『ゆきゆきて戦車道』
(キャラ)西住みほ、園みどり子、泉美
時刻は深夜零時を回ったばかり。
西住みほは周囲を見回した。高層ビルが立ち並ぶ景色。見慣れた大洗の町並みとはまるで違う。まるで誰かが巨大な街の一角を切り取って、別の世界に放り込んだかのようだった。
首の後ろに重く食い込む金属の感触。指を這わせると、そこには冷たい首輪が固く締め付けられていた。
頭が痛い。記憶が断片的だ。
自室で明日の戦車道の練習メニューを考えていたはずだったが気がついた時にはここに倒れていた。
みほは震える手でデイパックからスマホを取り出した。画面をタップすると、インストール済みのアプリが起動し、ゲームのルールが淡々と表示される。
48時間という制限時間。最後の生存者に与えられる「元の世界への帰還」と「あらゆる願いを叶える権利」。そしてこの首輪が爆発すれば即死であること。
みほの指先が、小刻みに震えた。
(戦車道じゃない……本当の殺し合い)
胸の奥で何かが軋む。沙織や華、優花里たちとの日々が、脳裏をよぎる。仲間たちと一緒に過ごしたあの時間。
みほは唇を強く結び、ゆっくりと立ち上がった。
デイパックを肩にかけ、スマホを握りしめ、みほは夜の街を歩き始めた。足音が虚しく響く。街の明かりが彼女の小さな影を長く伸ばしていた。
どれくらい歩いただろうか。
「……あれは」
交差点を越えた先、ビルの陰に隠れるようにして身を寄せている小さな人影を見つけた。
おかっぱ頭に、黒系の灰色の髪。145センチという小柄な体躯。見覚えのある制服。
「園さん……?」
みほの声が、思わず漏れた。
園みどり子——風紀委員長のそど子は、びくりと肩を震わせて振り返った。彼女の目が、みるみるうちに見開かれる。
「西住さん……!?」
二人は互いに駆け寄り、思わず手を握り合った。
知り合いの顔を見た安堵が、二人を同時に包み込んだ。みほの目にも、そど子の目にも、ほんの少しだけ涙が浮かんでいた。
「園さんも……ここにいたんですね」
「ええ、目が覚めたらこの場所に」
そど子はいつもより少し声が上ずっていた。几帳面で厳格な彼女にとっても、この異常な状況は心の平穏を大きく乱していたようだ。
「園さん、怪我はありませんか? 首の輪、痛くないですか?」
「痛みはないけど外せないわ。それにスマホのルール説明。48時間以内に……最後の一人にならないと全員が死ぬ」
みほは小さく頷いた。
「はい……信じたくありませんが。こんな残酷なゲームに巻き込まれるなんて」
「風紀委員として、こんな無法な状況は到底許せない」
そど子は制服の裾を正し、いつもの真面目な表情を取り戻そうと努めているようだった。
「そうですね。まずは他に知り合いがいないか探しましょう。沙織さんや華さん、優花里さんたちもこの島にいるかもしれません」
「ええ。地図アプリを活用すれば効率的に捜索範囲を決められるわ」
二人は顔を見合わせ、互いに頷いた。
「では、行動を開始しましょう」
みほがそう言って立ち上がろうとしたその時——
突然、そど子の小さな体が激しくよろめいた。
「っ……!?」
次の瞬間、そど子の頭部に赤黒い穴が穿たれ、鮮血と脳漿が後方へ勢いよく飛び散った。
小さな体は一瞬硬直し、まるで糸の切れた人形のように、その場に崩れ落ちた。
「……園さん?」
みほの瞳が大きく見開かれる。
狙撃手(スナイパー)!!
遠距離からの狙撃——銃声は一切聞こえなかった。ただ、園みどり子の小さな体が、突然倒れ込む光景だけが、残酷なまでに鮮明に焼き付いた。
「園……さん……?」
みほは動けなかった。
いかに戦車道で数々の危機を経験してきたとはいえ、仲間が目の前で即死するなどという現実は、初めてだった。頭では理解できても、体が恐怖に支配され、指一本満足に動かせない。
(園さん……? 嘘……? さっきまで、話していたのに)
しかし追撃は来なかった。
みほは何とか体を動かし、震える足でそど子の亡骸から離れ、暗い路地裏へと必死に逃げ込んだ。
背後から狙撃手の視線を感じるような気がして、息を殺しながら夜の渋谷を駆けた。
◆
一方、渋谷の雑居ビル屋上。
泉美——ココロという源氏名のEphemereのキャバクラ嬢は、冷たいコンクリートの床に片膝をついたまま、スナイパーライフルを構えた姿勢をゆっくりと解いた。
泉美は清楚で理知的な顔立ちをした美しい女性だった。
大企業への就職を狙える有名大学の3年生。黒髪を綺麗にまとめ、程よく豊かなバストを控えめな服装で包む理知的なリアリスト。
(48時間以内に助けが来る可能性はまずないでしょうね)
現実を冷静に分析した結果、泉美はすぐに結論を出した。
このゲームで生き残るには優勝以外に道はない。
そして非力な女である自分が優勝するためには初動で優位を築く必要がある。
幸運だったのは、支給品の一つがこのスナイパーライフルだったことだ。
序盤は弱い参加者たちが数多く残っており、それらが油断している時間帯。
ここで殺害数を増やし、相手の支給品を奪い取れば有利にゲームを進められる。
泉美は小さく鼻を鳴らし、ルーフの縁から下の道路を眺めた。
先ほど仕留めた小柄なおかっぱの少女の死体が、血だまりの中に横たわっている。
その隣で呆然と立ち尽くしていたもう一人の少女は、すでに路地に逃げ込んでいた。
追撃しなかったのは、単純にこのライフルにまだ慣れていなかったからだ。
初弾は当たったが照準の微調整に手間取った。
(次は逃がさないようにしないと)
泉美は唇の端をわずかに歪め立ち上がった。
スナイパーライフルを肩に担ぎ、屋上から降りるための非常階段に向かう。
目的はさっき殺した少女のデイパックと所持品の回収だ。
清楚な顔立ちに似合わぬ冷たい微笑みを浮かべ、泉美は夜の渋谷に溶け込むように動き始めた。
【泉美@みいちゃんと山田さん】
[状態]:冷静沈着
[装備]:スナイパーライフル
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~2
[思考]:序盤の弱い参加者を射殺、支給品を回収して優位を築く。
1:先ほど仕留めた少女の所持品を回収し装備を強化する。
2:スナイパーライフルの扱いに慣れる。
3:次は複数人いても全員始末する。
【西住みほ@ガールズ&パンツァー】
[状態]:深刻なショックと恐怖、軽いパニック状態
[装備]:
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1 ~3
[思考]: とにかくこの場から離れ、安全な場所へ逃げる 。
1:園さん……ごめんなさい……私、何もできなかった。
2:沙織さん、華さん……優花里さん、誰か……助けて。
【園みどり子@ガールズ&パンツァー 死亡】
最終更新:2026年08月09日 18:33