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『逆襲のシュラ』






早朝の渋谷はどこまでも静かだった。
レイ・ペンバーは物陰から通りを一度見渡し、それから隣を歩く小蘭へと視線を戻した。


「小蘭ちゃん、少し休もうか」


彼が指差したのはシャッターの下りた店の軒先だった。
奥まった位置で三方をコンクリートに囲まれ正面からの視界も開けている。
捜査官としての癖が無意識のうちに安全な場所を選ばせていた。


「うん!丁度座れそうな段差もあるね」


小蘭は軽い足取りでその場所へ向かうと躊躇なく地面に腰を下ろした。
育ちの良さそうな仕草ではないが、それがかえって彼女の逞しさを物語っている。
レイは苦笑しながら彼女の少し離れた位置。それでいて、いざという時にすぐ庇える距離に腰を落ち着けた。


「ここまで、よく歩いてくれたね。疲れてない?」


「ぜんぜん平気! わたし、後宮でもずっと動き回ってるから体力には自信あるんだ」


小蘭は無邪気に胸を張った。その表情に見知らぬ土地で殺し合いに巻き込まれているという緊張感は薄い。
もっとも、それが虚勢なのか本当に危機感が薄いのかレイにはまだ判断がつきかねていた。
彼はポケットからスマホを取り出し、画面に表示させたままにしていた参加者名簿へと、もう一度目を落とした。
無機質に並んだ名前の中に、先ほど確認したばかりの一文字がある。小蘭が繰り返し口にしていた名前と同じ字面。


「小蘭ちゃん。実は参加者の名簿を確認したんだけど」


「名簿……?」


「このスマホに、この島にいる人たちの名前が一覧で表示される機能があるんだ。その中に、マオマオさんの名前があった」


「……っ!」


小蘭の目が大きく見開かれた。


「ほ、ほんとに!? マオマオも、この島にいるの……!?」


「小蘭ちゃん、落ち着いて。まだ彼女の居場所は分からない。でも、名簿に名前があるということは、少なくとも参加者としてこの島のどこかにいるということだ。君にとってマオマオさんは大事な人なんだよね」


「うん……!後宮でお友達になった子で……すっごく物知りで難しいことも分かりやすく教えてくれるの」


小蘭は懸命に言葉を紡いだ。友人について語るその口調には単なる同僚以上の親しみが滲んでいる。


「この島は広い。マオマオさんが今どこにいるのか、手がかりなしに探すのは簡単じゃない。でも、名前が分かっている以上、彼女を見つけ出す努力はできる」


「レイくん……」


「小蘭ちゃんにとって大切な人なら、それは僕にとっても守るべき理由になる」


レイの言葉に嘘や誇張はなかった。彼はこの殺し合いを一刻も早く終わらせ、一人でも多くの生存者を守ることを自分の目的として掲げている。
その"守るべき対象"の中に、小蘭が大切に思う人物の名がはっきりと刻まれた瞬間だった。


「マオマオさんは僕が必ず見つけて保護する。約束するよ」


「……ほんとに?」


「名簿で存在が確認できているんだ。あとは居場所を絞り込んでいくだけでいい。捜査っていうのは、そういうものだから」


「捜査……?」


「僕はもともと、行方の分からない人や隠れている真実を探し出す仕事をしていたんだ。今回だってやることは変わらない」


レイは自嘲気味に小さく笑った。かつてFBI捜査官として、キラ事件の真相を追っていた。
そして、その果てに命を落とした自分。
だが、それでもやるべきことは変わらない。真実を追い、守るべき人間を守る。
小蘭はじっとレイの顔を見つめていた。その瞳には、先ほどまでの不安とは違う、何か温かいものが宿っているようだった。


「ありがとう……レイくんは優しいひとだね」


「そんなことないよ。これは僕の仕事だからね」


「ううん。優しいよ。だって名前を見つけただけなのに、もう探すって決めてくれるんだもん」


小蘭は、はにかむように笑った。その笑顔にレイもまた小さく頷く。


「さて。そろそろ移動しようか。あまり長く同じ場所にいるのも危険だ」


「うん!」


小蘭は素直に頷き立ち上がった。早朝の冷たい風が再び吹き抜け、渋谷の街の輪郭をより一層際立たせる。


「レイくん。マオマオのこと絶対に見つけてね!」


「ああ。約束する」


小蘭を守ること。そして彼女の友人を探し出すこと。それを最優先に行動を開始しようとしたところで——


「新しいオモチャがあるじゃねえか」


早朝の静寂を破るように乾いた笑い声が路地に響いた。


□


□



声のした方向へレイは反射的に視線を向けた。
そこには褐色の肌をした男が悠然と立っている。
顔に走る十文字の傷。着崩れた服の下に覗く、鍛え上げられた肉体。
全身から滲み出る気配だけで尋常ではない危険性が伝わってくる。
十文字の傷、シュラは唇を歪め、舌なめずりでもするような目つきで小蘭とレイを交互に見た。その視線には獲物を前にした獣のような昂りが滲んでいる。


