14-51「佐々木式SOS団の作り方」

佐々木式SOS団の作り方


 「キョン、これをみてくれ」

 入学して間もないある日。
 入学してからずっと俺の後ろの席にい続けている親友、佐々木が一枚のプリントを持って話しかけてきた。
 渡されたお世辞にも上質紙といえないよう中身に書かれた文章を黙読する。

 「部活案内か」

 「そう、新入生勧誘の人から貰ってきたんだ」

 もう一度プリントに目を通すと部活の紹介と先輩の言葉が3行ほど載っている。

 「で、これがどうしたんだ?何か部活やるのか?」

 佐々木と知り合ったのは中3だが引退は中3の夏だったはずだ、須藤がないていたのを覚えている。
 俺に佐々木が部活にいそしむ姿はメモリーされていないので佐々木は帰宅部だったはずだ。

 「まぁそんなところといえばそんなところだね、ここをみて欲しい」

 佐々木指し示したところは文芸部の紹介欄だった。
 なぜかここには先輩の言葉が載っていない。

 「そこは去年の三年生が卒業した後部員がゼロになった部活らしくてね、このままじゃ廃部だそうだ」

 「この部活を廃部の危機から救うって事か?お前そんな文学少女だったか?」

 「まぁ文学少女を気取るのもやぶさかではないが・・・・・・まぁ聞いてくれ
  僕らはこのたび目出度く高校受験というある意味人生最初の戦争を勝ち抜いたわけだ
  三年後には大学受験というさらに大きな戦争が待ち構えているとはいえ今は人生最初で最後の高校生活だ
  少しぐらい楽しんでもバチはあたらないだろう」

 「だったらこんな廃部寸前のところより活気のある運動部にでも入ったほうがいいんじゃないか?」

 「それは少し違う、僕が望んでいるのは気の会う友人・・・・・・主に君だが・・・・・・と共有できる穏やかな時間なんだ
  決して運動に汗を流すことじゃない、そのためにはそりの合わない先輩がいることはやはり好ましくないんだ」

 「なるほど」

 「平たく言うとだね文芸部を乗っ取ってしまわないか?君と、僕とで
  君は受験が終わって早々塾を止めてしまったからね、僕としても君といる時間が減って寂しく思っていたんだ」

 「そう言ってもな、俺は本はほとんど読まないし小説も書かないぞ?」

 「そんなまじめにやる必要は無いんだよ、なにせ今のところ君と僕しかいないわけだからね
  まぁ生徒会に文句を言われるのも嫌だからたまに会誌くらいは出すかもしれないけど・・・・・・それも年一回で十分だろう
  文芸部の名を借りた仲良しグループさ、どうかな?君が嫌というならこの案は棄却するが・・・・・・」

 そこまで言うと佐々木はこちらをいつもの不敵な目でこちらを見てきた。
 しかしわずかながら不安も入り混じったような目だ、断られたらどうしようというような。
 さて、返事はどうしようか?
 ・・・・・・まぁ佐々木がやりたいっていうならいいか。

 「いいぜ、それで廃部を逃れるためには何人いるんだ?」

 「3人だね、大丈夫もう1人にはアテがあるんだ、入学式のときに仲良くなった橘京子さんって子がね」


 その橘さんにも首尾よくOKを貰い、連れ立って部室に行くと周防九曜という女の子が既に入部していた。
 その後転校後最初の体育で花壇に突っ込んだためあだ名が決定したパンジーこと藤原が入部し、現在の人員となったのだ。
 このあたりのリーダーシップを見るに佐々木は人の上に立つ才能があるかもしれない。
 そういえば以前そういう話しを佐々木にしたときは

 「くっくっ、僕は参謀タイプだよ、リーダーみたいなカリスマは無いが補佐ならできる、今もこれからもそのつもりだ」

 とか言っていたな。何のことかはよく解らなかったが。

 最後に、我が似非文芸部の部長は何故か俺で佐々木は副部長だったことを明記しておこう。

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最終更新:2007年07月19日 11:13
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