武装神姫SSまとめ@wiki内検索 / 「キズナのキセキ・ACT1-25:聖女の正体」で検索した結果
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キズナのキセキ・ACT1-25:聖女の正体
キズナのキセキ ACT1-25「聖女の正体」 ◆ 「本当によろしいのですか、奥様」 おもむろにそう話しかけてきた自らの神姫・三冬に、久住頼子は落ち着いた様子で湯飲みを手に取る。 「なんのこと?」 「菜々子様のバトル、気にならないのですか? 見に行けばよろしかったのでは」 「いいのよ」 煎れたばかりのお茶を一口飲み、壁の時計を見た。 「……もう始まっている頃ね。一時間もしないで、結果がわかるでしょう」 「ですが……」 今から行ったところで、バトルには間に合わない。 そもそも、頼子は最初から、当日のバトルを観戦する気は全くないようだった。 大事な孫娘の、今後の人生を左右しかねない、戦い。 それなのに、悠々と構えている自分のマスターを、三冬は少し歯がゆく思う。 菜々子やミスティと一緒に暮らしてきたのは... -
キズナのキセキ
キズナのキセキ ちょっと気が強い神姫と、理想を追い求めたマスターの、絆の物語。 著:トミすけ ○勝手な文章の改変はしないでください。大変迷惑です。 ○バトルロンドのバーチャルバトルの設定を『Mighty Magic』よりお借りしております。 ○一部、武装神姫の性能などを独自解釈している部分があります。ご了承下さい。 ○本作は前作「ウサギのナミダ」の続編です。前作からのキャラクターや設定が引き続き登場しますので、先に「ウサギのナミダ」をお読みになることをお勧めします。 ○コラボ歓迎です。この作品のキャラクターや設定は無理のない限り、自由にお使いいただいてかまいません。 登場人物紹介 (本編のネタバレを含みますのでご注意下さい) ~予告編~ ストーリー ACT0は過去編、ACT1は現在編となっています。 それぞれのA... -
キズナのキセキ・予告編
キズナのキセキ・予告編 武装神姫SSまとめ@wiki presents ゲームセンターで囁かれる噂がある。 そのマスターと神姫は、あちこちのゲームセンターや神姫センターに現れる。 神出鬼没。 不意に現れて、有名プレイヤーや実力者とバトルする。 実力も相当なもので、ファーストリーグのランカーに匹敵するという。 しばらくそのゲーセンでバトルをすると、今度は違う店に現れる。 何かを探していると言うが、その目的は誰も知らない。 マスターは女性で、目を引く美貌の持ち主。 神姫はイーダ型のカスタムタイプ。 二人はいつしか、こう呼ばれるようになった。 放浪の神姫『異邦人(エトランゼ)』 と……。 キズナのキセキ ~ 予告編 ~ 久住菜々子とミスティの前に現れた、最強の、そして宿命の敵。 『狂... -
キズナのキセキ・ACT1-21:キズナのキセキ
キズナのキセキ ACT1-21「キズナのキセキ」 □ 菜々子さんとミスティの特訓が始まってから、一ヶ月が過ぎようとしていた。 今日も久住邸の「特訓場」に、新たな神姫マスターがやってきた。 「くぉらああぁぁ!! このクソ寒い中、コタマ様を呼び出そうとは、いい度胸じゃねぇか、ミスティよぉ!」 と、威勢のいい、いささか不機嫌そうな大声が入り口で放たれた。 大声の主は、トートバッグから顔を出した神姫らしい。 「……ハーモニーグレイス型?」 隣にいた八重樫さんが小首を傾げる。 確かに、その神姫は修道女がモチーフのハーモニーグレイス型だった。 それにしては、随分と口が悪いようだが……最近のハーモニーグレイスはみんなこうなのか? そんなことをふと考えていると、神姫が入るトートバッグの主がたしなめた。 「こら、コ... -
キズナのキセキ・ACT1-8:聖女のルーツ その2
キズナのキセキ ACT1-8「聖女のルーツ その2」 ◆ 「姐さん、お世話になりましたね」 「あ、あぁ……そんなことは……いいんだけど、さ……」 微笑すら浮かべて挨拶する桐島あおいに、姐さんは呆気にとられた。 同時に、激しい違和感を感じた。 姐さんの知っている桐島あおいは、こんな笑い方をしない。 これが三日前、裏バトル会場で泣き叫んでいた神姫マスターと同一人物だろうか。 そして、あおいの新しい神姫。ノーマルのハーモニーグレイス型に見えるが、立ち居振る舞いはまったく違う。 二人とも何とも言えず不気味だった。 この三日の間に、裏バトルでの顛末は知れ渡っていた。 ゲーセンの常連たちが、ニヤニヤと笑いながらこちらを見ている。 しかし、あおいはどこ吹く風といった表情で、空いている筐体に座ると、アクセスポッドにマグダレーナを... -
キズナのキセキ・ACT1-7:聖女のルーツ その1
キズナのキセキ ACT1-7「聖女のルーツ その1」 □ 火曜日。 『ポーラスター』で花村さんと話した翌々日、俺は早起きをして電車に乗り込んでいた。 今日は遠出である。 目的地は、I県のM市。 電車で二県もまたいで行かなくてはならない。俺もはじめて行く土地だ。 ほとんど小旅行であるが、大学はすでに入試期間中ということで休み。気楽な学生だからこそ出来る、平日の小旅行だった。 だが、俺の気持ちはそう気楽ではない。 M市は大学のキャンパスが集まっており、学生の街になっている。 桐島あおいが通っている女子大学もM市にある。 今日の目的地は、その女子大学の周辺……M市の駅周辺にあるゲームセンターである。 一昨日の花村さんの話で、俺にはどうしても引っかかっていることがあった。 桐島あおいが、なぜ心変わりしたのか。 バト... -
キズナのキセキ・ACT1-29:死闘の果て