「小蘭ちゃん、僕の後ろに」


レイは即座に小蘭を庇う位置へ回り込んだ。声は落ち着いていたが背中には冷たい汗が滲んでいる。
捜査官として、これまで数々の危険な現場に立ち会ってきた。
だが、この男から感じる気配は、それらのどれとも質が違っていた。


「……なに、あの人」


小蘭の声が、恐怖に震えていた。レイの背中に隠れながら彼女はシュラの姿を凝視している。
レイは腰のホルスターから支給品のグロック22を抜き、両手でしっかりと構えた。銃口をシュラへ向ける。


「動くな。それ以上近づけば撃つ」


シュラは心底おかしそうに笑った。傷が歪み、褐色の顔に嘲りの色が広がる。


「そんなもんで俺をどうにかできると思ってんのか?」


シュラは両腕を軽く広げ、まるで挑発するように一歩前へ踏み出した。その足取りに警戒や躊躇の色は微塵もない。
シュラが地を蹴った。次の瞬間には、もう距離が半分に詰まっている。予備動作をほとんど感じさせない異常な初速だった。


「くっ……!」


レイは反射的に引き金を引いた。銃声が早朝の渋谷に轟く。
一発、二発、三発。狙いは確かに胴体を捉えていたはずだった。
だがシュラは銃弾の軌道を見切りかわしていく。
彼は危険種というモンスターが存在し、それを生身のまま剣で狩る人間が跋扈する世界で曲がりなりにも上澄みに該当する人間だ。
普通の拳銃による銃撃程度なら余裕で回避できる。
レイは発砲し続けた。弾倉の中身が急速に減っていく。
だが一発すらシュラの体を掠めることさえできなかった。


「なっ……」


レイの喉から乾いた声が漏れる。人間業とは思えない。これまで彼が対峙してきた、どんな凶悪犯とも違う。
正面から拳銃を向けられて恐怖の色一つ浮かべない目。グロック22の銃撃を完全に回避する身体能力。
シュラの拳が振り抜かれた。銃を構えていたレイの右手首を下から掬い上げるように打ち抜く。
骨が砕ける鈍い音。絶叫が早朝の渋谷に響き渡った。
銃が宙に舞い、アスファルトの上を転がっていく。激痛が右腕全体を駆け抜け、レイは思わず膝を折りそうになった。


「レイくん……!」


小蘭の悲鳴が背後から響く。だがレイはそちらを振り返る余裕すらなかった。
シュラは止まらない。倒れかけたレイの左手首も容赦なく踏みつけるように握り潰していく。
左手首が右手首と同じように、あり得ない角度に折れ曲がる。指先から伝わる感覚が一瞬にして消え、代わりに焼けつくような激痛だけが全身を支配した。
両腕がだらりと垂れ下がる。もはや拳を握ることも何かを掴むこともできない。
レイは膝から崩れ落ちアスファルトに倒れ込んだ。



「あ、が……っ」


呻き声が漏れる。視界が痛みで白く霞む。それでも、意識だけは辛うじて繋ぎ止めていた。逃げなければ。小蘭と逃げなければ。
だが、その願いすらシュラは容易く踏み躙った。
シュラは倒れ伏すレイの脚に狙いを定めると躊躇なく踏みつけた。膝の関節が鈍い音とともに反対方向へ折れ曲がる。
続けざまに、もう片方の脚。容赦のない体重をかけた踏みつけが太もものあたりの骨を軋ませ砕く。


「がはっ……あ、あ……」


声にならない呻きが漏れる。もはや体を動かすことすらままならない。両腕は折れ、両脚も折れた。立つことも、這うことも、抵抗することすらできない。
ただ地面に横たわり、痛みに震えることしかできなかった。
視界の端に小蘭の姿が映る。彼女は、その場から一歩も動けずにいた。
恐怖で足が竦んでいるのか、あるいは目の前で起きている出来事が現実離れしていて理解が追いついていないのか。
大きく見開かれた瞳から、今にも涙が零れ落ちそうになっている。


「に、げ……」


レイは掠れた声を振り絞った。折れた両腕、両脚から伝わる激痛に、意識が何度も飛びかけている。


「逃げろ……小蘭ちゃん……!」


声を張り上げようとしたが、痛みで喉が引き攣り、思うように言葉が出てこない。それでも必死に続ける。


「早く……ここから離れて……!」


シュラは喚くレイの顔を見下ろし、無造作に屈み込むとその顎を鷲掴みにする。
次の瞬間、遠慮のない力が加えられた。
ゴギッという鈍く重い音が響く。


「んぐぁ……!? んっ、ぐ……!」


顎の骨が砕ける感触。レイの口から漏れるのは、もはや言葉を成さない、くぐもった呻き声だけだった。
舌も歯列も意のままにならず、声を発することすら叶わなくなる。
シュラは満足そうに笑うと、ゆっくりとレイの傍らにしゃがみ込み、まるで壊れたおもちゃを検分するかのように、折れ曲がった両腕を無造作に持ち上げた。


