最近のイタリア情勢及び日本・イタリア関係
平成17年10月
平成17年10月
1. 政治情勢
(1)第二共和制
キリスト教民主党と共産党とが対峙する戦後政治の枠組みが冷戦の終焉や大規模構造汚職の摘発等を受け瓦解した後、1994年に小選挙区比例代表併用制の新選挙法の下で初の両院選挙が行われ、「第二共和制」と呼ばれる新たな時代に移行し始めた。1995年以降は各党派が二極化する傾向を示している。
(1)第二共和制
キリスト教民主党と共産党とが対峙する戦後政治の枠組みが冷戦の終焉や大規模構造汚職の摘発等を受け瓦解した後、1994年に小選挙区比例代表併用制の新選挙法の下で初の両院選挙が行われ、「第二共和制」と呼ばれる新たな時代に移行し始めた。1995年以降は各党派が二極化する傾向を示している。
1996年の総選挙で勝利した中道左派連合は、ユーロ参加と経済・財政状況の改善のほか、一連の憲法改正(州の自治・分権化、より公正な裁判、在外選挙)、行政改革等の実績を挙げた。
(2)2001年総選挙と第二次ベルルスコーニ内閣の成立
2001年の総選挙では、与党中道左派「オリーブの木」連合と野党中道右派「自由の家」連合が、ルテッリ前ローマ市長、ベルルスコーニ元首相をそれぞれ次期首相候補に立てて対峙した結果、野党中道右派連合が大勝し、第二次ベルルスコーニ内閣が成立した。政権交代の背景としては、与党内の度重なる内紛、ユーロ参加のための増税等もあり、世論の政府に対する不満が高まっていたことが挙げられる。
2001年の総選挙では、与党中道左派「オリーブの木」連合と野党中道右派「自由の家」連合が、ルテッリ前ローマ市長、ベルルスコーニ元首相をそれぞれ次期首相候補に立てて対峙した結果、野党中道右派連合が大勝し、第二次ベルルスコーニ内閣が成立した。政権交代の背景としては、与党内の度重なる内紛、ユーロ参加のための増税等もあり、世論の政府に対する不満が高まっていたことが挙げられる。
(3)最近の動き
(1)2004年11月、フラッティーニ外相の欧州委員(司法・自由・安全担当)就任を受けてフィーニ副首相が外相(副首相兼任)に任命された。
(1)2004年11月、フラッティーニ外相の欧州委員(司法・自由・安全担当)就任を受けてフィーニ副首相が外相(副首相兼任)に任命された。
(2)2005年4月3-4日の州選挙で連立与党が惨敗したことを受けて、20日ベルルスコーニ首相はチャンピ大統領に辞表を提出、22日に再度首班指名を受け、23日第3次ベルルスコーニ内閣の閣僚名簿を発表した(主要閣僚は留任)。26日下院で行った施政方針演説において、同首相は、低所得者層等に対する減税措置や企業の競争力向上の為の税制の見直し、南部開発促進政策の強化、憲法改正法案の可決等を積極的に進めていく旨述べた。
(3)2005年9月22日、シニスカルコ経済財政相は、同相によるファツィオ中銀総裁に対する辞任要求及び来年度予算編成を巡る連立与党内の対立により辞任、トレモンティ副首相(前経済財政相)が経済財政相を兼任することとなった。
2. 主要政治課題
(1)制度改革
現内閣は、国全体の改革を使命として、現在主に以下の課題に取り組んでいる。
(1)制度改革
現内閣は、国全体の改革を使命として、現在主に以下の課題に取り組んでいる。
経済構造改革:累積債務残高(2004年GDP比106.6%)を着実に減少させつつ中長期的な成長を確保し、南部の失業問題等を解消することが最重要課題。
年金改革:少子高齢化を踏まえ、年金受給開始年齢の引き上げが課題。2004年7月末、2008年からの年金受給年齢の引き上げ等を主な内容とする年金改革法案が成立。
ラジオ・テレビ基本法:TV・ラジオに係る集中排除規制を緩和するとともに、国営放送RAIの民営化の道筋を規定する法案。2004年4月末に可決され、5月に公布施行。
公私峻別:閣僚は、マスメディアを含む企業の所有者となることはできるが、営利企業の経営に携わることはできないこと等を規定する法案が2004年7月に成立。
