21:30
栗東寮トレーニングルーム
栗東寮トレーニングルーム
ヒュウウウウウ
ギシリ
ヒュウウウウウ
ギシリ
ギシリ
ヒュウウウウウ
ギシリ
音がする
人気のないトレーニングルームの中で音がする
人気のないトレーニングルームの中で音がする
ヒュウウウウウ
ギシリ
ヒュウウウウウ
ギシリ
ギシリ
ヒュウウウウウ
ギシリ
一定のリズムを保って、規則正しく音がする
音は一人のウマ娘から響いている
音は一人のウマ娘から響いている
ヒュウウウウウ
ギシリ
ヒュウウウウウ
ギシリ
ギシリ
ヒュウウウウウ
ギシリ
ウマ娘はバーベルを背負って、黙々とスクワットを続けている
トレーニングの邪魔にならないよう、黒鹿毛のロングヘアーは編み込みでコンパクトにまとめられている
トレーニングの邪魔にならないよう、黒鹿毛のロングヘアーは編み込みでコンパクトにまとめられている
ヒュウウウウウ
ギシリ
ヒュウウウウウ
ギシリ
ギシリ
ヒュウウウウウ
ギシリ
ウマ娘の身に付けているシャツも、ハーフパンツも、ヘアバンドも汗でぐっしょりと濡れている
しかしスクワットの動きは規則正しく、乱れはない
しかしスクワットの動きは規則正しく、乱れはない
ヒュウウウウウ
ギシリ
ヒュウウウウウ
ギシリ
ギシリ
ヒュウウウウウ
ギシリ
「ひゃ、っくぅっ!」
今日の目標回数を達成したウマ娘は、そっとバーベルを背中から下ろした
今日の目標回数を達成したウマ娘は、そっとバーベルを背中から下ろした
無音の部屋の中で、荒い呼吸音がひとしきり響く
息を整えタオルで汗を拭うと、ウマ娘は丁寧にバーベルからプレートを取り外して片付け、床の拭き掃除をはじめた
息を整えタオルで汗を拭うと、ウマ娘は丁寧にバーベルからプレートを取り外して片付け、床の拭き掃除をはじめた
『夢のあとさき』
フジキセキは栗東寮の寮長である
彼女の職務には、寮生の夜間の生活指導も含まれている
その内容は消灯時刻になっても廊下をうろうろしている者に自室に戻って寝るように促す、
共有スペースに居座って遅くまで話し込んでいる者達を解散させる、
寮から脱走して近隣のコンビニへと夜食を買いに行こうとする者を捕まえる等多岐にわたる
彼女の職務には、寮生の夜間の生活指導も含まれている
その内容は消灯時刻になっても廊下をうろうろしている者に自室に戻って寝るように促す、
共有スペースに居座って遅くまで話し込んでいる者達を解散させる、
寮から脱走して近隣のコンビニへと夜食を買いに行こうとする者を捕まえる等多岐にわたる
そんな職務の中でも比較的良くあるのが
「ポニーちゃん、そんなところで寝ていたら体に良くないよ」
「ふわっ?ゴボガッ?!」
「ふわっ?ゴボガッ?!」
こうして風呂に浸かったまま寝落ちした寮生を起こして部屋に戻すことだったりする
フジキセキは鼻に入った湯に苦しみ咳き込んでいるレッドベレヌスに湯から上がるようにもう一度促した
「ベレヌス、君は最近寝落ちしてることが多くないかい?」
風呂から上がって頭にタオルを巻いたレッドベレヌスを、寮長室のテーブルの前に座らせてフジキセキは問い掛ける
「トレーニングに熱心なのは良いことだけど、やりすぎは故障の元だよ?」
「はい、申し訳ありません!
お気遣い頂きありがとうございます!」
「消灯時刻過ぎてるし、もう少し声は抑えめにね?」
「失礼しました……」
風呂から上がって頭にタオルを巻いたレッドベレヌスを、寮長室のテーブルの前に座らせてフジキセキは問い掛ける
「トレーニングに熱心なのは良いことだけど、やりすぎは故障の元だよ?」
「はい、申し訳ありません!