「んんっ……!」


激痛にレイの体が跳ねる。声にならない呻きが、砕かれた顎の隙間から漏れるだけだった。
だが、それすらもシュラにとっては愉悦の対象でしかないようだった。
レイは、もう一度何かを訴えようと喉を震わせた。だが砕かれた顎からは、意味を成す言葉は欠片も紡がれない。
ただ小蘭へと向けられたその目だけが、痛切な懇願をなおも訴え続けていた。


「あ……あ……」


小蘭は、その場に立ち尽くしたまま動くことができなかった。
頭では分かっている。逃げなければならないと。
だが、恐怖という重い枷が彼女の両足を地面に縫い付けていた。
目の前で繰り広げられる暴力の光景。関節が折れる音、レイの絶叫、そしてそれを楽しむように笑うシュラの声。
それらすべてが小蘭の思考を白く塗り潰していく。


「レイ、くん……レイくん……!」


名前を呼ぶことしかできない。足を一歩踏み出すことさえ、今の彼女にはできなかった。
シュラはそんな小蘭の様子を横目で捉え愉快そうに喉を鳴らした。


「小蘭だったな。逃げねえのか?」


その目の奥には次の獲物を品定めするような冷たい光が宿っていた。


「あ……あ、あ……」


小蘭の喉から漏れるのは、言葉にならない音だけだった。震える両手で、自分の体を抱きしめるようにしている。逃げたくても体が言うことを聞かない。
レイは折れた両腕を無造作に扱われながらも視線だけは小蘭へと向け続けていた。
痛みで意識が朦朧としながらも彼女だけはこの男の魔の手から逃さなければならないという想いだけが辛うじて彼を繋ぎ止めている。
喉の奥からくぐもった呻きだけが漏れる。言葉にならない懇願。それでも瞳だけは、なおも小蘭へと向けられ続けていた。

シュラの視線が小蘭へと注がれる。震え、竦み、逃げることすらできずにいる少女。
オールマイトを壊せなかった。技術も力も出し尽くして、それでもあのヒーロー気取りは倒れなかった。
あの屈辱、大臣の息子として絶対的な立場と力を誇ってきたこの自分が無様に逃げ出す羽目になったという事実。
シュラの中に灯った暗い衝動は単なる殺人や凌辱では満たされないところまですでに膨れ上がっていた。
涙を流す小蘭を見てシュラの口元に浮かぶ笑みが一段と歪む。頭の中で、悪辣な思案が瞬く間に組み上がっていった。
単純に殺すだけでは芸がない。犯して殺すのも、いつもの手口だ。
だが今のシュラが求めているのは、もっと質の違う愉悦だった。
心を折る。絶望を作り出す。それこそが今のシュラの飢えを満たす唯一の娯楽だった。
シュラは折れたレイの腕を無造作に地面に投げ捨てるようにして立ち上がると、ゆっくりと小蘭の方へ足を向けた。
荒々しいブーツの音がアスファルトに響く。


