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四天王のやりとり!! 外伝「呪われた王国」
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遥か昔…魔界には「呪われた時代」という時が存在した。
年数にしておよそ10年ほど。
それまでの魔界全体は大きく荒れており、外界からやってくる人間達もそうだが、魔界のモンスターが引き起こす、多くの強盗や殺人といった悪事に、魔界政府は四苦八苦していた。
それまでの魔界全体は大きく荒れており、外界からやってくる人間達もそうだが、魔界のモンスターが引き起こす、多くの強盗や殺人といった悪事に、魔界政府は四苦八苦していた。
ただ、ある時、その犯罪がピタリとやんだ。
多くの悪事を犯したモンスターが、何者かによって容赦なく惨殺されていったからである。
多くの悪事を犯したモンスターが、何者かによって容赦なく惨殺されていったからである。
そんな混沌の時代に何があったのか。
それは魔界政府が今も隠し続ける、極秘中の極秘である。
それは魔界政府が今も隠し続ける、極秘中の極秘である。
ごく一部の関係者だけが知る、その事実を記した本は、四天王達もその存在を知らない、魔王城の秘密の一室に安置されていた…。
☆
「はっ。女王様、こいつらがティミディアで窃盗を働いていた一味でございます。」
「……なんだ、ただのガキ共じゃないか。本当にこの二人だったのか? 例の大事件を引き起こしたのは。」
玉座に座る魔界女王、リーニャが機嫌悪そうに質問する。
「いえ、実際にはもう一人、こいつらの父親もいたのですが、あまりに抵抗してきたため殺しました。」
「そうか。まぁ、いい。どうせこの二人もこれから殺すだけだからな。」
リーニャの前には、縄に結ばれた二人の少女が突き出されていた。
「うっ…うっ……、こ、殺さないで……。」
「(泣かないで、絶対に貴方を殺させないから。)」
ポン、ポン……
「…………いくよ。」
姉のナティカが、妹のルミに小さく声をかける。
「何を話している。おい!」
リーニャが少女達を怒鳴りつける。
その瞬間だった。
その瞬間だった。
バッ!!
「!!!」
突然、二人の姿が目の前から消えた。
魔界の兵士達は慌てふためき、部屋の中を見回す。
魔界の兵士達は慌てふためき、部屋の中を見回す。
「く、くそっ! 奴ら、どこに行きやがった!!!」
「落ち着け。動揺するな。見えている。」
バシュッ!バシュッ!
「きゃっ……!!」
リーニャの指先から氷の光線が放たれ、部屋の隅にいた「何か」にぶつかる。
すると、姿を消していた二人の少女が実体化し、バタリと倒れ込む。
すると、姿を消していた二人の少女が実体化し、バタリと倒れ込む。
「そんな術は見たことない。お前達、何者だ?」
玉座から立ち上がり、カッカッと靴音を立てながら二人に近づいていく。
「…………。」
姉のナティカが、キッと強くリーニャを睨みつける。
相手が魔界を統べる女王であろうと、全く気弱な姿は見せない。
相手が魔界を統べる女王であろうと、全く気弱な姿は見せない。
「フン……あくまで口は閉ざす、か……。しかし、面白い能力だな。気に入った。」
リーニャが横に立つ兵士に対し、ゆっくりと手を広げる。
察した兵士は、自分の腰に刺さったナイフを彼女に差し出した。
それを受け取るや否や、女王はそのナイフを二人に向けて、こう話す。
察した兵士は、自分の腰に刺さったナイフを彼女に差し出した。
それを受け取るや否や、女王はそのナイフを二人に向けて、こう話す。
「貴様らに残された道は二つ。この場で喉を掻っ切られて死ぬか、我々のしもべとなり、魔界政府に忠を尽くすか。二つに一つ。今、選ぶが良い。」
「……! 誰が……お父様を殺した下衆が……。」
言葉を発した瞬間、さっき自分が妹に言った言葉を思い出す。
ーー絶対に貴方を殺させないから。
ぐっとこぶしを握りしめ、体を震わせるナティカ。
「フン、だが我々の期待に答えられれば、十分な生活環境、それに地位と名誉も与えてやるぞ。もはや失うものが何も無いお前らにとっては、悪くない話だと思うが?」
そう言ってリーニャ女王は小さくニヤリと笑う。
「…………」
ナティカは下を向き、少しの間の後、掠れた声でこう答えた。
「……分かりました。何でも……全て、こなします。」
「よく言った。今後の仕事ぶりでお前らの処遇が決まる。せいぜい我々の期待に応えられるよう、しっかりと働くことだ。もちろん、次に反抗したらどうなるか、分かっているな?」
「………………はい。全ては、魔界政府のため。精一杯尽くさせていただきます。」
ナティカは妹のルミの後頭部に手を当てて無理やり礼をさせながら、自分も深々とおじぎをした。
「フン、言葉だけは達者だな。その言葉が真となるよう、毎日励むことだ。」
こうして、二人は魔界政府の駒となることで、一命をとりとめたのだった。
☆
彼女達には、魔王城内の一室を与えられた。
部屋の外に出ることはできないが、一日三食用意され、トイレや入浴も自由に出来る。
おそらく言葉以上にリーニャは彼女達に期待を持っているのだろう。
部屋の外に出ることはできないが、一日三食用意され、トイレや入浴も自由に出来る。
おそらく言葉以上にリーニャは彼女達に期待を持っているのだろう。
魔界は現在、荒れに荒れていた。
