図書館での静かな一時 ◆xzYb/YHTdI
正義の味方って何だろう。
時々そう思うこともないこともないこともないこともない。
ここまで言うってことはそんな別に問題視している話でもないっつーわけで。
しかしながら、完全に忘却に送るということも無理なだけ。
端的に言うとどうでもいいんだけど。
場所も都合よく図書館だし宗像さんには悪いけど、ちょっと脇道に反らせてもらう。
えーっと…………、あぁ、あったあった。国語辞典。
【せ】【せ】【せ】……。
せい‐ぎ【正義】
1 人の道にかなっていて正しいこと。「―を貫く」「―の味方」
2 正しい意義。また、正しい解釈。「四書―」
「其実はあたの語の―に非るなり」〈西村茂樹・明六雑誌三三〉
3 人間の社会行動の評価基準で、その違反に対し厳格な制裁を伴う規範。
ということらしい。
さて、確かに正義の概念はこうだと思う。
だけど結構思うけど辞書っていうものは意外と曖昧で、大切なことが書いていない。
人と言う物を見ていない。
その一の「人の道にかなっていて正しいこと」なんていわれても、人の道って何だよ。
ってはなしだ。
ことのついでに辞書で調べてみても「人間としてふみ行うべき道すじ」ということしかかいていない。
だからなんだよ、「人間としてふみ行うべき道すじ」、ってさ。
例えばの話だけどさ、えっちなことはどうなんだ?
生々しい話、生殖活動は生物にとって必須とも言わないが、大切なことなんじゃないか?
じゃあそれをしない人は、「人間としてふみ行うべき道すじ」を歩んでいない。ようは【正義】を歩んでいないことになるのか?
これはさすがに極端だとしても、
もう一度例えばなしで、月火ちゃんと兄ちゃんが喧嘩をしていたとしようかな。
これを黙って見て二人が起こしたことなのだから二人だけで鎮まるのを見守るという考えが正しいのか、
当たり前のように、二人の仲を取り持とうと動いた方が正しいのか。
それは、あたしの気持ちの匙加減で変わるんじゃないのか?
どっちにしたって間違っているとは一概には言えないけど、選んだほうが正しいというわけでもない。
そんな曖昧なものが「人間としてふみ行うべき道すじ」なのか?
そんな抽象なものが「人間としてふみ行うべき道すじ」なのか?
殺人。普通に考えたら、外道だろう。
人間としてふみ行うべき道すじ。とやらもきっと外れている。
けど、この殺し合いの場にしたらどうだ?
それが、『ルール』である限り、人を殺さないのは『ルール違反』になっちゃうのか?
殺人を犯さない者が、『違反者』。
じゃあ、あたしは、人を殺さないと【正義】になれないのか。
…………そんな風には思わない。
ちょっと話しかわるけど、さっき、宗像さんは、
人がいない時は、必ずルールを守る必要はないんだよ。
図書館で静かにするのは、周りの人間が読書をしているのを邪魔しないためなんだ。
最低限のマナー…とでも言うのかな?例えば、信号が赤の時だけど車が一切通らないから渡る…というのがあるだろう?
信号があったら止まるのがマナー、でも車が来なかったらそのルールやマナーは意味が無いんだ。
何て事を言っていた。
それはその通りだと思う。実際あたしだって似たようなことやったかなぁなんて思ったりする。
これは罪悪感がそこに存在しないから。
誰にも気にされなかったら罪悪感も何もないだろう。
こんな言葉がある、「赤信号、みんなで渡れば怖くない」。
この言葉は何に対して恐れているのだろう。
勿論、車が第一だと思うよ。
そりゃあ運転手のほうだって、列になって横断されたら止まらざる負えなくなっているかもしれない。
けどさそれは一人で渡ったてどうせ変わんないじゃん。止まる人は止まるし、止まらない人は止まらない。
むしろさ、列になって渡った方が苛立ちを与える確率が高くなると思うんだ。
塊として、自分が特定されやすくなると思うんだ、だってそういう時の皆って大抵あたしの知り合いだったりするだろう?
だからばれやすくなると思うんだ。
ここまで言ってさ、そこまでして皆で渡りたいと思う?
あたしは思わない。つーかもとからやってねぇけど。
それはともかく、だからあたしはこう思うんだ。
ここで恐れているのは、『ルール』なんだよ。
確かにさっきも言ったけど、ばれやすくはなるけど、同時に究極の免罪符的なものを手に入れる。
『だって皆がやっていたから』
『だって皆がやろうと言うから』
『だって皆もやっていたから』
これに限るだろう。
例え『ルール』に外れていても、『皆がやっているんだから』。
先ほどの宗像さんの言っていた話と同じで、
『皆とやっているんだから』罪は薄れる。そしていつしか罪悪感は消滅していく。
怖い。
正義の味方を自称するあたしにとって、セイギノミカタのあたしにとって、それは怖い。
そんな世界は嫌だ。
こんな世界は嫌だ。
怖い話だ。恐ろしい話だ。嫌な話だ。悪い話だ。
話を戻して、【正義】の話。
さて、『ルール』は殺し合いをしろ。
だから殺し合いをしなければ、『違反者』になる。
それは違うとあたしは言った。
根拠があるかと言われたら、見せることはできない。
いやいや、だって形なんて無いだろう、あたしの心に。心臓なら形はあるけど、心は無い。
つまりは、こういうことなんだ。
人の道にかなっていて正しいことはこういうことなんだ。
意味もなく、根拠もなく、具体性もないけど分かること。
置き換えるなら、『じょーしき』。
そういうことなんだろうなぁ。
まぁ、だから何だという話だけどさ。
だって現状何も解決してねーじゃん。
『じょーしき』って何だよって、最初と同じ所に戻るだけで。
ちなみに教えてあげる。あたしにとっての『じょーしき』は、人は人を殺さない。
だが、例えば宗像さんはどうなんだ?
