71-616『Milky way』

「アルタイルとベガの距離は14.428光年。つまりは、光の速さで向かって14年半かかるんだよ、キョン。」
「単純計算で、120兆キロメートル以上か。」
七夕。たまたま歩道橋の上で会った親友との会話。
「神も残酷だよな。」
「星座にまつわる話に、悲劇は付き物だよ。琴座なんてトップクラスに酷い。」
ああ、最愛の妻の為に冥界まで行ったオルフェウスの話か。
「僕はオルフェウスに共感出来るがね。」
佐々木が笑う。
「生憎の天気模様で、天の川は見えないが……牽牛は織姫と再会出来ているのかな?」
「さぁな。……出来てるんじゃねぇの?」
今日、俺とお前が会えたようにな。そう思いながら佐々木を見るが……
「ロマンのない男だね。そこは断言したまえよ。」
佐々木は不興げにそう言った。
「……ロマンのない女だ。」
暫く話をしていたら、あっという間に時間が流れた。佐々木と話すと、こんなんばっかだな……
「ねぇ、キョン。アルタイルとベガの距離は約14.5光年だと言ったよね。」
「ああ。」

「僕達が生まれた時にアルタイルとベガで生まれた光が、僕達が出会った時に届いた。……そう考えると運命的だね。」

雲に隠れた天の川。再会出来たであろう牽牛は、織姫に何と声をかけているのか。
佐々木と手が触れ合う。……一瞬の躊躇のあと、俺は手を握った。
言葉なく……佐々木は俯く。案外、牽牛と織姫もこんなもんかも知れん。
下を見ると、車の流れがまるで星の瞬きのようにも見える。
「…………」
影が重なろうとした時、車のクラクションが鳴り、俺達は現実に引き戻された。リア充爆発しろ、という罵声も聞こえたが。
「……帰るか。」
「……そうだね。」
……雰囲気にやられたのか、俺と佐々木の手は繋がったままだった。
人工の天の川の上。牽牛と織姫の小さな思い出。

END


「なるほど、ソースはこれかい? http://www.astroarts.co.jp/news/1999/07/990708NAO272/index-j.shtml 」
そういうと佐々木はくつくつと笑った

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2013年09月04日 23:52
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。