あらゆる場所で暴行・リンチが行われ、食料を中心に強奪行為が日常的に行われている。
1600年代は災害が多く作物が十分に育たないことが影響していたが、最近は以前にも増して、人間達が魔界に攻め込んできていた。それも治安悪化の一因に挙げられていた。
攻め込んでくる人間達は、魔界の資源を求めるだけではなく、人口の増加を背景に、新たな居住地を求めていたのである。
あらゆる場所で暴行・リンチが行われ、食料を中心に強奪行為が日常的に行われている。
1600年代は災害が多く作物が十分に育たないことが影響していたが、最近は以前にも増して、人間達が魔界に攻め込んできていた。それも治安悪化の一因に挙げられていた。
攻め込んでくる人間達は、魔界の資源を求めるだけではなく、人口の増加を背景に、新たな居住地を求めていたのである。
すでに人間達は魔界の東側を制圧しており、いよいよ危険なデビルマウンテンを越え、ほとんどのモンスターが住む魔界西側の攻略に動いていた。
人間達に対しては魔界軍の戦力だけでは太刀打ちできず、魔界の各都市に点在する主力モンスター達の協力が不可欠だ。
ただ、彼らも自らの縄張りを荒らすモンスター達の対応に追われており、人間達との戦いに集中できていなかったのである。
そうして魔界は、じわじわと人間達による損害が広がっていった。
ただ、彼らも自らの縄張りを荒らすモンスター達の対応に追われており、人間達との戦いに集中できていなかったのである。
そうして魔界は、じわじわと人間達による損害が広がっていった。
まずは魔界全土の治安を確保しないことには始まらない……
彼女達がそのカギになるのではないかと、リーニャは考えているのだ。
彼女達がそのカギになるのではないかと、リーニャは考えているのだ。
ガラガラガラガラ……
「お前ら。仕事だ。」
部屋の中には常に見張りの兵士がいるが、そこに、別の兵士がやって来た。
「……はい。」
「スノーランド近郊にローガスという小さな町がある。ここに小規模ギャングの一味がアジトを構えており、各地で様々な犯罪を引き起こしているのだ。このアジトに潜入し、仲間の情報等を収集、最後は口封じに全員を殺せ。」
「……承知しました。」
拒否権は無い。汚れ仕事でも全てこなすことが、今の彼女達には求められている。
「行くよ、ルミ。」
「……うん、お姉ちゃん。」
☆
ナティカとルミはこれまでずっと、父と一緒に暮らしてきた。
一家は非常に貧しく、父親も仕方なく盗賊を生業にして生計を立てていた。
ただ、それが魔界政府にバレてしまい、その生活は一瞬にして崩壊してしまったのである。
一家は非常に貧しく、父親も仕方なく盗賊を生業にして生計を立てていた。
ただ、それが魔界政府にバレてしまい、その生活は一瞬にして崩壊してしまったのである。
「お姉ちゃん……寒いね。」
「そうだね。……早く任務を成功させて帰ろう。」
雪の降る中を歩いて進む。
スノーランド近郊までは魔界軍の馬車でやって来たが、途中で敵に見つからないよう、徒歩で移動することとなる。
13歳のルミにはいささか厳しすぎるかもしれない。
スノーランド近郊までは魔界軍の馬車でやって来たが、途中で敵に見つからないよう、徒歩で移動することとなる。
13歳のルミにはいささか厳しすぎるかもしれない。
「ねぇ、お姉ちゃんの手、あったかいね。」
「そう? じゃあ、繋いでいよっか。」
雪はますます激しくなってくる。
二人は少しずつ歩く速度を高めていく。
任務実行前に、極力、体力は減らしたくない。
二人は少しずつ歩く速度を高めていく。
任務実行前に、極力、体力は減らしたくない。
☆
「あそこかな。見た目は普通の家だけど……。行くよ、ルミ。」
「うん、お姉ちゃん。」
「……………………。」
二人は、アジトの壁へ向かって歩いていく。
すると、二人は壁をすり抜けて、壁の中へと消えていった。
すると、二人は壁をすり抜けて、壁の中へと消えていった。
☆
「さぁて、次はどこの商店を襲おうか。まだまだ飯も金も足りねぇ。近場の商店はゴミみたいなとこばっかで、リスキーなくせに割に合わねぇし。そろそろデケェ店をぶっ潰して、一攫千金と行きたいところだぜぇ! 銀行とかな……。」
「そう焦るな。まだまだ俺らには力が足りん。もし実行するんであれば、よその協力も必要だろうし。」
「なぁに言ってんだよ親玉ぁ! 俺らなら出来るって!!」
部屋の中では三人のゴブリンが言い争っていた。
ボスと二人の部下の間で、次の強盗のターゲットをどうするか意見が割れているようだ。
ボスと二人の部下の間で、次の強盗のターゲットをどうするか意見が割れているようだ。
「もし実行に移すなら、シャーク団の力も必要だろう。明日、交渉に行くか。」
「ケッ、俺は嫌だけどなぁ。あいつら、最近調子に乗ってんだよ。腹立たしい。」
「そう言うな。実力は折り紙付きだ。奴らのアジトは魔界政府にもバレていないし、協力を仰いでもリスクはちいせぇだろ。」
「まぁ親玉がそういうなら仕方ねぇや。分かったよ。それで今まで上手くいってたしな。なぁ、お前はどう思う?」
部下のゴブリンが、もう一方の部下に尋ねる。
「……お前、どうした?」
さっきまで話していたのに、今はやけにうつむいている。
「……おい。返事しろ。」
ボスも不審に思って、声をかける。
「……………………」
そのゴブリンはすでに絶命していた。
内臓がぐしゃぐしゃに握り潰されていた。