キズナのキセキ ACT1-29「死闘の果て」 ◆ 美しい、などと……。 マグダレーナはぎりり、と歯噛みする。 目の前の敵に対し、そんな気持ちを抱いた自分に猛省を促す。 今は戦闘中だ。そんな呑気な感情など持っている場合ではない。 思考を切り替えたマグダレーナは状況を分析する。 ミスティと久住菜々子の会話は意味不明だ。 だが、次に仕掛けてくるのは間違いなく接近戦。ブラックライオンによる攻撃以外はない。それしかミスティには残されていないのだ。 あるいは、白いストラーフのミスティのように、彼女を一撃の下に倒す技があるのかも知れない。 『花霞』の一手はマグダレーナとの一戦で、ミスティが最後に使った技だった。完成していれば、あるいはマグダレーナは倒されていたかも知れない。『アカシック・レコード』の検索結果が技の正体を導き出し、『スター... -
キズナのキセキ コメントログ・4
キズナのキセキ コメントログ・4 コメントに書き込みを頂いた過去ログです。 長くなりましたので、こちらにまとめました。 超豪華メンバーの上乗せw 遂に二大SSの主人公が鉢合わせってのも恐るべきサプライズです。 それにしてはあの二人の掛け合い再現度の高さに驚きました! -- 第七スレの6 (2012-01-19 00 43 20) 何という展開! これは胸が熱くなった! -- 璽儡 (2012-01-19 23 52 25) 有名マスター&神姫のオンパレード・・・既にスパロボ並みに成ってますねぇ〜ソレで居て各キャラを破綻せずに書けるのは流石です、地固め(修行編)も佳境ですかな、今後の展開もですがミスティの新装備がいかなる物か楽しみです -- ナナシ (2012-01-20 00 19 23) 次々と修行の参加者が増えて、これで燃えなきゃ神姫マスタ... -
キズナのキセキ・ACT1-24:武士道
キズナのキセキ ACT1-24「武士道」 □ 春になって、日が昇るのが早くなったことは、今朝の俺にはありがたかった。 早朝の花咲川公園で、俺と大城は準備をしていた。 桜並木に囲まれた広場。ここが決闘の舞台になる。 俺は二人の対決を見届けなければならない。この決闘の立会人に近い立場だった。 なにしろリアルバトルの立ち会いだから、それなりの準備も必要だ。C港での大ケガみたいなことは、二度とごめんだった。 「……こんなものかな」 「……遠野よぉ……やっぱ考えなおさねぇか? 俺はどうしても納得いかねぇ」 大城はこの期に及んで、ぶつぶつとぼやいていた。俺はあえて堅い口調で答える。 「今さら何言ってるんだ。今回の策は、どうしても必要だし、お前に嫌な思いはさせないって何度も言ってるだろ」 「けどよぉ……」 「俺が信じられないか... -
キズナのキセキ コメントログ
キズナのキセキ コメントログ コメントに書き込みを頂いた過去ログです。 長くなりましたので、こちらにまとめました。 私の二作目のトップページと予告編を公開させていただきました。 ……ごめんなさい、ごめんなさい! 予告編負けしそうですので、本編の方は温かく見守っていただければ幸いですm(_ _)m -- トミすけ (2010-08-15 00 14 58) 武士道がキーワード……?! ともかく、どんなものになるかとても楽しみにしています。 -- 第七スレの6 (2010-08-16 23 13 37) 始まりましたねぇ〜、腰を落ち着けて楽しみにさせてもらます -- ナナシ (2010-08-17 17 31 46) 期待してまってます -- シロねこ (2010-08-18 00 15 21) 新作始動、待ってました! 過去編ではなく因縁が再浮上... -
キズナのキセキ・ACT1-5:北斗七星
キズナのキセキ ACT1ー5「北斗七星」 □ ホームに電車がゆっくりと滑り込んでくる。 最寄りのT駅が始発の、折り返し電車である。 平日の朝は、人であふれかえる時間帯だが、今朝は日曜日のためか、電車から降りる人も、これから乗り込む人影もそう多くはない。 のんびりとした雰囲気がホームに漂っている。 朝七時。 冬の朝は空気がピンと張りつめていて、眠たい頭に心地よい。 俺は昨晩のことを思い出しながら、開いた扉をくぐり、列車に乗り込む。 長い一夜は、眠りに落ちたところで終わりではなかった。 夜中に叫び声を聞いて、飛び起きた。 ティアの叫び声に、深く眠っていても反応してしまうのは、我ながら過剰反応なのではないか、と思う。 電気をつけて、ティアの様子を見ると、やはり泣いていた。 ティアにはひどく辛い過去があり、ときどきそれを... -
キズナのキセキ・ACT1-23:決戦前夜
キズナのキセキ ACT1-22「決戦前夜」 □ その日、俺はいきつけのゲームセンター「ノーザンクロス」に開店直後から入った。 開店直後はさすがに人はいなかったが、そこは春休み、午前中から神姫マスターたちがバトルを求めて集まってきた。 「久しぶりだな、何やってたんだ? それにその腕はどうした?」 『ヘルハウンド・ハウリング』の伊達たち常連陣が声をかけてきてくれた。 俺たちがいなかったこの二ヶ月の間も、大して変わったことはなかったらしい。バトルロンドコーナーは相変わらずの盛況ぶりである。結構なことだ。 一通りの挨拶が終わると、常連たちはまたバトルに戻っていく。 一人になった俺は、いつもの定位置で壁に背を付け、見るともなしにバトル実況用の大型ディスプレイを見ていた。 今日、チームのメンバーは来ない。久住邸で、「特訓場」最後の日を... -
キズナのキセキ・ACT1-26:狂乱の聖女
