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Gene11 テキ屋 - (2007/04/21 (土) 18:51:01) のソース
よう、俺はマツケン。続いてないのに2話連続登場は俺が初だってよ。え?そんな事は聞いてない? まあともかく今日はヒマだから適当にぶらぶら散歩してるんだよ。ナニ?それこそ聞いてないって? 大体お前みたいなモブキャラいちいち覚えてない? 酷えよお前等!! ・・・あれ?何か聞こえる・・ 「角は一流デパートで下さい頂戴で頂きますと二千が三千、三千が四千、五千円はする代物だが今日はそれだけ下さいとは言わない!」 公園の方か、そのなんだかやけに軽快な声が俺の足をひっかける。当たりを探せば、ベンチの近くで妙な人だかりが俺を呼ぶ。何だあれは? 「並んだ数字がまず一つ。物の始まりが一ならば国の始まりが大和の国、島の始まりが淡路島、泥棒の始まりが石川の五右衛門なら、ぷりちーの始まりがこの神姫ちゃんっての」 四方の野次馬の数、五感を刺激するリズムに誘惑され、第六感が得体の知れない不安を告げてるのも忘れて、俺は人ごみに潜り込む。 「続いた数字が二だ。二本こうやって負けちゃおう。兄さん寄ってらっしゃいは吉原のカブ2ケツが通る東海道、日光結構東照宮、憎まれ小僧のヒマ潰しに、ゆとり教育の一端としてお負けしましょうもう一本。どう?」 覗けば其処にあったのは地面に広げられた大風呂敷の緑。山積みになった茶色の段ボール箱。白黒新聞紙を丸めて叩いた軽快な音に、叩くのは小さくて真っ赤な・・・ 「酸で死んだが専務の頭、髪の毛ばかりが男じゃないよ。江戸は松の廊下の寸先でかの有名な浅野匠頭が、さんざん苦汁のうちに剥げ首さらしたのが三の月。とかく三という数字はあやが悪い。三三六歩で引け目が無いという。ねっ、どう?」 真っ赤な神姫。見た瞬間、俺は確信した。自分の嫌な予感が間違っていない事に。この前の演歌サンタ子、兄貴のアサシン兎子、近所で有名な破壊魔土方子に毒草花子に秋名峠の幽霊パンダ子。こいつは明らかにその類のバカだ。関わったら地獄を見ると全神経が逆立った。この場は早く逃げ・・・ 「これで買い手が無かったらあっし、ギター侍じゃないけど腹切ったつもり。ダメか?いくら見てたってダメ。いくら見てたって買わなきゃ。ね、そうでしょ? いくら掘っても畑にゃハマグリ出てこないっていうじゃないの。どう? お安く負けちゃうよこのレトロゲー復刻詰め合わせ。ほらそこの幸薄そうな兄さんとか、ギャラガにマッピー、スペランカーって不朽の名作で憂さ晴らししたらどうだい?」 「って俺を指名すんなよぉっ!!!」 あの怖いほど小気味のいい口上が終われば、やじうまは蜘蛛の子を散らしたように居なくなり、残ったのは俺と、俺の目の前の赤い神姫と、俺の手の中のレトロゲーセット(泣)。 「・・・で、お前結局なんなんだよ? 見たところ、まだ発売前の第6段、確か寅型ティグリースだっけ?」 「おう、あっしはシナトラって言うしがねえ渡世人、人呼んでフーテンの寅子さんって言うんでぇ、よろしくな!」 「よろしく無えよ。大体、普通神姫がひとりでテキ屋なんてやるかよ。何が目的だって言うんだよ?」 「聞いてくれるかい、兄さん。話せば長くなるんだが、あっしは行方知れずになったパートナーを探して当てのねえ旅をしてるんでぇ」 パートナー?もしかすると同じ第6弾の丑型ういろう・・・じゃなくてうりざね・・・でもなくってwii・・・も全然違うって、ああウィトゥルースって奴の事だよなきっと。 「察しの通り、あっしの探しているのは丑型神姫なんでぇ。あいつはあっしと同じ新型の試作だったんだけどよぉ、この前の鳳凰杯に出た後っから行方知れずになっちまったんだよ。開発部の衆に聞いても知らぬ存ぜぬの一点張り。あっしはソレが我慢ならねえで身一つで飛び出したって次第さ」 「開発中の商品が失踪とか家出ってアリなのか? まあ、よっぽど、その神姫が大事なのは判ったけど」 「当ったり前でぇ!! 他の奴等はともかく、あっしらの武装には“バロームっ!!”よろしく合体する機能や“サイクロン号っ!!”よろしくバイクになる機能まである、言わば一心同体ってぇんだ!!」 やけに例えが古いのが気になるが、確かにそういう機能を搭載するらしいとは聞いた。 「・・・でもその合体ってさ、開発者に言って装備一式だけ貰えばいいんじゃないのか?」 「それを言っちゃあおしまいよ!!!!」 「うおあぁ!? いきなり大声たてんなよ!」 