内臓がぐしゃぐしゃに握り潰されていた。
「(うぅ、汚い……でも、殺さないと殺されるから…………)」
彼女達は、自分自身を希釈化させることができる。
最初はただ透明になるだけだが、その後、時間の経過とともに、ほぼ完全に存在を消すことが出来る。
そして集中の続く限り、またいつでも実体化させることができる。
最初はただ透明になるだけだが、その後、時間の経過とともに、ほぼ完全に存在を消すことが出来る。
そして集中の続く限り、またいつでも実体化させることができる。
「おい、お前……血が………………! ゴッ……ジュブッ。」
「!!!」
今まで話していた部下のもう片方も、突然、口から泡を吐いて突っ伏してしまった。
ボスは、目の前で起こっている不可解な状況に呆気にとられている。
ボスは、目の前で起こっている不可解な状況に呆気にとられている。
「……こんにちは。貴方がギャングの親玉ね。ちょっと聞きたいことがある……。いいかしら。」
ナティカとルミが姿を現す。
ルミの右手は血で染まっている。
ルミの右手は血で染まっている。
「い、いや……、お前ら、何者だ……。」
おびえ切った表情。目の前の少女達が、部下を殺した。
それは明らかだった。
それは明らかだった。
「ごめんなさい、こんなことしたくはないけど……聞いてもらえないと、私達が生きていけないから。」
チャキッ
ナティカが腰につけていた短剣を取り出す。
「まずは指から……。次は耳、目…………。話してくれたら、痛みも軽く済むからね。」
「や、やめろ……やめろ…………!!!」
ナティカの目には、黒い光がよどんでいる。後ろのルミも同じ目でボスを眺める。
「う、うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
悲痛な叫び声も、吹雪の音でかき消される。
これが、呪われた時代の始まりだった。
これが、呪われた時代の始まりだった。
「悪事を犯したモンスターは、次々と街から消されていく」
そんな噂が、徐々に広がり始めた。
☆
「今日はこの女を殺せ。名前はアマダ。種族は魔女。魔界勢力に極度の反抗意志を持つ凶悪なレジスタンスを組織している。」
「分かりました。ただちに遂行します。」
兵士に渡されたのは、一枚の紙。そこには、暗殺対象の人物の似顔絵と、目的地が記されていた。
「お姉ちゃん……今日も暗殺?」
「うん。ごめんね、苦しいかもしれないけど……頑張ろ。」
その日は豪雨だった。ただ、こういう日は暗殺には都合がいい。
誰も外を出歩かないからだ。
大雨の降るなか、二人は馬車に乗せられ、目的の場所へと向かっていった。
誰も外を出歩かないからだ。
大雨の降るなか、二人は馬車に乗せられ、目的の場所へと向かっていった。
彼女達が活動を始めて2週間。二人は毎日、確実に任務をこなしていた。
内訳は、暗殺任務が9件、処刑任務が3件。諜報任務が2件。
すでに殺されたモンスターは30体を超えていた。
内訳は、暗殺任務が9件、処刑任務が3件。諜報任務が2件。
すでに殺されたモンスターは30体を超えていた。
☆
向かうはデモンズビレッジの中心街。
魔界最大の種族である悪魔が多く居住する。
魔界最大の種族である悪魔が多く居住する。
悪魔は数が多いため、それに比例して権力者も多数存在する。
影響力が大きいがゆえに、魔界政府に対抗する反政府組織も複数存在した。
特に過激な派閥は、魔界軍を見つけ次第、取り囲んでリンチするような蛮族。
魔界政府にとっては実害以外の何でもない。
長年、リーニャや魔王を悩ませてきたレジスタンスの本拠地を目指し、馬を走らせていく。
影響力が大きいがゆえに、魔界政府に対抗する反政府組織も複数存在した。
特に過激な派閥は、魔界軍を見つけ次第、取り囲んでリンチするような蛮族。
魔界政府にとっては実害以外の何でもない。
長年、リーニャや魔王を悩ませてきたレジスタンスの本拠地を目指し、馬を走らせていく。
「よし、ここからは歩け。今日の任務はこれまでで一番重要だ。失敗は許されないぞ。良い報告を期待している。」
「はっ。」
大雨の降る森の中で、馬車から降ろされる。
ここから長い距離を歩いていき、組織のメンバーに悟られないよう近づいていく。
ここから長い距離を歩いていき、組織のメンバーに悟られないよう近づいていく。
歩きづらい砂利道を、息を切らしながら進む。
二人はまだ16歳と13歳の少女だ。体力面では相当負担がかかる。
ただ、それでも二週間働き続けられているのは、彼女達の生来のスタミナの高さが起因しているのかもしれない。
二人はまだ16歳と13歳の少女だ。体力面では相当負担がかかる。
ただ、それでも二週間働き続けられているのは、彼女達の生来のスタミナの高さが起因しているのかもしれない。
「冷たい……。お姉ちゃん、雨が冷たいよ。」
「そうだね……。でも、帰ったらあったかいお風呂に入れるから。頑張ろ。」
その過酷な仕事内容とは裏腹に、彼女達への待遇は日に日に良くなっているのは事実だった。
魔王城内ではあるが、衣食住の全てにおいて十分な環境が用意されている。以前よりも少しだけ、城の中を歩き回ることもできた。
魔界政府の監視付きではあるが。
魔王城内ではあるが、衣食住の全てにおいて十分な環境が用意されている。以前よりも少しだけ、城の中を歩き回ることもできた。
魔界政府の監視付きではあるが。
バチャッ!!!
