会話が途切れたのはグローリアのため息からだった
昨日桜花賞を戴冠した彼女は、何故かずっと浮かない顔をしていた
レース中にどこかを傷めでもしたのかと質問してみれば、どこも悪くないと言う
実際レース後のバイタルチェックを兼ねて彼女の脚を確認したときは疲労こそかなり溜まっていたものの故障の兆候は見られなかった
レース中にどこかを傷めでもしたのかと質問してみれば、どこも悪くないと言う
実際レース後のバイタルチェックを兼ねて彼女の脚を確認したときは疲労こそかなり溜まっていたものの故障の兆候は見られなかった
しかし、彼女は念願のティアラの一冠目を手に入れたと言うのにはしゃぐ様子もない
普段から周りに気を遣いすぎる彼女のことだから同室に遠慮でもしているのかと思ったが、
それにしては深刻過ぎる程に気鬱な様子が見て取れる
優秀な担当のメンタルケアもトレーナーの努めと事情を聞き出そうとすると、彼女は不可解な事を言った
普段から周りに気を遣いすぎる彼女のことだから同室に遠慮でもしているのかと思ったが、
それにしては深刻過ぎる程に気鬱な様子が見て取れる
優秀な担当のメンタルケアもトレーナーの努めと事情を聞き出そうとすると、彼女は不可解な事を言った
「私のトレーナーさん、お願いがあります」
「お願い?何か欲しいものでもあるのかい?」
「ちょっと違うかな、どうしてもやりたい事があるの」
「お願い?何か欲しいものでもあるのかい?」
「ちょっと違うかな、どうしてもやりたい事があるの」
まるでレース前のような真剣な顔で、彼女はとんでもない事を言い出した
「私を、オークスのトライアルレースに出して下さい」
『追われるもの、追うもの』
「ボクは反対だ、グローリア
君は桜花賞ウマ娘だ
オークスに出走するのにわざわざトライアルレースを使う必要は無い」
「それでも、私は一度オークスの前にレースを走りたいんです」
「それは何故?」
解らない、普段は酷く素直なグローリアが、何を思ってこんな事を言い出したのか
君は桜花賞ウマ娘だ
オークスに出走するのにわざわざトライアルレースを使う必要は無い」
「それでも、私は一度オークスの前にレースを走りたいんです」
「それは何故?」
解らない、普段は酷く素直なグローリアが、何を思ってこんな事を言い出したのか
「私はこのままでは、くーちゃん、シンボリレクイエムに勝てません」
「何を言うんだグローリア
確かに桜花賞であれだけの暴走をしながら最後の坂まで失速しなかったあのスタミナは驚異的だ
だが、君はそのシンボリレクイエムを最後に二バ身突き放しただろう?」
「あれは、くーちゃんが逃げたからです」
グローリアはボクの目を睨み付けるようにしてそう言った
「何を言うんだグローリア
確かに桜花賞であれだけの暴走をしながら最後の坂まで失速しなかったあのスタミナは驚異的だ
だが、君はそのシンボリレクイエムを最後に二バ身突き放しただろう?」
「あれは、くーちゃんが逃げたからです」
グローリアはボクの目を睨み付けるようにしてそう言った
「くーちゃんは本来先行ウマ娘
それなのに桜花賞で逃げたのは何故かは判らないけど、慣れない大逃げでもあれだけ最後まで粘れたくーちゃんが本来の走りをするならもっと手強くなることは間違い無いです」
「だからと言って、トライアルレースを走ったからシンボリレクイエムが弱くなるわけでは無いだろう?」
「でも、私は強くなれます」
グローリアは叩きつけるようにそう言った
それなのに桜花賞で逃げたのは何故かは判らないけど、慣れない大逃げでもあれだけ最後まで粘れたくーちゃんが本来の走りをするならもっと手強くなることは間違い無いです」
「だからと言って、トライアルレースを走ったからシンボリレクイエムが弱くなるわけでは無いだろう?」
「でも、私は強くなれます」
グローリアは叩きつけるようにそう言った
不可解だ
グローリアは何をこんなに焦っているのか
どれだけのスタミナがあったとしても、オークスの距離ならグローリアが先行ウマ娘を追走し損ねることは無いと言って良いと思うのだが
「質問を変えよう
グローリア、君はオークスに勝つためにどう強くなりたいんだ?」