お気遣い頂きありがとうございます!」
「消灯時刻過ぎてるし、もう少し声は抑えめにね?」
「失礼しました……」
さて、素直すぎるきらいのある目の前の皐月賞バに、
どのように話を聞くべきか、とフジキセキは思案する
皐月賞を獲って以来、彼女がいささか入れ込み過ぎた様子でトレーニングに打ち込んでいるのは栗東寮の寮生には有名な話である
トレーニングに熱が入る理由には大凡予想がつくが、
自身も故障でクラシック三冠に挑戦出来なかったフジキセキとしては、この有望な可愛い後輩に同じ思いをして貰いたくはなかった
どのように話を聞くべきか、とフジキセキは思案する
皐月賞を獲って以来、彼女がいささか入れ込み過ぎた様子でトレーニングに打ち込んでいるのは栗東寮の寮生には有名な話である
トレーニングに熱が入る理由には大凡予想がつくが、
自身も故障でクラシック三冠に挑戦出来なかったフジキセキとしては、この有望な可愛い後輩に同じ思いをして貰いたくはなかった
「ベレヌス、毎日この時間までトレーニングを続けている君のその努力は素晴らしい
その事自体はトレセン学園の生徒として模範的と言える姿だ」
フジキセキからの唐突な賛辞に照れるレッドベレヌスだが、次の一言でその表情が曇る
その事自体はトレセン学園の生徒として模範的と言える姿だ」
フジキセキからの唐突な賛辞に照れるレッドベレヌスだが、次の一言でその表情が曇る
「ただ、君のトレーナーさんはこの夜間特訓のことを知っているのかい?」
「いえ、トレーナーには話していません」
「それは何故?」
「……話したら、制止されるだろうと思ったからです」
「では何故、君は止められると判った上で特訓を続けているんだい?」
「いえ、トレーナーには話していません」
「それは何故?」
「……話したら、制止されるだろうと思ったからです」
「では何故、君は止められると判った上で特訓を続けているんだい?」
レッドベレヌスの表情が苦々しいものに変わった
「話したくないのなら話さなくてもいいさ」
驚いたようにレッドベレヌスがフジキセキを見つめる
「ただし、理由を聞かせて貰えないのなら私は寮長の職務として、
無茶なトレーニングで体を壊しそうな寮生についてそのトレーナーに報告しなくてはならない」
そこで一旦話を切ると、真剣な顔でレッドベレヌスの眼を見つめながらフジキセキは続ける
「やれることを全てやってダービーに臨みたい、君がそう考えてやっているのなら
休むのもトレーニングの内、という事を改めて忠告させて貰うけど、
そんな苦々しい表情をするくらいなんだからそうじゃないんだろう?
なら聞かせて欲しいのさ、君がそこまでトレーニングに打ち込みたがる理由を」
無茶なトレーニングで体を壊しそうな寮生についてそのトレーナーに報告しなくてはならない」
そこで一旦話を切ると、真剣な顔でレッドベレヌスの眼を見つめながらフジキセキは続ける
「やれることを全てやってダービーに臨みたい、君がそう考えてやっているのなら
休むのもトレーニングの内、という事を改めて忠告させて貰うけど、
そんな苦々しい表情をするくらいなんだからそうじゃないんだろう?
なら聞かせて欲しいのさ、君がそこまでトレーニングに打ち込みたがる理由を」
フジキセキの真剣な説得に少し悩んでいる様子を見せたレッドベレヌスは、意を決したように真っ直ぐ眼を合わせて話しはじめた
「姉が、引退することになったのはご存じですか?」
「栗東寮のポニーちゃん達のことだからね、残念なニュースも皆耳に入って来るよ」
やはりか
フジキセキの予想は当たっていたようだった
「私が皐月賞を獲ったとき、家族は皆喜んでくれましたが、中でも姉は一番の喜びようでした」
「姉は、プラネットセブンさんを倒したくてクラシック三冠に挑戦して、ご存じのように皐月賞、ダービーと負けて菊花賞でやり返したんですが、やはり皐月賞、ダービーにはかなり悔いがあったみたいで」
「『もっと我がうまく立ち回れていれば両方とは言わずとも、どちらかは獲れていたのではないか、と思う時がある』って去年フランスに行く前に私に話してくれたんです」
「そんな姉の無念を私がやり返した!と皐月賞を獲ったときは最高に嬉しかった、私達姉妹でURAの中長距離G1を全部獲ってやろうと大口を叩いて姉と笑ってた」
「その直後にあの春天でした」
ギシリ
レッドベレヌスの体に力がこもった
「姉さんは春天の前に私に言ってくれた」
「『このレースが我のステイヤーとしての再出発である!