「ううっ、水たまり……サイアク……。」
ターゲットはまだ遠い。
雷が鳴り響く夜の森を、二人で小さく励まし合いながら歩く。
雷が鳴り響く夜の森を、二人で小さく励まし合いながら歩く。
逃亡は許されない。
いつだって、魔界政府は監視している。
いつだって、魔界政府は監視している。
☆
「ここ……? お姉ちゃん。」
「うん。ここ……みたい。」
一見、ただのバーに見える建物。
ただ、ここにレジスタンスのアジトがあるという。
この情報は裏社会では極秘とされ、魔界政府のスパイがやっとの思いで先日、見つけ出したのだ。
チャンスは一度きり。一度逃せば、またレジスタンスはアジトを変え、さらに勢力を拡大させてしまうだろう。
ミスは絶対許されない。失敗すれば、死ぬのは自分達だ。
ただ、ここにレジスタンスのアジトがあるという。
この情報は裏社会では極秘とされ、魔界政府のスパイがやっとの思いで先日、見つけ出したのだ。
チャンスは一度きり。一度逃せば、またレジスタンスはアジトを変え、さらに勢力を拡大させてしまうだろう。
ミスは絶対許されない。失敗すれば、死ぬのは自分達だ。
「ルミ、あなたは正面から中に入って。私は裏から入る。もしどちらかが見つかった時にも、必ず任務を果たせるように。」
「分かった。お姉ちゃん……がんばろ。」
「ええ。絶対に成功させて、生きて帰ろう。約束。」
「うん……!」
二人はそう約束を交わす。
そしてナティカはバーの裏へと回って言った。
そしてナティカはバーの裏へと回って言った。
「………………」
ルミは目を瞑り、自らの存在を希釈化させることに集中する。
スゥッ…………
たちまち、まるで幽霊のように消えた。
そして建物の壁を抜け、静かに、中へと入っていく。
そして建物の壁を抜け、静かに、中へと入っていく。
☆
「とはいえ、せっかくここまで計画を立ててきたのに、この期に及んで逃げるわけにはいかんだろう? 今、魔界はあちこちで紛争が起きていて、奴らも手が回っていない状態だ。今がチャンスなんだよ。」
「ですがリーダー、逃げるなら絶対に今ですよ。 もう魔界政府にここの情報が知れ渡ってる可能性が高いんです。モタモタしてたらホント、マズイですよ!」
「お前……。私達の計画のために、どれだけの血が流れてきている思っているんだ。そいつらの犠牲を無駄にするとでもいうのか。」
「ですが、死んでしまったら反抗も何も無くなってしまいますよ……。失敗だけは絶対に避けなくては。それこそ、彼らの死が無駄になります。」
「うるさいな。最終決断の権限は私にある。お前は逃げたきゃとっとと逃げろ。許可は出してやる。」
「リーダー……。」
部屋の中では二人のモンスターが会話をしていた。
リーダーと呼ばれていた方は、おそらくターゲットのアマダだろう。似顔絵とは違う顔だが、瞳の色だけは隠せていない。
よくある変装だ。
リーダーと呼ばれていた方は、おそらくターゲットのアマダだろう。似顔絵とは違う顔だが、瞳の色だけは隠せていない。
よくある変装だ。
ナティカとルミは、二人に気づかれないよう物音を立てずに、部屋の中へと忍び込んでいく。
「では、私は失礼させていただきます。リーダー、私は忠告しましたからね。……絶対、生きてくださいよ。」
「…………。」
もう片方のモンスターが部屋を後にしていく。
彼もまた、レジスタンスの一角だろう。
リーダーと対等に話せていることから、レジスタンスの中でも比較的、格上の存在なのではないかと推測できる。
ただ、今日のターゲットは彼ではない。
彼もまた、レジスタンスの一角だろう。
リーダーと対等に話せていることから、レジスタンスの中でも比較的、格上の存在なのではないかと推測できる。
ただ、今日のターゲットは彼ではない。
キイィ………ガチャン……
部屋が彼女一人になった。今が最大のチャンス。
ルミは一切の気配を消し、静かに、静かに、ターゲットの背後へと近づいていく。
ルミは一切の気配を消し、静かに、静かに、ターゲットの背後へと近づいていく。
「さて…………おい、誰かいるだろ。」
「!」
「貴様の魔力……『マナ』を感じる。姿は隠せていても、全ての生き物には命の源であるマナがあるからな。それがある限り、完全に姿を消すことが出来ない。」
「……。」
「答えろ!!!」
アマダが怒声を上げながら椅子から立ち上がり、魔法「ファイア」を背後に向けて放つ。
ボオオオオオオオオオオオッッ!!!
