泰平に向けて ◆mtws1YvfHQ


 異様、ではなく異常な存在感。
 その男を表す言葉はたったそれだけで事足りた。
 しかしあえて言うならばそれはそう、王、だろうか。
 理事長室奥の椅子に座り、その前の大きな机の上に足を乗せながら腕組みする姿は傲慢。
 見下すような視線と醸し出される威厳はまさに、古の暴君。

「やっと来たか……俺を待たせるとは鈍い奴らだ」

 そこにその男が居た事を知らない者からすれば酷く理不尽な物言い。
 しかしそれもまた型に嵌ったようにしっくりとくる。
 目を細め、鼻を鳴らす。

「まぁ良い。ここで長話している時間はない」

 そう言って、体の何処にどう力を入れたのか、足を乗せていた机の上に立っていた。
 だが威圧感は何ら変わらない。
 精々元は低かった目線が高くなった程度でむしろ、より一層偉そうに、より一層威圧感が増して見える。
 そして、この場にいるならある筈の首輪がない事が分かった。

「何も言わないか……では先に名前位名乗っておこう」

 見下すような態度のまま、偉そうに、男は言った。

「俺の名は都城王土。貴様らには特別に、未来永劫この名を頭に刻む事を許す」



 男の名乗りが終わった瞬間二人は動いた。
 真庭蝙蝠は十字架をクナイか何かのように真っ直ぐ投げ、更に天井へと跳ぶ。
 前と上からの同時攻撃。
 分かり易くも有効な攻撃手段に対し、悠然と都城王土は腕組みを解く。
 中、

 パン。
「!」

 乾いた銃声が一つ鳴り、王土の足元の机に穴を一つ作った。
 供犠創貴が咄嗟に引き抜き、狙いもろくに定まっていない状態で撃ったのだから当たる筈もない。
 しかし一瞬であれ、王土の注意が十字架と蝙蝠の二つから逸れた。

「きゃはきゃはっ!」

 頭上から響く笑い声。
 目前に迫る十字架。
 王土は咄嗟に十字架を上に弾くが、蝙蝠には当たらずしかも腕の範囲内。
 躊躇いも無くその頭に拳が振り下ろされた。
 鈍い音が一つ鳴り、その体は吹き飛ぶ。
 理事長室の入口の方へと派手に、来賓用に置かれていたらしい、テーブルを壊してなお止まらず、幾らか転がった末に止まった。
 丁度良く拳銃を持っていた創貴の足元で止まった。

「! ……テメェ」
「チッ」

 不機嫌そうな声を出す蝙蝠を無視し、しかし相変わらず偉そうに、舌打ちをしながら王土は立ち上がった。
 両手を頭の横に上げているが、見るまでもなく形だけの物だと分かる。
 形だけの降伏。
 それに創貴の目の色が僅かに変わったが、

「行くぞ蝙蝠……いや、一応その辺りを見てから来てくれ」

 王土の反応を見つつ指示を出すだけに留まった。
 一瞬顔を歪めるも、ブツブツと文句を言うだけで机の陰に消えた。
 待つ事数秒。

「何かあったぞ」

 竹刀を入れるような袋を持って立ち上がった。
 中に何か入っているようで、僅かに形が見え隠れしている。
 形状としては刀か何かか。

「他には?」
「なさそうだ」
「じゃあ来い。こいつが何か持ってないか調べるぞ」
「なんでおれが……」

 形ばかりの文句を口にしながらも、壁に突き刺さった十字架を抜いてから、王土の体を調べ始めた。
 不審な物はすぐに見付かった。
 蝙蝠がズボンのポケットから引き出したのは、携帯電話。
 取り出された瞬間、王土の口元に小さな笑みが浮かぶ。
 それを拳銃を向けたままの創貴は見逃さない。

「捨てろ」
「あん?」
「それがここで役立つとは思えない。捨てるのが無難だ」
「へぇ、ふぅん……分かった」

 そう言いながらも少しの間は名残惜しそうに弄んでいたが、窓に向かって放り投げた。
 易々とガラスを突き破り、下へと落ちて行く。
 だが誰もそれを目で追わない。

「…………」
「…………」
「…………外に行く方が都合が良いだろう? 行くぞ」

 偉そうに言う王土の言葉に、二人は従った。



 と言っても、形だけは変わらず進行方向に背を向けた蝙蝠が先頭に、後ろから拳銃を向けられた王土が二番、最後に創貴の順。
 だが形だけに過ぎなかった。

「さて、何から話すか……まず敵意がない事を示す為に俺が奴に協力させられている理由から話すべきか?」
「きゃはきゃは、手短に頼むぜ?」
「予想以上に不愉快な笑いだな。息をするぐらいは許してやるから貴様は黙っていろ――俺の唯一無二の家臣が人質に取られてな。行橋未造と言うのだが」
「どう言う方法で?」
「知らん。何時の間にか、と言う表現がこれほど適している場面がないと思うほど、何時の間にか、だ」