司法改革:当初は、司法官(裁判官及び検事)のキャリアの分離、裁判の迅速化や刑罰の確実な適用等、より効率的で公平な司法を目指すものとされていたが、2005年7月に成立した司法改革法は、主に司法官の身分、規律等にのみ焦点をあてたものとなった。
雇用改革:2003年10月に施行された労働市場改革委任法(労働市場の柔軟化を目指すもの)の実効化による女性・高齢者を中心とする雇用率のアップと南北の失業格差の是正。
制度改革・地方分権:首相の権限拡大(閣僚罷免権・議会解散権等の付与)と地方分権の一層の推進(上院の地方代表院化、憲法裁判所への州代表判事の導入、州に学校教育、保健医療、地方警察の分野での排他的権限を与える)を目的とした憲法改正。国会にて審議中。
(2)移民問題
イタリアの地理的・経済的状況から外国人流入が増加しており、また、不法滞在者による犯罪も多発していることから、政府は不法移民の流入阻止と正規外国労働者の管理を目的とした「移民法改正法案」を提出し、2002年6月に議会で可決、成立した。
年金改革:少子高齢化を踏まえ、年金受給開始年齢の引き上げが課題。2004年7月末、2008年からの年金受給年齢の引き上げ等を主な内容とする年金改革法案が成立。
ラジオ・テレビ基本法:TV・ラジオに係る集中排除規制を緩和するとともに、国営放送RAIの民営化の道筋を規定する法案。2004年4月末に可決され、5月に公布施行。
公私峻別:閣僚は、マスメディアを含む企業の所有者となることはできるが、営利企業の経営に携わることはできないこと等を規定する法案が2004年7月に成立。
司法改革:当初は、司法官(裁判官及び検事)のキャリアの分離、裁判の迅速化や刑罰の確実な適用等、より効率的で公平な司法を目指すものとされていたが、2005年7月に成立した司法改革法は、主に司法官の身分、規律等にのみ焦点をあてたものとなった。
雇用改革:2003年10月に施行された労働市場改革委任法(労働市場の柔軟化を目指すもの)の実効化による女性・高齢者を中心とする雇用率のアップと南北の失業格差の是正。
制度改革・地方分権:首相の権限拡大(閣僚罷免権・議会解散権等の付与)と地方分権の一層の推進(上院の地方代表院化、憲法裁判所への州代表判事の導入、州に学校教育、保健医療、地方警察の分野での排他的権限を与える)を目的とした憲法改正。国会にて審議中。
(2)移民問題
イタリアの地理的・経済的状況から外国人流入が増加しており、また、不法滞在者による犯罪も多発していることから、政府は不法移民の流入阻止と正規外国労働者の管理を目的とした「移民法改正法案」を提出し、2002年6月に議会で可決、成立した。
3. 経済情勢
(1)景気
世界経済の回復基調を受けて徐々に回復してきているが、2004年の成長率は1.1%であった。
(1)景気
世界経済の回復基調を受けて徐々に回復してきているが、2004年の成長率は1.1%であった。
今後の景気の動向については、伊産業の国際競争力の低さや個人消費の低迷、設備投資の一巡など、さまざまな懸念材料が指摘されていることに加え、高水準のユーロと石油価格がリスク要因として残っており、予断を許さない状況にある。
(2)失業
景気回復の遅れ、企業リストラ規模の拡大等にもかかわらず、労働市場の柔軟化政策に伴い、失業率は近年減少傾向にある。
(2000年 10.4%→ 2001年 9.5%→ 2002年 9.0% → 2003年 8.7%→ 2004年 8.1%)
景気回復の遅れ、企業リストラ規模の拡大等にもかかわらず、労働市場の柔軟化政策に伴い、失業率は近年減少傾向にある。
(2000年 10.4%→ 2001年 9.5%→ 2002年 9.0% → 2003年 8.7%→ 2004年 8.1%)
(3)財政
2004年12月29日、2005年度予算法案が可決された。右予算法における財政赤字解消策総額は伊GDPの約2%にあたる240億ユーロ。