キズナのキセキ ACT1-26「狂乱の聖女」 ◆ 海藤仁は、自宅の壁に掛けられた時計を見上げる。 六時を少し回ったところ。朝もまだ早い。 「もうそろそろ、始まった頃かな……」 海藤は、決戦に望む友人たちに思いを馳せる。 二ヶ月もの間、これほどまでに深くバトルロンドに取り組んだことは、現役時代にもなかったことだ。 あの「特訓場」に集った仲間たちは、誰もが海藤と同様、かけがえのないものを感じていることだろう。 その集大成、すべては今日の決戦にあるのだと、彼の友人は言っていた。 正直な話、バトルの行方は非常に気になる。 「わたしも気になります。ミスティとも仲良くなりましたし……あれほどの特訓をして挑むバトルがどんなものなのか、興味があります」 彼の神姫・イーアネイラ型のアクアが言った。 海藤は頷く。 ... -
キズナのキセキ・ACT1-9:雨音
キズナのキセキ ACT1-9「雨音」 ◆ 三日ぶりの食事を口にして、菜々子はようやくまともに動けるようになった。 火曜日の夕方近く。 空は濃い色の雲をはらみ、今にも泣き出しそうだ。 家の中は日が落ちた後のように暗い。 菜々子は居間を出ると、自分の部屋に入った。明かりをつける。 この三日、寝っぱなしだったという。 もちろん、その記憶は菜々子にはない。 なんとか思い出せるのは、あの寒い夜、ミスティを必死で抱きしめたところまでだった。 菜々子は、せめて部屋着に着替えようと、タンスを開けようとした。 そのとき、ふと目に止まったものがある。 携帯端末だ。 着信を知らせるランプが、チカチカと瞬いていた。 菜々子はベッドの上の携帯端末を、何の気なしに手に取った。 そして、メールの着信を確認する。 「な……に……これ... -
キズナのキセキ コメントログ・2
キズナのキセキ コメントログ・2 コメントに書き込みを頂いた過去ログです。 長くなりましたので、こちらにまとめました。 ACT0-4を投稿しました。また、コメントが長くなりましたので、ログをまとめて別ページにしました。 ナナシ様>花村が語る過去編も、次回が佳境です。覚悟してお待ち下さい(笑) 夜虹様>お読みいただきまして、ありがとうございます。 頼子さんはこれから活躍の予定ですので、ご期待下さい(^^) 今回は謎を中心にした展開です。全てが明かされるまでには時間がかかるかと思いますが、お付き合いいただければと思います。 -- トミすけ (2011-02-22 00 04 15) 黄金期が輝けば其だけ落日は悲惨を極めますからねぇ、意図的な行動ならドS、外的要因なら悲劇…ドチラにせよ楽しみですなぁ〜(っか楽しみだと思う辺りどうかしてるよなぁ) -- ナナシ ... -
キズナのキセキ コメントログ・3
キズナのキセキ コメントログ・3 コメントに書き込みを頂いた過去ログです。 長くなりましたので、こちらにまとめました。 完全に壊れてるな奈々子。そして遠野らしからぬ判断ミス。 感想の言葉が出ない程ピリピリした緊張感を感じます。 それにしては頼子さんかっこよすぎる…。 -- 第七スレの6 (2011-07-26 07 58 47) キズナのキセキになってから初のティアのバトルになりますね。未だに全容の見えないマグダレーナの能力の突破の糸口でも掴めるのか。頼子さんの実力はどれ程のものなのか。また目が離せないです。しかし遠野も菜々子絡みになると冷静になりきれないのでしょうね。それはそうと頼子さんは登場が美味しすぎですw -- にゅう (2011-07-26 08 55 52) マグダレーナのメンヘラマスターうぜぇな そんなことして自分のトラウマが解消される... -
キズナのキセキ・ACT1-3:かりそめの邂逅
キズナのキセキ ACT1-3「かりそめの邂逅」 □ 「その時から……菜々子は以前の明るさを取り戻していったのよ。わたしにも謝ってくれた。 頼子さんもつらかったのに、わたしばかりわがままでごめんなさい、ってね」 頼子さんはそう言って、目尻を拭った。 頼子さんによれば、菜々子さんは学校の友人たちにも謝って、また仲間の輪に戻ったのだそうだ。 自分の過ちを素直に謝ることができるのは、菜々子さんの美点だと思う。 間違いを認め謝罪するのには、誰しも少なからず臆病になるものだ。 彼女はそれを素直にやってのける勇気を持っている。 その勇気を呼び起こしたのは、間違いなく、桐島あおいという人だった。 「わたしは今でもあおいちゃんに感謝しているわ。あの子に会わなければ、菜々子はどうなっていたか、わからない」 「……その、桐島あおい、という人は... -
キズナのキセキ・ACT1-27:未知との対峙
キズナのキセキ ACT1-27「未知との対峙」 ◆ その夜のことを、桐島あおいは忘れたことがない。 裏バトルで敗北し、最愛の神姫を失い、絶望に打ちひしがれた、あの夜。 裏バトル会場の裏口を出た壁に身を寄せてうずくまり、身体を震わせていた。泣いていた。握りしめた手の中には、もはや動くことのないパートナーの残骸。 身動きもとれなかった。泣くことしかできなかった。今夜ここで、神姫マスターとしてのすべてを奪われた。夢や希望は言うに及ばず、プライドも闘志も、装備も神姫も、すべて。 何のために神姫バトルをやってきたのだろう。 その意志すらも、彼女は失いかけていた。 圧倒的な絶望の前に、過去など意味を持たない。輝いている思い出も、今は絶望の厚い雲に蓋をされて、あおいの心の底まで、その光が届くことはなかった。 声を押し殺していても、しゃくりあげ... -
キズナのキセキ・ACT1-11:夕暮れの対峙
