―疾風の如く―
「そういや、お前デイパックはどうした?」
衝突に、巧が口を開いた。
「………?……あっ……」
自分のデイパッグは、さっきの場所においてきてしまった。
それに――あの食料も。あれがあれば少しは――
「だったらすぐにでも取りに行くぞ。誰かに獲られると厄介だ。俺達の食料もいずれ底を突くだろうしな。」
天道が直後に提案する。だが――――
「あぁ。そうだな。その場所に………って、オイ。どうした?」
巧が目を向けると、肩を抱え震えているあきらの姿があった。
「………すみません……ちょっと…………」
あきらは、先程の場所に戻ることを恐れていた。
たった数分。たった数分の出来事。
そのたった数分の出来事は、あきらの心に、深い傷を作ってしまった。
あの人間とは思えないほどの恐ろしい力。
あの殴った者を全て壊してしまいそうな拳。
そして――あの獲物を狩り、傷つき、それさえも楽しむ蛇のような目。
普段なら――イヤ、普段の状況でもあそこまで恐怖を感じたことは無い。
「………………怖いのか?」
「………はい。………甘えているのはわかってます。でも………」
天道の問いかけに、弱弱しくも答えるあきら。
「……お婆ちゃんが言っていた。恐怖を覚えることは弱さじゃない。恐怖を乗り越えなければ、強くはなれない。ってな。」
いつもの決まり文句と共に、天道はあきらを励ます。
そして、
「何があっても大丈夫だ。俺達が傍にいる。」
「……そうだな。俺も一緒だ。だから心配するなって。」
かつて妹に言った言葉を言い、巧もそれに続く。
「だが、どうしても嫌と言うのなら、無理にとは言わないがな。」
天道があきらの身を案じ、付け加えるが――。
「……ありがとうございます。もう、大丈夫です。食料はこちらに……」
安堵の表情を浮かべ、あきらは先程の場所へと案内する。
「…………しっかし、案外少ないな。これで何日分だ?」
持っている全てを積み、小さな砂山のようになっている食料を前に、巧が呟く。
「贅沢を言うな。三人分の量でこれだけあれば、数日持つはずだ。」
「そうですね。これでなんとかなるでしょう。」
巧のぼやきに、天道とあきらが答える。
「それもそうだけどよ……そういや、二人の支給品は何だ?」
不意に巧が疑問を口にした。
「どうした。突然支給品の話をする?」
「いや?別に。ただ……俺の支給品がちょっとアレなんでな。」
天道の常に気を抜かない物言いに、苦笑いしながら巧が返す。
「ほう……ならば先にお前のアレな支給品とやらを教えてもらおうか。」
「流石に用心深いな……まぁ、当たり前か。」
逆に問いかけてきた天道に、皮肉交じりに答える巧。
「俺の支給品は…………はずれって書かれてた紙切れさ。もう燃やしちまったけどな。」
その瞬間、場の空気が凍りついた…………ような気がした。
「……そうか。俺の支給品ははこれだ。」
天道は自分のデイパックから紅、墨、白色のディスクを取り出した。
三枚それぞれに、動物らしき意匠が籠められていた。
「……それは…………」
あきらはそのディスクを知っていた。
「なんだ、これを知っているのか。一体これは何だ?」
そのディスク――――ディスクアニマルのことを話した。
そして、自分の知っているものとは似ているが、細部が若干違っていることも。
「そうか……だがお前の話から考えて、余り大きな違いは無いだろう。これはお前が持っていろ。」
天道はそのディスクを差し出す。
「……いいんですか?あなたの支給品なのに……」
「ああ。今これを使えるのはお前だけだ。俺が持っていてもしょうがない。」
天道のディスクを受け取り、あきらは自分のデイパックにしまいこむ。
「で、お前は?」
「…………?」
「だから、お前の支給品は?」
「ああ、私のは――――」
ドンッ。
その場に鈍い音が響き、あきらの言葉はそこで中断された。
体は地に倒れ、その男が口を開く。
「心配するでない。少し眠ってもらっただけよ。」
金色のその男――ジャーク将軍は、平然と言ってのけた。
一瞬で天道と巧は、あきらの体を抱え飛び退いた。
