| シェリル | 私が聞きたいのは一つだけ。 |
| なぜ。 | |
| グレイス | 漠然とした質問ね。それじゃ答えようが無いわ。 |
| シェリル | なぜランカのマネージャーになったの?なぜ私をベッドに縛り付けようとするの?なぜあの娘の歌はバジュラに通じるの? |
| なぜ、なぜよ!なぜ私じゃなく、あの娘なのよ…。 | |
| グレイス | 惨めなものね。アーティスト、シンガー。 |
| どれだけ言葉を飾っても、あなたの本質は所詮アイドル。作られた偶像よ。 | |
| シェリル | 違う!私は自分の力で、私自身の力でここまで来たわ! |
| グレイス | ウフ。だってもしあの時、私があなたを拾わなければ、あなたは誰にも知られぬままギャラクシーのスラムで |
| 今でもゴミに塗れていたはず。でもそれもオシマイ。シェリル・ノームはもう死ぬのよ。 | |
| シェリル | ……。 |
(オープニング)
| レオン | 君の作戦概要を見せてもらったよ。見事なものだ。これなら従来兵器が通用しない状況でもやれるだろう。 |
| これは僕らの目指すものに賛同してくれたと思っていいのかな? | |
| ルカ | 僕は守りたいだけです。 |
| レオン | 何を?プライドかい? |
| ルカ | …違います! |
| レオン | フッ。 |
| シェリル | フン。そんな下手な脅しでビビッてたまるもんですか。私は負けない。たとえアンタがいなくてもね。 |
| グレイス | ウッフフフフフフ。物わかりの悪い子ね。 |
| シェリル | …。 |
| グレイス | 忘れた? |
| シェリル | 何を? |
| グレイス | 私に拾われてすぐ、あなたしばらく病院で入院したでしょ。 |
| シェリル | だから? |
| グレイス | 治ってなんかいないの。今までは発症しなかっただけ。 |
| シェリル | なんですって…。 |
| グレイス | 歌手としてだけじゃない。文字通りあなたは死ぬのよ。シェリル。 |
| シェリル | ……。 |
| レオン | ジョーダン議員の内諾がとれました。これで上院も過半数です。 |
| 大統領 | よし。これでバジュラなんぞとはおさらばして、我々の本懐を遂げられるな。 |
| レオン | 本懐、ですか? |
| 大統領 | 忘れたのかね?我々は新天地を目指しているのだよ。新たな大地、安住の星を。 |
| キャスター | フロンティア船団第7次超長距離フォールド計画の前倒し法案が上院で可決されました。 |
| これにより半年後に予定されていたフォールドの実施は2週間後に前倒しされ、 | |
| 到達距離に当初予定の1000光年から800光年へと削減される予定です。 | |
| キャスター | 目標宙域についての詳細はCMに続いてお送りします。 |
| モニカ | あっちゃー…。 |
| ミーナ | 通っちゃったね。余剰エネルギーの蓄積、もう出来てたんだ。 |
| ラム | 出来てないと思います。 |
| モニカ | え?だってそれじゃ…。 |
| キャシー | かなり無茶するみたいよ。全アイランドのエネルギー供給を第4次統制モードまで落とすって通達があったし。 |
| ラム | 全ての商業活動は停止。食料と水は配給制。交通機関も一部ストップです。 |
| ミーナ | うえ~。極貧生活の始まりだぁ…。 |
| ボビー | こうしちゃ、いられないわ。 |
| 何をボヤボヤしてるのよ!すぐに始まるわよ、フォールド前の在庫一掃投売りフォールドセールが! |
| 店主 | さあ!失血覚悟の大安売りだ。お、そこのお嬢さん、これとかどうだい? |
| アルト | …誰がお嬢さんだ! |
| アルト | たく、食いもんならまだしも服まで投売りしなくてもいいだろ。 |
| で、なんの用です?改まって呼び出しなんて。 | |
| オズマ | フォールドの話は聞いているな。 |
| アルト | 今大売り出しの真っ最中ですよ。 |
| オズマ | これは軍の機密情報だが、バジュラは反応エンジンやフォールド波に引かれる習性がある。 |
| そんな連中の前で船団規模のフォールドをしようとすればどうなるか分かるか? | |
| アルト | …。 |
| カナリア | だが、問題はそこではない。 |
| オズマ | 軍はバジュラを撃退するために、ランカを囮に使うつもりだ。 |
| アルト | あいつの歌で!? |
| オズマ | これはお前の上官としてじゃない。あいつの兄としての言葉だ。ランカを守れ。守ってやってくれ。 |
| カナリア | よく言ったな。 |
| オズマ | 仕方ないさ。俺の役目はどうやら終わり掛けてるみたいだしな。 |
| カナリア | ん? |
| オズマ | ランカは俺が死に掛けても、今までみたいにフラッシュバックを起こさなかった。戻るのかもな、記憶が。 |
