唐書巻十七
志第七
礼楽七
【皇帝加元服】
四を嘉礼という。
皇帝元服を加える。
担当官署は日を卜占し、天地宗廟に告祭する。
祭祀一日前、尚舎は席を
太極殿の中柱の間に設置し、いぐさで編まれた席に白い縫取りの縁があり、藻席(なめし皮で板を覆った敷物)は袖口を黒くし、次席(桃枝竹で編んだ筵)に黒と白で斧の模様の縁取りをする。担当官署は幄を設置し、縣を展開し、机を設置し、車輦を並べる。文官五品以上の
版位を縣の東に、武官を縣の西に、六品以下は全員
横街の南に設置し、北を班位の上とする。朝集使は方角に分かれて文武官は当品の下、諸親王の位は四品・五品の下で、皇宗室の親族は東に、異姓の親族は西とする。藩客は方角に分かれてそれぞれ朝集使六品の南に、諸州の使人は朝集使九品の後とする。また太師・太尉の
版位を
横街の南、道の東に設置し、北向きで西を班位の上とする。典儀は縣の東北に、賛者二人は南にあって、やや退き、共に西向きとする。また門外の版位を東西
朝堂に設置することは、元日と同様である。
祭祀当日、侍中は「厳粛にしてください」と版奏する。太楽令・鼓吹令は工人を率いて位置につく。担当官署は樽・洗を東の階の東南に設置し、席を東房の内に設置し、西向きとし、帷を東序(正房の東の牆)の外に張った。殿中監は袞服を内席に並べ、領(えり)を東にし、黒色の絹でつくった髪包・玉簪および櫛の三つを同箱にし、服は南にある。また白い縫取りの縁があるいぐさで編まれた席を一つ、袖口を黒くした藻席(なめし皮で板を覆った敷物)、黒と白で斧の模様の縁取りをした次席(桃枝竹で編んだ筵)を設け、南に置く。尚食は東序(正房の東の牆)の外の帷の内で醴(さけ)を尊に満たして置き、坫(土製の高台)は尊の北に置き、角(青銅製の小型の四升入飲料器)・觶(青銅製の小型の三升入飲料器)・柶(さじ)それぞれ一つを満たす。お供えを尊の西に並べ、籩(高坏)・豆(高坏形の青銅盛器)各十二で、俎三個は、籩・豆の北に置かれる。樽・洗を尊の東に設置する。袞冕・玉導を箱に置く。太常博士一人は西の階下に立ち、東向きとなる。侍衛たちの官は共に宮殿に詣でてお迎えし、典儀は賛者および群官を率いて順番に位座に就く。太常博士は太常卿を率いて西の階段に登り、西房の外に立ち、東壁にあって北向きとなる。侍中が「外辦(お出ましになる準備は出来ております)」と版奏する。皇帝は頭には何も被らず、
黒介幘・
絳紗袍を着用し、西房から出て、御座に立つ。太師・太尉が入って位座に就く。典儀は「再拝せよ」と言う。賛者は伝令し、位座にある者は全員再拝する。太師は西の階段から登り、東の階段の上に立ち、東向きとなる。太尉は東の階段から樽・洗のところに行き、手を洗い、東の階段から登り、東房にやって来て、纚(髪包み)・櫛の箱を取って奉り、跪いて御座の西端に捧げる。太師は御座の前にやって来て、跪いて「お座りください」と奏する。皇帝が座る。太尉は前のやや左に行き、跪き、幘(ずきん)を脱いで箱に置き、櫛を削って、纚(髪包み)を着け、立ち上がり、やや西に、東に向かって立つ。太師が降りると、手洗いし、冕を受け取り、右は頂を持ち、左は前を持ち、西の階段から登り、前方やや左となり、祝って、「ここに令月吉日を選んで、始めて元服を加える。命は長くまた幸いに、大いなる幸せを介添えすることなろう」と述べ、そこで跪き、冠を被せ、立ち上がり、また西の階段の上に位座する。太尉の前、やや左に跪き、簪を着け、纓(冠の紐)を結び、立ち上がり、位座に戻る。皇帝は立ち上がり、東房に赴く。殿中監は櫛・纚(髪包み)の箱を撤去して退く。