「これ、そう喧嘩腰になるでない。余の名はジャーク将軍。どうだ、余と手を組まないか?」
場の張り詰めた空気に、ジャーク将軍の声が響く。
「…………どういうことだ?」
巧が身構えながら言う。
それにジャーク将軍が答える。
「だから、余と手を組まぬかと言っているのだ。五十数人もの相手をそち等三人で相手していたら、体がいくつあっても足りんだろう。」
「……………………ッ!」
話を聞いて、巧が反応を見せるが、ジャーク将軍は特に気にせず続ける。
「だから余と手を組み、そうだな…………最後の十人。最後の十人になるまでは共に戦おうではないか。」
「つまり…………あの神崎の口車に乗って、殺しあえというのか?」
すかさず天道が口を挟む。
「そうだ。いい話だと思わんか?」
ジャーク将軍が言葉と共にじりじりと迫ってくる。
だが、二人の答えは、とうの昔に決まっていた。
「…………ハッ。お断りだぜ。誰がそんなことするかよ!」
「ああ、そうだな。お婆ちゃんが言っていた。人の命を奪ってまで手に入れたものは、何の価値も無い。」
巧が叫び、天道がそれに続く。
「ふむ…………やはりだめか。ならばここで死んでもらうしかあるまい!」
言うが早いか、ジャーク将軍の姿は見る見るうちにジャークミドラに変わる。
瞬時に二人は戦闘体勢に入った。
「乾……お前はあきらを連れて離れていろ。」
「だけどよ…………」
「どうせ、お前は変身できないだろう。だから離れろ。」
巧は動揺した。変身していた事どころか、今は変身できないことまで見抜かれていたのだ。
「お前……最初から知ってたのか。」
「当たり前だ。あいつや俺のようなものが参加している以上、何もできない奴が参加しているとは考え難い。まぁ、少しくらいはいるかも知れないがな。」
天道の聡明ぶりに、巧は悪寒さえ感じた。
「偉く頭がいいんだな。どういう構造してんだか。」
また、皮肉混じりに返すと――――
「当然だ。俺は天の道を行き、総てを司る男だからな。」
――――例の名乗り口上が帰ってきた。
「どうした?来ぬのならこちらから行くぞッ!」
痺れを切らし、ジャークミドラが突進してきた。
「さぁ、早く離れろ!」
そういうと、何処からとも無くカブトゼクターが飛んできた。
「ああ、わかった!」
あきらを連れて、巧みは近くの岩陰に隠れた。
それと同時に、天道はカブトゼクターをつかむ。
「変身!」
カブトゼクターをベルトに装着する。
『HENSHIN』
電子音声が流れ、六角形の鎧が体を包む。
そこには――――カブト・マスクドフォームが立っていた。
その姿を見て、ジャークミドラは動揺する。
「!?………そうか。さては、仮面ライダーBLACK RXの仲間だな!」
天道も、聞き覚えの無い名に興味を示す。
「BLACK RX?何だそれは。新しいライダーシステムか?」
予想外の反応を見せたため、ジャークミドラはますます動揺を見せる。
「どういうことだ!?BLACK RXや歴代ライダー以外に、未だこんな奴がいるのか!?ええい、もうどうでもよいわ!」
ジャークミドラが大剣をカブト目掛けて振り下ろす。
「ハッ!」
が、カブトはそれを軽く避け、相手の腹に強烈な突きを打つ。
「グハッ………!」
ジャークミドラが一瞬怯む。カブトはその隙を見逃さなかった。
ゼクターの角に手をかけ、叫ぶ。
「キャストオフ!」
掴んだ角を倒し、装甲を弾き飛ばす。
『Cast Off』
装甲の下から角が起き上がり、同時に電子音声。
『Change Beetle』
飛んできた装甲を振り払い、再び剣を振り上げるジャークミドラ。だが――――
「クロックアップ!」
『Clock Up』
刹那――――その場にいるものすべての視界から、カブトの姿が消えた。
いや、正確には、赤い影がそこらを走り回っているのが見える。
「なっ………グホァ!?」
一秒も経たぬ内に、体に衝撃が走る。
「ガッ!グッ!ゲフッ!!ゴハァッ!!!」
一発一発、力強い攻撃が体に叩き込まれる。
が、こんな状態でも、ジャークミドラは事を把握しようとしていた。
(何だ!?姿が見えなくなったと思ったら急に攻撃が何発も!?)