| カナリア | 次に強く記憶を喚起される状況があれば、あるいはな。 |
| アルト | 守る、か…。 |
| オズマ | (24時間の猶予をやる。もう一度よく考えろ。自分が何をしたいのか、なんのために、何をかけて戦うのかをな) |
| アルト | 俺は…。 |
| 一般人 | あぁ、ランカちゃん。 |
| 一般人 | 凄いよねぇ。最近どこ見てもいるよ。 |
| 一般人 | そう言えばさ、シェリルってまだフロンティアにいるんだっけ。 |
| 一般人 | え~、もういないんじゃない?ここんとこ見ないし。 |
| 一般人 | どこ行くのよ。ギャラクシーってばアレだし。 |
| 一般人 | そういやそっか。 |
| 一般人 | あははははは。 |
| 一般人 | そうだよね。 |
| 一般人 | それよりさ、この間のランカちゃんのライブの衣装かわいくなかったぁ? |
| グレイス | (嘘だと思うなら確かめてご覧なさい) |
| シェリル | …。嘘よっ! |
| ミハエル | 受容体ブロッカー? |
| クラン | うむ。テレサの話では、ある感染症の対症療法薬として期待されているらしい。 |
| 根治性は期待できないが症状を緩和する。ただし、引き換えとして発熱や嘔吐、悪寒といった副作用があるようだ。 | |
| ミハエル | その病気って。 |
| クラン | ヒュドラがおかしくなって処分された事件を覚えているか。 |
| ミハエル | まさか!? |
| クラン | V型感染症だ。 |
| クラン | この病気は体液・血液感染型。余程のことがない限り人には移らないはずだが。 |
| ミハエル | そんな病気にどうしてシェリルが…。 |
| クラン | シェリルだと!?あの薬はシェリルのものなのか? |
| ミハエル | あぁ…忘れてくれって言っても無理だよな。 |
| クラン | なるほど。そういうことか。やけに必死だと思ったら。確かにシェリルは美人だもんな。 |
| 大人っぽいしスタイルもいいし。でも私だってゼントラ化すれば! | |
| 出たぞ。コスモネイチャー2047年11月号。V型感染症の対処と予防。 | |
| 論文の執筆者は…第117調査船団プロジェクトリーダー、ドクター・マオ・ノーム!? | |
| ミハエル | マオ・ノームって、あの? |
| クラン、この女! | |
| クラン | 共同研究者、ランシェ・メイとグレイス・オコナーだと!? |
| ミハエル | 他にはないのか。 |
| クラン | あった。こっちは53年。ギャラクシー船団で発表された論文だ。実際の患者レポート…。この子供まさか! |
| ミハエル | シェリル…? |
| シェリル | はぁはぁ…。 |
| クラン | シェリル。 |
| ステージ監督 | 高指向性のフォールドウェーブアンプと正面には30のピンポイントバリアが設置されます。安全は保証しますよ。 |
| グレイス | 完成はいつ? |
| ステージ監督 | ぶっ倒れてでもフォールドまでには絶対に間に合わせます。何しろ我々の希望ですからね、ランカ・リーは。 |
| オズマ | まさか、な…。 |
| キャスター | 現在降っている雨は明朝6時まで続く予定です。降水量は1時間あたり8mm。総雨量は…。 |
| ミハエル | シェリル。 |
| シェリル | アルトには言わないで。 |
| ミハエル | でも。 |
| シェリル | お願い!お願いよ…。 |
| 大丈夫よ。私はシェリル、シェリル・ノームなんだから。 | |
| クラン | なぁミシェル、本当にアルトに言わなくていいのか?私だって…私だって女だから分かる。シェリルは…。 |
| ミハエル | だからこそ、本当に思っているからこそ言えないこともある。 |
| クラン | …。 |
| ミハエル | しかし、出来ることはあるさ。 |
| アルト | えぇ?シェリルが!? |
| ミハエル | 理由は言えない。だがとにかく行け。さもないと一生後悔するぞ。 |
| シェリル | はぁはぁ…。 |
| そうよ。この程度で私は…。 | |
| グレイス | (シェリル・ノームはもう死ぬのよ) |
| シェリル | 私は…。 |
| グレイス | (あなたの本質は所詮アイドル。作られた偶像) |
| シェリル | 私は……。 |
| グレイス | (文字通りあなたは死ぬのよ) |
| キャスター | 番組の途中ですが、第7次超長距離フォールドに関する緊急記者会見場からの映像をお送りいたします。 |
| 記者 | 今おっしゃったことは事実なんですか? |
| 大統領 | ええ、彼女の歌声はバジュラに対する切り札となります。 |
| その力を借り、今回の超長距離フォールドを必ず成功させることをみなさんにお約束します。 | |
