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インターミッション01:プロローグ - (2008/04/16 (水) 00:12:03) のソース
*鋼の心 ~Eisen Herz~ **インターミッション01:プロローグ それは…。 もはや知る者も居ない、過去。 ◆ 「お姉ちゃん、はやくはやく」 「走るな真紀、転ぶわよ?」 京子は妹を追って甲板に出た。 「うわぁ、凄いよ。お姉ちゃん!!」 視界を埋め尽くすのは、一面に広がる蒼。 海と、空とで覆われた世界に京子は立っていた。 妹、土方真紀は9歳。 多少病弱だが、入退院を繰り返すほどではないし、然したる特徴も無い。 京子自身も同じ事。 その日常は極一般的で『平均』の中に埋没してしまうような、強い個性の無い人生だと思う。 (ま、そういうのが一番幸せだって言うし、これはこれで良いか……) 双眸を閉じて軽く苦笑。 はしゃぎまわる妹の下へ小走りに駆け寄った。 「見て見て、鳥!! 何て言うの?」 妹の指した先に居るのは……。 「ああ、アレはAnimalia Chordata Vertebrata Aves Charadriiformes Laridae Larus Larus.crassirostris、って言う鳥よ」 「???」 混乱してる、混乱してる。 クスクスと微笑んで京子は日本語でその名を言い換える。 「要するに、カモメね」 「……カモメ」 先程のあにまりあ、とか言うのは何だったんだろう? と、疑問に首を傾げる真紀に、京子は追い討ちをかけた。 「うみねこ、とも言うのだけど……?」 「ねこさん?」 「そう、ねこさん」 ネコ好きの妹にウインクして、京子は隠していた菓子袋を取り出す。 「エサ、上げてみる?」 「うん!」 全部渡すと風で飛ばされたり、こぼしたりするので、京子は数個だけ真紀の掌に落とす。 「鬼は外~」 「違うから、それ」 妹は何処かずれていた。 「おかわり」 あっという間に一袋使いきり、京子は次の袋を取り出す。 「空ける~」 「……う~ん」 ろくな結果になりそうも無いが、嬉しそうな様子を見ていると水を差すのも躊躇われる。 (……近くに居ればフォローできるわよね?) そう考えて、京子は袋ごと渡すことにした。 せめて空けてから渡せばよかった。 そう思ったのは、袋を開けようとした真紀が盛大に中身をぶちまけた直後だった。 「あ゛~っ、ネコさんが、ネコさんがぁ~(泣)」 真紀がカモメの大群にたかられていた。 因みにネコはネコでもウミネコである。 凶暴性と制圧力は地上生物に過ぎないネコの比ではない。 「あ痛っ!? 指ぃ~、指噛んでる、指噛んでる!?」 「真紀!?」 エサに夢中のカモメは非常に凶暴で、京子も簡単には近づけない。 「あ~ん、髪引っ張らないで~!?」 カモメ空間(凄い表現だ)の中身はとんでもない事になっているらしい。 「真紀、真紀~」 とりあえず、力ずくででもカモメの排除を試みたが、カモメは意外と強い。 身体能力には自信のある京子でも、数羽掛かりで突かれたり蹴られたりしていては、中々真紀までたどり着けなかった。 「それ痛い、痛いからぁ!?」 「真紀~~~~~っ!!」 ――――――パァン!! 破裂音。 それが全てのカモメを追い払った。 「………」 「………」 音に驚いたのは二人も同じ。 しばしの間硬直し。 そして、その源となった者に視線が移った。 「……え~と、大丈夫。……だった?」 それは、少年とも少女とも付かない中性的な子供。 年齢は真紀と同じか少し上。といった所だろう。 「あ、ありがと」 「どういたしまして。僕も丁度カモメにエサをあげようと思ってたから……」 見れば、少年が手にするのはエサとして持ってきた菓子袋の残骸。 これを破裂させてカモメを追い払ったのだろう。 「手間が、省けた……。のかな?」 少年が破裂させた袋から甲板こぼれた菓子を、早くも戻ってきたカモメたちがついばみ始めていた。 カモメと言う生き物は、懲りる事を知らないらしい。 