激しく燃え盛る炎。咄嗟に避ける。
ただ、ルミは集中を切らし、自らの姿を現してしまった。
ただ、ルミは集中を切らし、自らの姿を現してしまった。
「貴様、魔界政府の手先か? まだガキのようだが、実力はありそうだな。」
「あ……ああ…………」
「魔界政府め、こんなガキを送り込んでくるとはな。だが、ヤツらの思想に染まった以上、もう手遅れだ。せめて安らかに眠るがいい!!」
アマダが闇魔法「ブラッドアックス」を唱える。
巨大な斧を召喚して、敵を断ち殺す魔法だ。
巨大な斧を召喚して、敵を断ち殺す魔法だ。
「死ね!!!!!!」
ガキイイインッ!!!!
「ガハッ!」
斧が振り下ろす直前、アマダは真横に吹き飛ばされた。
横で身を潜めていたナティカが全力で体当たりし、斧の挙動をずらしたのだ。
横で身を潜めていたナティカが全力で体当たりし、斧の挙動をずらしたのだ。
「ルミに手を出すな! 死ね!!」
その勢いでアマダに覆い被さり、腰につけていた短剣を取り出す。
そして短剣を容赦なく勢いよく振り下ろす!!
そして短剣を容赦なく勢いよく振り下ろす!!
ガキンッ!
鋭い金属音。アマダはとっさに「シールド」を貼り、かろうじて短剣から身を守っていた。
「ふん、愚かな……そんな勢いに任せた戦い方で、私を殺せるわけがないだろう?」
チャキッ
瞬間、ナティカの目の前に、魔銃が二丁現れる。
魔法「ダブルタップ」だ。
魔法「ダブルタップ」だ。
「!!!」
パァアアアアンッッッッッ!!!!
「ヒッ……!!ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
咄嗟にナティカも「バリア」を張るも、目の前で発射された魔弾の破壊力に堪えきれず、吹き飛ばされる。
体が自由になったアマダは咄嗟に立ち上がり、もう一人の刺客、ルミの方を向く。
体が自由になったアマダは咄嗟に立ち上がり、もう一人の刺客、ルミの方を向く。
「んっ……?」
ルミの姿がない。この一瞬の間にいなくなった?
辺りを見渡す。逃げる……とは思えなかった。
絶対、どこかにいるはずだ。
辺りを見渡す。逃げる……とは思えなかった。
絶対、どこかにいるはずだ。
一瞬、ナティカの方を確認する。彼女は依然として床に倒れている。
おそらく瀕死だろう。
おそらく瀕死だろう。
音を立てず、目を瞑り、精神を集中させ、奴のマナの反応を探る。
「!!!! しまっ…!!」
上を振り向く。ずっと天井に張り付いてきたルミは、スティレットを構えて自由落下してきていた。もうすぐそこまで来ていた。
鋭い針が、迫る。
鋭い針が、迫る。
サクッ
脳天に針がめり込む。
アマダは音の無い声を上げ、あっけなくその場に崩れ落ちた。
致命傷だった。
アマダは音の無い声を上げ、あっけなくその場に崩れ落ちた。
致命傷だった。
「ハァッ………はぁ、ハァッ…………….」
咄嗟の隙をついて、瞬時に身を隠し、不意打ちで殺す。
これは前もってナティカに教え込まれていた暗殺方法だった。
これは前もってナティカに教え込まれていた暗殺方法だった。
「お、お姉ちゃん……!!!!!」
ルミがすぐにナティカの元に駆け寄る。
「ル………ミ………、大丈夫、死ぬほどの傷じゃない……。」
ナティカは確かに生きていた。
ただ、目は両方とも潰れてしまっており、もう何も見えていなかった。
ただ、目は両方とも潰れてしまっており、もう何も見えていなかった。
「おねぇ………ちゃん……」
「帰ろう……仕事は…………果たした……。」
ルミの肩を借り、足を引きづりながら、また森の中、長い道のりを帰っていく。
降りしきる雨の中。ルミは悲哀の涙を、ナティカは安堵の涙を流した。
降りしきる雨の中。ルミは悲哀の涙を、ナティカは安堵の涙を流した。
☆
「フン、ナティカは目をやられたか。」
「はい。どうされますか。」
「……もう少し使えるだろう。妹の方が目になってやれば良い。」
「承知しました。」
兵士が去っていく。
リーニャは考えた。
あの二人は、自分が想像していた以上の働きぶりをしてくれている。
そして日々任務をこなすごとに、驚異的なスピードで成長しているようだ。
あの二人は、自分が想像していた以上の働きぶりをしてくれている。
そして日々任務をこなすごとに、驚異的なスピードで成長しているようだ。
一体、彼らは何者なのか…?