「あ……あ……」


小蘭は後ずさろうとしたが、恐怖で足がもつれ、その場にへたり込みそうになる。逃げるという選択肢すら、今の彼女には浮かんでいないようだった。


「ひっ……!」


シュラはナイフを取り出した。銀色の刃が白んだ朝の光の下で鈍く光る。ナイフの柄を小蘭の方へ向けて差し出した。


「え……?」


小蘭が困惑した表情でシュラの手元を見つめる。予想外の行動に恐怖の中にわずかな戸惑いが混じった。


「持てよ」


シュラは有無を言わさぬ調子でナイフの柄を小蘭の震える手に押し付けた。冷たい金属の感触が彼女の掌に伝わる。


「な、なんで……こんなの」


シュラはレイの方へ視線を投げた。両腕、両脚を折られ、地面に横たわったまま、荒い呼吸を繰り返している男。もはや起き上がることすら叶わない完全に無力化された獲物。


「そこの兄ちゃんをよ」


シュラは口元を大きく歪めて笑った。十文字の傷が、朝の薄明かりの下でよりいっそう醜悪に浮かび上がる。


「そのナイフで刺せ」


「……っ!」


小蘭の顔から、みるみるうちに血の気が引いていく。手の中のナイフが、これまで以上に重く感じられたのだろう。指先が細かく震えている。


「な、なに、言って……」


「言葉通りの意味だよ。そのナイフで、その兄ちゃんの息の根を止めてみろって言ってんだ」


シュラは腕を組みまるで観劇でも楽しむかのように一歩下がった。


「そ、そんな……できない……!できるわけない……!」


シュラはゆっくりと地面に倒れているレイのそばへと戻った。
折れた片腕を無造作に掴み上げるとレイの口から再び苦悶の呻きが漏れる。


「やらねえなら俺がゆっくり嬲り殺しにしてやるだけだ」


シュラはレイの折れた腕をさらにへし曲げるように力を込めた。関節とは違う方向へ、無理やり捻じ曲げる。


「や、やめて……!やめて……!」


小蘭が悲鳴のような声を上げた。


「やめてほしけりゃ殺せ」


シュラはレイの腕をわずかに緩め、しかし決して放そうとはしない。いつでも再開できる、そんな余裕を持った態度のまま小蘭へと視線を向けた。



「どうせこの男は死ぬ。それは決まってることだ」


この状況においてレイの死は既に確定している。
ただ、その"結末"に至る過程を、誰の手で、どんな形で演出するか、それが小蘭というオモチャを使ったシュラにとっての遊びだった。


「だったらお前の手で、楽に終わらせてやった方が、この兄ちゃんのためにもなるんじゃねえか?」


「そ、そんな……」


「それとも俺がじっくり時間かけて、こいつの骨を一本一本、丁寧にへし折りながら殺していくのを指咥えて見てる方がいいのか?」


シュラは再び力を込め始めた。レイの折れた肩の関節から嫌な音が軋み始める。


「あ、がはっ……あ、あっ……」


「や、やめて……!お願い、やめて……!」


「決めろや、小娘」


シュラの声に愉悦が滲む。これこそが彼の望んでいた光景だった。
単純な暴力ではない。この少女に自らの手で人を殺させる。
その選択を強いること。それが生み出す絶望と葛藤こそが、今のシュラの飢えを満たす極上の娯楽だ。


「わたし……わたし……」


小蘭の手がナイフの柄を握りしめたまま小刻みに震えている。目には涙が滲み視線はレイとシュラの間を何度も何度も往復していた。


「……っ、う……」


「レイくん……!」


地面に横たわるレイが朦朧とする意識の中で、それでも喉を震わせた。


「んぐ……っ、う、うぅ……!」


砕かれた顎からは、もう言葉というものが出てこない。だが、その必死な唸り声が、何を伝えようとしているのか小蘭には痛いほど分かった。
やめろ。そんなことをしなくていい。私のことはいい。逃げるんだ。声にならない想いが涙に濡れた瞳から、まっすぐに小蘭へと注がれている。


「レイくん……」


折れた両腕、両脚。動かすことすら叶わない体、そして言葉すら奪われた喉でありながら、それでもレイが案じているのは、自分の生死ではなく目の前で震える少女の未来だった。
小蘭の震える手の中で、ナイフの刃が朝の薄明かりを弾いて鈍く光っていた。
だが、その手はいつまで経っても振り下ろされる気配がない。
ただ震え、逡巡し、涙をぼろぼろとこぼしながら立ち尽くすだけだ。
シュラは小蘭へとゆっくり歩み寄った。


「ひっ……!」


小蘭が後ずさろうとするが恐怖で足がもつれ、その場から一歩も動けない。シュラの手が、あっという間に彼女の首元へと伸びた。


「なっ……があっ……!?」


太い指が細い首に食い込む。あっという間に喉が締め上げられ小蘭の体が宙に浮いた。爪先が地面をわずかに掻く。


「が……はっ……あ、が……!」


空気を求めて喉の奥から掠れた音が漏れる。視界が急速に白く霞んでいく。
顔が赤く染まり、次第に紫がかっていく。目が血走り、涙と涎が同時に流れ落ちる。
シュラは、そんな小蘭の様子を興味深そうに観察していた。
断末魔の直前、生き物が最も原始的な恐怖を露わにする瞬間を間近で堪能する。
これもまたシュラにとっての愉悦の一部だった。


「が……あ……」


小蘭の呼吸が弱々しくなっていく。意識が朦朧とし始めた、まさにその瞬間、シュラは手を放した。


「げほっ……!がはっ……!げほっ、げほっ……!」


小蘭は地面に崩れ落ち激しく咳き込んだ。喉に空気が戻る感覚に体中が痙攣するように震える。首元には、太い指の跡がくっきりと赤黒く残されていた。


「げほ……あ、あ……」


涙と涎で顔をぐしゃぐしゃにしながら小蘭は必死に呼吸を整えようとする。
だが体の震えは一向に収まらない。
今しがた味わった、死の一歩手前の感覚、それが彼女の思考すべてを塗り潰していた。