メルビレイに破れ、サクラグローリア、シンボリレクイエムにも後れをとった我が再び世界最強のステイヤーに上り詰めるための試練なのだ!』」
「『我がこの試練を乗り越え世界最強のステイヤーたり得たならば、その最後のライバルはベレヌス、年末に三冠バとなって有馬記念で我を待ち受ける汝しかおらぬ!』って」
ギシリ
ぎしり
こもっている力はどんどん増していく
「栗東寮のポニーちゃん達のことだからね、残念なニュースも皆耳に入って来るよ」
やはりか
フジキセキの予想は当たっていたようだった
「私が皐月賞を獲ったとき、家族は皆喜んでくれましたが、中でも姉は一番の喜びようでした」
「姉は、プラネットセブンさんを倒したくてクラシック三冠に挑戦して、ご存じのように皐月賞、ダービーと負けて菊花賞でやり返したんですが、やはり皐月賞、ダービーにはかなり悔いがあったみたいで」
「『もっと我がうまく立ち回れていれば両方とは言わずとも、どちらかは獲れていたのではないか、と思う時がある』って去年フランスに行く前に私に話してくれたんです」
「そんな姉の無念を私がやり返した!と皐月賞を獲ったときは最高に嬉しかった、私達姉妹でURAの中長距離G1を全部獲ってやろうと大口を叩いて姉と笑ってた」
「その直後にあの春天でした」
ギシリ
レッドベレヌスの体に力がこもった
「姉さんは春天の前に私に言ってくれた」
「『このレースが我のステイヤーとしての再出発である!
メルビレイに破れ、サクラグローリア、シンボリレクイエムにも後れをとった我が再び世界最強のステイヤーに上り詰めるための試練なのだ!』」
「『我がこの試練を乗り越え世界最強のステイヤーたり得たならば、その最後のライバルはベレヌス、年末に三冠バとなって有馬記念で我を待ち受ける汝しかおらぬ!』って」
ギシリ
ぎしり
こもっている力はどんどん増していく
「春天で負けた後、姉さんは『なんの、壁は高ければ高いほどに挑みがいがあると言うものよ!』って笑ってたけど、いつもの高笑いが出なかったし、表情に陰があった」
「その翌日、レース後の精密検査で屈腱炎が判明して姉さんは凄く悩んでました」
「屈腱炎は必ず治らないと決まった病気じゃない、フジ寮長みたいに初期に見つかれば長期療養で完治する可能性もある」
フジキセキは口を挟まなかった
フジキセキの屈腱炎が完治したのはトレーナーの献身的な介護と奇跡的な確率での回復の結果であって、
初期発見後の一般的な経過を示したものではないとここで告げることに意味はないと思ったからだ
「でも、姉さんの屈腱炎はかなり進行していて、日常生活を送る上では問題なくても競争ウマ娘としては致命的なものだった」
「後はご存じの通りです
姉はURAに引退届を提出し、これからの進路をどうするか、トレーナーさんと両親と話してる」
「その翌日、レース後の精密検査で屈腱炎が判明して姉さんは凄く悩んでました」
「屈腱炎は必ず治らないと決まった病気じゃない、フジ寮長みたいに初期に見つかれば長期療養で完治する可能性もある」
フジキセキは口を挟まなかった
フジキセキの屈腱炎が完治したのはトレーナーの献身的な介護と奇跡的な確率での回復の結果であって、
初期発見後の一般的な経過を示したものではないとここで告げることに意味はないと思ったからだ
「でも、姉さんの屈腱炎はかなり進行していて、日常生活を送る上では問題なくても競争ウマ娘としては致命的なものだった」
「後はご存じの通りです
姉はURAに引退届を提出し、これからの進路をどうするか、トレーナーさんと両親と話してる」
レッドベレヌスの表情が険しくなった
「屈腱炎になったことはもうどうしようもないのは判っています
だからと言って、姉と私の見た夢は否定されるものじゃない」
黒い炎を含んだような、ぎらつく目線でレッドベレヌスは話し続ける
「私は三冠バになる