皇帝は袞服で出て、席の南に向って座る。太尉は序(正房の牆)の外の帷の内に行き、手を洗って觶(青銅製の小型の三升入飲料器)を洗い、醴(さけ)を酌み、柶(さじ)を加えて俯けにし、柶の葉を手前にし、序の内に立ち、南向きとなる。太師は進み出て醴(さけ)を受け取り、柄を表にし、進み出て、北向きになって祝って、「甘い醴(さけ)はよく、よき供え物はおいしく芳しい。天のよろこびをうけ、歳たけるまで忘れられることはないであろう」と述べて退き、降りて西の階段の下に降り、東向きとなる。祝おうとする、殿中監は進饌者を率いてお供えを奉って前に設置し、皇帝は左に觶(青銅製の小型の三升入飲料器)を持ち、右に干し肉を持ち、塩辛を手揉みし、籩(高坏)・豆(高坏形の青銅盛器)の間に祭る。太尉は骨付き干し肉を一つ取って奉り、皇帝は觶(青銅製の小型の三升入飲料器)を奉って西にお供えし、骨付き干し肉を受け取り、左手を延ばして本体をとり、右手は絶末(先)をもって祭り、左手を上にしてこれを舐め、太尉に授ける。太尉は俎に加え、降り、太師の南に立つ。皇帝は手を拭って觶(青銅製の小型の三升入飲料器)、柶(さじ)を使って醴(さけ)を祭り、醴をついばみ、柶を立て、觶を捧げて東にお供えする。太師・太尉は再び
横街の南に位座する。典儀は「再拝せよ」と言うと、賛者は伝令して、位座にある者は全員再拝する。太師・太尉は退出する。侍中は前で跪き「礼は終了しました」と奏する。皇帝は立ち上がり、東房から入り、位座にある者は序列によって退出する。
【皇太子加元服】
皇太子に元服を加える。
担当官署が事前に司徒一人に奏じて賓とし、卿一人は賛冠とし、吏部はこれを受けて斎戒する。祭祀一日前、尚舎は御幄を
太極殿に設置し、担当官署は群官の序列によって
版位を設置し、縣を展開し、机を設置し、車輿を並べることは、すべて皇帝の冠の祭祀と同様である。賓が命を受ける
版位を
横街の南の道の東に設置し、賛冠の版位をその後ろに設置し、やや東とし、全員北向きとする。また文武官の門外の
版位を
順天門の外の道の東西に設置する。その日、侍中は「厳粛にしてください」と奏じる。群官・担当官署は全員位座に就く。賓・賛は入って
太極門外の道の東に立ち、西向きとなる。黄門侍郎は主節を引き連れて旗や節を持ち、中書侍郎は制書と机を率いて、楽縣の東南に立ち、西向きとなって北を班位の上とする。侍中は「外辦(お出ましになる準備は出来ております)」と版奏する。皇帝は
通天冠・
絳紗袍を着用し、乗輿は西房から出て、御座に就く。賓・賛冠は入って位座に就く。典儀が「再拝せよ」と言うと、位座にある者は全員再拝する。侍中および舎人が進み出て制を承り、侍中が降りて賓の前にやって来て、「制が出されました」と言う。公は再拝する。侍中は「某の首に冠を加えんとしております。公はこれに臨席して下さろうとしておられます」と言うと公はやや進み出て、北向きで再拝稽首し、「臣は賢明ではありませんから、恐らく加冠の事を十分につとめることができません。あえてお断りします」と辞退を述べると、侍中は登って奏じ、また制を承って降り、「制旨に公は加冠の事を行うべきで、辞退してはならないと仰せである」と言うと、公は再拝する。侍中・舎人は卿の前にやって来て勅旨を述べると、卿は再拝する。侍中は「某の首に冠を加えんとしております。卿は賛冠せよ」と言うと、卿は再拝する。黄門侍郎は節を取って賓の東北に立ち、西向きとなる。賓は再拝して節を受け、主節に授け、また再拝する。中書侍郎は制書を取って賓の東北に立ち、西向きとなる。賓は再拝し、制書を受け取り、また再拝する。典儀は「再拝せよ」と言うと、賛者は伝令し、位座にある者は全員再拝する。賓・賛が出ると、皇帝は降りて座し、東房から入り、位座にある者は序列によって退出する。それより以前、賓・賛は門を出て、制書を机に置き、幡節を引き連れ、威儀・鐃吹および九品以上は、全員
