野球観戦のチケットが当たった。
「オリックスバファローズ対DeNA……」
第一希望だった、日ハム対阪神は取れなかったようだ……。
「はぁ……。オリックスバファローズもベイスターズも、好きなチームではないんだけどなぁ……」
稲葉さんを見たかった。私は溜め息をつきながら、ペア観戦チケットを見た。
翌日。学校に向かう所を橘さんに止められた。
「佐々木さん、ベイスのチケットが当たったんですよね?!」
彼女の格好は分かりやすくベイスターズ好きだと言っていた。
昔の応援グッズである、ホッシーパンチ……橘さん、本当は10ダブ位しているんじゃないのかな?
まぁ私も日ハムの旧帽子を持っているから人の事は言えないけど。
幼稚園の時の話だけど、私はこの頃から日ハムが好きだったようだ。オレンジ色の旧ユニフォームの帽子。これを後生大事に持っていたようで、両親も呆れていたらしい。
「確かに持っているけど……どうかしたの?」
「私と一緒に見に行きませんか?!」
橘さんの目が輝く。
「あ、いや……その……」
歯切れ悪く答えていると、未来人がやって来た。
「佐々木。僕を野球観戦に連れていけ。これは規定事項だ。」
こいつは何を言うか。
「……まさかと思うけど、目当ては野球観戦でなくてグッズ……なんてないよね?」
未来人が目を反らす……。確かに未来では、美品のグッズは貴重だろう。だが。
「そんな転売行為を認めるとでも?」
そんな事、野球ファンとして認められない。
「せ、生活が苦しいんだ!」
うん、キミには意地でもチケットはやらない。
「橘さん、周防さんか誰かを誘って行ってみたら?私は生憎どちらのチームのファンともいえないし、それよりは喜んで行ってくれる誰かと行ったほうがいいわ。」
「……佐々木さんと見に行きたいのですが……」
私もそうしたいけど、野球観戦はダメ。贔屓チームの人とは特に。
「日ハム対ベイスターズだったら、私も一緒に見に行ったんだけどね。橘さんも、私と日ハム戦には行きたくないでしょ?」
贔屓の贔屓倒しを聞かされるのは、存外退屈なものなのだ。
「私だから嫌、というわけではないのですよね?」
「おかしな橘さん。なら、交流戦の最後あたりのオリックスバファローズ対広島でも一緒に見に行く?」
私の言葉に橘さんの目が輝く。
「はいなのです!」
くっくっ。楽しみだね。野球を純粋に楽しみたいなら、こうした第三者でいられるチームがいい。橘さんも野球好きだし、二人で野球トークも悪くないわ。
未来人?転売屋は放置。
橘さんにチケットを渡し、橘さんと行く交流戦を楽しみに思っていたら、キョンからメールが。
『ファイターズ対タイガースのチケットが当たった。お前、日ハム好きだよな?見に行かないか?』
……まだ楽しみは尽きないみたいだ。私は了承のメールを送り、退屈な日々の先に待つ楽しみを心待ちにした。
「橘、頼む!一緒に行ってくれ!」
「転売屋は、くたばりやがれなのです。」
END
最終更新:2013年06月02日 03:08