『汝の敵を愛せよ』
新約聖書「マタイによる福音書」第5章、「ルカによる福音書」第6章より
『Pascha~復活の日~』
皆さんこんばんは、プラネットセブンです
今日はとても良い日でした
今日はとても良い日でした
なんと、左股関節脱臼と左大腿骨剥離骨折の大怪我を負っていたサクラグローリアさんが一年半振りにトレセン学園に帰ってきたのです
それだけでも大ニュースだというのに、今年の宝塚記念に出走を表明したものですから学園内どころか夕方以降のニュースはこの話題で持ちきりです
それだけでも大ニュースだというのに、今年の宝塚記念に出走を表明したものですから学園内どころか夕方以降のニュースはこの話題で持ちきりです
『一年半ものブランクがあるのに本当に走れるのか?』
『股関節脱臼と言う大怪我から競技ウマ娘がレースに復帰できた例は今まで無い
これがもし上手く行けばウマ娘スポーツ医学の新たな可能性がまた拓かれる』
『復帰することはめでたいが、彼女はまた全盛期のような力強い走りを見せることは出来るのか?』
『競技ウマ娘としての彼女の本格化期間は果たして残っているのか?
復帰できたとしてもパフォーマンスは衰えているのではないか』
『股関節脱臼と言う大怪我から競技ウマ娘がレースに復帰できた例は今まで無い
これがもし上手く行けばウマ娘スポーツ医学の新たな可能性がまた拓かれる』
『復帰することはめでたいが、彼女はまた全盛期のような力強い走りを見せることは出来るのか?』
『競技ウマ娘としての彼女の本格化期間は果たして残っているのか?
復帰できたとしてもパフォーマンスは衰えているのではないか』
栗東寮ロビーのテレビ画面では有識者やコメンテーターが色々な意見を好きなように言い募っています
ソファに座りながらそれをボンヤリと眺めている私に後ろから声がかかりました
「ども、ネット先輩、お隣失礼しまっす!」
「こんばんは、ベレヌス」
「こんばんは、ベレヌス」
整髪料で固めたツンツンヘアーが目立つ2年下の後輩が隣にやってきました
リザの妹であるこの子、レッドベレヌスとは、
時々併走や練習を共にすることもあるのでそこそこ打ち解けています
リザの妹であるこの子、レッドベレヌスとは、
時々併走や練習を共にすることもあるのでそこそこ打ち解けています
「いやー、サクラグローリア先輩の復帰ニュース、すっごい扱いですね
流石無敗の黄金桜ってとこですか」
「そうだね、あの子はやっぱり凄く人目を引くし、それだけの実績もあるからファンの皆さんの注目度も凄い事になってるよねえ」
流石無敗の黄金桜ってとこですか」
「そうだね、あの子はやっぱり凄く人目を引くし、それだけの実績もあるからファンの皆さんの注目度も凄い事になってるよねえ」
「で、ネット先輩はどう思っておられるんですか?」
「どうって?」
「股関節脱臼なんて大怪我をして、一年半レースから離れてる
そんな黄金桜がまだ華を咲かせていられるのかって事です」
「どうって?」
「股関節脱臼なんて大怪我をして、一年半レースから離れてる
そんな黄金桜がまだ華を咲かせていられるのかって事です」
ああ、そうか
「貴女もテレビの人達と同じで
サクラグローリアさんがもう、テッペンを過ぎちゃったと思ってるの?」
この子はあの子と走ったことがなかったんだ
「貴女もテレビの人達と同じで
サクラグローリアさんがもう、テッペンを過ぎちゃったと思ってるの?」
この子はあの子と走ったことがなかったんだ
「常識で考えればレース勘を取り戻すのってブランクが長いと難しくありませんか?
本格化期間はまだ残ってるにしても完璧に元通りとはいかないでしょうし」
そうだよね、レースでのあの子を知らないならそう思うよね
本格化期間はまだ残ってるにしても完璧に元通りとはいかないでしょうし」
そうだよね、レースでのあの子を知らないならそう思うよね
でもね
「それはないかな」
そんなことはあの子には有り得ないんだよ
「それはないかな」
そんなことはあの子には有り得ないんだよ
「サクラグローリアさんがG1で走ってる所を生で見たことはある?」
「え?生でですか?
いや、録画は見たことありますがレース場ではないです」
「じゃあ判らないよね」
「何がですか?」
「え?生でですか?
いや、録画は見たことありますがレース場ではないです」
「じゃあ判らないよね」
「何がですか?」
「あの子達が、あの子がどれだけのバケモノなのか」
「え?」
ベレヌスの表情が何故か引き攣った
「あの子達、ミューズの世代の子はね
そんな半端なこと考えてレースしてないよ」
ああ、そんな程度の後輩達であったなら私達がこれ程までに食い荒らされるものか
ベレヌスの表情が何故か引き攣った
「あの子達、ミューズの世代の子はね
そんな半端なこと考えてレースしてないよ」
ああ、そんな程度の後輩達であったなら私達がこれ程までに食い荒らされるものか
「は、半端なこと、デスカ?」
そんなに汗かいてどうしたんだろう?
そんなに汗かいてどうしたんだろう?
「そう、病気で万全の状態じゃない、脚の調子が悪い、メンタルが揺らいでる、作戦が上手くまとまらない」
そこで一つ息を継ぐ
「『その程度』のことで負けること、ベストパフォーマンスを出せない事を自分に許せるような
『覚悟の足りない』走りはしていない」
「カ、覚悟デスカ?」
声がかすれてる、喉乾いたのかな?
