最近、佐々木がおかしい。
たまに誘うプール。佐々木は何かと理由をつけて断わってくる。
水泳は得意なはずなんだがな。
「やれやれ、雨か。」
帰り道。雨に打たれながら帰っていると、可愛い猫がいた。
「……えらくなつっこい猫だな。」
猫は首輪をしていない割には人に慣れている。
お腹を触ろうとしたら引っ掻かれ、性別を確かめようと尻尾に触ったら、更にやられたが。
「全く、やれやれだ。」
猫を膝に乗せ、公園で涼む。
猫は上機嫌に寛ぎ、伸びをしている。……こいつの目は、誰かを思い出す。
「ああ、佐々木か。」
目の形や、色があいつに似てるんだ。猫は一瞬強張ったが、直ぐに毛繕いを始めた。
「猫のお前もマイペースだな、佐々木。」
猫の頭を撫でる。喉のならし方も、ゴロゴロでなくくぐもった声に感じる。
「とんだ重症だ。」
暫く猫を抱き、それにも飽きた頃。家に帰るべく『佐々木』を抱き上げた。
「……ああ、お前メスか。」
『佐々木』に血だるまにされ、『佐々木』はどこかに行ってしまった。何だったんだ?あの猫は……。
「どうでした?佐々木さん。私のお土産の即席猫溺泉は?」
「…………」
「効果は二回きりの商品なのですよ!我ながら面白い買い物……
みぎゃあああああああ!」
後日。
佐々木から改めてプールのお誘いがあった。
「こないだ、お前によく似た猫がいてな。メスだったんだが。」
「……キョン。動物にだって羞恥はあるのかも知れないよ。」
何故か顔の赤い佐々木に説教され、結局プールは延期となった。
やれやれ。プールには誘わないほうがいいかな?
「(バストアップ体操とヒップ引き上げが、全て水泡に……!恨むよ、橘さん……!)」
橘が暫く佐々木に口を聞いて貰えず、泣きながらSOS団に依頼してきたのは、また別の話だ。
END
最終更新:2013年08月04日 17:03