「もっと上手く早くバ群を捌けるようになるために、実戦で経験を積みたいんです」
ボクは後頭部を殴られたような衝撃を受けた
しかし担当にそのような弱味を見せるわけにはいかない
「グローリア、君は今でも十分にバ群を捌けていると思うけど?」
「桜花賞での最終直線、私は本当に上手くバ群を捌けていましたか?」
完璧な答えだった
グローリアは何をこんなに焦っているのか
どれだけのスタミナがあったとしても、オークスの距離ならグローリアが先行ウマ娘を追走し損ねることは無いと言って良いと思うのだが
「質問を変えよう
グローリア、君はオークスに勝つためにどう強くなりたいんだ?」
「もっと上手く早くバ群を捌けるようになるために、実戦で経験を積みたいんです」
ボクは後頭部を殴られたような衝撃を受けた
しかし担当にそのような弱味を見せるわけにはいかない
「グローリア、君は今でも十分にバ群を捌けていると思うけど?」
「桜花賞での最終直線、私は本当に上手くバ群を捌けていましたか?」
完璧な答えだった
桜花賞、グローリアは最終的にパストラルを差し切ったものの、大きく広がったバ群を捌くのにやや手間取った
脚が止まったウマ娘が相手だったので斜行にはならなかったが、
まだ粘っていたならば斜行を取られたであろう交わし方も二回ほどあった
正直グローリアがこのことについて気付いてはいてもここまで問題視しているとは思っていなかった
脚が止まったウマ娘が相手だったので斜行にはならなかったが、
まだ粘っていたならば斜行を取られたであろう交わし方も二回ほどあった
正直グローリアがこのことについて気付いてはいてもここまで問題視しているとは思っていなかった
追い込みという戦法を取る以上、前の壁を捌けるかどうかは必ず幾許かの運が絡む
捌ききれなくなる確率を下げようとするのなら、差しに転向する、最初から大外へ進路を取る、
捲り戦法を習得して併用する事で相手のブロックを絞りきれなくする等の対処方法はあるが、
いずれも一長一短であり、シニア級になってから習得するので構わないと思っていた
クラシック級の内からG1レベルの相手へのブロックを完璧にこなしてくるウマ娘など、そうそう居るものではないからだ
捌ききれなくなる確率を下げようとするのなら、差しに転向する、最初から大外へ進路を取る、
捲り戦法を習得して併用する事で相手のブロックを絞りきれなくする等の対処方法はあるが、
いずれも一長一短であり、シニア級になってから習得するので構わないと思っていた
クラシック級の内からG1レベルの相手へのブロックを完璧にこなしてくるウマ娘など、そうそう居るものではないからだ
「グローリア、君は、シンボリレクイエムがそれだけブロックも含めてレース展開を完璧に動かせる敵だと、そう言うんだね?」
「はい」
グローリアの言葉にも目線にも躊躇いの色は無かった
「はい」
グローリアの言葉にも目線にも躊躇いの色は無かった
「それでもボクは反対だ」
「レース間隔、ですか?」
「それだけ聡明な君が何故こだわるのかがボクには解らない
短い間隔での連続したレース出走は、確実に君の脚へとダメージを残す
しかも次の目標レースは2400mのオークスだ
君がスタミナがある方だと言っても、クラシック級の君達にはロングディスタンス(2101-2700m)は過酷であることは間違い無い
君の言う強敵シンボリレクイエムは、名門シンボリ家の出身
しかもジュニアまではクラシック三冠を志していたとあってスタミナに関して言えばこの世代でも随一と言って良いウマ娘だ
そんな相手に、中長距離という相手の土俵で、更に疲労というハンデを背負っても勝てると?」
「今のままくーちゃんの想定通りの私でいるよりは、勝てるようになります」
グローリアの決意はボクの説得にも全く揺らがなかった
「レース間隔、ですか?」
「それだけ聡明な君が何故こだわるのかがボクには解らない
短い間隔での連続したレース出走は、確実に君の脚へとダメージを残す
しかも次の目標レースは2400mのオークスだ
