70-273『女神の舞台』

※SOS団解散、佐々キョンだけど佐々木の見せ方(見ようによっては嫌な奴)に注意。実験SS。

全てが夢の中のように。あの頃はあっけなく過ぎていった。誰もいない文芸部室。そして何もない本棚。
「僕もそうなりますかね。」
ハルヒは力を無くし、キョンは佐々木と結ばれ、長門、朝比奈はそれぞれの場所に帰った。
「やれやれ。」
キョンとは今でも親しい友人であり、ハルヒもまたキョンとかつての佐々木とのような関係を築いていた。
「言っとくけど、隙あらば奪うわよ!」
そう佐々木に宣言したのは、らしいの一言だ。
「ふふ。こんなエンドロールは、想像もしていませんでしたが。」
機関も解散し、SOS団も解散。そして取り残されたのは自分。
状況が動くのを望んでいたくせに、実際にこうなってしまうと暇をもて余してしまう。自分は本当に仕事人間だったんだな、と考えた。

憧れた女神は、結局自分を見向きしなかった。
自分はその舞台にすら立っていなかったのだ。
自分が得たものは、使いきれない大金、そして喪失感だった。

自宅に帰る途中、佐々木と会った。佐々木は塾の帰りらしい。
「あなたは、古泉くんだったかな?」
「ええ。彼の恋人の佐々木さんですね?」
佐々木は古泉の言葉に苦笑した。
「くっくっ。歓迎されてないね。」
「まぁ、立場上。あなたも同じですよね?」
「申し訳ないね。」
自分達が勝手に舞台を作っただけで、既に役者はシナリオを破ると決めていたのかも知れない。
それは自分の立場からすると納得いかないだけで、こちらのシナリオを演じる義務などない。彼女のシナリオは彼女が決め、そして大円団を迎えた。
「不調法、申し訳ありませんね。たまに彼を連れ出していますが、そちらも重ねて申し訳ありません。」
「いや、それはこちらこそ。キョンにしても、あなたと友情を続けられる事は本懐だろうから。
素直でない男だが、嫌いにならないであげて欲しい。」
杓子定規、テンプレートの会話だ。舞台女優と裏方。舞台には舞台の苦労があり、裏方には裏方の苦労がある。
お互い重なりあわない道だ。彼女を嫌う理由はないが、立場上辛く当たって仕舞わざるを得ない。

佐々木とテンプレートに会話した後に別れ、橘京子に出会った。
橘京子は橘京子で、寂寥に過ぎる生活を過ごしているそうだが、佐々木と本当の意味で友人になれて、それはそれで幸せではあるのだろう。
彼女は舞台に上がれなかった役者だ。それに比較すると、自分は恵まれているのかも知れない。
「舞台が終わっても、また次の舞台があるのです。私達が主役、そして佐々木さん達が端役の舞台。それが今からの舞台だと思うのです。」
橘京子は、自分を見ている。何の意図があるか不明だ。
「お気楽ですね。あなたがヒロインだとコメディですか。観客として楽しみたいです。」
「酷いのです!」
橘京子は、自分を一発叩くと去っていった。……一体何なんだろう。しかし……

「次の舞台、ですか。」

彼の舞台のヒロインは、佐々木とハルヒ。
自分の舞台のヒロインになって欲しいのは――――

「お久し振りです、古泉です。今、時間は宜しいですか?」

――――ハッピーエンドは難しいかも知れないが、これからだろう。
あの女優は、シナリオを自ら決めた。自分にそれが出来ないと誰が言える?

「佐々木。来週、古泉とダブルデートするぞ。」
「へぇ。お相手は誰だい?涼宮さんかい?橘さんかい?」
「ハルヒもついてきやがるそうだがな。あのな、その人は――――」

再び幕を開けた舞台。そして僕はヒーローとして舞台を舞えるように頑張る。かつてのヒーローとヒロインを、舞台裏に乗せて。

END

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最終更新:2013年04月29日 12:49
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