僕がいると神:涼宮の精神を刺激し、僕にとっても、世界にとっても良くないことが起きる。
ということで、僕はキョンに黙って海外留学することにした。
向こうで博士を取るので、8年はいることになる。
一人寂しく飛行機に乗る。見送りは誰もいない。
『親友の僕を見送りもしないなんて薄情だよ。キョン』
ああそうだ、キョンには知らせて無かったんだ。
飛行機が日本を離れる。
『キョン、君は今、幸せかい?』
もし『僕と一緒に来てくれ』と言ったら付いてきてくれたかな?
でも、これでお別れだね。
もう会うことも無いだろう。
不意に涙がこぼれる。
『いけない、キョンのことは早く忘れないと』
泣き疲れた僕はそのまま眠ってしまった。
・・・・・・・・・
目が覚めた頃、アメリカ大陸が見えてきた。
この飛行機はカナダ東海岸までノンストップだ。
「目が覚めたか?佐々木」
そうだ、僕はキョンと一緒にカナダに留学に来たのだ。
「酷い悪夢を見ていたよ。夢で良かった。君と一生離れ離れになる夢だった」
「俺も悪夢を見ていた。女ジャイアンに、奴隷としてこき使われる夢だ」
キョンの夢は僕の夢とは違うらしい。
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・
飛行機は、空港に着いた。
「ホームステイ先は君の知り合いだけど、どんな人なんだ?」
「朝倉という俺の高校の同級生で、5月いっぱいでカナダに転校した奴だ。短い時間だったけど気があったな。
しかし、悪いことしたかな?」
「何?」
「いやなに。奴に刺される夢を見てしまって。お、奴が来たぞ」
キョンの示す方向には、とんでもない美人がいた。
夢で見た涼宮さんより、さらにランクが上の。何となく性格も良さそうだ。
「よう、朝倉。久しぶり」
「会いたかったキョンくん。一年も会えなくて寂しかった」
そう言って朝倉さんはキョンに抱き付く。
キョン、知り合いの朝倉さんというのは、もしかして恋人か?
「おい、そろそろ離せ、朝倉」
僕が睨んでいるのに気がついたのか、朝倉さんも僕を睨み返す。
「えーと、佐々木といいます。朝倉さんですね」
「佐々木さん。あー、あの佐々木さんね。
噂は聞いているわ。キョン君の中学時代の恋人でしょう。
私はてっきり、キョン君の男友達が来ると思っていたわ」
キョン、君って奴は夢でも現実でも。それで刺される夢か。納得したよ
「フェアにいきましょう。長い付き合いになりそうだけど、これからよろしくね」
手を差し出す朝倉さん
「左手なのは、わざとなのですか」
「そうよ、戦線布告よ」
(終わり)
最終更新:2007年12月15日 17:47