クラブ・ドーパント

「風都タワーは俺たちが叩き斬る。……地獄を楽しみな!」

【名前】 クラブ・ドーパント
【読み方】 くらぶ・どーぱんと
【登場作品】 風都探偵
【登場話】 第78話「fに感謝を4/鼠と獅子」~
第83話「fに感謝を9/反撃の炎」
【分類】 ドーパント
【能力】 硬度の高い外殻、頭部の鋏から放つ強烈な斬撃波、節足状の触手による刺突、驚異的な高速自己再生、泡の被膜によるダメージ軽減、2体による連携戦、変身者自身の耐久性の向上?(ハイドープ?)
【メモリ】 クラブ
【綴り】 crab
【頭文字デザイン】 蟹の鋏(C)
【モチーフ】
【生体コネクタ位置】 胸部(ヒカル)

【詳細】

蟹の記憶を宿した「クラブ」のガイアメモリで変身するドーパント。

その容姿は言わずもがな「蟹人間」といった風貌で、蟹を彷彿とさせる色合いをした人型。
ただし足首は蟹そのものでピンヒールのように鋭く、頭部は大小様々な蟹の鋏を寄せて丸めただけのグロテスクな形状で、人間で言う所の眼や口といった器官が見当たらない。
また片側の背面からタカアシガニの足を思わせる異様に長い触手を備えている。
このドーパントはメモリの本数に合わせて2体存在し、その触手が左右非対称についているのも特徴。

因みにドーパント態は今回で初登場ではあるが、「クラブ」のメモリ自体は番組放送時の書籍の一覧にも掲載されたことがある既存のもの。
従ってメモリのレア度はそれ程高くないように思われるが、掘り出し物を入手した雪侍が「面白いメモリ」と称したように、仮面ライダーを苦戦させる隠された性能を持っていた。

「蟹のドーパント」というイメージに違わず「鋏」を意識した攻撃能力を備え、頭部の中で最も大きな鋏から放つ巨大な三日月型の衝撃波は地面を削り取るどころが、ダブルのメタルシャフトすら寸断してしまう。
また先述の背後の節足パーツも自在に動かすことで刺突武器として使用でき、これまた防御に優れたメタル系フォームのダブルの掌を容易く貫通してしまう威力を誇る。

と、攻撃性能だけを挙げても「全身凶器」とも言える恐ろしい殺傷力を持つが、このドーパントの真に恐ろしい所は「異常なまでに速すぎる再生力」にある。
ダメージを負うと傷口や欠損部位から身体が発砲し、泡に包まれた箇所が瞬く間に修復してしまう。
自己修復能力を持つドーパントといえばクレイドールやトラッシュなど前例があるものの、この再生速度の速さはそれらとは比較にならず、「ダメージと同時に自動再生する」という特質から仮面ライダーからの攻撃をプラマイゼロで受け流す。
結果的に、攻撃したダブルにまるで手応えを失ったかのように錯覚させ、「メモリを無効化する」という『プリズムブレイク』まで逆に無力化してしまうほど。
また、発生した泡は被膜となってボディにコーティングされ、相手の攻撃を滑らせて威力を削ぐ天然の鎧へと変化。一度泡が発生すれば固い外殻も合わさってダメージそのものを与える事さえ困難になってしまう。

その性質から雪侍が予見していたように、あらゆる敵のメモリ情報を閲覧できるサイクロンジョーカーエクストリームですら、「打つ手なし」という検索結果を出さざるを得ない状況に陥ってしまった。


メモリの使用者は風都のごろつき『蒼炎群』のメンバー・双見光(通称ヒカル。フルネームは後のディープ編で判明)と、そのボス・風吹鉄男(通称テツ)。
元々は風都のチンピラの集まりだったが、嘗ての『ミュージアム』の後継者を(勝手に)名乗っていた『EXE』のように、仮面ライダーに倒された悪の存在に影響されてカルト集団と化した組織。
その信仰対象は『蒼炎群』という由来にもあるように、過去にダブルたちを苦戦させた青い炎の模様を腕に持つ白い悪魔であり、ライダーに敗死した彼を今も尚、「あのお方」と崇めて崇拝している。
とくにリーダーのテツは異常に執心しており、自身の暴君ぶりをその信仰心により正当化していた(結果的に部下へのその態度が、彼の破滅の要因になってしまう)。

自分たちの信仰心とその偉大さを証明するため、『NEVER』のテロリスト事件の再来、即ち「風都タワーの二度目の崩落」を画策。
風都タワーが修復された記念日に毎年行われる『風都タワー感謝祭』の日を敢えて選び、平和な人々を絶望に陥れようと目論んだ。
とは言え実質的には若者の小規模な集団なので自分たちで調達できるメモリにも限界があり、当初はダブルに敗北したものの所有する中で辛うじて最強だったというテツの「マグマ」の力で風都タワーの鉄骨を時間をかけて融解させるという地道且つ非効率な作戦を構想していたという。

まずは手始めに生身のヒカルが『ふうとくん』のスーツを強奪しようとするが、居合わせて異変に対応したときめの妨害に逢い、止む無く逃走。
その際に運搬していたふうとくんのスーツアクトレス・富士見ナオの足を負傷させ、奇しくも彼女をイベントから降板に追い込んだ。

