71-765『たとえばこんな関係』

(姉佐々木さんに弟キョンという設定)

「さて、橘さん。」
「なんですか?」
喫茶店。私は橘さんと向かい合っている。
閑散とした店内は、サボリーマン達がスマホに興じている。世の為、人の為、日本の財政健全化の為にキリキリ働け、と言いたいが、ここは我慢をした。
「花の高校生活。どうして私達には彼氏が出来ないんだろうね。」
橘さんは、またか、という顔をしながら溜め息をついた。
「佐々木さんの場合、理想が高過ぎるのですよ。」
「失礼な。そんな理想は高くないわよ。」
橘さんは、呆れたように私を見る。やれやれ。そんな私は変な事を言ったつもりはないんだけど。
「では、理想のタイプをどうぞ。」
「理想のタイプ……」
理想のタイプを思い浮かべてみた。
「……ルックスは並みでいいわね。それで、まぁ……頭も並みでいいわね。
性格は……基本的に否定から入るけど、実際には肯定してくれて、でもダメな所はちゃんと指摘してくれて……
甘えっ子なんだけど、自分しか頼れない状況になれば、誰よりも頑張ってー……
口では何だかんだ言いながらも、皆に優しくて……何でも話せる共犯者みたいな人かな?」
理想のタイプを忌憚なく答えたところ、橘さんは再び呆れたように私を見ている。……そんな変な事を言ったかしら?
そんな中……喫茶店に国木田くん達が来た。
「あ、佐々木さん。」
「やぁ、国木田くん。」
国木田くんに谷口くんがいる。隣に座る彼らは、とんだ爆弾を落とした。
「聞いたか?ついにキョンが涼宮に……」
……そこからの会話は覚えてはいない。ただ、喫茶店の席を立った事は覚えている。

「……彼氏が出来ない理由は、それなのですよ……。ブラコン。」

途中、涼宮さんと擦れ違う。涼宮さんは私を睨み付けると去っていった。
問い詰めたい衝動に駆られたが、今はキョンが優先だ。

キョンは屋上にいた。
夕陽に照らされ、遠くを見る表情。一見して悟るのは……花と散った、彼の恋心である。


「…………」
暫く声をかけるか迷ったが、私はいつもと変わらないように声をかけた。
「……キミが好きなお菓子を買って帰るかい?……ああ、帰りにレンタルショップにDVDを借りに行くのも悪くない。
帰ったら、桃鉄100年の続きでもいい。……帰ろうか、キョン。」
……我ながら気の利かないセリフのオンパレード。語彙の無さに呆れ果ててしまう。
キョンは私を見ると、安心したように微笑み……
「バカか、お前。」
と言うと……私の胸の中で泣いた。

一方。
「何故、彼を振ったんです?」
「ムカつくから。」
話し掛けた古泉に、ハルヒは不機嫌に言った。
「正直、嬉しかったわよ。あたしはキョンが好きだしね。でも。」
ハルヒは、噛み付くような視線で屋上を睨む。

「あたしを他の奴と重ねて見るのは許せない。だから振った。
あたしを見るなら、あたしだけを見させる。それが嫌でもね!」

―――――――――――――――――

まぁ……こうして花と散ったわけだが……暫く姉の胸で泣いていたら落ち着いた。
『ハァ?あんたみたいなシスコンと付き合えるわけないじゃない!
あたしと付き合いたいってんなら、あんたの大好きなお姉ちゃんじゃなくてあたしだけ見なさいよ!』
と……シスコン呼ばわりされるとは夢にも思わなかったがな。
「帰るかい?」
「そうだな。」
自転車の後ろに乗る姉の重みを感じ、俺は自転車を漕いだ。
いつか離れないといけない重みに、寂寥の念を感じながら。

「いつか振り返らせて見せるんだから!」

というハルヒの声がした気がしたが……姉よ、何故ハルヒは怒っているんだ?
「さぁてね。」
ついでに、随分上機嫌だなクソッタレ。

こうして三者三様の想いが交差する時。

物語は始まる。

END

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最終更新:2013年09月09日 02:20
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