東宮朝堂に詣でる。
加冠の一日前、衛尉は賓の幄を
重明門外の道の西に設置し、南向きとし、賛冠の幄はその西南に設置する。また幄を門内の道の西に設置し、ここで賓・賛冠を待機させる。また皇太子の
版位を宮殿外の道の東に設け、西向きとする。三師の
版位を道の西に設け、三少(少保・少傅・少師)の版位をその南のやや退いたところに設け、共に東向きとする。また軒縣を庭に、皇太子受制の位を縣の北に、解剣の席を東北に設け、いずれも北向きとする。
加冠の日の夜明け、宮臣は全員朝服を着用し、その他は
公服で、
重明門外の
朝堂に集まる。宗正卿は車に乗って侍従し、
左春坊に詣でて一旦停止する。太子左右率府がそれぞれの部下を率いて、門に駐屯して仗を列べる。左庶子が「厳粛にしてください」と版奏する。群官・担当官署が入って
版位に就く。樽・洗を東の階段の東南に設置する。冠席を殿上の東壁の下のやや南に設置し、西向きとする。賓席を西階段上に設置し、東向きとする。主人の席を皇太子の席の西南に設置し、西向きとする。三師の席を冠席の北に、三少(少保・少傅・少師)の席を冠席の南に設置する。帷を東序(正房の東の牆)の内に張り、褥席を帷中に設ける。また帷を序の外に張り、お供えを揃える。内直郎は服を帷の内に並べ、襟を東にして北を班位の上とする。袞冕・金飾象笏・
遠游冠・
緇布冠、玄衣(黒衣)・素裳(白裳)・素韠(無地の皮の膝掛け)・白紗の中単(長襦袢)・青の褾(袖端)・襈(縁飾り)・裾(前襟)、履(くつ)・襪(しとうず)・革帯・大帯・笏を着用する。黒色の絹でつくった髪包・犀の簪の二つを同箱とし、服の南に置いた。櫛は箱に満たし、また南に置いた。いぐさで編まれた席を四つ、藻席(なめし皮で板を覆った敷物)四つは、同じく南に置いた。良醞令は側尊・甒(徳利)を醴(さけ)で満たして序の外の帷の内に置き、樽・洗を尊の東に設け、実巾一、角でつくった杯・柶(さじ)がそれぞれ一つである。太官令はお供えを満たした豆(高坏形の青銅盛器)九・籩(高坏)九を尊の西にし、俎三は豆の北に置かれた。袞冕・
遠游三梁冠・
黒介幘・
緇布冠・青の冠の組紐を冠につけ、冠・冕はそれぞれ一箱である。奉礼郎三人はそれぞれ取って西階段の西に立ち、東向きで北を班位の上とする。主人・賛冠は
宗正卿を主人とし、庶子を賛冠とする。登り、東序の帷の内のやや北にやって来て、戸の東西に立つ。典謁は群官を率いて序列によって
版位に就く。
それより以前、賓・賛冠は幄に入り、左庶子は「外辦(お出ましになる準備は出来ております)」と版奏する。通事舎人は三師らを引き連れて入って宮殿外の道の西の
版位につき、東向きに立つ。皇太子は頂きの部分が空いている
黒介幘・双童髻(あげまき。男女の児童、童僕がおこなった両方に束ねた髪形)・綺羅びやかな衣・紫の袴褶・織りあげられた褾(袖端)や襟・緑色の大帯・
烏皮履を着用し、乗輿はそれによって出る。洗馬は宮殿門外で迎え、左庶子は輿を降りるよう願い出て、洗馬は案内して道の東に位座し、西向きに立つ。左庶子は再拝願い出る。三師・三少は答拝する。そこで階段の東南の位座に就く。三師は前で、三少は後におり、千牛二人は左右を挟み、その他の仗衛は師・保の外に列す。皇太子はそこで出て賓を迎え、東の階段の東に到着して、西向きに立つ。宗正卿は門の東に立ち、西向きとなる。賓は西に立ち、東向きとなる。宗正卿は再拝するが、賓は答拝しない。賓が入ると、主人は従って入り、縣の東北に立ち、西向きとなる。賓が入ると、賛冠は従い、賓は殿の階段の間に詣でて、南向きとなる。賛冠は賓の西南に立ち、東向きとなる。節は賓の東のやや南にあり、西向きとなる。制の置かれた机は賛冠の西南にあり、東向きとなる。賓が制を取り、皇太子は詣でて制の位で受け、北向きに立つ。主節は節衣を脱ぎ、賓は「制が出されました」と言う。皇太子は再拝する。詔を宣り賜って「制によって、皇太子某よ。吉日に元服し、前代以来の典章により、太尉某に命じて宮について礼を述べよ」と述べ、皇太子は再拝する。少傅は進み出て賓の前に詣でて、制書を受け取り、皇太子に授け、庶子に渡す。皇太子は東階に登り、東序(正房の東の牆)の帷の内に入り、北のあたりに南向きに立つ。賓は西の階段から登り、宗正卿はそれぞれ席の後ろに立つ。
