「ダイイングメッセージに付いては否定派だね。アレはフィクションだよ。
キョン、何なら君自分で考えてみるといい。殺されて今にも死にそうな君が
犯人の名前を残そうと果たして考えるかな? 僕の知る君ならおそらく
そんな事よりどうやって生き続けるか、生き残って犯人を殴り返そうかと
もがき続けると思っている。君はそう簡単に生を諦めない人間だよ」
ならお前はどうなんだ、佐々木。
「僕も無理だね。もしそんな状況になったなら僕は犯人に怨恨を残すより
最期に君に逢いたいと考え続けるだろう。今際の時に心許せる者にいて欲しい……とね」
なら俺が居たらどうだ? 敵を討てと思うんじゃないか?
「君が考えている僕は、親友をわざわざ殺人鬼に向かわせる危険を冒させようと
する奴なのかい? だったら僕はこれから君とこうして共にいる時間全てを掛けて
そのイメージを払拭する事に努めて厭わないのだが。それに──」
ああすまん、すまない、悪かった。
俺は本気で抗議の色を示す佐々木に頭をさげた。
佐々木はそこで一息だけ言葉を止めると、
「それに今際の時に君がいるのに、なぜ第三者の話題を君と話さなければならないんだい。
そうなったら僕は息を引き取るその瞬間まで君だけを見つめ、君の事だけを考え、
そして君と僕との話題だけを語り明かす事だろう。それが僕が君に贈る遺品だ、約束する」
最終更新:2008年01月28日 09:00