『逆襲のL ~死神が迎えに来た探偵~』
『一部始終聞いてたくせに、この期に及んで、てめえは声だけかよ』
『こんな小娘を表に立たせて自分は安全な場所に隠れてるとはな。とんだ臆病者もいたもんだ』
『これから小蘭は俺のオモチャだ。文句があるなら、てめえも表に出てきてみろよ。そんな度胸、あるとは思えねえがな』
『じゃあな。せいぜい安全な場所で震えてろよ、タマナシ野郎』
………
……
…
◆
第一回放送が終わって、既に数分が経過しています。
それでも、彼の言葉は妙に鮮明なまま、頭の片隅に居座り続けていました。
あのキラをも凌駕する、歴史上最悪の犯罪者──シュラ。
彼は通信機を奪い取るなり、まるで全てを見透かしたかのように、私へ一方的な誹謗中傷を浴びせてきました。
しかも、私を『小蘭のお仲間さん』などという、実に不正確な呼称で括った上で、です。
……ここで一旦、彼の発言を一つずつ検証してみましょう。
別に、気にしているわけではありません。
ただ、論理的な誤謬を放置することは、探偵としての職業倫理に反します。
case1『指示ばかりの臆病者』
──まったく違います。
優秀な探偵ほど、自ら表舞台には立たないものです。
case.2『文句があるなら、てめえも表に出てきてみろよ』
──一見、一理あるように思えますが、これも論理の飛躍です。
私があなたの行為を非難することと、あなたと直接戦闘することには、何ら因果関係がありません。
case.3『タマナシ野郎』
──あまりの衝撃に、しばらく言葉を失ってしまいました。
ええ、もちろん私は一切動揺していません。
ただ、討つべき巨悪・シュラとはいえ、その常識に囚われない発想力には、感心せざるを得ませんでした。
そもそも『タマナシ』とは何でしょうか。
医学的な意味でしょうか。
それとも、勇気がないことを意味する、極めて低俗な慣用表現でしょうか。
いずれにせよ、私には該当しません。
……当然です。
第一に、彼は私の顔すら見ていない。
第二に、私の経歴も知らない。
第三に、これまで私が解決してきた事件も、世界各国の捜査機関との協力実績も、一切把握していない。
そんな人物が、何を根拠に私を『タマナシ』と断定できるのでしょう。
これは単なる人格攻撃、すなわち──アド・ホミネム(ad hominem)です。
議論の基本すら理解していない者が、相手の人格を攻撃することで、あたかも優位に立ったかのように錯覚する。実に典型的な事例です。
……それにしても『タマナシ野郎』。
別に腹を立てているわけではありません。
ただ、あまりにも品性を欠いた言葉遣いだと感じただけです。
……そもそも、『臆病者』で十分ではありませんか?
わざわざ下品な身体的比喩を用いる必要性が、どこにあるのでしょう。
くだらない。
私はエゴサーチ──Public Perception Reviewという行為を、基本的には好みません。
匿名の人間が、相手の素性も知らず、ただ効きそうな言葉を投げつける。
シュラという男のやっていることも、それと同じです。
勝手に人物像を決めつけ、勝手に罵倒し、勝手に勝ち誇っている。
ましてや、相手は罪のない人間を嬲り殺しにすることを娯楽とする極悪人。
彼の発言に、いったい何の『正当性』があるというのでしょうか。
「……さて。これ以上思考を費やすことに意味はありません。糖分の補給こそ、今の私にとって最も合理的な選択だ。──」
「──では、ゼリー飲料でもいただきましょうか」
…………。
……あぁ、そうでした。
「最後の一本は、先ほど飲み干してしまったのでしたね。──」
「──……私は、…………小蘭さんにゼリーのおつかいを頼んでいた」
……私とて、人間です。
ワタリやキラ対策チームの皆さん、そして夜神月くんに至るまで、私の判断には常に確かな根拠があり、決して間違えることはないと信じているようですが、それは大きな誤解です。
私にも、分からないことくらいあります。
現在、私が滞在しているのは、ホテルのスイートルーム。
──あの事件以降、ルームサービスした朝食には一口も手を付けていない。
──浴室のシャワーを出しっぱなしにしていた。
──気を紛らわせるように、柄にもなくテニスボールを壁へ打ちつけていた。
──気づけば、壁には無数の傷が残っていた。
……私には何一つ答えが見つかっていなかった。
…
……
………
『ぜんぜん平気! わたし、後宮でもずっと動き回ってるから体力には自信あるんだ』
『えるクンはね、お菓子で一番好きな甘いお菓子ってなぁに?』
『もちろん、隠さなくていいよ。僕のことはそちらから伝えてもらって一向に構わない』
『マイク越しに君を操っている、傀儡子くんにね』
………
……
…
不思議なものです。
私は当初から、万が一の事態に備え、レイ・ペンバー氏や小蘭さんとの関係を必要最小限に留めていました。
そのため、彼らとの、いわゆる『思い出』を振り返ってみても、大した会話をしていませんでした。
…………声だけは鮮明に覚えているのに。
思い出と呼べるものを、一つも残せていなかった。
「……私は名探偵だ。……一度引き受けた事件を、途中で投げ出すほど無責任じゃない。──」
「──小蘭さん、必ずあなたを助け出します。──」
「──……私は、あなたを許しません。……シュラッ……」
さて。
私とて、いつまでも安全な場所から、正義を説いているつもりはありません。
……ええ。今度こそ、私自身が盤面に立つ番なのでしょう。
次の一手は、既に決まっています。
私にはすでに──新たな『協力者』がいるのですから。