それより以前、賓は登り、賛冠は樽に詣でて洗い、手を洗い、東の階段より登って帷の内に入り、主人の冠を賛冠の南にし、共に西向きとなる。主人・賛冠は皇太子を引き連れて出て、席の東に立ち、西向きとなる。賓・賛冠は纚(髪包み)・櫛の二箱を取り、座して筵に捧げる。皇太子は進み出ると、筵に登り、西向きに座る。賓・賛冠は東向きに座り、幘(ずきん)を脱いで箱に置き、櫛を削って、纚(髪包み)を着け、立ち上がり、やや北に南向きに立つ。
緇布冠を持つ者は登り、賓は一段降りて受け取り、右手に頂を持ち、左手に前を持ち、進み出て、東向きに立ち、祝って「令月吉日の良き日を選んで、始めて元服を加えることとなった。その幼い心を捨てて、成人としての徳を慎んでゆかなければならない。そうすれば命は長くまた幸いに、大いなる幸せをますますにすることになろう」と述べると、跪き、冠を乗せ、立ち上がり、位座に戻る。皇太子は東向きに立ち、賓は皇太子に会釈し、賛冠は皇太子を引き連れて東序(正房の東の牆)の帷の内に行き、黒衣に白い裳の服を着用して出て、席の東に立ち、西向きとなる。賓は皇太子に会釈して筵に登り、西向きに座る。賓・賛冠は進み出て、跪いて
緇布冠を脱いで、箱に置き、立ち上がり、再び位座に戻る。賓は二段降り、
遠游冠を受け取り、右手に頂を持ち、左手に前を持ち、進み出て、祝って、「この吉月令辰のよき日を選んで、成人としてのよき服を重ね授けることになった。よく立ち振舞に心致し、お前の成人としての徳を明らかにする。長生きして歳とらず、長く限りない幸せを受けるであろう」と述べ、そこで跪き、加冠し、立ち上がり、再び位座に戻った。皇太子は立ち上がると、賓は皇太子に会釈し、賛冠は皇太子を引き連れて東序の帷の内に行き、朝服で出て来て、席の東に立ち、西向きとなる。賓は皇太子に会釈して筵に登って座り、賓・賛冠は跪いて
遠游冠を脱いで、立ち上がり、再び位座に戻る。賓は三段降りて冕を受け取り、右手に頂を持ち、左手に前を持ち、進み出て、祝って、「ここによき年をもって、またよき月をもって、成人としての服をことごとく加えることとなった。成人としての徳を成就せんことを願っている。年寄りになるまで限りなく、天の賜物を受けるように」と述べ、そこで跪き、加冠して、立ち上がり、再び位座に戻る。加冠するごとに、いずれも賛冠は跪いて簪を着け、纓(冠の紐)を結ぶ。
皇太子は立ち上がると、賓は皇太子に会釈して東序(正房の東の牆)に行き、袞冕の服を着用して出て、席の東に立ち、西向きとなる。賛冠は纚(髪包み)・櫛の箱を撤去して入り、また筵を取って帷の内に入る。主人・賛冠はまた醴(さけ)を設け、皇太子の席を室の戸の西に設け、南向きとし、いぐさで編まれた席を下に、藻席(なめし皮で板を覆った敷物)を上にする。賓・賛冠は東序の外の帷の内にて、手を洗って觶(青銅製の小型の三升入飲料器)を洗う。典膳郎は醴(さけ)を酌み、柶(さじ)を加えて覆いを被せ、柄を表向きとし、賛冠に授け、序(正房端の牆)の内に立ち、南向きとなる。賓は皇太子に会釈して筵の西につき、南向きに立つ。賓は進み出て、醴(さけ)を受け取り、柶(さじ)を加えて、柄を表向きとして、進み出て、北向きに立って、祝って、「甘い醴(さけ)はよく、良き供え物はおいしく芳しい。