 忌々しそうに舌打ちをするのを二人は無視する。
 そんな物、さほど重要な事ではない。
 ただ、事実の確認のみを進めて行く。

「人質、ね? それで一体何をやらされてるんだ?」
「ふむ――方法を言った所で理解できんだろうから簡潔に言うが、俺は人の心を操れる」
「「はぁ?」」

 王土の言葉に、二人が同時に声を上げた。
 思わず目と目を合わせる二人を見て、王土は可笑しそうに笑う。

「何が可笑しい。貴様らは言葉で説明できない事柄を知っているだろう? 運命なり、時間なり、変態なり」

 その言葉に場の雰囲気が変わったのを楽しむようにまた笑いながら、一瞬、意味有り気に蝙蝠を見た。
 一時として王土から目を離していなかった蝙蝠の目が細まり、口が横に裂ける。
 今にも、不愉快な笑い声を上げそうな具合に。

「さて、貴様らに頼みたい事……だが、言うまでもなく分かるな?」
「…………」
「…………」

 沈黙で答える二人に満足そうに頷き、また笑う。
 己が優位にある思っているように、あくまでも偉そうに。
 そうしながらも何時の間にか校舎を出ていたが、学園を出るにはまだ時間がかかりそうである。

「話が早くて助かる。特別に情報をやろう―― 一つ。今の貴様らには戦力が足りん。二人とも半端に優秀だがな」
「きゃはきゃは、言ってくれるじゃねえの。なぁ?」
「ああ。ぼくまで半端扱いは頂けないな」
「そうそ……って、てめっ!」
「事実だ。だがそれは蝙蝠、貴様の持っている物である程度解決できるかも知れないぞ?」

 その言葉に、言い合いを始めそうだった二人の視線が自然と一つの物に集まる。
 理事長室で見付けた、竹刀を入れるような袋。
 それに視線が集まる。

「王刀・鋸」
「なにっ!」

 王土の言葉。
 それに蝙蝠は驚きの声を上げ、視線を完全に持っている袋に向けた。
 創貴はすぐさま王土の背に拳銃を突き付ける。
 引き金は何時でも引けるように指を掛けて。
 そこまでしても蝙蝠は気付かない。
 完全に意識が袋の中身に奪われてしまっていた。
 興奮し切った様子で袋の中を覗き込み、

「…………なんだこりゃ?」

 呆然とした様子で呟いた。

「王刀・鋸。見た目こそ木刀だが、その力、使い方次第では相当な武器にも盾にも成り得る」
「詳細は?」
「持った者の毒気を抜く――分かり易く言えば、持った者の悪意、戦う気を大幅に削ぐ刀だ」
「持たせないと使えないのか? 使い難いな……」

 言いながら創貴は、ある程度落ち着いたのか視線を王土に戻した蝙蝠を見て拳銃を背から離す。
 王刀・鋸。
 ふざけた名前の割にその力は凶悪。
 上手く相手に持たせられれば如何なる思考思想であろうとも説得が難しくなくなる。
 この力が本当だとすれば、だが。
 幾つもあるだだっ広く無駄にサッカーゴールまである校庭の一つを横切りながら、王土は言い続ける。

「さて、まだ時間はあるようだからもう一つ情報をやろう。黒髪の露出狂……もだが、特に橙色の髪の娘、着物の女と学生のコンビ。この三人には近付くな」
「具体的に言え」
「……長い黒髪に学生服を改造した露出服を着た美しい女、橙色の髪の大きな三つ編みをした太い眉の少女、着物を着た妙にか弱そうな雰囲気の女と見た目だけは人畜無害そうな最悪最低の学生服の男」
「なぜ?」
「死ぬ」

 疑問の言葉に、単刀直入な答えが返った。
 あまりと言えばあまりの言葉に、二人の足が止まり掛ける。
 が、何事もなかったように動く。
 しかしそれも、次の言葉まで。