三冠バになって、有馬記念と春天を制覇して、凱旋門賞を獲る」
「そして世界最強の中長距離ウマ娘になって、勝利インタビューでこう言ってやるんです」
「『私には私より遥かに強いステイヤーの姉がいる』って」
勝つために何もかもを捨て去ろうとする、春天の勝者とよく似た表情がそこにあった
「屈腱炎になったことはもうどうしようもないのは判っています
だからと言って、姉と私の見た夢は否定されるものじゃない」
黒い炎を含んだような、ぎらつく目線でレッドベレヌスは話し続ける
「私は三冠バになる
三冠バになって、有馬記念と春天を制覇して、凱旋門賞を獲る」
「そして世界最強の中長距離ウマ娘になって、勝利インタビューでこう言ってやるんです」
「『私には私より遥かに強いステイヤーの姉がいる』って」
勝つために何もかもを捨て去ろうとする、春天の勝者とよく似た表情がそこにあった
ぎしり
フジキセキが目線を外して立ち上がったとき、また音がした
「ベレヌス、君の気持ちはよくわかった」
ぎしりぎしり
「確かにベリザーナ程の才能が志半ばにしてターフを去るのはこの上ない無念だよ、肉親である君の嘆きの深さは私には想像もつかない」
ぎしぎしぎしぎし
「でも、君は」
レッドベレヌスに背を向けて寮長室のトイレのドアに手を掛ける
「ベリザーナとその事についてきちんと話したのかい?」
ガチャ
トイレのドアが開いたそこには、忿怒の表情を浮かべたベリザーナの姿があった
フジキセキが目線を外して立ち上がったとき、また音がした
「ベレヌス、君の気持ちはよくわかった」
ぎしりぎしり
「確かにベリザーナ程の才能が志半ばにしてターフを去るのはこの上ない無念だよ、肉親である君の嘆きの深さは私には想像もつかない」
ぎしぎしぎしぎし
「でも、君は」
レッドベレヌスに背を向けて寮長室のトイレのドアに手を掛ける
「ベリザーナとその事についてきちんと話したのかい?」
ガチャ
トイレのドアが開いたそこには、忿怒の表情を浮かべたベリザーナの姿があった
「この愚か者があぁぁ!!!!!」
松葉杖をついているとは思えない速度でベリザーナがレッドベレヌスに掴みかかる
「我が一言でも汝に我に替わって勝てと命じたか!!ベレヌス!」
呆然とするレッドベレヌスの胸倉を掴んで顔を引き寄せたベリザーナが吼える
「汝が皐月の冠を手にしたことは確かに大いなる歓喜であった!
しかし我が汝を身替わりにして皐月の冠を、優駿の冠を戴冠したい等と道理の合わぬ事を一度でも口にしたか!!」
すう、と大きく息を吸った現役トップクラスのステイヤーは、その有り余る肺活量を激情に代えて解き放った
「この姉を見くびるでないわ愚妹があぁぁ!!!」
松葉杖をついているとは思えない速度でベリザーナがレッドベレヌスに掴みかかる
「我が一言でも汝に我に替わって勝てと命じたか!!ベレヌス!」
呆然とするレッドベレヌスの胸倉を掴んで顔を引き寄せたベリザーナが吼える
「汝が皐月の冠を手にしたことは確かに大いなる歓喜であった!
しかし我が汝を身替わりにして皐月の冠を、優駿の冠を戴冠したい等と道理の合わぬ事を一度でも口にしたか!!」
すう、と大きく息を吸った現役トップクラスのステイヤーは、その有り余る肺活量を激情に代えて解き放った
「この姉を見くびるでないわ愚妹があぁぁ!!!」
怒鳴られっぱなしで呆けていたレッドベレヌスの表情に怒りの色が差す
「そっちこそ妹を見くびらないでよ姉さん!!」
妹も姉に負けじと胸倉を掴みかえす
「私は私の意思で姉さんの獲れなかった冠を獲って、姉さんをあれだけ持て囃した癖にジャパンカップの後に手の平返した世間に思い知らせてやりたい!
あいつらが馬鹿にしたベリザーナはどんだけ凄いステイヤーだったのかを!」
「それこそ我を愚弄するかベレヌス!!
我の価値は我が成したことのみが決めるもの!