| 記者 | おぉ。 |
| 大統領 | それでは紹介しましょう。我々人類の希望の歌姫、現代のリン・ミンメイ、ミス・ランカ・リー! |
| ランカ | 私は今までただ歌が好きで、それをみんなに伝えたい、その思いだけで歌ってきました。 |
| そんな私の歌がみなさんを守る力になるなんて、いまだに信じられません。でも[?]。 |
| シェリル | ……。 |
| イヤ、イヤよ。 | |
| 私は…私は……。 | |
| アル…ト…。 | |
| アルト……。 |
| オペレータ | 司令! |
| アルト | 待ってくれ。兄さん、そいつは。 |
| 矢三郎 | このお嬢さん、シェリルさんでしたか。この方は私に助けを求められた。ですから私が預かります。 |
| 心配でしたら早乙女のお屋敷へ御出でください。 | |
| アルト | なっ、待てよ兄さん! |
| なんだよっ。くそぉっ! |
| ボビー | 諦めなさい!この子はあんたに相応しくないわ。 |
| モニカ | たとえ上官でも譲れません! |
| キャシー | あなたたち! |
| 大統領 | なんだと!?このタイミングでか。 |
| 司令 | はい。 |
| 大統領 | だがこちらの準備が。 |
| ナナセ | 何があったんでしょう。 |
| ブレラ | 予想よりバジュラの動きが早かったようだ。 |
| 大統領 | 彼女はこちらの切り札なんだぞ。安全が保証されない限り出すわけにはいかんのだ! |
| いいから早く軍を出せ。盾くらいにはなるだろ! | |
| ボディーガード | 会見は中止です。 |
| モニカ | やはり反応弾は無効。バジュラ群、接近してきます! |
| ジェフリー | 我々のマクロスキャノンは数少ない有効兵器だ。無駄弾は撃てんぞ。 |
| ボビー | 合点承知。 |
| キャシー | デルタ1より各小隊へ。艦の護衛を。 |
| ミハエル | って言われても…こっちは丸腰みたいなもんなんだっ。どうしろってんだよ! |
| アルト | くそぉ! |
| ルカ | なんでこんなタイミングで。僕の作戦が台無しだ。 |
| 司令 | 閣下、このままでは全滅しかねません。緊急フォールドを進言いたします。 |
| 大統領 | できん!後を追われたら無意味だ。この宙域のバジュラを殲滅してからでなければ結局繰り返しだぞ! |
| 司令 | ならどうなされと言うのです。 |
| 大統領 | …。 |
| ミハエル | アルト、ケツにつかれてるぞ! |
| アルト | …。 |
| ミハエル | アルトっ! |
| アルト | ぅ…。 |
| ミハエル | あれは!? |
| ランカ | みんな抱きしめて、銀河の果てまでーっ! |
| アルト | ランカ。 |
| オペレータ | バジュラの攻撃が停止しました。 |
| 大統領 | 誰が許可した。あの娘は我々の。 |
| レオン | 彼女の意思です。自らを危険に晒してまで船団を守りたいと。閣下、このチャンスを生かすべきです。 |
| 当初の作戦を行うんです。連中を追い込み、そして…。 | |
| 大統領 | やってくれるのかね、ランカ君。 |
| ランカ | (うなづく) |
| 大統領 | 全部隊に通達。これより超長距離フォールド作戦を開始する! |
| アナウンス | これより本船団は緊急の超長距離フォールドに入ります。 |
| 市民のみなさんは、すみやかに自宅や最寄のシェルターに退避、フォールドに備えてください。 |
| オズマ | ランカ…。 |
| ブレラ | お前は俺が守る。安心して歌え、ランカ。 |
| オズマ | (守ってやってくれ) |
| アルト | くっ…。くそぉ! |
| ボビー | うぉりゃあー! |
| オペレータ | 間もなく全てのバジュラが予定宙域に入ります。 |
| 大統領 | よし、ペリー君。 |
| 司令 | は。バトルフロンティア主砲、発射用意! |
| キャシー | 全機、フロンティアのフォールド圏内に退避! |
| ボビー | 遅れたら置いてきぼりよ。 |
| モニカ | ラビット1、カナリア中尉。回避タイミングを司令部と同期。カウントを開始します。 |
| アルト | くそぉ! |
| キャシー | スカル4戻って! |
| モニカ | 5、4、3、2、1、発射! |
| ランカ | うぅっ…! |
| 司令 | 残存は。 |
| オペレータ | ありません。 |
| 大統領 | よし!超長距離フォールド、開始! |
| オペレータ | 全艦、フォールドに突入しました。 |
| カナリア | はぁ。もういいんだぞ。 |
| 予告 | フォールドの成功に沸き立つ町。その裏側で人々の思いが、欲望が、運命が加速していく。 |
| 次回「トライアングラー」想いの歌、銀河に響け。 |