2004年12月29日、2005年度予算法案が可決された。右予算法における財政赤字解消策総額は伊GDPの約2%にあたる240億ユーロ。
また2005年7月、経済財政政策の中期的な基本方針を示す経済財政計画(DPEF)が閣議決定された。右計画によれば、1)社会資本整備の強化、2)市場の自由化・行政手続きの簡素化、3)法人税負担の軽減、4)家計の購買力保護、5)財政の収支改善と質の向上、の5つの施策を通じて経済活性化・財政健全化を図ることとしており、こうした施策を通じ、放置すれば2006年には対GDP比4.7%にまで達すると見込まれる財政赤字を、2006年には3.8%、2007年には2.8%と、2年間で3%以内に縮減することを目指している。
(4)課題
南部の開発と発展がイタリア経済社会政策の重要課題。また、国際競争力強化のための経済構造改革の促進が必要とされている。
南部の開発と発展がイタリア経済社会政策の重要課題。また、国際競争力強化のための経済構造改革の促進が必要とされている。
4. 外交
(1)全般
イタリア外交は、伝統的に、欧州統合の深化と対米関係強化を二本柱としている。また、地理的・歴史的要因から、地中海沿岸諸国や東欧諸国との関係にも力を入れている。アジアについては、市場としての中国の可能性に注目している。
(1)全般
イタリア外交は、伝統的に、欧州統合の深化と対米関係強化を二本柱としている。また、地理的・歴史的要因から、地中海沿岸諸国や東欧諸国との関係にも力を入れている。アジアについては、市場としての中国の可能性に注目している。
(2)対イラク政策
ベルルスコーニ政権は、米、英による対イラク軍事行動を支持するとともに、戦後復興に積極的に貢献している。「古代バビロニア作戦」の枠組みの下、現在約3,000名の部隊(主に陸軍、軍警察)をイラク南部ナシリアに派遣し、治安維持活動、インフラ及び主要公共施設の再建支援、イラク警察支援、医療支援を行っている他、国際機関等を通じての支援も実施している(派遣期間は2005年12月まで)。
ベルルスコーニ政権は、米、英による対イラク軍事行動を支持するとともに、戦後復興に積極的に貢献している。「古代バビロニア作戦」の枠組みの下、現在約3,000名の部隊(主に陸軍、軍警察)をイラク南部ナシリアに派遣し、治安維持活動、インフラ及び主要公共施設の再建支援、イラク警察支援、医療支援を行っている他、国際機関等を通じての支援も実施している(派遣期間は2005年12月まで)。
(3)テロとの闘い
アフガニスタンの「不朽の自由作戦」にも部隊派遣を行っている他、バルカン地域等、総計約8600名が海外に展開している。
アフガニスタンの「不朽の自由作戦」にも部隊派遣を行っている他、バルカン地域等、総計約8600名が海外に展開している。
また、イタリアは国内でアル・カーイダ関連の細胞摘発などを積極的に実施している。
5. 我が国との関係
(1)政治関係
全般的に良好であり、大きな懸案はない。互いにG8メンバー国として協力関係にある。近年の要人往来等は以下のとおり。
(1)政治関係
全般的に良好であり、大きな懸案はない。互いにG8メンバー国として協力関係にある。近年の要人往来等は以下のとおり。
(イ)2000年1月、河野外相が訪伊し、ダレーマ首相、ディーニ外相と会談。また同年5月、森総理が訪伊し、アマート首相と会談。2001年7月、ジェノヴァ・サミット及び関連会合のため、小泉総理、田中外相、塩川財務相が訪伊、それぞれ、ベルルスコーニ首相、ルッジェーロ外相、トレモンティ経済・財政大臣と会談した。
2002年10月に、清子内親王殿下がイタリアにお立ち寄りになり、2003年7月には常陸宮同妃両殿下がイタリアを御旅行された。
なお、2003年5月、G8外相会合(於:パリ)及び2004年9月、国連総会(於:ニューヨーク)の機会に、川口外相とフラッティーニ外相が会談した。