その不可思議な能力に、ジャークミドラはBLACK RXの姿を重ねていた。
(あやつもこんな能力までは持っていなかったぞ!?………まぁ、あやつもあやつでとんでもない能力を持っていたがな。)
ジャークミドラは仮にもクライシス地球侵略司令官。少しの手がかりから答えを導き出すことは容易かった。
(おそらく、この動き回っている赤い影があやつだ。となれば……)
――そう。超加速能力。今カブトは、その姿を捉えていられないほどの速さで動いているのだ。
◆
カブトは、クロックアップにより切り離された時間の中、ジャークミドラを確実に押していた。
一発、一発。そして、また一発。力強く、確実にダメージを与えていく。
ジャークミドラの叫びさえ、遅すぎてカブトの耳には届かない。
(この勝負、俺がもらった!)
ジャークミドラを遠くに蹴り飛ばし、ゼクターのボタンを押す。
『One』
『Two』
『Three』
ゼクターの角を戻し、叫ぶ。
「ライダー、キッ……」
『Clock Over』
「………!?」
天道の誤算は一つだけだった。
とても大きな、一つの誤算。
それは、超加速に時間制限がかかっていたこと。
クロックアップが解けた瞬間、大きな隙が出来た。
「頭にッ……乗るなァッ!!」
ジャークミドラの大剣がカブトを襲う。
それを避ける時間は、カブトに、もう残されていなかった。
「グァァ!」
カブトは直撃を受け、弾き飛ばされる。
その光景を巧はただただ見ているしかなかった。だが――
「何だよ!?一回消えたと思ったらまた現れて……そんでやられて……」
巧は、自分の無力さを嘆いていた。
「せめて、ファイズフォンがあれば……」
そう。自分に渡されたのはファイズドライバーのみ。
変身にはこれとファイズフォンが必要不可欠。
「こうなったら…………ッ!」
だが方法が無いわけでもない。
自分のもう一つの姿――――ウルフオルフェノク。
今、変身すれば天道の窮地を救うことはできるだろう。だが――――
「………………ッ!!」
そんなことをすれば、今まで出会った者達同様、自分を拒絶するだろう。
先程までの自分なら、躊躇無く変身していた。
だが――巧にとって、今の天道はたった一つの希望。
この馬鹿げた戦いから抜け出す、たった一つの希望。
今、その希望を失ってしまったら――。
しかし、迷っている暇は無い。
力を入れ、顔に文様が浮かばせる。が、そこで巧はあることに気がつく。
「…………?」
あきらのそばに何か落ちている。おそらくあきらの支給品だろう。
拾い上げようとして、巧は立ち止まる。
「おい…………これって…………」
◆
天道は、さっきと打って変わって押されていた。クロックアップの制限に気付けなかったせいだ。
深く考えれば見抜けないことではない。天道はそんな自分の不甲斐なさを呪った。
「どうした!そちの力はその程度かァッ!?」
ジャークミドラは依然攻撃を加える。
クナイガンで応戦するも、まるで手ごたえが無い。
どうにか打開策を考えようとするが、絶え間なくやってくる痛みでそれすらも間々ならない。
(まだだ……こんなところで……死んでたまるか……)
薄れ行く意識の中、ひよりの顔が脳裏をよぎった。
その時、声が聞こえた。
「おい!そいつをはなしな!」
振り向けば、巧がこちらに向かって歩いていた。
自分のとは別のベルトをし、妙なデザインの携帯を持って。
巧は携帯を開き、ボタンを押す。
――Standing By――
ファイズフォンから電子音声が鳴り響き、それを掲げる。
「変身!」
聞き慣れた言葉を叫び、ベルトに差し込む。
――Complete――
ベルトから赤い閃光が走り、巧の体を包む。
その光が止んだ時、銀色の戦士――ファイズが立っていた。
いつもの癖で手首を振り、走り出す。
「ウラァッ!」
ファイズが拳を突き出す。
ジャークミドラも剣で防ごうとするが、剣を隔てても衝撃は収まらない。
「なんという力だ!?」
一先ず飛びのきながら叫ぶジャークミドラ。
「おい、大丈夫か?」
巧が天道に手を差し出す。
「ああ、なんとも無い。」
差し出された手に使わず、天道が立ち上がる。
「お前らしいな。さて、問題はあいつだ。」
差し出した手をしまいながら巧が言う。