「どうだ、小蘭」


シュラはしゃがみ込んで小蘭と目線を合わせた。
愉快そうな笑みを浮かべながら、その顔を覗き込む。


「死ぬってのがどういうことか、ちったぁ分かったか?」


「あ……あ……」


「言っとくが次はもう途中で放してやらねえぞ」


シュラは地面に横たわるレイと震える小蘭を交互に見比べた。


「よく聞け。てめえがそこの兄ちゃんを殺さねえなら、お前ら二人ともここで死ぬことになる」


シュラの声には一切の躊躇も嘘もなかった。彼にとって、それは何気ない事実の提示に過ぎない。


「や、やだ……やだよ……」


小蘭は両手で顔を覆いながら激しく首を振った。
シュラはレイの方へと一瞥をくれた。地面に横たわり、荒い呼吸を繰り返す男の姿。


「レイくん……レイくん……!」


小蘭は泣きじゃくりながらレイの名を呼んだ。
そして次の瞬間、彼女の口からは別の名前がこぼれ落ちる。


「マオマオぉ……!」


シュラの片眉がぴくりと動いた。それから彼の口元に嗜虐的な笑みが広がっていく。


「マオマオ?誰だそりゃ」


「……っ」


「大事なお友達か何かか?」



小蘭がはっとした表情で口を噤む。
だがもう遅かった。シュラの興味は、すでにその名前へと移り始めていた。
シュラは顎に手を当て愉快そうに笑い声を漏らした。


「確か名簿に名前があったな。じゃあ——そいつも殺すわ」


「や、やめて……!お願い、それだけは、やめて……!」


小蘭は両手を地面につき必死に懇願した。涙が次々とアスファルトに落ちて染みを作る。


「マオマオは関係ない……!お願いだから、マオマオには手を出さないで……!」


「それはお前の態度次第だ」


シュラは腕を組み値踏みするような目で小蘭を見下ろした。


「やめてほしいなら、どうすりゃいいか分かってんだろ?」


彼は地面に転がったままだったナイフを拾い上げると、再び小蘭の手にその柄を強引に握らせた。冷たい金属の感触が、震える指先に伝わる。
この少女が、大切な友人の名を守るために目の前の恩人を手にかける——そんな地獄のような二者択一を自らの手で作り出すこと。
それこそがオールマイトに与えられた屈辱を紛らわせる最も甘美な愉悦だった。


「レイくんを……殺せば……マオマオは」


小蘭の手の中でナイフの刃が震えとともに小さく揺れていた。
だが、その手はいつまで経っても振り下ろされる気配がない。


「あんまりぐずぐずしてっと俺の気が変わるぜ」


「あ……あ……」


シュラは腕を組んだまま、ゆっくりと言葉を続けた。


「マオマオを見つけたらどうしてやろうかね。ただ殺すだけじゃ、面白くもなんともねえ」


「……っ」


「とりあえず犯した後、腕をへし折って、脚をへし折って、指を一本ずつ潰してよ。声も出せねえくらい痛めつけてから、じっくり時間かけて殺してやる。徹底的にな」


シュラの口元には心底愉快そうな笑みが浮かんでいた。


「小蘭の目の前でやってやってもいいんだぜ。友達が壊れてくのを、たっぷり見せてやるよ」


「やめて……!お願い、やめて……!」


小蘭は悲鳴のような声を上げた。


「だったら決めろよ」


シュラの声が地の底から響くように低くなる。


「その兄ちゃんを殺すか。マオマオが俺の手で嬲り殺しにされるのを見るか」


「あ……あああ……」


小蘭の瞳から次々と涙が溢れ出す。ナイフを握る手がこれまで以上に激しく震えていた。


「レイくん……ごめんなさい……ごめんなさい……!」


掠れた声で彼女は繰り返し謝罪の言葉を口にした。地面に横たわるレイへと震える足取りで近づいていく。
レイは朦朧とする意識の中で喉の奥からくぐもった声を絞り出した。折れた両腕、両脚。もはや抵抗する術も逃げる術もない。
砕かれた顎は彼女の名を呼ぶことすら許さない。
だが、その目には恨みや怒りの色はなかった。ただ静かな諦念と彼女を案じる想いだけが浮かんでいる。


「……ん、う……」


言葉にならない掠れた唸り。だがそれは、まるで気にしないでいい、君は悪くないとでも言うような穏やかな響きを帯びていた。


「うわああああああ……!ごめんなさい……!ごめんなさい……!」


小蘭は泣き叫びながらナイフを握った手を振り上げた。
目を固く閉じ、嗚咽混じりに謝罪の言葉を繰り返しながら——その刃をレイの喉へと突き立てた。

ぐしゃり、という重い感触が、手のひらに伝わる。


「——っ」


レイの体が大きく痙攣した。喉から溢れ出た血が瞬く間にアスファルトを赤く染めていく。
噴き出した血飛沫が小蘭の顔半分に降りかかった。頰から額にかけて生温かい血液がべっとりと張り付く。