拝して受けこれを祭って、お前の幸せを定めなさい。そうすれば天の喜びを受け、歳たけるまで忘れられることはないであろう」と述べ、皇太子は拝し、觶を受け取る。賓は位座に戻り、東向きに答拝する。賛冠は進饌者と共にお供えを奉って筵の前に設け、皇太子は筵に登って座り、左手に觶を取り、右手に干し肉を取り、塩辛を手揉みし、籩(高坏)・豆(高坏形の青銅盛器)の間に祭る。賛冠は塩辛を取り、まんべんなく豆(高坏形の青銅盛器)に入れて手揉みし、皇太子に授け、また籩(高坏)・豆(高坏形の青銅盛器)の間に祭る。賛冠は骨のついた干し肉を取り、皇太子に授け、皇太子は觶を捧げて西にお供えし、立ち上がり、骨のついた干し肉を受け取り、左手を延ばして本体を持って座り、右に回って絶末(先)を祭る。左手を上にして舐め、立ち上がり、賛冠に授け、俎に入れる。皇太子は座ると、手を拭って觶(青銅製の小型の三升入飲料器)を取り、柶(さじ)を用いて醴(さけ)を祭ること三度、始めは一度柶(さじ)を挟んで祭り、また柶(さじ)を挟んで二度目の祭をし、柶(さじ)を觶に入れ、本体を表にし、立ち上がり、筵の末に座り、醴(さけ)をすすり、柶(さじ)を立て、立ち上がり、筵を降りて西に行き、南向きに座り、觶を捧げて、再拝し、觶を取って、立ち上がる。賓は答拝する。
皇太子は降りると、西の階段の東に立ち、南向きとなる。賓は降りると、西の階段の西のやや南に立ち、賛冠は従って降り、賓の西南に立ち、いずれも東向きとなる。賓はしばらくして進み出て、字を名付け、祝って、「礼儀はことごとく備わり、令月吉日。明らかにその字を告げあたえることとなった。君子にこそよろしいものである。これを宜しく自分のものとすることこそ幸せそのものである。長く受けてこれを保んぜよ。勅を奉って某が字をつける」と述べ、皇太子は再拝して、「某は聡くないとはいえ、私としてもただひたすら承諾しないわけにはいかない」と言い、また再拝した。洗馬は太子を引き連れて東の階段を降りて位座につき、三師は南にあって、北向きとなり、三少は北にあって南向きに立つ。皇太子は西向きで再拝し、三師らはそれぞれ再拝して退出した。典儀は「再拝せよ」と言うと、賛者は伝令して、位座にある者は全員再拝した。左庶子は前に進み出て「礼は終了しました」と言う。皇太子は輿に乗って入り、侍臣は従って宮殿に到り、賓・賛冠および宗正卿は出て会所に就いた。
【皇子冠】
皇子冠。
祭祀の三日前、本司は帥その部下を率いて日を筮(うらな)い、賓を誰にするのか筮(うらな)う。祭祀の二日前、主人は賓の門の外の幄にやって来て、東向きとなり、賓は東の階段の下に立ち、西向きとなり、儐者(案内役)は左に進み、北向きとなり、命を受けて出て、門の東に立ち、西向きとなり、「お招きしてください」と言い、主人は「皇子某王に加冠しよう。某公は教え導いてくだされ」と言い、儐者は入って告げ、賓は出て、門の左に立ち、西向きとなり、再拝する。主人は答拝する。主人は「皇子某王は加冠しようと思います。何卒、貴方様が教え導いてくださらないか」と言うと、賓は「某(それがし)は賢明ではありませんから、恐らく加冠の事を十分につとめることができません。あえてお断りします」と辞退を述べ、主人は「某(それがし)はそれでも貴方様に教え導いていただきたい」と言い、賓は「王の重ねてのご命令とあっては、某は従わないわけにはまいりません」と言い、主人は再拝して戻り、賓は拝礼して見送る。賛冠者に命じることはまたこれと同様である。
加冠の当日、朝早くに立ち、洗を東の階段の東南に、席を東房の内の西壁の下に設置する。衣を席に並べ、襟を東にして北を班位の上とする。袞冕・
遠游冠・