この日、姉妹は一人の少年と出合った。 ◆ それは珍しく豪華な旅行だった。 比較的裕福な京子たちの両親は、毎年のように海外へと旅行に連れて行ってくれる。 だが、今年のそれは例年よりも一層華美な物であった。 クルージングホテル『ティターン』。 全長380m。排水量9万tを誇る、世界最大の豪華客船である。 一泊凡そ一万円。 家族全員の値段ではない。一人一人の値段である。 ◆ 「……そうなんだ。それじゃあ、僕の方が一つ年上だね?」 「うん」 歳と趣味が合えば、性別の違いなどまだ些細である年頃だ。 真紀は少年とすぐさま仲良くなり、ほんの数時間で打ち解けていた。 「だから、大学出るまで一年あるでしょ? その間にお金を貯めて、わたしが大学出たら結婚するの~」 「いいよ~」 「ちょっと待てぇ!! いくらなんでも早すぎだろう!?」 出会ってから数時間で、将来を誓い合っていた。 「真紀、出会ってから数時間しかたっていない人と、結婚の約束なんかするんじゃありません」 「……だから、結婚するのは大学卒業したらだよ?」 「あと十年以上あるよね?」 「うん♪」 「……え(困惑)? ……いや(思索)。……ん~と(懐疑)。……あれ(混乱)?」 結婚するのは十年後ならば問題は無いのだろうか? 「……いや、やっぱりおかしいよ、それ!?」 「じゃあ、指切りげんまん」 「いいよ~」 二人の婚約が成立しつつあった。 「ちょ、ちょっと待って。やっぱ変でしょ、考え直しなさい、真紀!?」 「……ん~、それじゃあ、お姉ちゃんは愛人さんで」 「姉妹丼だね」 何気に爆弾発言。 「そういう問題じゃないっ!!」 京子絶叫。 「挙式は教会がいいな~」 「和風のも似合いそうだよ?」 「ウエディングドレスは女の子のロマンなの~」 「じゃあ、両方着てみる?」 「お~ぅ、ないすあいであ」 「えへへ」 そして二人は当然のように聞いていない。 「人の話を聞け~ッ!!」 京子は半べそかきながら思いっきり叫んだ。 船員さんに注意された。 ◆ 6年後。 立場が完全に逆転するとは、当の本人達ですら思って居なかったという。 ◆ 「じゃあ、また明日」 「うん」 真紀にとっては至福の。 京子にとっては悪夢のような数時間が過ぎ、姉妹は少年と別れた。 明日の約束を交わし、期待に胸を膨らませる真紀にとっては、今夜は長い夜になるかもしれない。 (多分寝付けず夜更かしして、明日遅刻するんだわ……) そう考えつつ、京子は妹の手を引き、両親の待つ船室へと戻る。 今の内に、真紀の起こし方を考えておく必要があるだろう。 何だかんだ言って京子自身、あの少年との会話は不快ではないのだ。 (でも結婚の約束は早すぎるわ……) そこは譲らないでおこう。 そう心に決めながらも、結局はこういうカップルが結婚しちゃうんだろうな~、とも考えていた。 「……あれ?」 「どうしたの、真紀?」 「……ん~。……今、揺れたような気がしたんだけど……」 「いや。船の中だし、揺れるのはむしろ当然のような気が……」 「……そっか。そうだね……」 真紀はそう納得し、気にしない事にした。 ◆ 後悔すると言うのなら。 その全てがその対象だろう? ◆ その4時間後、『ティターン』は沈没した。 [[インターミッション02:CSC]]につづく [[鋼の心 ~Eisen Herz~]]へ戻る ---- 京子さんの過去編に当たるインターミッションシリーズ第一話です。 『鋼の心』の最重要人物である土方真紀の初登場でもあったり。 因みに、名前はMMSデザイナーの浅井真紀さんで、かつ、『まき=真紀=しんき=神姫』という言葉遊びでもあったり……。 閑話休題 ガンダムが終わったので、感想ブログを巡回してたら00キャラでウマウマという動画を見つけて視聴。 ……不機嫌そうに、(それでも真面目に)踊るティエリアが異常に可愛かったです。 (あとソーマさんとグラハム) と言うわけでAC4fAは全ミッションクリア完了。 あとはオールS目差して邁進するのみです。 さて、次は『12RiVEn』やらないと(笑)。 ALCでした♪ &counter()