15-183「佐々木さんのとあるバレンタインの巻 」

佐々木さんのとあるバレンタインの巻

キョン「よう佐々木。すごいなそのチョコ」
佐々木「やあキョン。困ったものだよ。バレンタインは、女性が想い人にチョコを送る
     日だと記憶しているのだが、何故かわが校の女子は、僕にチョコをくれたがるんだ」
キョン「大もてだな佐々木w」
佐々木「そういう君はどうなんだね。そのふくらんだ鞄をみるに、君もチョコを入手したようだが」
キョン「俺のは純然たる義理だよ。部活動の円滑なるコミュニケーションのためって奴さ。
    去年は穴掘りだったが、今年は謎かけの果ての宝探しをやらされたがね」
佐々木「……ほう、なかなか楽しそうだね」
キョン「疲れただけだっての。しかし4人とも、あんなに大きく「義理」なんて書かなくてもいいのに。
     同じ団の仲間なんだ。わかってますって。
     朝比奈さんなんて、「こ、こう書かないと涼宮さんが……」とかいちいち気を使うし、
     ああそういえば長門も何か言いたそうにこっちみてたし、鶴屋さんもなんか顔赤くして
     いつも以上にニョロニョロ言ってるし。
     仲間に義理チョコ贈って下手に誤解されると困る、ってのはじゅうじゅう承知してるし、
     俺も自分が本命もらえるなんて思う程舞い上がっちゃいないっての。
     谷口みたいに義理チョコで本気だと誤解して口説きだすアホみたいに見えるのかねえ」
佐々木「……婉曲にものを言えば額面どおりに受け取って誤解して、
     直接でズバリと言えばこの上なく曲解するというのは、いつ見てもすさまじい才能だよ、キョン」
キョン「? 何か言ったか、佐々木?」
佐々木「いや、何でもないよ。
     ……ところでキョン。ぼ、僕もききき君に渡したいものがあるんだ。
     親友としての感謝の証……いやまた額面どおりにとってもらうと困るんだが、
     だからと言ってそのいきなりアモーレと取られてギクシャクしても辛いのだがいやその……」
キョン「……佐々木」
佐々木「き、キョン……」
キョン「悪いがそのチョコは受け取れないぜ。それだけはダメだ」
佐々木「キョン、そ、そんな……」
キョン「いくら重いからって、人のチョコをおすそ分けするのはまずいって。
     冗談で渡してる奴もいるかもしれんが、一応贈り物だ。他人に横流ししちゃいかん。
     重たくても持って帰って、せめて一口は自分で食って、後は家族ででも一緒に食べてやれ。
     荷物もちならお前の家まで手伝ってやるから」
佐々木「…………キョン!! いくらなんでも、僕がそんなデリカシーのない人間に見えるのかい!
     僕だって年頃の女の子なんだよ。人からもらったチョコをほいほい他人に渡すものか。
     ……ああビックリした」
キョン「ああ、そりゃすまん」
佐々木「まったく、君の無神経さは時として犯罪的だよ。
     罰と言ってはなんだが、君には僕特性のやつの、試食係を命ずるよ」
キョン「何だ。変な味のチョコでも作ったのか?」
佐々木「まあそんなようなものさ。僕もどんな味か知らないんだ。文献はいくつも調べたが、
     書物によって味が違うもので、どんなものか断定できない」
キョン「何だそりゃ、味見もしなかったのかよ?」
佐々木「当たり前さ、これはその不可塑性というか、不可逆性というか、
     最初の一回きりというところに特別の価値のあるものだから。
     さ、いいからキョン、目を閉じてすこしかがみたまえ」
キョン「おいおい、どんなゲテモノだよ」
佐々木「さあね。人によってはレモン味だったり、青リンゴだったり、苺にサクランボ、
     はてはハニーパイの味と解説しているものもある。
     だが、とてもとてもあまあい味だというのだけは保証してあげるよ。
     ……僕も、今からその味を知るところなんだ」
佐々木「……」
キョン「……」

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最終更新:2013年03月03日 01:28
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