2002年10月に、清子内親王殿下がイタリアにお立ち寄りになり、2003年7月には常陸宮同妃両殿下がイタリアを御旅行された。
なお、2003年5月、G8外相会合(於:パリ)及び2004年9月、国連総会(於:ニューヨーク)の機会に、川口外相とフラッティーニ外相が会談した。
(ロ)伊側よりは、ディーニ外相(1997年7月)、プローディ首相(1997年10月)、スカルファロ大統領(国賓、1998年4月)がそれぞれ訪日。
2000年7月、九州沖縄サミットのためにアマート首相、ディーニ外相、ヴィスコ国庫相が訪日、アマート首相は森総理と会談した。
2001年3月、「日本におけるイタリア2001年」オープニング出席のため、ディーニ外相が訪日、河野大臣と会談した。
本年は愛・地球博の開催もあり、イタリア要人の訪日が相次ぎ、ビアンキ・クレリチ伊日友好議連会長、ペーラ上院議長、スカイヨーラ生産活動大臣、ブッティリオーネ文化財・文化活動大臣等が訪日した。
2000年7月、九州沖縄サミットのためにアマート首相、ディーニ外相、ヴィスコ国庫相が訪日、アマート首相は森総理と会談した。
2001年3月、「日本におけるイタリア2001年」オープニング出席のため、ディーニ外相が訪日、河野大臣と会談した。
本年は愛・地球博の開催もあり、イタリア要人の訪日が相次ぎ、ビアンキ・クレリチ伊日友好議連会長、ペーラ上院議長、スカイヨーラ生産活動大臣、ブッティリオーネ文化財・文化活動大臣等が訪日した。
(2)経済関係
(イ)全般的には良好で、特段大きな懸案はない。
(イ)全般的には良好で、特段大きな懸案はない。
(ロ)日伊双方の経済力に比し、貿易総額に占める各々のシェアは低い(日伊両国とも貿易総額中の1~2%程度)。
伊の対日輸出は、イタリア文化紹介事業「日本におけるイタリア2001年」の実施等を背景として着実に増加している。2004年の対日輸出は7,459億円、対日輸入は6,980億円で2001年より4年連続で日本側の赤字となっている(但し、第三国経由の輸出入統計上の取り扱いの相違等により、伊側の統計によれば、1998年以降7年連続で伊側の赤字)。
伊の対日輸出は、イタリア文化紹介事業「日本におけるイタリア2001年」の実施等を背景として着実に増加している。2004年の対日輸出は7,459億円、対日輸入は6,980億円で2001年より4年連続で日本側の赤字となっている(但し、第三国経由の輸出入統計上の取り扱いの相違等により、伊側の統計によれば、1998年以降7年連続で伊側の赤字)。
(ハ)我が国の対伊直接投資は、2004年度で58億円。累計額でみると2004年末で1,133億円で、対EU各国投資中第9位)。
伊の対日直接投資は、2004年度で21億円。累計額でみると2004年末で576億円で、EU加盟国中第7位。
伊のアパレル、宝飾関係企業が日本で大型店を開設。
伊の対日直接投資は、2004年度で21億円。累計額でみると2004年末で576億円で、EU加盟国中第7位。
伊のアパレル、宝飾関係企業が日本で大型店を開設。
(ニ)1989年以降、両国民間企業人の間で日伊ビジネス・グループ会合が毎年開催され、日伊経済関係強化のため活動している。
(3)文化関係
(イ)1995~1996年に日本文化紹介事業「イタリアにおける日本 95/96」開催。
(イ)1995~1996年に日本文化紹介事業「イタリアにおける日本 95/96」開催。
(ロ)2001年3月より2002年6月にかけて日本におけるイタリア文化紹介事業「日本におけるイタリア2001年」開催。
warewarehauchuujinnda
(4)交流
(イ)我が国より年間約90万人の邦人観光客。
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(4)交流
(イ)我が国より年間約90万人の邦人観光客。
(ロ)8,764人の在留邦人(2004年10月現在)。