キズナのキセキ ACT1-11「夕暮れの対峙」 □ 「……で、どーすんだよ、遠野」 居心地がよくなさそうに、縮こまらせた身体を揺する。 俺は大城の方を向いて首を傾げる。 「どうする、とは?」 「いや、菜々子ちゃんとミスティの過去まで探るのにどんな意味があるってんだ? 今の菜々子ちゃんをどうするつもりだ?」 なんだ、そんなことか。 俺は椅子に座り直し、その場にいる面々を見回す。 そして気付く。俺が今しなくてはならないことを、まだ誰にも伝えていないことに。 俺はゆっくりと語り出す。 「菜々子さんの過去を調べていたのは、俺たちの知らない『エトランゼ』としての彼女を知る必要があったからだ」 「は?」 「彼女が本当は一体何を考え、何をしてきたのか……これからどうしたいのか。それを知りたかった。 それを知らずに、... -
キズナのキセキ・ACT1-19:親友だから その1
キズナのキセキ ACT1-19「親友だから その1」 ◆ 不穏な空気を察したのか、多くのクラスメイトたちが足早に教室を立ち去っていく。 夕方の色が見え始めた教室に残されたのは、美緒、梨々香、有紀、涼子、そして安藤の五人。 口火を切ったのは、美緒の肩を押さえた有紀だった。 「最近、何やってんだよ。あたしたちに隠れてコソコソと」 有紀の言葉遣いは男っぽいし、声も大きい。だから、こういう不機嫌なときの口調には男子顔負けの迫力がある。 しかし、美緒はその迫力にも気圧されず、果敢にも有紀を睨み返していた。 「言ったでしょう? 用事があるの。大切なことよ」 「今、あたしたちがしてる特訓よりも大事なことかよ」 「そうよ」 「なんだよそれ。チームがバラバラなこのときに、自分たちが強くなるほかに何が大事だってんだよ!」 美緒... -
キズナのキセキ・ACT1-16:男たち
キズナのキセキ ACT1-16「男たち」 □ ここで少し時間を戻す。 俺が意識を取り戻したのは、倉庫街のリアルバトルの翌日、日曜日の朝のことだった。 ゆっくりと目が開いた。 すぐ目の前に白っぽい壁。 自分の身体の前にも柔らかい壁。 いまだまどろみの中にあった俺の意識は、自分の状態をうまく認識できていない。 首だけが少し上を向いているような状態で、顎を何か柔らかいものに乗せている。 ……どうやら、俺は今、うつぶせに寝ている格好らしい。 あたりの空気は、冬だというのに暖かい。 室内のようだ。 鼻がある独特のにおいを感じ取る。なんともいえない消毒や薬品のにおい。 ……ここは病院か。 なんで俺は病院なんかで寝ているんだ? いまだ回らない頭をなんとか動かして……大変なことに気がついた。 どうやら俺は、生... -
キズナのキセキ・ACT1-15:たった一つの真実
キズナのキセキ ACT1-15「たった一つの真実」 ◆ 菜々子が心の準備をするより早く、頼子が扉をノックした。 「どうぞ」 素っ気ない、聞き覚えのある声。 忘れるはずもない、その人。 菜々子が、今一番合わせる顔がない相手。 頼子がスライド式のドアを開けた。 覚悟を決める暇もないままに、菜々子は頼子に肩を抱かれ、病室の中へと入ってしまった。 広いとも狭いとも言えない、病室だった。 色はなく、殺風景で、ベッドと作り付けの引き出しと、マルチメディア対応の病院用テレビくらいしかない。 私物のたぐいがまったく見られないことが、ここの患者が入院前にものを持ち込めるほどの余裕がなかったことを証明している。 棚の上の花瓶に、花が活けてある。 菜々子はその花束に見覚えがあった。夕方、美緒が抱えていたものだ。 彼女た... -
キズナのキセキ・ACT1-1:不機嫌の理由
キズナのキセキ ACT1ー1 不機嫌の理由 □ 「デュアルオーダー?」 伏せていた顔を上げ、大城大介の言葉を繰り返す。 見れば、大城は雑誌のページを広げてこちらに見せながら、愛想笑いで頷いた。 「お前なら、真似できるんじゃないかと思ってさ」 またバカなことを言い出した。 俺はため息をつく。 「アホか。そんなものが簡単に真似できるなら、苦労はない」 雑誌は「バトルロンド・ダイジェスト」。 最新号の特集は、最近注目の神姫たちである。 その最後の方、一人の神姫マスターが紹介されていた。 バトルネームを『尊(みこと)』というそのマスターは、素性はわからないが、今密かに注目を集めるマスターだそうだ。 彼の神姫は、フブキ型とイーダ型のプロトタイプの二体。 フブキの方は『盗賊姫』の異名を取り、対戦相手の武... -
キズナのキセキ・ACT1-22:異邦人はあきらめない
キズナのキセキ ACT1-22「異邦人はあきらめない」 ◆ 答案用紙の枚数をチェックしていた教師が、 「今日はここまでにしましょう」 教卓の上で紙の束を揃えながら、補習授業の終わりを告げた。 当番を任された生徒が「起立、礼」と号令をかける。 すると、教室内が一気に開放感で溢れた。 期末テスト後、成績不振者が集められた補習授業は、今日の再テストで終了である。 園田有紀と蓼科涼子は早々に荷物をまとめると、 「よし、急ぐぞ」 「うん」 足早に教室を出る。 しかし、出てすぐに、二人は呼び止められた。 「有紀、涼子。補習終わった?」 優しげに話しかけてきたのは、彼女たちのリーダー格の八重樫美緒。 その隣には、美緒の彼氏でチームメイトの安藤智哉と、もう一人のメンバー・江崎梨々香もいた。 有... -
キズナのキセキ・ACT1-4:敗北の記憶 その2
キズナのキセキ ACT1-4「敗北の記憶 その2」 ◆ その日、菜々子は、C駅にほど近いゲームセンターで噂を聞いた。 C港の倉庫街の一角、使用されていない倉庫を改装し、武装神姫の裏バトルが行われる。 主催は、神姫にハマっている、若手の不良グループだ。 菜々子はその裏バトルに誘われたのだ。 菜々子とミスティが『エトランゼ』として名前を売りながら、公式試合に一切関わらないのは、こうして裏バトルの情報を得るためだった。 裏バトルも、主催者にしてみれば興行だから、名の売れた神姫に出場してもらえれば、話題が取れる。 出場選手も、観客も増える。 だが、公式戦出場神姫で有名になればなるほど、そういう危ない場所には近づかない。 裏バトルには、犯罪が絡んでいる場合が多いのだ。 罪を犯せば、公式戦のランキングは剥奪されてしまう。 だから... -