こんな小さな奴に気圧されて、俺はしりもちをつきそうになる。なんて勢いの啖呵だよ、おい。 「兄さん、そいつは無ぇってもんだ。確かに武装の合体機能は大事でぇ。だがそれはただの仕様さ」 「いや大事って言ったのお前だから」 「そうじゃねえよ!! そんなんはただの照れ隠しでぇ。あっしが真に必要としているのはあいつ自身。あいつの、あいつの豪快な“ボケ”があっしの“ツッコミ”には必要不可欠!! それこそがパートナー、いやコンビ!!」 「あ~、漫才コンビなの、そいつと」 「いやいや漫才なんて小せぇ器じゃ収まらねぇ。あっしとあいつのそれは涙さえ誘う心のハァモニィってもんさ!!」 「・・・でも、今ツッコミしてるのって俺の方だよな?」 「それを言っちゃあおしまいよ!!!!!」 「だあぁっ!! それはもういいって!!」 今度は堪え切れなくて、その場にすっ転ぶ無様な俺。人がいなくなった後で助かった・・・。 「・・・まあ、兄さん。ともかくあっしはそろそろ行かせて貰うぜ、先を急ぐんでねぇ。ゲーム買ってくれてありがとよ」 「いやちょっと待てよ!! 当てはあるのか、そいつの行き先!!」 そう言って、いそいそと風呂敷をまとめていたシナトラを呼び止めてしまう。 「・・当てなんか無ぇよ。思いつくままに行くだけよ。まあこうして人目集めてりゃあいつの事だ、ひょっこり顔出すんじゃねえかなあ」 「それじゃ何時になるか・・・。俺の兄貴は神姫に詳しい探偵だから、きっと手がかりを見つけてくれる! 俺も手伝うって」 「人間様の手なんて煩わせられねぇよ。これはあっしの問題だ。大丈夫大丈夫」 大丈夫な訳あるかよ。ああもう厄介な神姫に首突っ込んで、兄貴みたいじゃねえか。けど、兄貴の気持ちもわかる気がするよ。こいつらって機械な分人間より潔いってのに要領悪くて、見てるこっちが気が気でないってホントに。 「もし、今そいつが誰かの神姫になってたらどうすんだ? そのマスターが外に出してくれるとも限らないだろ?」 「へっ! あんたインテリだな! あいつを従えてる奴なんざ、あっしの直感があれば一発で判ちまうんでぇ!! それだけ強い絆があるってもんよ、あいつとは」 「だからって無茶な・・・」 「あ~、ったくあのバカ黒葉学園なんかでノミやるかよ普通。そりゃ足つくっつーの! 警察のダチに足止めかけんのだってタダじゃねえんだぞ・・・」 「とか言うて、神姫部の若い娘ぎょーさん拝めるってウハウハしてんやないやろなエロ鋏? 大体あんアホなんほっとけばええやん」 「・・・放っといたら俺が捕まるんだよこの前みたく!」 ヒトが深刻にしている時に舞い込んだ、何かムダに聞き覚えのあるユルい声が俺を逆撫でる。振り向けば、それは確かに見覚えのある1人と1姫。いやつい今あんたらの事を言っていたのは俺だけど。 「・・・兄貴とアサシン兎・・・。何でこんなところに居るんだよ」 「おう? そう呼ぶんは相っ変わらず辛気クサい顔のマツケンやん」 「ん? ホントだ、剣じゃんか。なんだよ平日の昼間にぶらつけるなんて学生はいいご身分だよな」 「そういう兄貴は仕事かよ。私立探偵って儲かってんのか?」 「今はヘマしたバカの迎えに行く所だよ」 「おう、あんたこの兄さんの兄さんだったのかい? 奇遇だねえ!」 「お、鳳凰杯ぶりだな寅子の姉ちゃん。何だこの美人の相手してたのかよ。あれ? コレ売り物か?」 「おう、兄さんも一つどうでぇ? 負けるぜ?」 「凄えな、式神の城にパロディウスに超兄貴まで入ってんの? 買った!!」 「毎度!!」 「あーもう面倒臭いからさっさと行ってしまえ!!」 「何や義弟は冷たいんな。お義姉さん悲しいやん!」 「キナその呼び方やめてマジで。まあともかく、じゃあな、寅子とついでに弟」 早く行け!と俺は嫌そうに手を振る。やっぱりこんな兄なんか当てにするべきじゃないな。 「・・・まあ、ともかく話を戻してだな。お前の相方の丑型を探すのをだな・・・ あれ? 丑型?」 「どうしたんでぇ?」 「・・・お前の相方の丑型、名前は?」 「ああ、ブッケって言うんでぇ」 「・・・それ、兄貴がさっき迎えに行くって言ってた神姫じゃねえか? 確か最近押しかけてきた神姫が丑型でそんな名前だった覚えがある」 「へえ、まだ発売してねぇ丑型、そりゃ確かに他に居る訳が無ぇなあ」 「ってお前さっき相方のマスターなら一発で気付くとか言って無かったか?」 「それを言っちゃあおしまいよ!!!!!!」 「こっちのセリフだバカ寅!!!!!!!」 ちゃんちゃん。 [[目次へ>Gene Less]]