14-934「プラン」

『プラン』

夕食後、風呂にのんびり使った後冷たいお茶を飲みつつだらけていると俺の携帯が着メロを流した。
充電器から引っこ抜いて発信を見る、一月ほど前に再開した中学時代からの親友、佐々木だった。

「よぉ、佐々木。どうした?」

「君とお話ししたくてね、時間いいかな?」

「ああ、いいぜ」

中学時代佐々木も俺も携帯を持っていなかったのでお互い番号を知らなかった。
この間の再開のときに番号を交換したのだが、俺は一つ失念していた。
佐々木は俺の人生で出会った中で恐らく最も話し好きなやつだったのだ。
番号を交換して以降、ほとんど毎日といっていいくらいこの時間に佐々木は電話をかけてくる。
そして小一時間ほど会話した後眠りにつくのがここ最近の日課になっていた。
そんなに着信の多いわけではない俺の携帯の履歴はほとんどが佐々木の名前で埋まっている。
今も佐々木の話を聞きながらあいづちを入れている。
これが話しのつまらない奴なら適当に切り上げるのだが困ったことに佐々木の話は面白い。
だからついつい長電話になってしまうのだ。
・・・・・・そういえば何時もかけてくるのは佐々木のほうだよな。
俺は一つ疑問を抱いた。
適当に話しのタイミングを計ってその疑問を口に出す。

「なぁ、佐々木。ここんとこほとんど毎日電話してるが料金は大丈夫なのか?」

「え・・・・・・迷惑だったかい?」

「いや、お前の話は楽しいからいいが、かけてくるのは何時もお前からだろう」

「くっくっ、それなら心配要らないよ、きちんと計算してるからね。でもそのせいで時間制限つきなのは悲しいけどね」

さすがというか佐々木に抜かりは無かった。
って毎日これだけ話してもまだねたが尽きないというのかこいつは。
一体佐々木の頭の中にはどれだけボキャブラリーが詰まってるんだが。
っても時間制限か、たしかに何時も話の途中でも佐々木は話を切り上げてたな。
いいところで話が終わって俺もちょっぴり残念だと思うことがたびたびあった気がする。
あれ、なんかこういうの無かったっけ。

「そうだ、佐々木。アレ入らないか?」

「くっくっ、いくら僕でも超能力者じゃないんだからそれじゃわからないよ。アレってなんだい?」

「えーと、ほらアレだよ。携帯のプラン・・・・・あーなんてったっけ?」

「・・・・・・すまない、ちょっと解らないな。」
「あ、そうだ。思い出した。あれだよ。LOVE定額!」

「え?」

どこぞのメーカーがやっている定額制。
恋人同士なら通話がどうにかなるとかいうプランがあったはずだ。

「まぁ恋人じゃないけどさ、どうせ俺も長時間電話する奴なんてお前くらいだし」

「あ、ああ」

「せっかく男と女なんだから利用しようぜ?」

「え、え?えっと・・・・・・」

なんだか佐々木の言葉の歯切れが微妙に悪くなっている。
なにか不満でもあるのか?

「あ、でも佐々木が嫌って言うなら別に」

「い、いや。そんなことは無いよ!?うん、いい考えだ!さすがはキョンだね」

おいおいどうした佐々木、いきなり声が一オクターブ上がっているぞ。

「んじゃ、今度の日曜に二人で手続きしにいこうぜ」

「こ、今度の日曜・・・・・・」

「ん?都合悪いか?」

「い、いや大丈夫だよキョン。二人で・・・・・・その、LOVE定額の手続きに行こうじゃないか」

「よし、じゃ今度な」

「うん、えっと・・・・・・あ、もうこんな時間じゃないか。じゃあキョン。僕はこれでお休みさせてもらうよ」

「おう、お休み」

「うん、お休み」


挨拶をすると電話は切れた。
俺のほうも通話を切り携帯を充電器に戻す。
さて、俺も寝るかね。
ってあれ、いつもより20分くらい早かったな。
佐々木の計算ミスか?

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最終更新:2007年07月21日 08:15
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