キズナのキセキ・プロローグ
キズナのキセキ ~ プロローグ ~ 春。 満開の桜。 数え切れないほどの花が、今を盛りと咲き乱れ、並木道を淡い桃色に染めている。 無数の花びらが音もなく舞い、並木道の先を霞ませる。 早朝の空気はいまだ冷たい。 しかし、差し始めたばかりの朝の日差しからは、春の温もりが感じられた。 桜並木の入り口に、人影がある。 女性が二人。 一人は、ウェーブのかかった長い髪の女性。落ち着いた色合いの服をまとっている。 整った美貌に、これもまた落ち着いた微笑。 いま一人は、ショートカットで快活そうな女性。細いジーパンがよく似合っている。こちらも愛らしい顔に優しげな微笑みを湛えていた。 二人は並んで歩き出す。 その姿が霞みそうなほどの、桜の乱舞。 息を飲むほどに美しい。 その光景の中で、二人の持っているもの……無骨なアタッ... -
キズナのキセキ・ACT1-28:すべてがつながるとき
キズナのキセキ ACT1-28「すべてがつながるとき」 ◆ 形勢は逆転していた。 マグダレーナが攻め、ミスティが下がる。 マグダレーナが切り札と言うだけあって、長剣ソリッドスネークは尋常でない破壊力を秘めていた。 「シャアアアアァァッ!!」 しわがれ声で放たれる気合いは、まるでガラガラヘビの威嚇音のようだ。 振るわれた長剣が蛇のようにうねり、ミスティに襲いかかる。 「くっ……!」 エアロヴァジュラを立て、受け流すように防御する。 耳障りな音を立てて迫るソリッドスネーク。刀身をいくつもの刃に分裂させ、次々にエアロヴァジュラと接触する。 なんとか防ぎきった。 ほっとするのも束の間、ミスティはぞっとする。 手にした刀は、ガタガタに刃こぼれしていた。これでは刀として斬る用をなさない。 「……なんて... -
キズナのキセキ・ACT1-6:招かれざる客
キズナのキセキ ACT1-6「招かれざる客」 ◆ 店の入り口から入ってきたその客に、最初に気が付いたのは、安藤智也だった。 火曜日の夕方、学校帰りのゲームセンターは、安藤にとってもはや習慣である。 平日は安藤とLAシスターズ、そして大城というメンバーが集う。 そう言えば、この週末は、遠野と菜々子が来なかった。実に珍しい。 大城が二人と連絡を取ろうとしたが、出来なかったという。 何かイヤな予感がする、と表情を暗くしたのは八重樫美緒であったが、 「二人で遠くにデートにでも行ってるんじゃない?」 などと、江崎梨々香は明るく言った。 少し心配ではあるが、二人にもそれぞれ事情があるのだろう。安藤はそう思った。 ゲームセンターは今日も盛況だ。 安藤が所属しているチームのメンバーも、こぞってバトルをしている。 一戦... -
キズナのキセキ・エピローグ
キズナのキセキ ~ エピローグ ~ □ 俺は今日も、ティアを連れて、ゲームセンター「ノーザンクロス」に来ている。 四月を半ばを過ぎた土曜日の午前中。 チームメイトはまだ来ていない。 高校生のメンバーは午前授業の日だし、大城はランキングバトル目当てだから、昼過ぎにならないと来ない。 新年度が始まって間もない頃だ。常連客もまばらで、ゲーセンの中はいつになく平穏だった。 菜々子さんと桐島あおいがバトルした日から、二週間が経つ。 菜々子さんは、いまだに顔を見せていない。 体調が悪いわけではないようだ。彼女の様子は、頼子さんからのメールで知っている。新学期が始まり、忙しくしているのは間違いない。 しかし、以前は忙しくても無理矢理時間を作ってまで顔を見せた彼女だ。あの日以来、ゲームセンターに来ない彼女を心配して、八重樫さんたち高校生メ... -
キズナのキセキ 登場人物紹介
キズナのキセキ 登場人物紹介 ●久住菜々子 19歳 大学生 本編の主人公。 『異邦人(エトランゼ)』の異名を持つ神姫マスター。 明朗快活な美人。 ●ミスティ 本編のもう一人の主人公。 菜々子の神姫。イーダ型。 ストラーフのレッグパーツを装備して戦う。 ●遠野貴樹 20歳 大学生 『ハイスピードバニー』ティアのマスター。 本編の語り部。菜々子の恋人。 ●ティア 遠野の神姫。ローラーブレードのような装備を駆使するオリジナルのバニーガール型。 本編のもう一人の語り部。 ●大城大介 21歳 フリーター 菜々子の友人。虎実のマスター。 見た目ヤンキー風だが、根はいい奴。 ●虎実 大城の神姫。ティグリース型。 ファスト・オウガを高速機動型に組み替... -
キズナのキセキ・ACT1-20:親友だから その2
キズナのキセキ ACT1-20「親友だから その2」 ◆ よくもまあ、こんなに神姫マスターが集まるものだと、涼子は少し呆れていた。 久住邸の一階の広間……通称「特訓場」には十台のVRマシンが設置されているが、すべて対戦中の神姫マスターで埋まっている。他にも、順番待ちや観戦、四方山話をしているマスターたちもいて、この日も集まったマスターは二十人を下らない。 自分たちを除く神姫マスターのいずれも、全国レベル級の実力者だというのだから、驚きを通り越して呆れてしまう。 みんなそんなに暇なのか。あの人の本性を知らないで、のんきに対戦などしている場合なのか。 しかし、和気藹々と盛り上がるこの対戦場で、自分の否定的意見を叫ぶ気にはなれなかった。 そんなことをしたら、自分の方が浮いてしまうし、なによりこの場を仕切る遠野に迷惑をかけてしまう。 ここで菜々... -
キズナのキセキ・ACT0-1:悲劇の後
