第四話(リュウセイコスモ氏)
セト「あの時は起動実験の成功と突然の事故で気が動転してしまっていて気づけなかったのだが、我々の星ラクスを飲み込んだ洪水事件。あれはおそらく南極融解だけが原因ではない、と俺は推測している。」
ゼンガー「自分もつい先ほどその結論にいきついたところですよ、艦長。」
ゼンガーはほっと胸をなでおろした。どうやらこの戦艦の艦長はそこまで愚か者ではなかったようだ。
セト「察しがよくて助かるよ、まあ最もこの結論にいきついたのは俺が最も遅かったようだがね。」
ゼンガー「・・と、いいますと?」
セト「言葉の通りさ、クルーはみんな俺より先にこの推論をだしてたってわけさ。・・・・あ。」
ゼンガー「?・・・どうしたんですか?」
セト「いや、あいつを忘れてた・・・。」
ゼンガー「あいつ?」
セト「リュウセイだ、多分あいつだけは南極融解が原因だと思い込んでいる。ったくあの馬鹿は・・・。」
ゼンガー「・・・・。お言葉ですが、艦長。なぜあのような腑抜けた奴がこのハガネのクルーに選ばれたのですか?」
そう彼ことゼンガーはプロジェクト開始当時から疑問を持っていた。セトやさやかをはじめとする他のハガネクルーはみな確かに優秀なのだ。指揮に優れている
もの、メカニックに詳しいものなど戦艦運行に必要な要素は全て揃っているというのに、なぜわざわざリュウセイが選ばれたのか?現にリュウセイのせいで企画
がおくれたことも何度もあった。
セト「これまた難しい質問だな。」
ゼンガー「今更文句もいいませんし、いえませんが、あいつは正直足手まといな気がするのですが・・・。」
リュウセイに対する不満、苛立ちが隠せないでいた。シーホースセトという男がこの計画をどう思っているかは知らない。だがそれでも艦長の任についたからには最低限の責務は果たしてもらわねばならない。ゼンガーはこの男の覚悟、それを知りたかった。
セト「約束・・・かな。」
聞き取れない程小さい声でつぶやくセト。
ゼンガー「今・・なんと?」
セト「いや、なんでもない・・・。確かにあいつはさ、ゼンガーみたいに優秀な奴からすれば足手まといなんだろうけど俺みたいにすぐネガティヴになりがちな
男にはあいつみたいな奴が必要なんだよ。他の人にはわかんないかな・・・。あいつがいるから俺がいる、だからこの計画にもこれからのことにも俺はあいつと
一緒に立ち向かっていくつもりさ。だれにも文句はいわせない・・・。」
そう言い放つセトの目には彼のしらない、しかしただならぬ何かが宿っていた。どうやらゼンガーには知りえないなにかがリュウセイ・コスモの中にはあるらしい。
ゼンガー「そうですか・・。出すぎた発言、申し訳ありませんでした。」
セト「いや、俺もお前の立場なら同じことをおもってただろうしな。なんでも言ってくれ、おれも何かあったら相談させてもらう。リュウセイには相談できないこともお前なら相談できる。この艦のクルーはみんな必要なんだよ。」
ゼンガー「ご期待に沿えるよう全力を尽くします。・・・・ところで艦長、私を呼ばれたわ用件とは?」
セト「おっと!そうだったな。急にシリアスな話題になるんだが・・・、ハガネの燃料及びクルーの食料の問題だ。」
今回のハガネの離陸及び大気圏離脱は起動実験の名目で行われたものである。流石に長期間の運行を目視して建造された戦艦だけあって予備の燃料はまだある程
度備蓄はあるが、問題は食料だった。こちらも燃料と同じくある程度のたくわえはあるが、もう楽観できるほどの量ではなくなってしまった。あとニ週間もすれ
ば新たな居住星云々言う前に餓死してしまう、死んでも死にきれぬというものだ。
セト「見つかるわけもないとは思うが、補給の出来るところをみつけたいの だ。ま、ラクスに代わる新たな星が見つかれば話は別だがな・・・。」
ゼンガー「とはいっても自分はどちらかといえば戦闘に秀でている方なので、そちら方面のことは聞かれてもなんともいいがたいですね・・。」
ゼンガーだけではない、この戦艦にいるだれもが答えられないだろう。まさしく「神のみぞ知る」という奴である。
セト「ああ、すまない。こんなことは聞いても仕方ないというのはわかっているんだがな・・・。・・・・・・・・さがってくれ。」
ゼンガー「失礼します」
セト「ああ。」
退室するゼンガー。艦長としての顔をくずしたセトは心底疲労した顔をしていた。ぐったりと大きなイスに背を預けた。
セト「神とやらよ、一体どこまで俺たちを試せば気がすむんだ・・・くそったれめ・・・。」
宇宙の無限の闇がさらに彼にプレッシャーを与えていた・・・。
そのころブリッジにはセトと同じように疲労と不安にかられたクルーが緩慢な動きで作業をしていた。ハガネクルーはもうかれこれ10日間も起床、レーダー観察、睡眠のサイクルをくりかえしていた。
「どうせもう無理だ・・・。自分たちはここでこの船で朽ち果てる・・。」
そんな重い空気がブリッジだけでなく、艦内中にすら流れていた。
しかし、そんな空気のなか一人レーダーを食い入るように見つめる男がいた。リュウセイ・コスモである。このあきれるほどの熱血さ、むこうみずさ、これこそセトが彼をクルーにえらんだ理由のひとつである。
彼だけがこの10日間当番の時は休むことなく熱心にレーダーをにらんでいた。その一方で他のクルーはみな腕にコントロールパネルの刺青が入るほど眠りこけてるというのに・・・。
宇宙漂流11日目も何の成果も得られぬまま終わりを迎えようとしていたそのときだった。
リュウセイ「!・・これってもしかして・・・熱源反応?か?」
次の瞬間、思わずリュウセイは叫んでいた。
リュウセイ「おい!おきろ!みんな!熱源反応だ!」
クルーA「ん・・・ねつげんはんのぉう?・・・・ってまじかよ!?」
リュウセイ「マジもマジ!大マジさ!」
言うが早いかリュウセイは艦内放送用のマイクを握り、叫んだ。
リュウセイ「おい!おきろおおおおおおお!レーダーに熱源反応ありぃぃぃい いいいいいいいいい!!」
十分後・・・・。全てのハガネクルーは期待をよせながらブリッジに集まっていた。
クルーB「映像、でます。」
ぴぴっ
メインモニターにうつしだされたそれは人間一人がちょうど入れるくらいの白い樽状の形をしていた。
さやか「救命ポッドかしら・・・。」
リュウセイ「わかんねえけど、回収してみようぜ!なにかあるかもしれねえじゃんか!」
さやか「落ち着きなさい、リュウセイ。セト艦長、どうします?」
セト「そうだな・・・。よし!回収急げ!」
リュウセイ「了解!へへ、やっぱそういうと思ってたぜ!」
しばらくして救命ポッドは回収された。
ゼンガー「さて、鬼がでるか蛇がでるか・・・。」
プシューーーーッという音をたてて開かれる救命ポッド。
リュウセイ「なんだ、こりゃ・・・?」
そこには腰ほどもあるきれいな桃色の髪をした10歳くらいの幼い少女が眠っていた・・・。