桜が舞う・・・にはもう少しといった感じの、それでも肌寒さを感じない程度に
適度な暖かさを感じながら俺は中学の3年間を今日、終えた。
つまり、今日は中学の卒業式だ。
「これからは寂しくなるね。キミと会ってからの一年はまさに光陰矢の如く早かったように思えるよ。
僕の中学生生活においてもっとも輝かしい期間だったよ。」
感慨深くそう述べる佐々木だが、そこまで言われると逆に気味が悪い。
そんなに俺のことを持ち上げても何も出てきやしないぞ?
「くっくっ どうやら僕はこの一年でキミに図々しい女だと見なされていたらしいね。
同じ校舎で同じ時間を過ごせるのは今日が最後なんだ。
惜別の言葉くらい送ってもかまわないだろう?」
やれやれ、と口にしようとしたが佐々木の言った通りだ。
これで俺と佐々木の関係も終わる。いや、別に付き合ってたとかじゃなくてだな、
友人としての関係という意味であって・・・って俺は誰に弁解しているんだろうね。
「確かにな。お前みたいな奴とは二度とお目にかかれないだろうな。」
「だろうね。安易なトートロジーを述べるつもりはないのだが、僕は僕であって
僕以外の誰でもないのだからね。それに・・・キミもね。」
最後の言葉に変に熱がこもっていた気がしたが気のせいだろう。
それにしても、この小難しい話しも今日が最後かと思うと今更だが寂しくなるな。
などと思っていると佐々木がポツリと呟いた。
「ねぇ、親友。僕のこと、忘れないでおくれよ?」
俺が佐々木に(でなくても他人に)キョンではなく親友と言われるのは初めてだ。
ついでに言うと俺の本名及び苗字はあだ名を知られて以来言われていない。
佐々木がなぜ俺を「親友」と呼んだのか。その心中はわからない。
だが、いくら俺でもこんな場合なんて答えなければならないかはわかっているつもりだ。
若干の気恥ずかしさを覚え、俺は頭を掻きながらこの一年間の佐々木との思い出を胸に秘めこう答えた。
「あぁ、当然だ親友。」
もし佐々木を忘れることのできる奴がいたとしたら俺はそいつを24時間体制で監視したいものだね。
「そうかい。くっくっ ありがとう。キョン」
いつも通りの独特に笑う佐々木の表情は、今まで見たことのないような綺麗な笑顔だった。
桜が舞うにはもう少し・・・と言ったが前言撤回だ。桜はここにさいていたんだな。
最終更新:2008年01月31日 14:39