「あ……あ……」


小蘭はナイフを握ったまま、その場に凍りついていた。目の前でレイの体から徐々に力が抜けていく。荒かった呼吸が次第に浅くなり——そして完全に止まった。



【レイ・ペンバー@DEATH NOTE 死亡】
【残り83人】




小蘭の手からナイフが滑り落ちた。金属が地面に当たる、乾いた音が響く。
彼女は両膝から崩れ落ちるように、その場に座り込んだ。
返り血で真っ赤に染まった顔の半分と涙でぐしゃぐしゃになったもう半分。その対比が彼女の犯した行為の重さを何よりも雄弁に物語っていた。


「殺人処女卒業おめでとう。これでお前もこっち側だ」


シュラはにやりと笑った。十文字の傷が朝の薄明かりの下で醜悪に歪む。


「あ……あああ……」


声にならない嗚咽が、喉の奥から漏れ続ける。震える両手を見つめ、そこに残った感触——人の命を絶った、その生々しい感覚に小蘭の思考は完全に麻痺していた。


「えるクン……えるクン、助けて……!」


震える声で彼女は通信機に向かって叫んだ。


「たすけて……!わたし、わたし……!」


「あ?」


シュラの片眉がぴくりと動いた。
小蘭の耳元に嵌められた小さな機器。しゃがみ込んで小蘭の耳元を覗き込んだ。
この島に来て以来、シュラは支給されたスマートフォンを触ったことで機械のことをある程度は理解している。故にこれが離れた相手と会話を行う通信機器だとわかった。


「へえ。誰かと繋がってやがったのか」


シュラは興味深そうに口の端を吊り上げると、小蘭の耳から無造作にイヤホンを引き抜いた。


「あ……!」


「ちょっと借りるぜ」


シュラはそれを自分の耳に押し当てた。回線の向こうから微かな息遣いが伝わってくる。


「聞こえてるか小蘭のお仲間さんよ」


『……誰です』


低く、冷たい声が返ってきた。感情の起伏をあえて抑え込んだような、探るような口調。


「俺はシュラだ。この兄ちゃんは死んだ。小蘭の手でな」


『……ええ。声だけは、しっかりと聞こえていましたから』


冷静な声音。だが、その底には怒りが滲んでいた。


「一部始終聞いてたくせに、この期に及んで、てめえは声だけかよ」


シュラはレイの亡骸と、その傍らで震える小蘭とを交互に見やった。


「こんな小娘を表に立たせて自分は安全な場所に隠れてるとはな。とんだ臆病者もいたもんだ」


シュラの声には嘲りが滲んでいる。


「これから小蘭は俺のオモチャだ。文句があるなら、てめえも表に出てきてみろよ。そんな度胸、あるとは思えねえがな」


シュラはそう言い放つと通信機を握った手に力を込めた。


「じゃあな。せいぜい安全な場所で震えてろよ、タマナシ野郎」


プラスチックの割れる音とともに通信機が握り潰される。それをシュラは無造作に地面へと放り捨てた。
そして地面に座り込んだままの小蘭へと視線を戻した。


「さて、と」


シュラは返り血に染まった小蘭の顔を興味深そうに覗き込んだ。


「なあ、小蘭」


「な……に……」


小蘭が虚ろな目でシュラを見上げた。


「これから俺たちは仲間だ」


その言葉の意味を小蘭はすぐには理解できなかった。


「簡単な話だよ」


シュラは口の端を吊り上げながら悪辣な思案をそのまま言葉に乗せた。


「俺が他の参加者をぶちのめして、身動き取れねえようにしてやる。腕折って、脚折って、逃げられないようにな」


「……っ」


「そんで最後のトドメだけは——お前に刺してもらう」


「そ、そんな……」


「嫌だとは言わせねえぜ。もう一人殺っちまったんだ。今更、綺麗な手に戻れるとでも思ってんのか?」


シュラの言葉は容赦なく小蘭の心を抉った。彼女はすでに自らの手で一つの命を絶っている。その事実から逃れることはできない。


「マオマオとやらを見逃してほしけりゃ、俺の言うこと聞くんだな」


「あ……あ……」


「返事は?」


「……はい」


絞り出すような掠れた声。小蘭の瞳には、もはや先ほどまでの明るさは欠片も残っていなかった。
ただ絶望と、諦めと、そして自らが犯した行為への罪悪感だけが深く深く沈殿している。
シュラは満足げな笑みを浮かべながらレイの支給品を回収した後、返り血に染まった小蘭の腕を無造作に掴んで立たせた。
小蘭は抵抗する気力もなく、ただ操り人形のようにシュラに引かれるまま歩き出した。
地面に横たわったままのレイの亡骸を一度も振り返ることなく。
早朝の渋谷に二人分の足音だけが静かに響いていった。


