの杖@ファンタスティック・ビーストシリーズ】
死の秘宝であるニワトコの杖を入手する前の、若き日のダンブルドアが使っていた杖。
色は黒を基調とし、手元に行くほど節くれだっている。
最終更新:2026年08月21日 00:56