15-194「1-2+1=Start line」

「1-2+1=Start line」


「本当に合格おめでとう。この結果は君の努力の賜物だと思っている。
また大学で、同じ席を並べられる事を僕は楽しみにしているよ。」
「受かったのは佐々木が勉強を教えてくれたからだろ。一人だったら
摂神追桃に受かるのが限界だ。」
嬉しい事を言ってくれる奴だ。
「でも、佐々木。お前なら指定校推薦でも更に上はあっただろ。
態々、関学である必要もないんじゃないか。」
確かに指定校推薦の中には、彼の言う様に名門の指定校推薦枠は多い。
とてもだが『僕は恋してるキョンの為に行くんだよ。』なんて言葉は言えない。
言っても彼なら『僕は故意してキョンの為に行くんだよ。』と勘違いするのが、
期待外れが関の山だろうけど。
「大学の名前なんて飾りだよ、そこで何を学ぶかさ。
僕の場合はあのキャンパスに憧れていた節もあるしね。」
「それなら、俺はお前を拘束した訳でもないって事だな。
空いてるか、出来れば付き合って欲しいんだけどな。」
一瞬、自分の耳を疑ってしまった。
"無敵鈍感野郎"と呼ばれ、幾人のアプローチを蔑ろにした彼からすれば、
"付き合う"と言う言葉が私には余りにもイノベーションに感じたからだ。
「もっ、そうだね。僕も丁度、街の方で買い物をしたいと思っていた所だったんだ。
一緒に行かせて貰うよ。」
「じゃあ、明日の13時に何時もの場所でな。」
「わかった。」
電話を切った後、いよいよ自分の中の冷静さが失われてきた。
よく考えてみれば彼を誘う事はあっても誘われる事は初めてだったからだ。
『どんな服を着ていこう。髪のセットは、化粧だって…
あぁ、君って奴はどうしてこうも僕を悩ませるんだい?』
「おはよう、キョン。」
「遅くなったか、待たせたな佐々木。」
「大丈夫だよ。まだ五分は余裕があるからね。」
いつもと同じ様に電車に乗り込み西へと揺られていった。
やっぱり、気付いてくれないのか、少しでも期待した私が馬鹿と言う事か。
「どうした、佐々木?」
「否、なにもないさ。」
そして、目的の駅に到着した。
適当な買い物を2人で過し時は流れてゆく。
ここで一つ気になった事があった。
彼は確かに談笑もしながら連れ添ってくれてはいるものの、
どこか上の空の様に私は感じたからだ。
「どうしたんだい、今日の君はなんか上の空みたいだ。
僕が居ないみたいじゃないか。なにか気になる事でもあるのかい。」
「もう、時間なんだ。佐々木、付いて来い。」
珍しく、真剣な表情の彼に手を引かれて着いた先は
予約を数ヶ月前から取らなければいけないレストランの筈だ。
人気も、テレビ番組で紹介されている位である。
「キョン、わかっているのか。ここは…」
「知ってるさ。だから予約もちゃんと取ってあるぞ。」
「成る程、今日は此処に連れて来る為の布石だった訳だね。
中々の策士振りじゃないか。僕にも予想は出来なかったよ。」
店へ入ると落ち着いた空間が広がり、喧しく鳴るだけの大衆音楽ではなく
自己主張の少ないBGMにも好感が持てた。
既に、彼がコースを選んでいたらしく順々にメニューは運ばれてくる。
「佐々木、口に合うか。勝手にコースまで選んでしまったからな。」
「噂以上だと僕は思うよ。連れ添ってくれた君に感謝している。」
私が言っても如何かと思うが素っ気無い言葉にしか感じないだろう。
「渡したいものがあったんだ。」
彼から渡されたものは丁寧な包装されたものと小さな手紙。
此処で少し朗読して、その内容を問い質しても良いかも知れないが
彼の名誉の為にも私の胸の中にしまって置く事にしよう。
包装紙の中身はブランド物のネックレスが入っていた。
「本当に僕が貰っても良いのかい。下手を打てば君の幾月かの小遣いは
軽く飛んでしまう額に思えるみたいだけど。」
私は彼に促されるまま、その贈り物を首に掛けた。
「良いんだって。今まで大した事も出来てお前には出来ていなかったしな。
それに、お前が着けたら似合いそうだったからな。」
「ありがとう…君は本当に人を弄ぶ事に長けた人だよ、まったく。」
彼は例の如く意味を汲み取れていない顔をすると思ったが、
どの心配をする間すらも私には与える事はなかった。
「臆病でスマンかったな。お前も俺も親友だと思っていたから、
それを盾にして勝手に逃げていただけなんだよな。」
「それは僕も同じだと思うよ。あの頃は総てに潔癖になりすぎていたんだよ。」
気付けば私は、彼に抱かれながら泣いていた。

あれから、彼と共に居る時間は余り変わってない。
ただ、2人の関係はなに?と聞かれると「恋人だ。」と答える様になった。

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最終更新:2007年07月23日 07:46
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