26-313「○○降る日に」

『もしもし佐々木、今晩暇か?』
「どうしたんだねキョン、まさか夜のデートのお誘いとでも言うつもりかい?くっくっ」
『あー、まあそんなとこだ』
「んなっ!!!!!!!」

ちょ、落ち着け私。はいしんこきゅー、すぅ、はぁ。よし、落ち着いた。

「い、一応だね、念のためにだが、理由を聞いてもいいかな?」
『明日は土曜で休みだから、今夜はSOS団でハルヒ命名双子座流星群一晩ぶっ通し観測会の予定だったのだが、
当のハルヒが熱出して、見舞いにいったその席で自分が参加出来ない観測会なんか中止って言いやがったんだ。
が、今回は何故か長門が異様に乗り気だったし、
俺は俺で機材や防寒具用意したりして完全にやる気モードに入ってたからハルヒ抜きでもやりたかったんだがな、』

長門さん、気持ちは分かるよ……この日の為にあれだけ議論したんだものね。

『古泉がそんな事したら間違いなく閉鎖空間が発生するでしょうとかなんとか言うからしぶしぶ諦めたんだ。
で、持って行き場の無くなったやる気をどうするか考えてたら、気が付いた時にはお前に電話してたって訳だ』
「なるほど。僕も週末はこれといって用事も無いから、喜んでお共させて頂こう」

橘さん達との観測会はキャンセル決定。

「ところで、何故キミはそれほど迄にやる気だったのかな?
もしや星が流れてる最中に3回願い事を唱えられれば願いが叶うというアレの為かい?」
『挑戦しないとは言わんが、基本はまだ流れ星を見たことが無いから一度ちゃんと見てみたかったからだよ。
幸い天気予報でも今夜は快晴みたいだし、更に月の具合も…俺はよく分からんが古泉が丁度いいって言ってたからいいんだろう。
そんな訳で今夜が俺の流れ星デビューだって年甲斐も無く興奮してるんだ』
「くっくっ…そうかい、それは失礼な事を言ってしまったね。謝罪させてもらおう。
しかしキミが本気でやろうとしていたなら、それは無理だと言わざるを得ない所だったよ。仮に
『これなら金!金!金!の3回くらい言えそうだ、でも無粋だな、止めとこう』
まで思考してから見送れる程の時間流星が流れたとしよう。
だがそれは所謂スローモーションに感じる瞬間の中の出来事で、現実の時間ではせいぜい一秒を越える程度になるはずさ。
人間は集中すると瞳孔が開いて視覚情報が増え、最大で通常時の30倍にも脳の処理速度が高まるそうだ。
結果、体感として世界がスローモーションに見えるということになる。
身近な例を挙げるなら、たまに初めて見るCMをやたら長く感じる事があるだろう?あれも同じ原理だよ。
……話しが逸れたね、元に戻そう。そんな一秒前後という短い時間の中で3回も願い事を唱えるなんて、
余程事前に願いに適う言葉を選び、早口言葉の練習を積み、更に運良く一秒にも達する位の流星を見つける事が出来て初めて
やっと至難だが不可能ではないくらいのレベルになるというものだ、いきなりやったってまず無理というものだろう」
『やけに具体的だな、色々と』
「え!?あ、ああそれくらい難しいということで、特に深い意味は無いよ」

言えない……ここ二週間橘さん、周防さん、長門さんと一緒に我々の願いを叶えるに相応しい言葉は何が最適か激論を重ね、
意味合い・必要音数・言い易さを考慮した結果『豊乳』がベストであろうという結論に落ち着き、
一人でも願掛けが成功したらその人を皆で祝福しようと誓い合ったなんて言える訳が無い!

『そうか。じゃあ佐々木は流れ星を見つけても願い事言ったりしないのか?』
「それとこれとは話が別だよ。僕だってたまにはロマンチストになりたくなるのさ」
『へぇ。例えばどんな願い事をするんだ?』
「それはお互いに内緒にしておこうじゃないか。流れてみてのお楽しみって事にしよう」
『そうだな。じゃあ8時に迎えに行くから準備して待っててくれ』
「わかった」

さて、流星観測のポイントでも説明しようか。
まず、場所は街の明かりが入らずそれでいて開けているのがベストだが、主な移動手段がキョンの自転車だから近場で妥協する。
カメラを使う場合は広角レンズを着けて天頂方向か副射点、つまり流星が来る方向に向けてシャッターを数分開放を繰り返す。
肉眼での観測は地面に断熱シート等を敷いてその上で寝転び、なるべく広い範囲を視野に収めながら全体をぼんやりと眺める。
複数人いる場合は見る方角・範囲を分担した方が望ましいので、残念ながら二人仲良く並んで星を見ることはできないだろう。

そんな事を話しながら自転車と徒歩で2時間かけて現場に着き、設営も終わりいざ観測!という段になって…

「雨だね」
「いや、雪も混じってる。みぞれだなこりゃ」
「予報は快晴だったよね、これってやっぱり……」
「『やつ』のせいだろうなあ」


涼宮さんのばかぁー!!







で、いつもなら終わる所だけど、今日は一味違う展開が待っていた。
涼宮さん、貴女は気付いてないかもしれないけど重大なミスを犯したのだよ?では私のモノローグから続きをどうぞ、くっくっ


水を弾く断熱シートは最も高価なカメラを護るために使用しなければならなかった為、私達はまともに氷雨を浴びてびしょ濡れだ。
体温を保持するのが目的の防寒具も冷水を吸収し、ただひたすらに重く冷たく、全くその役割を果たさなくなった。
雪混じりの冷たい雨は10分程で上がったが、身体は冷え切り、とても観測を続けられる状態ではない。

「くしゅっ!」
「おい佐々木、大丈夫か?」
「これが大丈夫に見えるならキミも相当危ないね。幻覚が見えているようだ」
「どうにかして暖をとらんとマジでやばいな。さてどうするか……」


朝になって、屋根付きベンチの休憩所で断熱シートにくるまる私達を発見した古泉君の顔は蒼白だった。
可哀相に、余程寒い中を探し回ってくれたんだね。私達は温かいどころか暑く、いや熱くすらあったというのに。くっくっ


『月曜日の天気予報をお知らせます。午前・午後を通して概ね快晴、所により一時血の雨が降るでしょう』


(色々ぶち込んで終わり)

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最終更新:2007年12月15日 17:51
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