☆
翌日。この日は珍しく、ナティカとルミに仕事は無かった。
ナティカが両目を失明する大怪我を負ったことが影響しているのだろうか。
ナティカが両目を失明する大怪我を負ったことが影響しているのだろうか。
「おねぇちゃんんっ…………。」
「なぁに、ルミ。そんな声出さないでよ。」
「だって……。」
「こうやって手で触れれば、あなたのことを感じられるから。別に今までと変わらない。心配しないで。」
「うぅ…………。」
二人はその日、一日中、泥のように眠り続けた。
明日はまた働かなければならない。その仕事に備えて。
明日はまた働かなければならない。その仕事に備えて。
少しでも長く、生き延びるために。
それが、死んだ父親のためにもなると信じて。
それが、死んだ父親のためにもなると信じて。
☆
玉座の間で、リーニャと兵士が話をしている。
「しかしあいつらはよくやってくれているな。捕まえてからもう2ヶ月、一度もミスを犯さずにここまで任務をやり遂げている。」
「はい。ナティカは目を失明しましたが、妹の方のサポートもあり、変わらぬ仕事ぶりを発揮しています。」
「しかし一体何者なんだ? 並のモンスターではない。あいつらの出自は知っているのか?」
「いえ。奴らは頑なに、自分の出生を話そうとしないのです。」
「………少し調べてみる。お前はもう帰れ。」
「はっ。失礼します。」
それからリーニャは城の図書館に籠り、古代史に関する書籍を読み漁り始めた。
なんだか……妙に、胸騒ぎがする。
☆
「ふむ……。」
3時間ほど経って気になったのは、「ネダ」という部族に関する記述だった。
『ネダ族の出自はデビルマウンテン最北部。四千年ほど前から、誰も立ち寄らないような厳しい山岳部に住んでいた。ただ、近隣に存在していた「レーベ」という王国の兵士と関係を持ち、そこから、レーベの王国を支える影武者として、国と共に繁栄した。
彼らはレーベの「暗部」を担う一族だった。
暗殺・処刑・諜報……全てにおいて、彼らは完璧な仕事ぶりを発揮した。
彼らは身を透明にする技術を持っており、その力で、王国の勢力を瞬く間に伸ばしていったのだ。』
暗殺・処刑・諜報……全てにおいて、彼らは完璧な仕事ぶりを発揮した。
彼らは身を透明にする技術を持っており、その力で、王国の勢力を瞬く間に伸ばしていったのだ。』
「…………。」
『だが王国の繁栄が頂点に達した時、厄災が起こった。突如、王国に死の雨が降ったのだ。その雨は、これまでネダが殺した怪物達の血が混じった、有毒の雨だった。
その雨に打たれた国民は、皆、毒に犯され死んでいった。そうして、王国は滅亡の一途を辿った。』
その雨に打たれた国民は、皆、毒に犯され死んでいった。そうして、王国は滅亡の一途を辿った。』
「…………。」
リーニャは一晩中、ネダに関する書籍を探し、読み漁った。そして……
「…………!」
一つの記述が、目に飛び込んできた。
☆
翌日。ナティカとルミは暗殺の任務を終わらせ、いつものように城の自室で休んでいた。
「疲れた……いつまで続くんだろう、この生活。」
「分からない。もし出来るのなら……………。…… っ!! シッ。」
「!」
ガララララッ
「おっと、失礼したな。」
「リーニャ…………様……」
魔界女王リーニャ。2ヶ月前に殺されかけた時以来の対面だ。
「最近のお前達の活躍はよく聞いているぞ。こちらとしても非常に助かっている。」
「…………ありがとうございます。」
「ただ、疲れているだろう。今日は特別に、城の露天風呂に案内してやる。ついてこい。」
ナティカとルミは、顔を見合わせる。
どうして兵士ではなく、女王が直々に私達のところへ……?
どうして兵士ではなく、女王が直々に私達のところへ……?