妹の七光りを背負って栄光を誇るような愚か者がお前の姉だと思うたか!!」
そのまま姉妹は至近距離で歯を剥いて睨み合う
「そっちこそ妹を見くびらないでよ姉さん!!」
妹も姉に負けじと胸倉を掴みかえす
「私は私の意思で姉さんの獲れなかった冠を獲って、姉さんをあれだけ持て囃した癖にジャパンカップの後に手の平返した世間に思い知らせてやりたい!
あいつらが馬鹿にしたベリザーナはどんだけ凄いステイヤーだったのかを!」
「それこそ我を愚弄するかベレヌス!!
我の価値は我が成したことのみが決めるもの!
妹の七光りを背負って栄光を誇るような愚か者がお前の姉だと思うたか!!」
そのまま姉妹は至近距離で歯を剥いて睨み合う
二人の怒鳴り合いが一瞬途切れた間に
パァン!
フジキセキの柏手の音が響いた
「ポニーちゃん達、姉妹仲が良いのは結構だけど
今が何時でここが何処なのかは覚えているのかな?」
柔やかに凄むフジキセキに押され、姉妹は掴みあいを終え互いに向き直る
だが、その表情は互いに険しい
パァン!
フジキセキの柏手の音が響いた
「ポニーちゃん達、姉妹仲が良いのは結構だけど
今が何時でここが何処なのかは覚えているのかな?」
柔やかに凄むフジキセキに押され、姉妹は掴みあいを終え互いに向き直る
だが、その表情は互いに険しい
そんな二人にフジキセキは語り掛ける
「レッドベレヌス、君の意気込みは判る
お姉さんの分まで自分が、という気持ちは君の家族への愛の強さを示している
君のその愛情深さには敬意を表するよ
しかし、その手段が頂けない
そうだよね、ベリザーナ」
「寮長の言うとおりだ、ベレヌス
過剰なトレーニングは体にダメージを残すのみ、百害あって一利無しであるぞ」
レッドベレヌスが叱られた子供のような顔になる
「レッドベレヌス、君の意気込みは判る
お姉さんの分まで自分が、という気持ちは君の家族への愛の強さを示している
君のその愛情深さには敬意を表するよ
しかし、その手段が頂けない
そうだよね、ベリザーナ」
「寮長の言うとおりだ、ベレヌス
過剰なトレーニングは体にダメージを残すのみ、百害あって一利無しであるぞ」
レッドベレヌスが叱られた子供のような顔になる
「次にベリザーナ、妹の様子がおかしいと私に相談に来てくれた事はありがたいと思うし、その思いやりは君の美点の一つだと私は思うよ」
レッドベレヌスがバレていたのか、と気まずげな表情になり、ベリザーナに睨まれる
「だが、それを言うなら去年の有馬記念以降の君もかなりのオーバーワークを繰り返していなかったかい?
私やトレーナーさんが止めてもミューズの世代に勝つためにはこれぐらいは必要だ!と言い張って」
ベリザーナがレッドベレヌスの冷ややかな視線から目を逸らし、フジキセキに抗議の視線を送る
にっこりと笑ってそれを流したフジキセキは、姉妹にもう一度言葉を贈る
「君達のお互いへの愛情深さと使命感の強さは美しい
でもそれが自分を壊す方向に行ってしまっては勿体なさ過ぎる」
「だから、これからは二人で歩むのを目標にすれば良いんじゃないのかな
ね、ベリザーナ?」
レッドベレヌスがバレていたのか、と気まずげな表情になり、ベリザーナに睨まれる
「だが、それを言うなら去年の有馬記念以降の君もかなりのオーバーワークを繰り返していなかったかい?
私やトレーナーさんが止めてもミューズの世代に勝つためにはこれぐらいは必要だ!と言い張って」
ベリザーナがレッドベレヌスの冷ややかな視線から目を逸らし、フジキセキに抗議の視線を送る
にっこりと笑ってそれを流したフジキセキは、姉妹にもう一度言葉を贈る
「君達のお互いへの愛情深さと使命感の強さは美しい
でもそれが自分を壊す方向に行ってしまっては勿体なさ過ぎる」
「だから、これからは二人で歩むのを目標にすれば良いんじゃないのかな
ね、ベリザーナ?」
要領を得ないレッドベレヌスにベリザーナが向き直る
「先程寮長には報告したが、我の今後の進路が決まった」
レッドベレヌスの表情に緊張が走る
「我はこのままトレセン学園に通い、トレーナー養成課程に転籍する」
驚くレッドベレヌスにベリザーナはさらに語り掛ける
「一からの出直しとなるが、我はトレーナーとして世界最強の頂きを再び目指す
我の手腕を持って、いずれは三冠バ、凱旋門賞バを育て上げてくれよう!