緇布冠・黒色の絹でつくった髪包・犀の簪・櫛で満たされた箱は、南に置かれる。いぐさで編まれた席、藻席(なめし皮で板を覆った敷物)はそれぞれ三つで、南に置かれる。尊を房の西、室戸の東の西に設置し、二つの甒(とっくり)の玄酒(酒の代用とする水)を西にし、柄杓に冪(白布)を加える。坫(土製の高台)を尊の東に設置し、二つの爵を坫(土製の高台)に置き、冪(白布)を加える。豆(高坏形の青銅盛器)十・籩(高坏)十は服の北にあり、俎三は籩・豆の北にある。夜が明けると、賓・賛冠は主人の大門の外の帷のもとに到着すると、
遠游三梁冠・
緇布冠がそれぞれ一箱あり、一人づつ持ち、西の階段の西で待ち、東向きで北を班位の上とする。主人の席を東の階段の上に設置し、西向きとする。賓の席を西の階段の上、東面向きとし、皇子の席を室戸の東の西に設置し、南向きとする。双方ともいぐさで編まれた席を下に、藻席(なめし皮で板を覆った敷物)を上にする。主人は東の階段の下に立ち、東房にあたって西向きとする。諸親王は樽・洗の東南に立ち、西向きで北を班位の上とする。儐者は門の内の道の東に立ち、北向きとする。皇子は双童髻(あげまき。男女の児童、童僕がおこなった両方に束ねた髪形)・頂きの部分が空いている
幘・綺羅びやかな
袴褶・錦紳(絹製の大帯)・
烏皮履を着用し、房内に立ち、南向きとなる。主人・賛冠者は房内の戸の東に立ち、西向きとなる。賓および賛冠者は出て、門の西に立ち、賛冠者はやや退き、共に東向きで北を班位の上とする。
儐者(案内人)は命を主人から受け、出て門の東に立ち、西向きとなり、「お招きしてください」と言うと、賓は「皇子某王に加冠しよう。某(それがし)は謹んで命を受けよう」と言うと、儐者は入って報告し、主人は出て賓を迎え、西向きとなって再拝し、賓は答拝する。主人は賛冠者に会釈し、賛冠者は会釈を返し、主人は同じく賓に会釈し、賓は会釈を返す。主人は入ると、賓・賛冠者は順序によって入り、内門に到着すると、主人は賓に会釈し、賓は入り、賛冠者は従う。門内の庇に着くと、曲がろうとするたびに会釈し、賓も会釈を返す。階段に到着すると、主人は階段の東に立ち、西向きとなる。賓は階段の西に立ち、東向きとなる。主人は、「公は登ってください」と言うと、賓は、「某は準備しなければならないことがあります。辞退させていただきたい」と言うと、主人は「強く公に登っていただきたい」と言い、賓は「某は固く辞退させていただきたい」と言うと、主人というと「最後まで公に登っていただきたい」と言うと、賓は「某は最後まで辞退申し上げたい」と言い、主人は東の階段から登り、席の東に立ち、西向きとなる。賓は西の階段から登り、席の西に立ち、東向きとなる。賛冠者は庭に出ると、洗を手洗いし、西の階段から登り、東房に入り、主人は賛冠者の南に立ち、二人とも西向きとする。
主人・賛冠者は皇子を引き連れて出て、房・戸の外の西に立ち、南向きとなる。賓と賛冠者は纚(髪包み)・櫛・簪箱を取って、跪いて皇子の筵の東端に捧げ、立ち上がり、席は東のやや北で、南向きに立つ。賓は皇子に会釈し、賓・主人は共に着座する。皇子は進み出て、席に登り、南向きに座る。賓と賛冠者は筵の前に進み出て、北向きとなって跪き、双童髻(あげまき。男女の児童、童僕がおこなった両方に束ねた髪形)を取って箱に置き、櫛を削って、纚(髪包み)を着ける。賓は降りて手洗いし、主人は従って降りる。賓は東向きで「王は降りられませんように」と言うと、主人は「公は降りられているのですから、降りないわけにはまいりますまい」と言う。賓は手洗いした後、西の階段に詣でて、賓・主人は会釈して譲り合って登る。主人は席の後ろに立ち、西向きとなり、賓は西の階段の上に立ち、東向きとなる。