「それなら俺にいい考えがある。少し耳を貸せ。」
◆
「一人が二人になったところで余には勝てぬわ!行くぞ!」
再びジャークミドラが走り出す。
「そういう要領だ。行くぞ!」
「ああ。わかったぜ。」
無愛想な返事で答えると、ファイズが走り出す。
「何だ!?何をするつもりだ!」
「クロックアップ!」
『Clock Up』
ジャークミドラが身構えるが、同時に、再びカブトがクロックアップを始め、注意が逸れる。
「ふん、その技には時間制限がある。ならばその時間まで耐えていればいいことよ!」
立ち止まったジャークミドラは勝ち誇ったように言う。
が、天道はもうその事も計算済みだった。
(クロックアップの制限は普段の半分というところか。ならば、)
『One』
(クロックオーバー直前に)
『Two』
(予備動作を完了させる。)
『Three』
(そうして、相手の注意をこちらに引き付ける。)
『Clock Over』
再びカブトの時間が通常の時間に引き戻される。
「ライダー、キック。」
『Rider Kick』
雷撃と共に、カブトの強烈な蹴りがジャークミドラに打ち込まれる。
「グォォッ!?」
ジャークミドラは宙に飛ばされたが、まだ勝利を確信していた。
(この程度の攻撃が決め技ならば、余の勝ちだ!)
だが――――。
「乾!いまだ!!」
「何!?」
天道の叫びに思わず振り向くと、自分目掛けてくる影があった。
――Exceed Charge――
(空中に浮いた無防備な瞬間を狙って、再び技を叩き込む!)
「ゥラァァァァァァァッ!!」
ファイズだ。そして、電子音声と共に赤い閃光がジャークミドラへと向けられ、 衝撃と共に自分に訪れる。
「グァァァァッ!!」
体を貫き、ファイズが地へと降り立つ。
ジャークミドラは、そのまま砂浜に落下した。
「「さぁ、どうする?」」
クナイガンを構えたカブトとフォンブラスターを構えたファイズが迫る。
「グッ………この勝負、そち等に預けておくぞ!」
吐き捨てるように言うと、いつの間にか戻ったジャーク将軍はどこかへ逃げてしまった。
「勝ったな。」
「ああ。」
変身を解いた二人は拳をぶつけ合い、勝利の喜びを分かち合った。
【乾巧@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:早朝】
【現在地:海岸J-7】
【時間軸】中盤くらい
【状態】戦った後で少し疲れ気味。
【装備】ファイズドライバー、ファイズフォン
【道具】ミネラルウォーター×2(一本は半分消費) カレーの缶詰 乾パンの缶詰
【思考・状況】
1:
園田真理を探して合流する (草加は多分大丈夫的発想。)
2:天道と協力し、脱出して神崎士郎をぶん殴る
3:あの変なやつはしばらく動けないだろう。
【
天道総司@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:早朝】
【現在地:海岸J-7】
【時間軸】ハイパーゼクター入手後
【状態】若干疲労 至って冷静
【装備】カブトゼクター&ベルト
【道具】食料など一式
【思考・状況】
1:
日下部ひよりの保護
2:脱出して(首輪の解除とハイパーゼクターの入手)神崎を倒す
3:乾巧の心根を気に入り、
天美あきらには樹花を重ねている
【天美あきら@仮面ライダー響鬼】
【1日目 現時刻:早朝】
【現在地:海岸J-7】
【時間軸】中盤くらい
【状態】気絶中
【装備】破れたインナー・鬼笛・ディスクアニマルアカネタカ&戦国時代のディスクアニマル
【道具】なし。
【思考・状況】
1:絶対に生き残る
2:とりあえずは巧と天道についていく
※戦国時代のディスクアニマルは、制限により実際のその動物並みにしか巨大化できません。
(シロネリオオザルはゴリラ並み)
【ジャーク将軍@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:早朝】
【現在地:海岸H-8】
【時間軸】ジャークミドラに改造後
【状態】負傷。後々響くかも?
【装備】杖
【道具】不明×2
【思考・状況】
1.RXを殺す。
2.この戦いに勝ち残り同士達の下へ帰還する。
最終更新:2018年03月24日 09:56