汝はどうだ、ベレヌス?
汝の現役の間に間に合うかどうかは判らぬが、姉妹で世界最強になるのも一興だとは思わぬか?」
屈託のない姉の笑顔を見て、本当に心から言っていることを理解したレッドベレヌスの瞳から、涙が溢れる
「ね”え”ざん”」
「ああもう、泣くなベレヌス
汝はそこいらが真っ直ぐすぎて駆け引きに向かぬのだ」
「先程寮長には報告したが、我の今後の進路が決まった」
レッドベレヌスの表情に緊張が走る
「我はこのままトレセン学園に通い、トレーナー養成課程に転籍する」
驚くレッドベレヌスにベリザーナはさらに語り掛ける
「一からの出直しとなるが、我はトレーナーとして世界最強の頂きを再び目指す
我の手腕を持って、いずれは三冠バ、凱旋門賞バを育て上げてくれよう!
汝はどうだ、ベレヌス?
汝の現役の間に間に合うかどうかは判らぬが、姉妹で世界最強になるのも一興だとは思わぬか?」
屈託のない姉の笑顔を見て、本当に心から言っていることを理解したレッドベレヌスの瞳から、涙が溢れる
「ね”え”ざん”」
「ああもう、泣くなベレヌス
汝はそこいらが真っ直ぐすぎて駆け引きに向かぬのだ」
姉妹の仲直りの光景を見て、フジキセキは席を立つ
「さて、私はもう一度寮内を消灯後にうろうろしている不届きなポニーちゃん達がいないか見てくるよ
1時間ほどはこの部屋には戻らないかな?」
そう言ってドアを開けるフジキセキを、姉妹は深く頭を下げて見送っていた
「さて、私はもう一度寮内を消灯後にうろうろしている不届きなポニーちゃん達がいないか見てくるよ
1時間ほどはこの部屋には戻らないかな?」
そう言ってドアを開けるフジキセキを、姉妹は深く頭を下げて見送っていた
『さあ大ケヤキを抜けて以前先頭は7番○○○、しかしここで外から、皐月賞ウマ娘11番レッドベレヌスがバ群を引き連れて上がってきた!
最終直線に入って○○○リードは5バ身から4バ身、ここで大外に振ったレッドベレヌスが更にスピードを上げる!
3バ身、2バ身と一気に距離を詰めてきた!
逃げ切るか○○○、差し切るかベレヌス!
ここでベレヌスが並んだ!並んだ!○○○!ベレヌス!○○○!ベレヌス!
ダービーの冠を掛けた意地と意地との叩き合い!!
しかしベレヌスだ!ベレヌスだ!レッドベレヌスが抜けて1バ身差で今ゴールイン!!
姉の掲げた菊花賞!
妹の掲げる皐月賞!
そしてダービーの冠は今ここに!
2年越しの三冠は去り行く姉への餞(はなむけ)か!
レッドベレヌス今ここにクラシック2冠を達成!!
自身の三冠へと王手を掛けました!』
最終直線に入って○○○リードは5バ身から4バ身、ここで大外に振ったレッドベレヌスが更にスピードを上げる!
3バ身、2バ身と一気に距離を詰めてきた!
逃げ切るか○○○、差し切るかベレヌス!
ここでベレヌスが並んだ!並んだ!○○○!ベレヌス!○○○!ベレヌス!
ダービーの冠を掛けた意地と意地との叩き合い!!
しかしベレヌスだ!ベレヌスだ!レッドベレヌスが抜けて1バ身差で今ゴールイン!!
姉の掲げた菊花賞!
妹の掲げる皐月賞!
そしてダービーの冠は今ここに!
2年越しの三冠は去り行く姉への餞(はなむけ)か!
レッドベレヌス今ここにクラシック2冠を達成!!
自身の三冠へと王手を掛けました!』