ただ、訝しんでも仕方ない。
ルミは目の見えないナティカの手を取り、一緒に立ち上がった。
ルミは目の見えないナティカの手を取り、一緒に立ち上がった。
「ありがとうございます。嬉しく思います。」
「ああ…………じゃあ、ついて来い。」
そして二人は、リーニャの後ろをテクテクとついていった。
☆
カッ、カッ、カッ…………
リーニャの高い足音が、夜の魔王城に響き渡る。
ルミはナティカの手を引き、暗い城内を進んでいく。ナティカは目が見えなくなってからも、ルミのサポートもあり、まるで目が見えているかのように日々の任務をこなしていた。魔法能力が高く、敵のマナの気配が掴めるのもその一因にはあった。
ルミはナティカの手を引き、暗い城内を進んでいく。ナティカは目が見えなくなってからも、ルミのサポートもあり、まるで目が見えているかのように日々の任務をこなしていた。魔法能力が高く、敵のマナの気配が掴めるのもその一因にはあった。
ガララララ……
「ここだ。時間は30分だけだが、自由にしてもらって構わない。」
「ありがとうございます。」
普段は、部屋に備え付けの小さなお風呂にしか入れなかった。
それでも二人にとっては十分な贅沢であったが、まさか温泉に入れるとは想像だにしていなかった。
それでも二人にとっては十分な贅沢であったが、まさか温泉に入れるとは想像だにしていなかった。
「よし、服を脱げ。」
「は、はい……。」
まさか……女王の前で、全裸になる日が来るとは思っていなかった。
シュル、シュルル…………
16歳と13歳の身体は日々の任務で傷つきボロボロだったが、誰が見ても驚くほどに、その身体はしなやかであり、ガッシリともしていた。
年齢には似つかわしくない彼女達の苦労が、そこには刻まれていた。
年齢には似つかわしくない彼女達の苦労が、そこには刻まれていた。
⭐︎
チャポンッ……
露天風呂は魔王城の最上階に位置しており、そこからは魔界の大自然が広がる絶景を見渡すことができた。
「あったかい……。気持ちいいね、お姉ちゃん。」
「うん。とても……。」
広い露天風呂の真ん中で、二人はゆっくりと身を寄せ合った。
ホッとした表情で、これまでの仕事で溜まりに溜まった疲労を、ゆっくりと落としていく。
ホッとした表情で、これまでの仕事で溜まりに溜まった疲労を、ゆっくりと落としていく。
「…………どうだ、湯加減は。」
「はい、とても……良いです。ありがとうございます…………」
夢心地な声でナティカが答える。
「そうか………………」
寒空の下。
少女が二人、普通の女の子に戻って、温かな湯を楽しんでいる。
少女が二人、普通の女の子に戻って、温かな湯を楽しんでいる。
その後ろで、リーニャは二人を見ながら、額を流れる冷や汗を隠すので精一杯だった。
「……………………………」
雪が降り始める。風が、強くなっていく。
☆
翌日。
「おはよう、お姉ちゃん。」
「うん、おはよう、ルミ。」
いつもよりぐっすりと眠れて、明るい表情を見せる二人。
「昨日のお風呂、よかったね。また入りたいね。」
「そうだね。これからもお仕事、がんばろっか。」
「うん!」
そうして、元気に身支度を整える二人。
そこに兵士がやってくる。
そこに兵士がやってくる。
ガララララッ
「おい。仕事だ。今日は少し遠出になるぞ。」
「はい、承知しました。」
そうして二人はいつものように馬車に乗せられ、任務に出かけた。
この日は、ドス黒い曇り空だった。
☆
カラカラカラカラカラカラ………….
「…………」
「今日は、どこに行くんだろう。」
「分かんない。私達は、与えられた仕事をするだけだから……。」
「……ギュッてして。」
「うん。」
腰につけた短剣はピカピカに磨かれている。
結果を残さなければ死ぬ。
魔界政府に捨てられることは、今の自分達にとって最も避けなければならない。
生きるためには、任務を成功させ続けなければ。
結果を残さなければ死ぬ。
魔界政府に捨てられることは、今の自分達にとって最も避けなければならない。
生きるためには、任務を成功させ続けなければ。
ヒュウウウウウウウウウウ………………
どんどん寒さは増してくる。
誰も通らない険しい山脈のふもとを馬車は走る。
誰も通らない険しい山脈のふもとを馬車は走る。
(………寒いね)
そう、ルミは言おうとして、やめた。
あまりネガティブなことばっかり言っていても、お姉ちゃんを困らせるだけだ。
そう思い、何の気なしに、ルミはナティカの方を向いた。
あまりネガティブなことばっかり言っていても、お姉ちゃんを困らせるだけだ。
そう思い、何の気なしに、ルミはナティカの方を向いた。
その時だった。
「!!!!!!! 逃げてっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ナティカの叫び声が馬車の中に響き渡る。
ルミは彼女の手に強く押し出され、馬車の窓から吹き飛ばされた。
ルミは彼女の手に強く押し出され、馬車の窓から吹き飛ばされた。
瞬間、馬車はカッと強く輝き、そして炸裂した。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!
突如大爆発を起こした馬車はあっという間に木っ端微塵に。
馬車の運転手の安否は分からないが、おそらく即死だろう。
馬車の運転手の安否は分からないが、おそらく即死だろう。
ルミは馬車の爆発から間一髪免れたが、ナティカの姿は見当たらない。
地面に転がり倒れたルミは、燃え盛る馬車を見つめ、叫んだ。
地面に転がり倒れたルミは、燃え盛る馬車を見つめ、叫んだ。
「お、お姉ちゃん……!!! お姉ちゃん、お姉ちゃん!!!!」
「…………ウッ…….……………」
かすかな呻き声。
燃え盛る炎の中から、ナティカはかろうじて這って出てきた。