【E-5/早朝/1日目】

【小蘭@薬屋のひとりごと】
[状態]:精神的損耗、返り血
[装備]:ナイフ
[道具]:基本支給品一式x3
[思考]:シュラに服従することでマオマオを守る。
1:……レイさんを私が……。

【シュラ@アカメが斬る!】
[状態]:負傷、疲労(小)
[装備]:帝具「次元方陣シャンバラ」
[道具]:基本支給品一式、ペンチ、不明支給品× 3~6
[思考]:ワイルドハントとイェーガーズを従えて玩具を蹂躙する。
1:イゾウを探す道中は新しいオモチャ(小蘭)で遊ぶ。
2:参加者を半殺しにし、トドメは小蘭に刺させる。
3:他のワイルドハントのメンバーも集結させる。
4:エスデス、イェーガーズを大臣の権力で従わせる。
5:戦力を整えてからオールマイトに報復する。

※一度の戦闘で使用できるシャンバラの回数は二回です。
※使用時の体力消費を%で計算することでシュラに限らず全ての参加者が同様に二回までとします。




通信機が握り潰される破壊音。
それがLの鼓膜に届いた最後の音だった。
ノイズと共に回線は完全に沈黙した。小蘭の声も、あの男の下劣な哄笑も、すべてが唐突に断ち切られる。
Lはしばらくの間、外したイヤホンを片手にただ静止していた。
窓の外では空がわずかに白み始めている。渋谷の街並みは、依然として無人のまま静寂に沈んでいる。
Lはゆっくりと息を吐き出した。


「……これは」


Lは握り締めたゼリー飲料のパウチを無意識のうちに強く押し潰していた。中身が、指の隙間から溢れ出す。


「これは看過できない」


声が自分でも驚くほど低く掠れていた。
これまでLは幾多の凶悪犯罪者と対峙してきた。無差別殺人。組織的な虐殺。愉快犯。金銭目的の殺害。政治的動機による暗殺。人間が生み出しうる悪意の形を、彼はほとんど網羅的に見てきたつもりでいた。
だが今しがた耳にしたあの男、シュラと名乗った男の所業はその中でも最悪の部類に位置する。
いや。最悪という表現すら生温いかもしれない。
銃を所持したFBI捜査官を容易に制圧する。それだけならば異常に身体能力の高い犯罪者として処理できる。
だがあの男は小蘭の友人を殺すと脅し、彼女の意志を、彼女の倫理観を、彼女の心そのものを、じわじわと蹂躙していった。
恐怖を刷り込み、絶望を植え付け、最後には恩人を手にかけさせる。
一人の人間が持つ良心という名の最も繊細な部分を意図的に、そして愉悦を伴って粉々に打ち砕く行為。肉体的な殺害よりもなお悪質な部類に属する犯罪だった。


「……許せません」


Lはそう呟いた。誰に向けてでもない独り言。
だが、その言葉には、これまでの彼が滅多に口にしたことのない剥き出しの感情が宿っていた。
Lにとって、これまで最大の悪とはキラだった。超常的な力を用い、自らを裁定者と定め、無数の命を一方的に断罪してきた凶悪犯。
キラはノートに名前を書くという、ある種の距離を保った殺害方法を用いる。
標的の顔を見ず、断末魔を聞かず、返り血を浴びることもない。それは正義という名目に酔いしれるための卑怯な逃避でもある。
だがシュラは違う。
あの男は自らの拳で直接的に相手を蹂躙する。
相手の恐怖を、苦痛を、絶望を、直接的に浴びながら、それを愉悦として享受する。
どちらがより人間として救いようがないのか、それを論じることに今はさしたる意味はない。

ただ確かなことは一つ。シュラを一刻も早く止めなければならない。
Lは床に散乱したゼリー飲料の空袋を無造作に踏みつけながら、部屋の中を歩き回った。思考がいつになく激しく渦巻いている。
小蘭は今、シュラの玩具にされている。友人を殺すと脅され抵抗する意志すら奪われた状態で、これから先も利用され続けることになる。
彼女はLにとって決して有能な協力者ではなかった。むしろ、これまでの探偵人生の中で、最も扱いに手を焼いた人間だったと言っていい。
IQという指標で測るならば、おそらく彼の周辺にいる人間の中でも、決して高い数値を示す存在ではなかっただろう。会話は成立しにくく指示は的確に伝わらず無邪気な脱線を繰り返す。
だが、それでも彼女はLの指示に従って、この危険な島を歩き続けてきた協力者だった。


