佐々木「という訳で恒例の僕っ子会談なのだが」
藤原「ちょっと待て。なにがという訳でなんだ。そもそもこんなのは今回が初めてだろう」
国木田「まあまあ、お約束というものだしね。それにどこかで似たようなことがないともいえないし」
佐々木「くっくっ、なかなか含みのある物言いだな。まあ些事だ。話を進めようじゃないか」
藤原「ちっ、まあいい。どうせこんなものに意味はないんだ。せいぜい暇を飽かしてるといい。僕は帰る」
佐々木「それは構わないが……どうやって帰るつもりだい? キミも知ってると思うがここは僕の精神世界だ。出口なんてないよ」
藤原「っ……だったらここから出せ! アンタなら出来るはずだろう!」
佐々木「無茶を言わないでくれ。超能力者でもあるまいしそんなこと僕に出来るはずなかろう。
部屋自身は扉を開けることなど出来ない」
藤原「……ならここ以外のどこでもいい。なにが楽しくて現地民どもと無駄話をしなきゃならないんだ」
国木田「落ち着きなよ。いきなりこんなところ妙なところに連れて来られて混乱するのはわかるけどさ。
どうせなら夢と思って楽しんだほうがいいんじゃないかな」
藤原「はっ、おめでたいヤツだ。自分が手のひらの上で踊らされてることにも気付かないとはな」
国木田「……うーん。じゃあ仕方ないかな」
佐々木「国木田。なんだい? それ。見たところ写真のようだが」
国木田「僕も知らないよ。わがままを言うような人が居たらコレを渡せってさ。
けっこう美人の女性だったなぁ。誰かに似てた気もするけど」
藤原「ふん、いったいな―――っ!!」
国木田「効果てき面だね。その写真が何を意味するのかわからないけど、朝比奈さん辺りに渡ると困るんじゃないかな」
藤原「あの女……っ。こんなもの――っ!」
国木田「破っても無駄だと思うよ。ネガは別にあるしさ」
藤原「くっ……」
佐々木「なんか活き活きとしてるね、国木田。僕は疑惑が確信に変わったよ」
国木田「さあ? それじゃ本題に入ろっか。いいよね藤原さん?」
藤原「………………好きにしろ」
佐々木「それじゃ話もまとまったとこで、あらためて始めるとしようか。といっても議題なんてないんだが」
国木田「別にいいんじゃないかなぁ。会議って訳でもないし、結論を求める必要なんてないでしょ?」
佐々木「それもそうか。なら各々なにか主張したいことでもあるかい?」
国木田「んー、僕は特に。藤原さんは?」
藤原「………」
佐々木「よほどショックが大きかったのか……」
国木田「意外に打たれ弱いんだね」
佐々木「……まあいいさ。それでは僭越ながら僕から意見を述べさせてもらうが――」
国木田「あ、ちょっといいかな」
佐々木「うん? なにかな」
国木田「ごめんね、佐々木さん。でも訊いておかなきゃならないから訊くけど、僕たちどうすればここから出られるのかな?
さっき出口はないって言ってたけど」
佐々木「確かに重要だね。でも問題はないと思うよ。
どうやら僕たちの会談が終われば自動的に開放される設定のようだ。そういう場所だよ、ここは」
国木田「ふーん、ならいいや。じゃあ佐々木さん、さっきの続きを頼めるかな?」
佐々木「くくっ、そういう風に言えるキミに若干の羨望と嫉妬を覚えるな。キミといいキョンといい、喰えない奴らだ」
国木田「それほどでもないと思うな、ってキョンなら言うかな? 僕にとってはここは夢みたいなものだし。買いかぶりすぎだよ」
佐々木「そういうところが賞賛に値するんだ……っと話が逸れたな。僕の意見か、
僕っ子会談ということであまり突飛なことは言えないな」
国木田「わかりやすいところで僕と佐々木さんのキャラが似てることとか?」
佐々木「ふむ、一人称や一部の口調など似通ってるとこはないとは言えないな。僕からすれば君ほど似ていない人物は居ないのだが」
国木田「まあ自分のことだしね。お互い中性的ってのもあるんだろうけど、色が違うっていうのかな?
形は同じでも中身は全くの別物だよね」
佐々木「まったくだ。なかにはキミと僕が同一人物といううわさすらある。
少し調べればそんなことはあるはずないとわかるはずなのに」
国木田「あはは、シュレーディンガーの猫かい? それともドッペルゲンガーのほうかな。
話としては面白いけどそういうのは聞いたことなかったな」
佐々木「所詮はうわささ。七十五日も過ぎれば立ち消える。それより僕らには深刻な問題があるだろう」
国木田「ん? なにかあったっけ」
佐々木「名前だ。僕の知覚する限り、一人称が“僕”の人物は総じて本名があきらかになっていない」
国木田「ああ、言われればそうだね。絶対量が少ないってのもあるんだろうけど」
佐々木「まあそこの彼には芸名があるようだが」
藤原「それなんてパンジー……って違う! 誰が芸人だ!」
国木田「あ、復活した」
佐々木「見事なノリツッコミだね」
藤原「お前ら……。人を何だと……」
佐々木「ツンデレじゃないのかい? パンジー」
国木田「というかいくつなのさ。パンジー」
藤原「ツンデレって言うな! それと年のことは訊くな! 禁則だ!!」
国木田「黙秘権ってこと? そういえばキョンも似たようなこと言ってたっけ。流行ってるの?」
佐々木「さあ? 出典は朝比奈さんみたいだけど。そういえばあの人の年齢もわりと謎だな」
藤原「はっ、朝比奈みくるの実年齢は僕よr―――ガッ」
???「ダメですよ、禁則事項を言っちゃ。ふふ、お騒がせしました。これで失礼しますね。さ、行きましょ。藤原さん」
国木田「………」
佐々木「………」
国木田「……あ、そういえばあの人、写真くれた人だ」
佐々木「……というよりどこから入ったんだろう」
藤原「………」
国木田「ドナドナだね」
佐々木「ドナドナだな」
国木田「ふぅ、それでどうするの? もう僕たち二人しかいないけど」
佐々木「これ以上は無益かな。少し早いが閉幕としよう」
国木田「そだね。条件は満たしたみたいだし。それじゃあさよなら」
佐々木「ああ、次は同窓会で会おうか。それまではさよならだ」
国木田「うん、そのときにはもう少しキョンと進展出来るといいね。応援してるよ」
佐々木「なっ――! ……まったく、どこまでも喰えない男だ」
コンピ研部長「……ところで、僕たちの出番がなかったのはどうしてなのかな?」
ハカセくん「しょせん脇役ですし、僕たちにいたっては名字すらないですからね」
二人「「ハァ……」」
最終更新:2008年05月19日 09:57