◆
「……ククク」
「なるほど。つまり、この『ノート』には、殺傷能力も、科学的に説明可能な機構も存在しない。……そういう認識でよろしいですね?」
「なんで繰り返したんだよ。誰に言い聞かせてんだ?」
「それではお聞きします、森口先生。このような大学ノート一冊でどう、人を殺せというのでしょう」
「あ? 森口のババアに言ってんのか?」
「……やれやれ。殺し合いの想像力とは、時に論理を置き去りにするものです」
紹介します。
私の新たな協力者──『リューク』です。
私に支給されたのは、『デスノートのレプリカ』。
名称こそ物騒ですが、その実態は、何の殺傷能力も持たない、ただの大学ノートに過ぎません。
試しに、あのシュラの名前を幾度となく書いてみましたが、当然ながら何も起こりませんでした。
ただし、このノートに触れた者には、どういうわけか──目の前の『死神』が見えるようになるらしいのです。
彼もまた、参加者を殺す力はありません。
戦力としては、残念ながら何の役にも立ちませんが……まあ、結構でしょう。
ちょうど話し相手にも事欠いていたところですからね。
……ええ。
無論、理解していますよ。
このリュークという存在こそ、かつて日本中を恐怖に陥れたキラ事件の発端。
キラへ死のノートを与え、あれほどの犠牲者を生み出す契機となった、いわば事件の黒幕──Hintermannです。
私が最も忌み嫌う、無責任な悪の象徴。
本来であれば、協力関係など論外。
即座に拘束し、事情聴取を行い、しかるべき司法手続きへ移行するのが当然でしょう。
……ですが、今は善悪を選り好みしている場合ではありません。
たとえ悪魔にこの身を売ろうとも、──私には、『笑わせなくちゃいけない子』がいる。
スラスラスラスラ~。
「あ? あのなぁ……L。……さっきも言っただろ。いくら名前を書いたって無駄なんだよ、それ」
「ええ。承知しています。ですが、レプリカとはいえ、実に精巧な造りですね。……記載されている規則まで、本物と寸分違わない」
「は?」
「リューク。『ルールページ』を御覧ください」
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1.死因または死亡状況を書くことで、その人物の人間単位で23日以内の死前の行動を制御できる。
2.先に名前が書かれた場合、その死が確定するまでは、後から別のノートに名前を書かれても無効になる。
✠━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━✠
「……いいですか、リューク。ここには明確に記されている。『先に名前が書かれた場合、後から別のノートに名前を書かれても無効になる』と」
「……ああ。それがどうした?」
「つまり、先に死を確定させてしまえば、それまでの間、別の死を迎えることはない。……そういう解釈も可能なわけです」
「いや、だからよ。それは本物のデスノートの話であって──」
「……ふふ」
「……あ?」
ええ。つまりです。
デスノートに書いた内容は、いわば『宣言』です。
──私自身に課す、絶対に覆してはならない条件。
ママチャリのペダルを踏み込む。
朝の街を、私はひた走る。
そして、書き終えたノートをリュークへ差し出しました。
「……あぁ!?」
──『L 小蘭を必ず救出し、殺し合いの真相を暴き、すべての事件を解決した後、死亡』
タマナシ。
ええ、大いに結構。
己の誇りを奪われた者にしか、辿り着けない正義というものがあるのですよ。
「(……やっぱ、人間って──いやコイツクソつまんねっ!!!)」
「小蘭さん、必ず迎えに行きます。……たとえ、それが私の最後の事件になろうとも」
どちらが死ぬか。
──これは勝負です、シュラ。
【E-5/朝/1日目】
【L@デスけ(ドラマ版デスノート)】
[状態]:レイを死なせた罪悪感(激)、屈辱(大)、小蘭を必ず救い出すという『探偵の誇り』(激)
[装備]:ジェバンニが一晩で作った偽ノート@DEATH NOTE
[道具]:基本支給品一式x2、ママチャリ@L change the WorLd
[思考]:小蘭に絶対に面と向かって謝る。
1:シュラ。お前をこの頭脳で、いや、この足で確実に追い詰めてみせる。
2:レイ氏の墓を作る。
3:口を利くだけの死神と、何の効力もない大学ノート。……ええ、実に結構。限られた材料から勝利への道筋を導き出してこそ、『天才』というものです。
4:シュラの行動パターンを分析し、次の動向を予測する。
5:……キラ、貴方は生涯をかけて絶対捕まえてみせます。
6:……しかし、リューク。私の知るあなたとは、随分と声が違いますね。
※参戦時期はヨツバ編終了後。月へ「すぐ来てほしい」と連絡する前です。(8話途中)
【支給品説明】
【リューク@DEATH NOTE(アニメ版)】
……死神界から人間界へやって来た、リンゴ好きの死神。
今回は『ジェバンニが一晩で作った偽ノート』に付随する特殊支給品として登場。
ノートに触れた者だけが、その姿を視認し、声を聞くことができる。
本来のデスノートと異なり、付属するノートに名前を書いても一切の効力は発生しない。
また、リューク自身も参加者への直接的な攻撃や物理的干渉はできない。
(要するに、喋るだけの死神である)
【ママチャリ@L change the WorLd】
……実写版デスノートスピンオフにて、Lが乗ってたただのチャリンコ。
最終更新:2026年10月15日 20:42