全身は炎に包まれて燃え、顔は見るに耐えない様相となっている。
燃え盛る炎の中から、ナティカはかろうじて這って出てきた。
全身は炎に包まれて燃え、顔は見るに耐えない様相となっている。
「お、お姉ちゃ、ア………………」
もう助からない。彼女の姿を見て、ルミは本能で察した。
それでもルミは、ナティカを絶対に助けようと走り出す。
それでもルミは、ナティカを絶対に助けようと走り出す。
その時、背後から声が聞こえた。
「動くな。さすがに死んだと思ったんだが……。」
「!!!!」
昨日の夜も聞いた声。
振り向くと、なぜかリーニャがそこには立っていた。
彼女の左右には、背の高い2人のソーサラーも控えている。
彼女の左右には、背の高い2人のソーサラーも控えている。
「リーニャ…………様……??」
「お前らはネダ族だったんだな。最初からそう言っておけば、こんな結末になる前に安らかに殺していたものを。」
「…………!」
「ネダの『姿を希釈させる能力』は、生来のものではなく、生まれた時に族長に仕込まれるのが伝統。その証拠を昨夜、しっかりも見せてもらったぞ。」
ナティカとルミのお腹には、非常に大きな蛇のような手術の跡がある。
二人とも物心つく前からあったものなので全くその事実を知らなかったが、それこそがネダ族の「証」なのであった。
二人とも物心つく前からあったものなので全くその事実を知らなかったが、それこそがネダ族の「証」なのであった。
「呪いはここで封じ込めなくてはならない! 魔界に厄災をもたらす愚か者が!!!」
怒りの形相で、リーニャがルミに近づいていく。
「許さない……! 許さない……!!!」
ルミが怒りに震えながら、スティレットを構える。
「ダ……………メ…………………………に、げ…………て………!!」
「!!!」
ナティカが、声にならない声をあげ、ルミに警告する。
「貴方は……ここで、しんじゃ………だめ………」
「お、お姉ちゃん……!!」
「貴方は……ネダ族の希望…………絶対に、ここで終わっては………………!!!」
両の脚は吹き飛んでおり、血がドロドロと地面を流れている。
顔の器官は、もう使い物にならない。
でもナティカには、ルミの気配が分かる。
顔の器官は、もう使い物にならない。
でもナティカには、ルミの気配が分かる。
「生き…………て…………!! 行け!!!!!!!!!!! ルミ!!!!!」
その瞬間、ナティカの左腕から赤い光が溢れる。
ネダ族に伝わる、最終奥義。
ネダ族に伝わる、最終奥義。
「……!! 貴様、何を……!」
ナティカは、光輝く左腕を、右手に持ったナイフで躊躇いなく切り落とす。
溢れる鮮血のシャワー。
それが天に向かって噴き上がり、辺り一面に降り注いでいく。
それが天に向かって噴き上がり、辺り一面に降り注いでいく。
「ネダを舐めるなよ。我らは影。光にはいつも影がついて回ることを忘れるな。」
ナティカは、抑揚のない声で話す。
目には、一点の光もない。
目には、一点の光もない。
「あ……あ…………クソ!」
「うわああああああ、ガアアアアアアアアッッ……!!!!!!!」
魔界軍ソーサラーは、血のシャワーを浴び、断末魔をあげながら崩れ落ちる。
体はあっという間に酸性の毒に蝕まれ、グチャグチャに腐り始める。
体はあっという間に酸性の毒に蝕まれ、グチャグチャに腐り始める。
「チッ。こんなもの!!!」
リーニャはホワイトドラゴンに姿を変え、周りが凍てつくほどの冷気を発する。
血の雨はその冷気で固まっていく……かに見えたが、雨はその冷気の壁を突き破って、リーニャの体へと向かっていく。
血の雨はその冷気で固まっていく……かに見えたが、雨はその冷気の壁を突き破って、リーニャの体へと向かっていく。
「クソ!!」
たまらずリーニャは一旦身を引く。
リーニャが退いていくのを見て、ナティカは最期の声を振り絞る。
リーニャが退いていくのを見て、ナティカは最期の声を振り絞る。
「ルミ。生きてね。生きて。生きて……!! 愛してる!!!!!!」
降りしきる血の雨が、ルミの体を優しく濡らす。
ルミは涙を流しながら、ナティカのもとを離れ、遠くへ、走る。
ルミは涙を流しながら、ナティカのもとを離れ、遠くへ、走る。
「さよなら、おねぇちゃん……。大好き。これからも、ずっと、ずっと…………………」
ピチャ、ピチャッ……………
ナティカの血が降り注ぐ中、ルミは必死に駆けていく。
当てはない。今はただ、遠く、遠くへ…………。
当てはない。今はただ、遠く、遠くへ…………。
リーニャは、どんどん遠くなっていくルミを恨めしく睨みつけ、去っていった。
「パパ……。これで、良かったんだよね…………」
朧げな意識の中、ナティカは空を見上げる。
血で染まった空は、キラキラと輝いていた。
血で染まった空は、キラキラと輝いていた。
今までに見たことのない素晴らしい景色。
暖かい風が、頬を伝う。
心地よい。体が軽い。
虹を渡る。
暖かい風が、頬を伝う。
心地よい。体が軽い。
虹を渡る。
冬の終わりは、近い。
⭐︎
その後のルミの行方は明らかになっていない。
リーニャは彼女の行方を懸命に探したが、結局見つかることはなかった。
道半ばで死んだのか、魔界のどこかに隠れ住んでいたのか、もしくは人間界へ逃げ延びたのか。それは誰にも分からない。
リーニャは彼女の行方を懸命に探したが、結局見つかることはなかった。
道半ばで死んだのか、魔界のどこかに隠れ住んでいたのか、もしくは人間界へ逃げ延びたのか。それは誰にも分からない。
ただ、伝承の通りなら、ネダの呪いはいつか訪れるはずだ。
呪いはまだ解けていない。
呪いはまだ解けていない。
ネダは、いつだって魔界政府の背後にいる。
ヨージョはそれを理解しながらも、まだ、振り返ることしない。
今は、まだ………………
今は、まだ………………
END