キズナのキセキ ACT0-1 悲劇の後 ◆ それは、久住菜々子が中学二年生の時だった。 三泊四日の修学旅行。行き先は京都。 定番の場所であったが、クラスメイトと行く旅行はことのほか楽しかった。 おみやげを買った。両親と、近所にすむ祖母に。 喜んでくれる顔を想像し、菜々子の顔も今からほころんでしまう。 空が夕闇に染まる頃、菜々子は帰宅した。 「ただいま」 という菜々子の声に応えたのは、聞き慣れた両親の声ではなかった。 ひどくしわがれた声。 まさかよく知っている人物の声とは思えず、菜々子はつい身構えてしまった。 テーブルの前に座っていたのは祖母だった。 とても若く見える人だったが、今日ばかりは十年も老け込んだかに見える。 驚いている菜々子を、祖母は着替える間も与えずに連れ出した。 タクシーの中で菜々子は尋... -
キズナのキセキ・ACT1-17:遠野の企み
キズナのキセキ ACT1-17「遠野の企み」 ◆ 「ここだ、停めてくれ」 遠野の合図で、大城は徐行していた自動車にブレーキをかける。 なんの変哲もない、住宅街の一軒家の前である。 大城は初めて来る場所だったが、助手席の遠野はよく知っているらしい。携帯端末を手にして、誰かに連絡を入れている。 ファミレスでの男同士の会合から一日。 今日から本格的に準備を始める、という遠野の一声で、水曜日の昼前から、大城はまた車を出していた。 今回は大きな機材が多いので、遠野に是非にと頼まれてのことだ。 大城も車を出すことに依存はない。 安藤だけは学校があるので、放課後から合流である。 そのかわり、もう一人協力者の当てがついた、という遠野の指示に従って、やってきたのがここだった。 チームメンバー以外の協力者とは誰なのか、大城には見当... -
キズナのキセキ・ACT1-13:ストリート・ファイト その2
キズナのキセキ ACT1-13「ストリート・ファイト その2」 ■ わたしは舞う。 ストラーフBisの攻撃を紙一重でかわし続ける。 ミスティや虎実さんが言っていた。 『ファントム・ステップ』をしている時、わたしはまるで、対戦相手の手を取って、ダンスをしているようだ、と。 ほんとにそう見えているなら、ちょっと嬉しい。 華麗に戦うことは、マスターが目指す戦闘スタイルだから。 今のわたしも、ストラーフと踊っているように見えるだろうか。 ストラーフBisが一歩踏み込んできた。 あの踏み込みはさっきと同じタイミング。 ハンマーを振り下ろした後の素早い切り返し。 わたしは後方へと逃げる準備をする。 今度は完全に避け切ってみせる。 「ジレーザ・ロケットハンマー」が、後方から火を噴いて、風の唸りを巻きながら振り下ろされる。... -
キズナのキセキ・ACT1-10:最悪の事態
キズナのキセキ ACT1-10「最悪の事態」 ■ 夜遅く、雨の中を、マスターは帰ってきた。 「お帰りなさい」 わたしは玄関までマスターを出迎えに行く。 今日は朝から一人きりで、マスターの出した課題を黙々とこなした。 マスターの帰りを今か今かと待っていたけれど、こんなに遅くなったなら、恨み言の一つも言っていいかしら。 そうしたら、マスターは少し困った顔をするに違いない。 でも、すぐに笑って許してあげよう。 そんな他愛もないいたずらを考えながら、水滴を払いながら入ってきたマスターを見上げた。 「ただいま」 薄暗い玄関先、映し出されたマスターの表情を見て、わたしのいたずら心はしぼんでしまった。 マスターはいつになく深刻そうな顔をしていたから。 なにか、あったのだろうか。 だから、こんなに遅くなったの... -
キズナのキセキ・ACT1-12:ストリート・ファイト その1
キズナのキセキ ACT1-12「ストリート・ファイト その1」 □ 戦いが始まる。 四人は一斉に物陰へとダッシュした。 リアルバトルは実際に銃弾が飛び交う。そばにいたらただではすまない。 ティアを戦場に残すことにためらいを感じながらも、俺は物陰に身を隠す。 少し離れた壁際に、頼子さんの姿が見える。 「マグダレーナの方、頼めますか!?」 「了解よ。……三冬! マグダレーナを押さえなさい!」 「承知しました」 俺の無理なお願いに、頼子さんと三冬は即答してくれた。 相手は得体の知れない凶悪な神姫だというのにもかかわらず。しかし、頼子さんからはこの対戦を楽しんでいる節すら感じられる。 どちらにしてもありがたい話だった。 「ティア。ストラーフを引きつけて、マグダレーナと距離を取れ」 『了解です』 ティアの... -
キズナのキセキ・ACT1-2:情けないほど何も知らない
キズナのキセキ ACT1-2 情けないほど何も知らない □ 「菜々子さん、どうした? 今どこにいる?」 もはや尋常ではない。 電話先から聞こえてくるのは、冷たい風の音と、彼女のかすかな泣き声。 今俺が自室で暖房つけていても寒いというのに、彼女はこんな夜にどうして外を出歩いているのか。 そして、彼女の言葉。 負けた……誰に? 何をして? どこでなんの勝負をした? 心が不安に浸食されていくような気持ち。 考えれば分かるような気がしたが、そうすると嫌な予感に捕らわれてしまう気がして、努めて考えないようにしながら、菜々子さんに声をかける。 「今どこにいる? 迎えに行く」 「……」 「どこにいるんだ!?」 さすがに心配になって、俺は語気を強くした。 こうやって、感情に訴えるところが、自分のダメなところだと自覚し、一... -
キズナのキセキ・ACT0-2:ひどい顔
キズナのキセキ ACT0-2 ひどい顔 ◆ 「神姫センターに行きましょう!」 「前から訊いてるけど、何しに行くのよ」 「前から言ってますが、もちろん、バトルをしに、です!」 「前から言ってるけど、イヤ」 「これも前から言ってますが、なぜマスターは神姫センターに行くのを嫌がるんですかっ」 ミスティは菜々子に、まなじりをつり上げて見せた。 菜々子はため息をつく。 ここのところ、同じ会話ばかりだった。 ミスティはどうしても神姫センターに行って、バトルロンドで対戦がしたいようだ。 それは武装神姫のAIにプログラムされた、闘争本能みたいなもの、なのだろうか。 一方、菜々子はバトルに興味がなかった。 頼子さんは対戦仲間に引きずり込みたいと思っているのだろうが、あいにく菜々子にその気はない。 菜々子はミスティが気に入り始めていた。小... -