緇布冠を持つ者が登ると、賓は一段降りて受け取り、右手に頂を持ち、左手に前を持ち、北向きに跪き、加冠し、立ち上がると再び西の階段の上の席の後ろに戻り、東向きに立つ。皇子は立ち上がると、賓は皇子に会釈して房に行き、賓・主人は共に着座する。皇子は青衣・素裳(白裳)の服を着用し、房・戸の西に出て、南向きに立つ。賓は皇子に会釈すると、皇子は進み出て、席の後ろに立ち、南向きとなる。賓は降りると、手洗いし、主人は従って降り、言葉の掛け合いは最初の通りである。賓は跪いて爵を篚(竹籠)から取り、立ち上がって、洗い、西の階段に詣でて、賓・主人は会釈して譲り合って登り、着座し、主人は席の後ろに立って、西向きとなる。賓は酒・尊の所に行って、酒を酌んで皇子の筵の前に進み出て、北向きに立ち、祝って、「美味い酒は既に澄み、よき供え物は真に時を得ている。始めて元服を加えることになり、兄弟たちも共に来席している。孝友の道を心得た人々も特に来てもらっている。末永く心に保んじなければならないぞ」と述べ、皇子の筵の西に爵を拝し、賓もまた西の階段の上で、東向きで答拝する。お供えを持つ者は籩(高坏)・豆(高坏形の青銅盛器)を皇子の筵の前に供える。皇子は登って着座し、左に爵を持ち、右に干し肉を取り、塩辛を手揉みし、籩・豆の間に祭り、酒を祭り、立ち上がり、筵の末に着座し、酒をすすり、爵を持って立ち上がり、筵を降り、爵を捧げて、再拝し、爵を持って立ち上がる。賓は答拝する。冠者は筵に登り、跪いて爵をお供えの東に捧げ、立ち上がり、筵の西に立って、南向きとなる。お供えを持つ者は、お供えした爵を撤去する。
賓は皇子に会釈すると、皇子は進み出て、筵に登り、南向きに着座する。賓と賛冠者は跪いて
緇布冠を脱いで、箱に置く。賓は二段降り、
遠游冠を受け取って、加冠する。皇子は立ち上がると、賓は皇子に会釈して房に行き、賓・主人は二人とも着座する。皇子は朝服を着用し、房・戸の西に出て、南向きに立つ。賓・主人は一緒に立ち上がり、賓は皇子に会釈し、皇子は進み出て席の後ろに立ち、南向きとなる。賓は尊の所に詣でて、爵を取って酒を酌み、皇子の筵の前に奉り、北向きに立ち、祝って、「美味い酒は既に澄み、よき供え物には干し肉がある。そこでお前の服を重ね着せることとなったが、礼儀には順序がある。これによってこの祝いの爵を祭って、天の幸せを受けなさい」と述べると、皇子の筵の西にて拝礼し、爵を受け取り、お供えすることは最初の礼の通りである。賓は皇子に会釈して、進み出て、席に登り、南向きに座る。賓と賛冠者は跪いて
進賢冠を脱いで、賓は三段とりて冕を受け取って、加冠する。加冠するごとに、賛冠者は簪を着け、纓(冠の紐)を結ぶ。
皇子は立ち上がると、賓は皇子に会釈して房に行き、袞冕を着用して房・戸の西に出て、南向きとなる。賓は皇子に会釈して進み出て、席の後ろに立って南向きとなる。賓は酒・尊の所に赴いて、爵を取って酒を酌んで皇子に奉り、祝って、「美味い酒は芳しく、籩(高坏)・豆(高坏形の青銅盛器)の順序はきちんとしている。これでお前の服をみな加えることになって、ここに干し肉がのぼせられている折俎がある。天の賜物を受け、福を受けること限りないであろう」と述べると、皇子の筵の西に拝礼し、爵を受け取る。お供えを持つ者は籩・豆をお供えし、俎をその南に設置する。皇子は筵に登って着座し、爵を持って、干し肉・塩辛を祭る。賛冠者は骨のついた干し肉を取って皇子に授け、皇子は爵をお供えの西に捧げて立ち上がり、受け取ると座って祭り、左手で舐め、立ち上がると俎に入れる。皇子は着座すると、手を拭って爵を持ち、酒を祭って立ち上がり、筵の末に着座し、酒をすすり、筵の西に降り、南向きに座り、爵を捧げて再拝し、爵を取って立ち上がる。賓は答拝する。
