佐々木さん、それは男のロマンですねの巻
天蓋領域VS情報統合思念体。組織VS組織。未来人VS未来人
戦いは、長く厳しいものとなった。
死者こそ出ないものの、両者の顔から笑顔が消えてはや幾年。
そもそも、なんでこんなに争わなきゃいけないんだ。共存することはできないのか。
そう呟いた俺に、幾多の戦いで面やつれし、すっかり戦士の凄みを増した古泉がうっそりと答えた。
「何を言ってるんですか。原因はあなたでしょう。
我々は別に橘さんの組織を殲滅する必要はありません。
長門さんの思念体も、九曜さんのそれとある種のコミュニケートはできるようです。
朝比奈さんたちはやや特殊で難しいですが、それでも両者がそれぞれ存立できる
未来を模索する事も不可能ではないはずです。
問題は、あなたが、涼宮さんとくっつくか、佐々木さんとくっつくかなんです。
それが譲れないから、畢竟我々も相手を殲滅する必要があるんです」
古泉、疲れているからって、わざわざ笑わそうとしなくていいぞ。
それにお前の冗談は昔から笑えないんだよ。
「ああ、やれやれ。知らぬは当人ばかりなりというのは、ことこここに至っては犯罪的ですよ。
……そうか。どちらかを選ばなくてもいいよう、常識を変えればいいんです。
涼宮さんが常識的と言っても、この願望なら絶対かなえようとします。
第一、現実にもハーレム制度があるんですから、説得はたやすいはずです。
いけますよ! これなら我々が争う必要はなくなります!」
突然顔を輝かせたと思うと、古泉は立ち上がって講義室(もう俺たちも大学生なのだ)を
飛び出し、廊下をマッガーって駆けていった。
あいつも疲れてるもんなあ。今度甘いものでも差し入れてやろう。
などと思っていたのが甘かった。なんだこの状況は。
「つまりだね、キョン。そちらの古泉くんが提案してくれたのだが。
君の如き鈍い男を取り合って延々不毛な争いを続けるよりは、
『日本は重婚できる国なのですたった今からそうなのです昔からそうでした。信じなさいみよんみよん』
と涼宮さんと僕の現実改変能力を使ってしまい、
みんなで君を共有すれば、万事丸く収まるというわけだよ。
ここは一つ、懐の広いところを見せてくれたまえ、僕の旦那様。くっくっ」
ウエディングドレスで微笑む佐々木。
そして反対側の隣には真っ赤な顔で
「あによ。あんたが結婚しないと戦いが終わらないっていうからしょうがなくしてあげるんだからね!」
とぶつぶつ言っているハルヒ。
その斜め後ろに
「……結婚。花婿だけユニーク」と呟くウェディンドレスの長門。
「あの、私未来に帰らなきゃいけないんですけど、いいんですかぁ」と言いつつ同じく白無垢の朝比奈さん。
「まあ、金銭的にはウチがバックアップするから、新居には困らないっさ」鶴屋さん、あなたまで。
「私、おでんは得意だから」ちょっとまて眉毛、お前いつよみがえった。
「うう、佐々木さん。嬉しいような悲しいような複雑な気持ちなのです」
「--長門さんだけ、ずるい」
涙を流して、新婦側の友人の席で見守る橘と九曜。
「本当は涼宮さんと佐々木さんの予定だったんですが、まあ結果オーライということで」
全部貴様のせいだ●。
「この未来を防ぐために俺は来たのに。このせいで、日本の性風俗は乱れ、一部が相手を独占するため、
あぶれた奴が増加し、二次元に走るやつが今以上に急増し、
未来の日本は、HENTAI宗主国として世界を支配する国家になってしまうのに。このエロバカめ」
だったらとめろポンジー。好きでやってるわけじゃねえ。
「さあキョン。色々複雑な気持ちなのは察するが、僕らもそれは同じさ。
でも唯一の幸せを求めて争うより、皆で一緒にいるほうが好ましいという結論に、皆達したんだ。
だから、まああきらめてくれたまえ。皆との幸せな日々が、これからも続いていくのだから」
ああまったく。なんで俺の周りの女性陣はそろいもそろって、行動力があって常識がなくて、
そしてこんなに幸せそうに俺を見つめやがるんだ。
これじゃあ、拒否するなんてできないじゃないか。
ああ、まったく。やれやれ。
最終更新:2007年08月25日 15:52