キズナのキセキ・ACT1-18:強者たちの宴
キズナのキセキ ACT1-18「強者たちの宴」 ◆ 「また負けた……」 家庭用VRマシンのアクセスポッドが開くと、ミスティはため息つきながら出てきた。菜々子を見上げると、今の対戦のリザルトデータに目を通している。 「まだ、新装備に馴染んでいないわ。以前の装備のように勝ちには行けないでしょう」 「わかってるけど……」 それでもため息をつきたくなってしまう。 遠野が用意してくれたミスティの新装備は、以前のイーダ型とストラーフの「サバーカ」レッグパーツの組み合わせよりも、性能はアップしている。主要なパーツ構成も大きな変化はない。 しかし、ミスティが実際に装備して戦ってみると、大きな違和感を感じる。そのため、動きが鈍くなったり、思うように動けなかったりするのが主な敗因だった。 以前と同じような動きになれば、格段の性能アップを果た... -
キズナのキセキ・ACT1-14:謝ることさえ許されない
キズナのキセキ ACT1-14「謝ることさえ許されない」 ■ また。 また視界に映るすべてのものが灰色に見える。 わたしの目の前には、大きな鉄の扉。 人間の大人が一人で開けるのも大変そうな、重い扉。 その一番上にランプが赤く光っていて、それだけがわたしの目に色づいて見える。 ランプは文字を表示している。 『手術中』 ……マスターはさっき、この扉の奥へ連れ込まれた。 港の倉庫街での一戦の後。 すぐに救急車が呼ばれた。 大城さんがマスターについて救急車に乗ってくれて、わたしを病院まで一緒に連れて来てくれた。 病院に着いて、お医者様の診察を受け、間をおかずに手術することになった。 当然だった。 救急車の中でうつぶせにされたマスターの、傷ついた背中。そして左手。 わたしが見たって、普通じゃない傷つき方。... -
キズナのキセキ・ACT0-4:二重螺旋
キズナのキセキ ACT0-4「二重螺旋」 ◆ ミスティにしてみれば、戦い方などどうでも良かった。 マスターである久住菜々子と一緒にバトルロンドができればいいわけで、桐島あおいの言う「個性的な戦い」については特に興味はない。 菜々子の指示通りに戦うことこそ、彼女に課せられた責務だ。 だから、今、自らのマスターが、ベッドの上で頭を悩ませ、知恵熱を出していようとも、ミスティが関知することではない。 ないのだが。 あおいから言われ、個性的な戦いを模索しはじめて三日。 すでに菜々子は煮詰まっていた。 今も、ベッドにうつ伏せになり、考えを巡らせ続けている。 懊悩は深まっているらしく、時々耐えられなくなったように、手足をばたばたと動かす。 どうも考えているというより、妄想を増大させているといった方がいいのかもしれない、とミスティは思... -
キズナのキセキ・ACT0-5:敗北の記憶 その1
キズナのキセキ ACT0-5「敗北の記憶 その1」 ◆ 春。 今年も、桜は満開に咲き誇っている。 桜並木の下に、久住菜々子は佇んでいる。 はらはらと舞う桜の花びらに、通りの向こうが霞んでいる。 ミスティは、菜々子の足下にいる。フル装備で、手に大剣を構えている。 音もなく舞う、薄紅色の花びら。 桜はこんなにも美しいのに、夢のような光景なのに、寂しさを感じるのはなぜだろう。 菜々子はブレザーの肩に掛かった花びらを、そっと払う。 高校二年生になった。 この春から、あおいお姉さまは、いない。 桐島あおいは、県外の大学に進学した。アパートで一人暮らしをするという。 『ポーラスター』で、毎日タッグマッチをすることはできなくなった。 『二重螺旋』は事実上の無期限の活動休止だ。 少し寂しくはある。 しかし、お姉さま... -
キズナのキセキ・ACT0-8:理想の体現者
キズナのキセキ ACT0-8「理想の体現者」 ◆ 二階フロアへとつながる店内階段から上がってくる、細い人影。 花村は、片手をあげてほほえむ彼女の姿を認め、相好を崩した。 「こんにちは」 「おや……久住ちゃん、ひさしぶりだね」 「ええ、今回はちょっと長引いちゃって」 「遠征先は埼玉だっけ……どうだったの、遠征先は?」 「……イマイチでしたね」 微笑みながらも、辛辣な評価。 久住菜々子がここ「ポーラスター」に顔を出すのも三週間ぶりくらいか。 その間、彼女はまた武者修行と称して、他のゲームセンターを回っていた。 いまや彼女の二つ名も、『アイスドール』より『異邦人(エトランゼ)』の方が通りが良くなっている。 「最近は面白いバトルをする神姫がめっきり少なくなりました。噂の強い武装神姫を求めて大宮あたりまで行ったけれど……... -
キズナのキセキ・ACT0-6:異邦人誕生 その1
キズナのキセキ ACT0-6「異邦人誕生 その1」 ◆ あの暑い夏の日以来、『ポーラスター』には行っていない。 武装神姫の雑誌も手に取りはしなかったし、ネットで情報を集めることも、いや、ネットにつなげることさえしていない。 放課後は時間が余った。 クラスの友人たちが、男の子と一緒の集まりに誘ってくれて、一度は参加したが、気が晴れることはなかった。 二度と参加する気はなかったし、誘われることもなかった。 学校には黙々と通い、勉強したから成績も上がったが、だから何の意味があるというのだろう。 あれから三ヶ月たった。 あの暑さの面影はどこにもなく、冬の足音が聞こえてきている。 だが今も、心の傷は癒えることなく、疼き続けている。 とても大切なものを、一番大切な人に壊された。 久住菜々子は今も笑えないままでいる。 ◆ ... -
