15-263「黒佐々木」

『黒佐々木』

「それ、だれ?」

ついに最後に来るどころか遅刻までしてきたキョンにあたしは存分に説教をぶちまけてやった。
普段普通に話せないフラストレーションから開放されるのを感じる。
そこまではよかった。キョンの隣にいる人を見なければ。
女だ。やけに漂ってくる親しげな雰囲気。
少なくとも逆ナンやキャッチセールスなんて軽い関係じゃないのはわかる。
あたしだってキョンの交友関係を全て把握しているわけじゃないけど、キョンとこんな親しげな雰囲気を出せる女がSOS団外にいるなんて
認めたくなかった。
だから口から出た言葉は・・・・・・キョンに言わせればいつものことなのかもしれないけど・・・・・・辛らつなものになっていた。

「ああ、こいつは俺の・・・・・・」

俺の?俺の何?
最初に「俺の」なんて言葉がつくくらいの関係なの?

「親友」

それを言ったのはキョンじゃなかった。この女だ。

「は?」

あたしは思わず変な声を出してしまった。
いくらなんでもキョンと「親友」なんて関係の奴をあたしが知らないわけが無い、それが女ならなおさらよ。

「といっても中学時代の、それも三年のときだけれどね。
 でもね、キョンのこの2年分の行動全てと、今日着ている下着の色や男性的欲求の解消回数やそのための小道具の種類
 その他諸々全て知っている上に1年ぶりの相互認識ですぐに会話を始められるっていうのは、充分親友に値すると思うんだよ。
 僕にとってはキョン、君がそうなのさ」
・・・・・・なに、この人。
そっと後ろを振り向くと団員全員がドン引きしている。
いや、一人だけ違った。
キョンだけは妙に納得したような顔を浮かべたあと懐かしそうな顔でこの女をみている。

「佐々木です。あなたが涼宮さんですね。お名前はかねがね」

聞き様によってはあたしの活動が実を結んだ結果の一端にも聞こえるけれど先のセリフで意味が大分変わってくる。
あたしはそっとキョンに目配せした、「この人、なんなの?」という意味を込めて。
しかしキョンは何を勘違いしたのか。

「お前の悪行をこいつに言ったことは無いぜ。佐々木、何でお前はハルヒを知ってる?」

等と言い出した。
違う。
あたしが言いたいのはそういうことじゃない。
というかキョンはこの女の行動をおかしいとは思わないの?

「そりゃずっと君を見てるんだし、君の周りの人はすぐ目にするさ。
 仕掛けた場所はキョン、君の家だけじゃない」

間違いない、この女・・・・・・ストーカーだ。
でもキョンはなんで普通にしているの?
前々から鈍い鈍いとは思っていたけれどここまで露骨なストーキングに気づかず、あまつさえ親友発言に異論が無いなんて。
アタシを普段から悩ますキョンの鈍感はこの女にとってはプラスに働いているようだ。
その証拠に目の前で行われているキョンとこの女の会話は至って普通、それどころか変な信頼感まで感じる。

「北高ではキョンが世話になっていますね。改めてよろしく」

そういってこの女はあたしに手を差し出した。
すごい目でこっちを見ている。
それでもあたしはゆっくりとその手を握り返し。
なんとかヨロシクとだけ言った。

・・・・・・この人、怖い。

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最終更新:2007年07月24日 07:25
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