君がスタミナがある方だと言っても、クラシック級の君達にはロングディスタンス(2101-2700m)は過酷であることは間違い無い
君の言う強敵シンボリレクイエムは、名門シンボリ家の出身
しかもジュニアまではクラシック三冠を志していたとあってスタミナに関して言えばこの世代でも随一と言って良いウマ娘だ
そんな相手に、中長距離という相手の土俵で、更に疲労というハンデを背負っても勝てると?」
「今のままくーちゃんの想定通りの私でいるよりは、勝てるようになります」
グローリアの決意はボクの説得にも全く揺らがなかった
「グローリア、ボクは君という天才の担当になれたことを何よりの幸運だと思っている」
「ありがとうございます」
返事と裏腹に挑むような表情に変化はない
「そんな君が故障や疲労による不調で勝てるはずのレースを落とすようなことがあって欲しくないからボクは反対するんだ
それにトライアルレースに出て来るウマ娘達は皆オークスの出走権利を掴むために必死だ
普段のレースとは比べ物にならない位の気迫で皆が2着までに食い込もうとする
そんなレースだから、トライアルレースでは事故やトラブルが結果的に起こりやすい
そんなリスキーなレースに出ることは桜花賞ウマ娘としてやるべきではないんだ
その事は君にも解って欲しい」
「そんなリスキーなレースだから、私は出走したいんです」
グローリアの答えは変わらなかった
「ありがとうございます」
返事と裏腹に挑むような表情に変化はない
「そんな君が故障や疲労による不調で勝てるはずのレースを落とすようなことがあって欲しくないからボクは反対するんだ
それにトライアルレースに出て来るウマ娘達は皆オークスの出走権利を掴むために必死だ
普段のレースとは比べ物にならない位の気迫で皆が2着までに食い込もうとする
そんなレースだから、トライアルレースでは事故やトラブルが結果的に起こりやすい
そんなリスキーなレースに出ることは桜花賞ウマ娘としてやるべきではないんだ
その事は君にも解って欲しい」
「そんなリスキーなレースだから、私は出走したいんです」
グローリアの答えは変わらなかった
「オークス本番では、それこそトライアルレースよりも余程皆が必死で勝ちに来ると思います
特に私は桜花賞を獲れたから、集中的にマークされるでしょう
そんな状況で、バ群の捌き方が今のままでは通用しません
実戦で、バ群の捌き方をもっと磨く必要があるんです」
「グローリア、君が不安を覚えるのも判る
だが、その不安を解消するために君の競走ウマ娘としてのキャリアを損なうような事はトレーナーとしては認められない」
「キャリアを損なうと言うのはどう言う事ですか?」
グローリアの声はあくまでも冷静だった
「君は無敗の桜花賞ウマ娘として、高い人気を得ている
ファンだけじゃない、メディアだって君に注目している
君の今まで積んできたキャリアは君が思っているより世間的には価値があるんだよ
このまま無敗でオークス、秋華賞と獲ることが出来たなら君は一生仕事に困ることはない
君が以前言っていた、育ててくれた君のお祖父様お祖母様への恩返しとしては
無事な体で三冠を達成する事が一番の大目標なんじゃないのかい?」
「でも、それは私の事情です
勝つために必要な事をやることよりも優先されるものではありません」
グローリアはまた、叩きつけるように言った
特に私は桜花賞を獲れたから、集中的にマークされるでしょう
そんな状況で、バ群の捌き方が今のままでは通用しません
実戦で、バ群の捌き方をもっと磨く必要があるんです」
「グローリア、君が不安を覚えるのも判る
だが、その不安を解消するために君の競走ウマ娘としてのキャリアを損なうような事はトレーナーとしては認められない」
「キャリアを損なうと言うのはどう言う事ですか?」
グローリアの声はあくまでも冷静だった
「君は無敗の桜花賞ウマ娘として、高い人気を得ている
ファンだけじゃない、メディアだって君に注目している
君の今まで積んできたキャリアは君が思っているより世間的には価値があるんだよ
このまま無敗でオークス、秋華賞と獲ることが出来たなら君は一生仕事に困ることはない