キズナのキセキ・ACT0-3:アイスドール
キズナのキセキ ACT0-3「アイスドール」 ◆ 右の武装脚を踏み込み、ほんの少しだけ身体を宙に浮かせる。 間髪入れずに、背部の増設バーニアを噴射。 地を這うように滑空し、猛スピードで対戦相手に肉薄する。 「くそっ!」 小さなつぶやきと同時、対戦相手のジルダリア型のハンドガン「ポーレンホーミング」から、弾丸がばらまかれてくる。 それを錐揉みしながら回避、逆にこちらも機関銃を構え、撃った。 ジルダリアは防御の姿勢。 数発着弾。花びらを模した装甲に阻まれ、ダメージにはほど遠い。 だが、足は止まった。 間合いを取ろうとしていたピンクのジルダリア型は、その場で相手を待ち受けざるを得なくなった。 両腕にマウントされた剣「モルートブレイド」を構える。 そこに白亜の神姫が飛び込んできた。 背後から伸びるサブアームを前方... -
キズナのキセキ・ACT0-7:異邦人誕生 その2
キズナのキセキ ACT0-7「異邦人誕生 その2」 ◆ 花村は日暮店長に事前に相談し、自分たちが来るときに常連さんたちに集まってもらえるように声をかけてもらった。 はじめはただ、常連さんたちのバトルを見てもらえば、菜々子にもいい刺激になるだろう、くらいの考えだった。 しかし、店長の隣で話を聞いていた、バイトの戸田静香嬢が、それじゃあ弱い、と話に横やりを入れてきたのだ。 「それならもう、荒療治しかないわね」 うきうきとした口調でそう言う天才に、花村は不安を禁じ得なかった。だが、それでも静香に任せることにした。 花村にはそれ以上の打つ手が思い浮かばなかったのだ。 戸田静香が提案してきたのが、菜々子対エルゴ常連陣の無制限対戦である。 ただひたすら、菜々子が納得の行くまで対戦を繰り返す。 それが一体何の役に立つのか 菜... -
キズナのキセキ・番外編:黒兎と盗賊姫 前編
キズナのキセキ 番外編「黒兎と盗賊姫」 前編 ◆ 「……なるほどな」 尊は感嘆と共に一言吐き出した。 隣に座る真那は、どっと大きなため息をついていた。 梨々香の神姫・モナカにメモリーされていた映像を鑑賞し、たった今終わったところだ。 映像の内容は、武装神姫同士のリアルバトル。 つい先日行われた、『異邦人(エトランゼ)』と『狂乱の聖女』の一戦である。 身内しか見ることのかなわなかった大一番であるが、幸いにして、尊の弟子・江崎梨々香は『エトランゼ』のチームに所属している、つまり身内であった。ゆえに、神姫を使って密かに撮影した、貴重なバトルの様子を見ることができるのだ。 死闘だった、と言えるだろう。 メモリーに記録されていたのは、命を削り合うようなリアルバトル。双方の装備は破壊され、奥の手をも出し尽くした死闘。 勝利を手に... -
第三章 深み填りと盲導姫
第三章 深み填りと盲導姫 あらすじ: 夏のある日、俺達は神姫センターでサマーフェスタを楽しんでいた。 そんな時、ある人物と出会い、神姫の一つの可能性を垣間見る事に…… 第一話:宝探姫 第二話:双銃姫 第三話:違法姫 第四話:諸刃姫 第五話:成上姫 第六話:肩書姫 第七話:激動姫 第八話:実践姫 第九話:鉄鳥姫 第十話:血戦姫 第十一話:追剥姫 第十二話:負傷姫 第十三話:再生姫 第十四話:塵刃姫 第十五話:生贄姫 (この話ではウサギのナミダに関して一部のネタバレが存在しますのでご注意ください) 第十六話:偽眼姫 第十七話:鳥討姫 第十八話:札無姫 第十九話:罪明姫 (この話ではキズナのキセキに関して一部のネタバレが存在しますのでご注意ください) 第二十話:道行姫 この物語においては以下の作品から、キャラクター、設定を借り... -
キズナのキセキ・番外編:黒兎と盗賊姫 後編
キズナのキセキ 番外編「黒兎と盗賊姫」後編 ◆ おかしい。 尊は首をひねりつつ、考える。 蒼貴とティアの攻防はほぼ互角。お互い軽装の神姫であることが、勝負の決め手を欠いている。 一進一退の攻防である。 しかし、蒼貴の方が攻撃を喰らう率が高い。致命傷にはならないが、ライフポイントはじりじりと削られている。 蒼貴の調子が悪いわけではない。むしろ絶好調と言っていいほどだ。 そんな調子の時、蒼貴の攻めは厳しく、守りは堅い。 だが、ティアは絶妙のタイミングで、いとも容易く反撃してくる。 なぜだ? なぜそんなことが出来る? そのとき、尊の脳裏にひらめくものがあった。 この試合の序盤、尊は確かに思ったのだ。 対策されている、と。 そう、ティアのマスター・遠野貴樹は、『盗賊姫』に対する策を施している。 蒼貴の攻撃を無効に... -
刃毀れ
『戦闘』刀ツカイ対槍ツカイ 黒野白太「神姫越しにあんな殺気出せる人が居るとは思わなかった。」 『日常』『刃毀れ(ソードブレイカー)』 黒野白太「思いつく限りの悪行をやってやるよ。」 『日常』武装紳士の日常 イシュタル「造作も無い。」 『日常』必殺技 黒野白太「見えていても分からない必殺技というのもあるよねぇ…。」 『戦闘』Battle Venus 黒野白太「僕は神姫バトルに勝ちたいだけの武装紳士さ。」 『設定』白の女神と黒の英雄 登場人物 白田黒乃「黒野白太のモデルはジャギ様。」 『過去』貴方はここに、貴方はどこに? イシュタル「それこそが私達神姫の愛だと私は考えている。」 『ネタ』演説 黒野白太「イシュタル様マジ女神!」 『戦闘』愛など要らぬ 黒野白太「全て等しくどうでもいい。」 『コラボ』錆びた刀は戻せない 白田黒乃「キズナのキセキのキャラ... - @wiki全体から「キズナのキセキ・ACT1-25:聖女の正体」で調べる