~黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る~ 李白
古くからの友人『孟浩然』は(揚州より)西の方角にある黄鶴楼(※)
に別れを告げ、
春の霞が立ち上る三月に、揚州に向けて下っていった。
『孟浩然』が乗る帆掛け舟の遠い影も、青空に吸い込まれて見えなくなり
ただただ、長江が天の果てまで流れているのをみているだけであった。
※黄鶴楼 中国の武漢の南西にあった建物。
突然だが、漢詩というものをしっているだろうか?
中国に昔から伝わる詩のひとつだ。僕はこれが大好きなのだよ。
昔の人がどんな事を考えていたか、どんな経験をしていたのか、昔を知る手がかりになるからね、とても面白い。よんでいてワクワクする。意外と昔の人も今の人と考えている事が変わらないのだよ。
でも、そんな漢詩にも読んでいて悲しくなる物があるんだ。
中学校の教科書で読んだ漢詩なのだけどね、初めて読んだ時はまさかその漢詩と同じような体験をするなんて思いもしなかったものだよ。くっくっ。
そう、あれは中学校の卒業式の時だ。
~黄鶴楼にて孟浩然の広陵に之くを送る~ 李白
『3年5組17番 佐々木○○』 はい。
席を立ち、体育館をまっすぐ歩き校長先生の元へと向かう。
おや、キョンが寝ている。泣いている人もいるのに、全く彼はいつも・・・。
演台の上に立ち校長先生の元へと一歩進む。
『3年5組17番 佐々木○○。あなたは中学校の過程を終了したことを認める。以下同文です。』 ありがとうございます。
「全く、佐々木はいいよな。頭の良い高校へ行けて」
そんなことを良いといわないで欲しいものだ。僕は君の事がうらやましいのだよ?
「なぜだ?」
君みたいな県立高校だと試験の順位を気にしなくてもいいからね。
「・・・お前は、嫌味を言っているのか?」
くっくっ。いや、すまない。そんなつもりはなかったんだけどね。
「全く、佐々木と同じ高校へ行きたかったぜ。」
「同じ高校へ行けば勉強を教えてもらう事ができたはずだからな。俺も落第せずにすむだろう?」
ここでお別れだね。
「あぁ、そうだな。また、いつか会おうぜ。親友。」
こちらこそ。絶対また会おう。
「じゃあな、佐々木。」
じゃあね、キョン。
そういってキョンは特に別れを惜しむわけでもなく行ってしまった。
僕は、キョンが角を曲がって見えなくなってもキョンが最後にいたところをずっと見ていた。
「おねえちゃん。なんで泣いてるの?」
声がしたので見てみると、5歳ぐらいの女の子が僕を見ていた。
泣いている?僕が?そんなわけないだろうと言おうとして、ふと、目のピントが合っていない事に気が付いた。あれ?僕はいつから眼鏡が必要になったのかな?
「おねえちゃん。大丈夫?」
うん、大丈夫だよ。気にしないで。と言おうとするけど上手く喋る事ができない。
ただ嗚咽する声が漏れるだけだった。
End
最終更新:2007年12月29日 00:41