皇子は筵に登って着座し、爵をお供えの東に捧げて立ち上がる。賛冠者は皇子を引き連れて降り、西の階段の東に立ち、南向きとなる。それより以前、皇子は降りると、賓は西の階段から降り、西序(正房の西の牆)にあたって東向きに立つ。主人は東の階段から降り、東序(正房の東の牆)にあたって西向きに立つ。賓はやや進み出て、字を名付け、「礼儀はことごとく備わり、令月吉日。明らかにその字を告げあたえることとなった。君子にこそよろしいものである。これを宜しく自分のものとすることこそ幸せそのものである。長く受けてこれを保んぜよ。それでは字を申そう。孟某というのだ」と言い、仲・叔・季はそれぞれ該当する通りにつけるだけである。皇子は「某は聡くありませんとはいえ、早朝・夜にただ奉ります」と言い、賓が出ると、主人は内門の外に送り、主人は西向きとなって賓に「公はありがたくも行っていただきました。従者の方にも礼をさしあげることにさせてください」と言うと、賓は「某はすでに事を行なうことができました。これで失礼させていただきたい」と言い、主人は「そうおっしゃらずに是非礼をお受けください」と言い、賓は「某が辞退してもお許しいだけませんから、従わないわけにはまいりますまい」と言い、賓は幄に行き、主人は入る。それより以前、賓は出ると、皇子は東向きに見送り、諸親王は拝礼し、皇子は答拝する。皇子は入って内外諸尊を別所にて見る。
賓・主人は服を脱いだ後、改めて席を設け、終わると賓・賛冠者は一緒に幄を出て、門の西に立つ。主人は出て賓に会釈し、賓は会釈を返す。主人は先に入って、賓・賛冠者はこれに従って階段に到り、会釈して譲り合い、登って着座し、一緒に座る。会が終わると、賓は西の階段の上に立ち、賛冠者は北にいて、やや退き、共に東向きとなる。主人は東の階段の上に立ち、西向きとなる。掌事者は束帛の篚(竹籠)を捧げて登り、序(正房の牆)の端にて主人に授ける。主人は篚を持ってやや進み出て、西向きに立つ。また掌事者は幣の篚を捧げて登り、主人の後ろに立つ。幣の篚が登ると、馬を牽く者は二頭の馬を牽いて門の内に並べ、その位置は庭の南北を三分してその一つだけ南のところにあり、首を北にして西を班位の上とする。賓は西の階段の上に戻ると、北向きとなって再拝する。主人は進み出て柱の間に立ち、賛冠者は賓に左に立ち、やや退き、一緒に北向きとなって再拝する。主人は南向きとなり、賓・賛は進み出て、主人の右に立ち、共に南向きで東を班位の上とする。主人は幣を授け、賓はこれを受け取って退き、また位座に戻る。主人は幣を授けると、掌事者はまた幣の篚を賛冠者に授ける。主人は東の階段の上に戻り、北向きで拝礼して送り、賓・賛冠者は西の階段から降り、従者は出迎えて幣を受け取る。賓は庭に陳列された物品にあたって東向きで会釈し、出ると、馬を牽く者は一緒に出て、従者は迎えて馬を門外で受け取る。賓が降りると、主人は降り、賓を大門で迎え、西向きで再拝する。
もし諸臣の嫡子が三度加冠する場合は、皆祝詞を受けてから加冠し、また祝詞を受けてから酒を酌み、また祝詞を受けてから字をつける。庶子は三度加冠する場合は、加冠してから後で酒を酌んで祝詞を受け、また祝詞を受けてから字をつける。最初の加冠はいずれも
緇布冠で、二度目はいずれも
進賢冠で、三度目は一品の子は袞冕、二品の子は
鷩冕を用い、三品の子は
毳冕を用い、四品の子は
絺冕を用い、五品の子は
玄冕を用い、六品から九品までの子は
爵弁を用いる。服の着用はこれに従う。席で加冠する時、嫡子は西向きで、庶子は南向きとする。日を筮(うらな)い、賓・賛冠者を筮(うらな)い、これを敬うのは、冠の礼儀を尊重したからであり、いずれも親王と同様である。
最終更新:2026年02月21日 01:45