あの人は最初、白髪の女の子に何をした?
そう―――――――――刀で腹を刺した。
全備に敵意を放って。
全力に害意を放って。
全快に殺意を放って。
あの女の子を刺した。
気が狂ったのか元々なのか生憎知らんけど、
宗像さんは、殺そうとした。
ここではあたしの『じょーしき』が通じない。
というよりは『じょーしき』が変わったのだ。
そんな殺し合い《程度》で変わる『じょーしき』でさ、【正義】を定義されてもこっちが困るんだよね。
だって正義の味方を名乗れねーじゃん。
「人間としてふみ行うべき道すじ」も中々くだらねえ。
【正義】っつーのも超絶にくだれねえ。なんて思っちまうんだよなぁ。
しかもあたしは別に正義じゃねーし。
正義の『味方』だし。もっと曖昧なんだよなぁ。
ようはあたしは誰の味方で、誰の敵で、誰の援護をして、誰を撃退すればいいんだろう。
っま、なんて考えたところであたしはこの燃えるハートに身を任せるだけなんだけどな!
だってさぁ、それがあたしだし。
あたしがこうでなきゃ、だれがこうするんだよ!
ふっ。今回ばかりは兄ちゃんに出番をぶん取られるわけにはいかねえからな。
正義の味方の名前が荒んじまうぜ!
ん? テンションいきなり変えるなって?
っは、愚問だな。
最初に言っただろう、基本的にどうでもいいんだって。
だからこの話を突然ぶった切ったって、まるで問題ないね!
後は勝手に自分で考えな。
はいはい、真面目な話は店仕舞いだ。
きっと宗像さんだって、あの生真面目そうな顔通りなんかメンドクセ―こと考えてるんだろうなと思ったから合わせただけだしな。
じゃあ図書館の散策をつづけようか!
~~~~~
広ッ!
改めてみるとスゲーでけえな。
いや、分かってたけどデケーな。
こりゃ一冊一冊見る暇ねぇぞ。
これでも優等生キャラだからな。そのぐらいわかる。
いっつも、兄ちゃんがあたしらと自分を対比してただろう?
………いつの間にこんなバカみたいなキャラになったんだ?
まぁいっか。
探そう探そう。
吸血鬼。
この本の題名は「よくわかる現代怪異」。
そのままである。
なんとなく目に留まった。手が進んだ。頭が回った。
何でだろう。
…………そういや兄ちゃんも吸血鬼っぽいよな。
あたしの地獄の連打を耐えきったし。
なんかいつのまにか筋肉質だし。
前をそこまで覚えてないけど八重歯だし。
…………あれ? 本気で吸血鬼だったりする?
何てね、んなわけねえじゃん。
さすがにこの『じょーしき』は変わんねえだろ。
……………。
そういや、兄ちゃんは殺し合いに参加してんのかな?
そういや、月火ちゃんは殺し合いに参加してんのかな?
まぁ、そう簡単に二人とも死ぬことないと思うが。
つーかこの兄妹で一番まともなのはあたしだよ?
いたら、どうしようか。
殺されたらどうしようか。
まぁ、んなことねぇよな、二人に限ってさ…………?
とと。
流石にこれ以上は時間の浪費つーか無駄だな。
これはディパックに仕舞っておいて後で見よう。
なんかこの運命的な本を捨てるのももったいないからな。
~~~~~
さあて、これは何だろうか。
『バトルロワイアルの死亡者DVD1~10』。
うん、悪趣味だ。
悪趣味すぎて笑えねえ。
悪趣味すぎて燃えてくるぜ。
正義の血が燃えだす。
阿良々木の血が燃えだす。
ここはビデオ・DVDコーナーの一角。
テレビは何台もあり、DVDプレイヤーもある。
まぁ、後で見るとするか。どいつが悪かは分かるしな。
きっとみていて楽しいもんじゃねえことは確かだが。
~~~~~
…………とまぁ、こんな感じで時間は過ぎていき、
「やあ火憐さん。とりあえず戻ってきたよ」
宗像さんが帰ってきた。
そう、放送を間近に迫ってきたんだ。
さて、どう動くか。
ていうか、そろそろ警察である両親も起きてくるころだからさ、異変に気付いて上手くやってくれるさ。
なんたってあたしらの親なんだからな。
だからそれまでの時間稼ぎでこっちは一生懸命正義を行使すなきゃいけないな。
さて、どんとこい!放送!
【1日目/早朝/F-7図書館開架1階】
【阿良々木火憐@物語シリーズ】
[状態]健康
[装備]
[道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) 、「よくわかる現代怪異@不明、バトルロワイアル死亡者DVD(1~10)@不明」
[思考]
基本:この実験をぶっ壊す。悪人はぶっ飛ばす。
1:放送を待つ
2:放送の後、宗像さんと情報交換
3:DVDを再生して、【悪】が分かれば、そいつをぶん殴る
4:白髪の女の子と合流したい
5:本も読みてえな
【よく分かる現代怪異@不明】
図書館の数多い本の一つ。
怪異について軽く紹介している小説。
詳しいことはあまりの載ってないので、
気になって詳しく知りたければ、そういう図鑑か何かを見なければいけない
【バトルロワイアル死亡者DVD@不明】
図書館においてあったDVDの一つ。というか一固まり。
当バトルロワイアルで、死亡した参加者の死亡直前の光景を、
監視カメラで録画された映像が刷り込まれている。
声が入っているかは不明。
なお、殺された順番にナンバーが振られている。
(「1」が
阿良々木暦、「2」が真庭喰鮫、…………「10」が
匂宮出夢となる)
最終更新:2012年10月02日 08:51