君が以前言っていた、育ててくれた君のお祖父様お祖母様への恩返しとしては
無事な体で三冠を達成する事が一番の大目標なんじゃないのかい?」
「でも、それは私の事情です
勝つために必要な事をやることよりも優先されるものではありません」
グローリアはまた、叩きつけるように言った
解らない
何が彼女をここまで頑なにさせているのか
何が彼女をここまで頑なにさせているのか
「グローリア、ボクには何故君がそこまでしてオークスで勝ちたいと言うのかが理解できていない
君の実力を持ってすれば、オークスには十分に勝てるはずだ
君の思う万全を期したとしても、トライアルレースで疲労や故障を抱えてしまえばそちらのデメリットの方が上回る可能性は高い
正直ボクはデメリットに比べてメリットが薄すぎると感じている」
ボクは思い切って戸惑っている内心をグローリアに正直に打ち明けた
彼女は一体何故、そこまでして勝ちたいと考えているのか
それを知らずに彼女のトレーナーを続ける事は出来ないと思ったからだ
「だからボクに教えてくれないか
何が君をそこまで駆り立てるのかを」
君の実力を持ってすれば、オークスには十分に勝てるはずだ
君の思う万全を期したとしても、トライアルレースで疲労や故障を抱えてしまえばそちらのデメリットの方が上回る可能性は高い
正直ボクはデメリットに比べてメリットが薄すぎると感じている」
ボクは思い切って戸惑っている内心をグローリアに正直に打ち明けた
彼女は一体何故、そこまでして勝ちたいと考えているのか
それを知らずに彼女のトレーナーを続ける事は出来ないと思ったからだ
「だからボクに教えてくれないか
何が君をそこまで駆り立てるのかを」
「ファンの皆さんの為です」
グローリアは理解しがたい事を言った
「私は以前お話したように、お祖父様とお祖母様に育てて貰いました
身の回りの事は何不自由なく育てて貰いましたし、縁があってビクトリー倶楽部にも入門させてもらって、こうしてトレセン学園への進学も許して貰えました
本当にお祖父様とお祖母様には感謝しています」
グローリアは理解しがたい事を言った
「私は以前お話したように、お祖父様とお祖母様に育てて貰いました
身の回りの事は何不自由なく育てて貰いましたし、縁があってビクトリー倶楽部にも入門させてもらって、こうしてトレセン学園への進学も許して貰えました
本当にお祖父様とお祖母様には感謝しています」
躊躇うように言葉を区切った後に
「でも、どんなにレースで良い成績を残せても、
他の子達みたいにお父さんお母さんに褒めて貰えて甘えることは出来なかったんですよ」
他の子達みたいにお父さんお母さんに褒めて貰えて甘えることは出来なかったんですよ」
寂しさを滲ませて、彼女は言った
ボクは愕然とした
普段から穏やかで心優しいグローリアが、こんなコンプレックスを抱えたままで生活していた事に
そして、そんなコンプレックスを抱えていることを中学生の年齢で周りに悟らせなかった事に
普段から穏やかで心優しいグローリアが、こんなコンプレックスを抱えたままで生活していた事に
そして、そんなコンプレックスを抱えていることを中学生の年齢で周りに悟らせなかった事に
「色んなレースに出て、勝ったり負けたりしましたけど、お祖父様お祖母様が褒めて甘やかしてくれても、やっぱり何か違うと思ってしまうんですよ
お祖父様もお祖母様も何も悪くないのに」
お祖父様もお祖母様も何も悪くないのに」
違う、それは君ではなく世界が悪いんだ
君はその事について諦めたような顔で笑わなくても良いんだ
そんな哀しみを君に背負わせたものが、仮に三女神なのだとしたらそんな奴はボクが赦さない
クソ食らえだ
君はその事について諦めたような顔で笑わなくても良いんだ
そんな哀しみを君に背負わせたものが、仮に三女神なのだとしたらそんな奴はボクが赦さない
クソ食らえだ
言いたい事は脳裏で幾らでも溢れてくるのに、言葉は口から出てこなかった
「そんな私にも、ビクトリー倶楽部で走る内にファンの皆さんが着いてくれたんです
初めはよくあるレース好きなお年寄りの方々でした
それが成績を残しはじめると段々と色んな人が増えていって