「……小蘭さん」


その名をLは静かに呟いた。
彼女は戦闘の経験もなく、暴力に対する耐性もない、ただの後宮の下女に過ぎなかった。そんな彼女に、あれほどの恐怖と絶望を叩きつけたシュラという男の所業を彼は決して許容できなかった。
問題は今、Lに何ができるかということだった。


「……くそ」


柄にもなくLは悪態をついた。
これまで彼は盤面の外側からこの殺し合いを観測し、駒を動かすことで事態を掌握するつもりだった。
直接的な危険を冒すことなく頭脳のみでこの状況を支配する。それが彼にとって最も合理的で最も効率的な戦略だったはずだ。
だが、今、その戦略そのものが根底から揺らいでいる。
シュラという男はLのことを"タマナシ"と嘲笑った。声だけで人を動かし、自分は安全な場所に隠れている臆病者だと。
その指摘をLは完全には否定できなかった。
だが今更悔やんだところで、何も変わらない。Lに必要なのは、感傷ではなく、次の一手だった。
小蘭の通信機は既に破壊されている。彼女の現在位置を追跡する手段は失われた。
しかも相手は銃を持ったFBI捜査官を瞬時に制圧した男だ。
仮にLが単独で接触したとしても無惨に殺されるのは目に見えている。

悔しい。

この感情を、"悔しい"という言葉で表現することに、彼は、ある種の抵抗を覚える。
だが今この瞬間、Lの中に渦巻いているものを、他にどう表現すればいいのか適切な言葉が見つからなかった。
打つ手がない。
情報も、位置も、有効な戦力も、今のLの手元には、何一つ存在しない。
ワタリはいない。この島には彼のような有能な補佐は存在しない。
L一人の頭脳だけで、この状況を打開しなければならなかった。


「……レイ・ペンバー」


彼はその名を、静かに口にした。
あの死んだはずの男。かつてキラに殺害された捜査官が、なぜこの殺し合いの島に存在していたのか。
その謎すらまだLは解けていない。
彼が本当にレイ・ペンバー本人であったのか、それとも別の誰かであったのか。
その真相を確かめる術も、今となっては失われてしまった。
彼が命を落とした今、確かめる術はもう永遠に失われたのだ。


「一つ、また一つと、手がかりが失われていく」


この殺し合いという舞台において、時間は決してLに味方しない。
四十八時間というタイムリミット。刻一刻と失われていく参加者の命。
そして、今この瞬間も小蘭はあの男の玩具として、その尊厳を踏みにじられ続けているかもしれない。
Lは、一度、深く息を吸い込んだ。感情に飲まれることは、判断力の低下を招く。
それは、これまでの経験則が彼に教えてくれた鉄則だった。
冷静に。あくまで、冷静に。
だが、その冷静さの奥底で確かに燃え続けている炎がある。


「シュラ……お前を必ず捕らえる」


声に出してLは宣言した。


「お前をこの手で、いや、この頭脳で確実に追い詰めてみせる」


まずはこの島にいる他の参加者たちの動向を把握して、新たな協力者を見つけ出すこと。
そしてシュラという男の行動パターンを分析し、次にどこへ向かうのかを予測すること。


「……甘いものが、足りませんね」


Lは床に散らばったゼリー飲料の空袋の山を一瞥し、そう呟いた。皮肉めいた自嘲。
新しいゼリー飲料のパウチを手に取り封を切る。

――ゴクッ

喉を通る、冷たい感触。
思考が少しずつ、しかし確実に冷静さを取り戻していく。


「小蘭さん」


届くはずのないその名をLは静かに呼びかけた。


「あなたを、必ず助け出します。そしてシュラには相応の報いを受けさせる」


窓の外、白み始めた早朝の空を見つめながら、彼は新たな決意を固めていた。


「……次の一手を慎重に選ばなければ」


独り言が無人の部屋に溶けていく。
シュラという男の存在は、これまでの彼の戦略を根本から見直させるに足る明確な脅威として刻み込まれていた。


【L@デスけ(ドラマ版デスノート)】
[状態]:屈辱
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式x3、ゼリー飲料x10
[思考]:殺し合いの謎を解き、森口へ"判決"を下す。
1:小蘭を救出して、シュラを必ず捕らえる。
2:他の参加者たちの動向を把握して、新たな協力者を見つけ出す。
3:シュラの行動パターンを分析し、次の動向を予測する。
4:……キラ、貴方は生涯をかけて絶対捕まえてみせます。





前回 キャラ 次回
030『操作系は早い者勝ち』 032『死の飛翔』
008『土 の 味』 シュラ 052『イナズマイレブン シャドウサイド』
採用No.17『甘みが足りない』 小蘭 052『イナズマイレブン シャドウサイド』
採用No.17『甘みが足りない』 L 057『逆襲のL ~死神が迎えに来た探偵~』
採用No.17『甘みが足りない』 レイ・ペンバー

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最終更新:2026年10月15日 21:12