『覚悟の足りない』走りはしていない」
「カ、覚悟デスカ?」
声がかすれてる、喉乾いたのかな?
「うん、命を捨てても勝つとか言うような薄っぺらいものじゃない、何があっても1位をもぎ取って帰って来ると言う覚悟
去年の春天や宝塚記念でシンボリレクイエムがさらけ出したような、隙だらけの姿じゃない
本当に自分で自分を100%使い切る為のメンタルセット
それがあの子達が強い理由だよ」
おっと、話しててつい腕に力が入っちゃった
スカートが皺になっちゃうなあ
去年の春天や宝塚記念でシンボリレクイエムがさらけ出したような、隙だらけの姿じゃない
本当に自分で自分を100%使い切る為のメンタルセット
それがあの子達が強い理由だよ」
おっと、話しててつい腕に力が入っちゃった
スカートが皺になっちゃうなあ
「メンタル、セット、デスカ」
「そう、目に泥が入ろうが
蹄鉄が外れようが
腱が切れようが
腕がもげようが
脚が折れようが
その時の自分が出せる最高速度でゴール板まで駆け抜ける為に何が出来るかを常に計算し続ける
それがあの子の、サクラグローリアの本当の強さ」
「そう、目に泥が入ろうが
蹄鉄が外れようが
腱が切れようが
腕がもげようが
脚が折れようが
その時の自分が出せる最高速度でゴール板まで駆け抜ける為に何が出来るかを常に計算し続ける
それがあの子の、サクラグローリアの本当の強さ」
ふう、と一息つく
「そんな子とジュニアからずっとバチバチやってるもんだから、
あの世代の子達はね、皆その覚悟を決めてるの」
私達、星の世代に足りなかったのはきっとその強靱な精神
あの世代の子達はね、皆その覚悟を決めてるの」
私達、星の世代に足りなかったのはきっとその強靱な精神
「サクラグローリアの座右の銘を聞いたことある?
いっそ清々しすぎて笑えてくるよ?」
「イエ、ゴザイマセン」
ちょっと震えてる?
この季節寒いって事は無いと思うんだけどなあ
いっそ清々しすぎて笑えてくるよ?」
「イエ、ゴザイマセン」
ちょっと震えてる?
この季節寒いって事は無いと思うんだけどなあ
「燃えるなら指の先まで、髪の先まで」
「ヒャイ」
「最初から安全マージンを取って競争ウマ娘人生を送ろうと思ってないみたいの、あの子」
「ヒャイ」
「最初から安全マージンを取って競争ウマ娘人生を送ろうと思ってないみたいの、あの子」
思わず口元がほころぶ
ああ、私は今、とても好戦的な笑みを浮かべているのだろう
「そんな子が、一年半振りにレースに出走するのよ?
万全でない筈がないでしょう?」
そして、万全のサクラグローリア、シンボリレクイエム、パストラルの三人を、
まとめて喰い千切る機会がやっと私にやってきた
ああ、愉しみだ
この胸の中に押し込めた不定形の私を
最高の形で解き放てる時間が具体的に示されたのだ
これを悦びとせずにどうして競争ウマ娘だと言えるだろう
「だからね、私は宝塚記念に出走表明する
そして私とリザで、ミューズの世代に挑戦状を叩きつけてやるの
きっと、凄く気持ち良いわ」
今から愉しみで滾って仕方ないくらい
ああ、私は今、とても好戦的な笑みを浮かべているのだろう
「そんな子が、一年半振りにレースに出走するのよ?
万全でない筈がないでしょう?」
そして、万全のサクラグローリア、シンボリレクイエム、パストラルの三人を、
まとめて喰い千切る機会がやっと私にやってきた
ああ、愉しみだ
この胸の中に押し込めた不定形の私を
最高の形で解き放てる時間が具体的に示されたのだ
これを悦びとせずにどうして競争ウマ娘だと言えるだろう
「だからね、私は宝塚記念に出走表明する
そして私とリザで、ミューズの世代に挑戦状を叩きつけてやるの
きっと、凄く気持ち良いわ」
今から愉しみで滾って仕方ないくらい
「(^∇^)」
返事がないことに気付き、隣をみるとベレヌスはソファに背中を預けて寝てしまっていた
疲れてたのかな?
でもね、大口開けて白目を剥いて寝るのはちょっと年頃のウマ娘としてどうかと思うよ?
返事がないことに気付き、隣をみるとベレヌスはソファに背中を預けて寝てしまっていた
疲れてたのかな?
でもね、大口開けて白目を剥いて寝るのはちょっと年頃のウマ娘としてどうかと思うよ?
ベレヌスを部屋まで届けた後、私はロビーへと戻ってきました
テレビの画面では、サクラグローリアさんが出走表明したときの映像が流れていました
『ブランクがあると言っても、レースに出たらそれは言い訳になりません
私は今の私に出来る最高の走りをお見せする事で、
待って下さっていたファンの皆様や、同じレースを走るライバル達へのお礼をさせて頂きます』
テレビの画面では、サクラグローリアさんが出走表明したときの映像が流れていました
『ブランクがあると言っても、レースに出たらそれは言い訳になりません
私は今の私に出来る最高の走りをお見せする事で、
待って下さっていたファンの皆様や、同じレースを走るライバル達へのお礼をさせて頂きます』
そう、お礼をしたいのは私も同じ
貴方がいない間に私も強くなった
私にこれだけの強さをくれた貴方達ミューズの世代へ、
宝塚記念では最高のお礼をさせて貰おう
貴方がいない間に私も強くなった
私にこれだけの強さをくれた貴方達ミューズの世代へ、
宝塚記念では最高のお礼をさせて貰おう