しかしながらアジトに帰還したヒカルは、任務をしくじった罰としてマグマ・ドーパントに変身したテツに粛清されそうになるが、「若者は未来の宝」と仲裁に現れた雪侍に制止され、汚名返上に「クラブ」のメモリを譲渡される。

そして『感謝祭』の前日イベント。
ナオの代理でふうとくん役を務めるときめが奮闘するミニステージを陰から監視していたヒカルだったが、竜や刀野刑事たちに発見されると激昂してクラブ・ドーパントに変身。
ステージに乱入してときめを襲撃しかけるが、待機状態からヒートメタルに変身したダブルに阻止される。

それでも強烈な斬撃や異常な回復力でダブルを翻弄し、ときめのふうとくんに触手を伸ばし、それを庇ったダブルの腕を負傷させる。
負け時とダブルもエクストリームに変身するが、その回復機能を打開できず苦戦。
さらに戦いを傍観して調子付いたテツももう1体のクラブに変身して加勢し、2体でダブルを追い詰める。

そこで、避難に逃げ遅れた子どもを救出しようとしたふうとくんの気配に気づいて再度襲おうとするも、その中の存在がときめであることを察したオーロラに妨害され、彼の要求に従い素直に中断。
彼がときめを何処かに連れ去っていくと矛先をダブルに戻すが、刀野刑事の手当に遅れてきたアクセルも参戦して2対2の対決に入る。

それぞれプリズムソードとエンジンブレードの斬撃を無力化して善戦するが、戦闘中にアクセルを挑発していたテツが力比べに負け、ドライバーを吹かせたブローの一撃を喰らう。
直後、ライダーとの実力差を実感したヒカルがテツを回収。明日の『感謝祭』での風都タワーの破壊を改めて予告し、揃って撤収する。

そして『感謝祭』当日。
風都タワーから遠方の湾岸に出没するが、この2体分のドーパントの性能から「巨大な風都タワーを破壊するのに最も効率のいいポイント」を算出したフィリップに待ち伏せされ、彼から今頃アジトの方も別働隊で刑事を率いたアクセルに壊滅されていることを聞かされる。
そこに昨夜から別行動をとっていた翔太郎も合流し、二人で変身したヒートジョーカーと交戦する。

だが、所詮は最強のエクストリームの型落ちと油断していたテツが先走って襲い掛かるが、ダブルのカウンターパンチ一発を受けただけで、回復どころか持続する激痛に悶え苦しんでしまう。

実はこのドーパントの再生能力は無敵のように思われたが万能という訳ではなく、例えどんなに深くとも傷口がシンプルな刀傷ならば瞬時に完治してしまう一方、身体の構造そのものを複雑に粉砕する攻撃、つまり打撃に対しては相性が悪く、傷の修復が追いつかない弱点があったのだ。

前回の撤収間際にアクセルの一撃だけが有効に見えた敵の反応、そして自身がやんちゃをしていた時代に医者から聞いた「空手経験者から受けた怪我が一番治りが遅くて厄介」という知識から打開策を見出した翔太郎は、昨晩の内にナオの伝手で依頼した格闘家の指導で空手の型を伝授して貰っていた。
一夜漬けとはいえ、猛特訓の末に相手に確実にダメージを与える殴り方を習得し、ヒートの熱を上乗せすることでクラブに有効な攻撃に昇華していたのだ。

苦戦していたテツは静観していたヒカルに加勢するよう命じるが、自身の背中触手を逆に利用され、ヒカルのドーパント態に突き刺されてより劣勢に追い込まれてしまう。

反撃の一手に2体で体勢を立て直し、本来は風都タワーを破壊するのに使う筈だった合体斬撃を繰り出そうするが、翔太郎の方も敵の回復機能の要が背面の蟹型器官だというフィリップの分析結果を助言されてマキシマムドライブを発動。
放った斬撃でダブルの身体を真っ二つにしたと歓喜するも、既に「ジョーカーグレネイド」のモーションに入られたことで左右に回避され、それぞれの回復器官にピンポイントで拳がヒット。
同時に両側からの攻撃で二人密着するように一ヶ所に纏められ、追い打ちにヒートメモリで発動した「ジョーカーバックドラフト」で揃って大爆発し、メモリブレイクされた。

これにより今回の事件は解決したかに思われたがまだ裏があり、その晩、メモリブレイクした二人が警察病院に極秘で護送される中、ヒカルが覚醒して車両が大破。
愕然とするテツを前にヒカルは、秘密裏に雪侍からヘッドハンティングを受けていた事を明かし、用済みになったテツを躊躇なく殺害して逃亡した。

後日の新聞にもテツの謎の焼死とヒカルの失踪の記事が掲載されたが、フィリップには彼の行方や『裏風都』との繋がりを推理されていた。

というのも、前回のトラッシュ・ドーパントに引き続き、『裏風都』に関わるドーパントは回復能力に秀でた能力者であり、彼らはその特異体質の人物を探していたのだ。

そして、テツが変身した個体に比べて驚異的な再生能力を備えたヒカルはその体質にも現れ、危険だった「リアクターメモリ」のフィードバックも自力で克服。
守に続く二代目のリアクター・ドーパントとして『裏風都』に歓迎された。

因みに、彼が変身したリアクターは先代の守が変身した個体よりも更に高温らしく、その変身後の姿に纏った炎の色は、皮肉にも彼自身が憧れていた「蒼」だった。

最終更新:2021年09月11日 17:56