六年生で全国小学生大会にでた頃には、こーんな大きな横断幕を持って会場に駆けつけてくれる人達までいました」
初めはよくあるレース好きなお年寄りの方々でした
それが成績を残しはじめると段々と色んな人が増えていって
六年生で全国小学生大会にでた頃には、こーんな大きな横断幕を持って会場に駆けつけてくれる人達までいました」
こーんな、と両手で横断幕の大きさを表すグローリアの笑顔は本当に嬉しさに溢れていて
「ファンの皆さんに応援して貰えている内に、いつの間にかそんな寂しい気持ちが消えていったんです
不思議ですよね、ファンの皆さんはお父さんでもお母さんでも、お祖父様お祖母様でもないのに」
不思議ですよね、ファンの皆さんはお父さんでもお母さんでも、お祖父様お祖母様でもないのに」
グローリアは笑う
天上の女神のような崇高さで
天上の女神のような崇高さで
「ファンの皆さんは、私の寂しい気持ちを救ってくれました
お祖父様にもお祖母様にもどうしようもなかったものを見知らぬファンの皆さんが私にたくさん分け与えてくれました
そんなファンの皆さんに私が出来ることは、全力で私がレースを走ることだけなんです」
お祖父様にもお祖母様にもどうしようもなかったものを見知らぬファンの皆さんが私にたくさん分け与えてくれました
そんなファンの皆さんに私が出来ることは、全力で私がレースを走ることだけなんです」
グローリアは笑う
何の屈託も無く、生贄の祭壇に向かう羊のように
何の屈託も無く、生贄の祭壇に向かう羊のように
「だから私は私の走るレースには、不安を何も残したくないんです
全てを出しきった姿を見せないと、ファンの皆さんへの恩返しは出来ないから」
全てを出しきった姿を見せないと、ファンの皆さんへの恩返しは出来ないから」
グローリアは笑う
何の躊躇いも無く、我が子を愛する慈母のように
何の躊躇いも無く、我が子を愛する慈母のように
「恥ずかしい事も言っちゃいましたけれど、これが私のトライアルレースに出たい理由の全部です
お願いします、私をオークスのトライアルレースに出走させて下さい!」
お願いします、私をオークスのトライアルレースに出走させて下さい!」
深々と頭を下げるグローリア
その姿は教会のステンドグラス染みていて
その姿は教会のステンドグラス染みていて
「フローラステークスだ」
「え?」
「4月25日のフローラステークスなら、2000mとそこまで一気に距離延長もしないし、オークス本戦までに約一ヶ月ある」
「それじゃあ……!」
グローリアの顔が歓びにほころんだ
「え?」
「4月25日のフローラステークスなら、2000mとそこまで一気に距離延長もしないし、オークス本戦までに約一ヶ月ある」
「それじゃあ……!」
グローリアの顔が歓びにほころんだ
「だからそれに合わせてトレーニングメニューと疲労回復の為の食事メニュー、スケジュールを組むよ
これに関しては異論は認めない
君を、ボクの全力でオークスに送り出してやる為だ
わかったかい、頑固者さん?」
これに関しては異論は認めない
君を、ボクの全力でオークスに送り出してやる為だ
わかったかい、頑固者さん?」
「ありがとうございます!私のトレーナーさん!」
ボクは、覚悟を決めた
どこまでも、この美しい少女と共に歩んでやろう
このあどけない聖女がファンの期待という無責任な重圧に潰されてしまわないように、トコトンまでボクが支えきってやろう
ボクのグローリアが、栄光を掴んで幸せの絶頂の中で引退を迎えるまで全ての悪意全てのトラブルから守り抜いてやろう
どこまでも、この美しい少女と共に歩んでやろう
このあどけない聖女がファンの期待という無責任な重圧に潰されてしまわないように、トコトンまでボクが支えきってやろう
ボクのグローリアが、栄光を掴んで幸せの絶頂の中で引退を迎えるまで全ての悪意全てのトラブルから守り抜いてやろう
何せボクはグローリアの、グローリアただ一人だけのためのトレーナーなのだから
家の名誉のために取らされたトレーナーバッジが、今は頼もしく思えた
家の名誉のために取らされたトレーナーバッジが、今は頼もしく思えた