「今の貴様らでも一分持つまい」

 思わず、一瞬だが、止まった。
 また歩き始めたが、口は閉じていた。
 王土の言葉。
 絶対の自信の込められた言葉。
 ましてやそれが何処までも偉そうな男の言葉となると妙な説得力すらある。

「――さて、そろそろ逃げさせて貰うぞ?」
「ああ、良いぜ。出来るだけはしてやるよ」
「当然だ――蝙蝠、胸を借りるぞ」

 言い終えた瞬間、何か言おうと口を開いた蝙蝠の胸を、跳んだ王土の両足が踏み付けていた。
 そのまま蝙蝠を踏み台代わりにし、創貴の頭上を跳び越える。
 拳銃でその後を追うような動作をするが、不規則に左右に走る王土に当たりそうではなく、わざとらしい舌打ちをして見せてから蝙蝠の方を向いた。
 蝙蝠もまたわざとらしく胸を痛そうにさすっている所。

「さっさと行くぞ」
「へいへい」

 冷たい言葉にいじけたように口を尖らせ、軽く伸びをし、創貴を掴む。
 走り始めた。
 風景は一気に変わり、あっさりとし過ぎるほどあっさりと開け放たれた校門を抜けた。
 だがまだ走る。
 エリアの境界が何処かハッキリしていない以上、仕方がない。
 ひたすら走り担がれながら行く二人を、大きな時計塔は見下ろしていた。
 間もなく時間が来る事を示しながら。



「アイツ、実際どう思う?」
「……あくまでお前から見て信用できるかだ」

 喋りながらでも速度は落ちない。
 蝙蝠にとっては当然の事に過ぎず、重要な事は今口にしている事だった。

「演技でも疑ってるのか?」
「……あくまでお前から見てだ」

 あえて返事を濁す蝙蝠を不審げに見た。
 それでも答えはない。
 しばらく様子を眺め、口を開く。

「信用できると思うぜ?」
「あっそ」

 無表情。
 予想通りの答えだったのか予想外の答えだったのかは、蝙蝠の表情からは読み取れない。
 会話が途絶えた。
 どちらも何か考えているように顔を顰め、話し掛け辛い雰囲気に包まれる。
 走る音だけが響く。
 一先ず、と言う具合に創貴が、口を開いた。

「情報は集まった。だがそれもアイツが信用できるかで随分変わってくる」
「…………」
「お前はどう思う?」
「…………」
「蝙蝠?」

 一向に答えない蝙蝠に視線を再び向け、逸らした。
 珍しく険しい表情を浮かべていたのだ。
 十秒、二十秒と時間が過ぎ、

「……おれは、嘘であって欲しいな」

 どうにも言い辛く、煮え切らない感じで言った。
 創貴は黙って先を促す。

「……おれの見た感じアイツの強さ――っつうよりも身体――は、今までおれが見て来た中でもかなり上だ。そいつが俺の忍法を知ってる風な上で、こう言ったよな? 確か」
「今の貴様らでは一分持つまい」

 創貴が先に言う。
 蝙蝠はただ頷く。
 この言葉の意味を二人は考える。
 真庭蝙蝠の戦闘経験、供犠創貴の知恵知略、そして都城王土の身体能力。
 それぞれがそれぞれ並外れていると言って良い。
 人類でも上位とまでは行かなくとも、少なくとも普通からは脱した位置にはあるはずだ。
 にも関わらず、この三つが合わさっても、勝てないと言ったのだ。
 そんな相手、いるとすれば悪夢以外の何物でもない。
 誰だって嘘だと思いたい。
 本人達なら尚更。
 だが、しかし、

「本当だと思うぜ?」
「……だよなぁ」

 二人は確信していた。
 あの傲慢不遜を絵に描いたような男が例え嘘であっても己を卑下する事を言うかどうかを考えれば、絶対にあり得ないと確信するが故に。
 嘘を付いていないと確信出来た。
 あの男だからこそ、出来てしまった。

「アイツが嘘を付いてない前提で考えを纏めるぞ?」
「おう、言え言え」
「分かった分かった。だがまず止まれ。もう十分距離は取っただろうしな」

 止まり創貴を降ろした蝙蝠に、周囲を少し警戒してから創貴は語り始めた。



「まず首輪に盗聴器がある可能性は低い。
 理由はあった場合、あの男があそこまで腹を割って話す可能性が低いからだ。
 ましてや不知火を裏切るような話だったから尚更な。
 あったとしても携帯にあったかも知れないが、僕達で捨てたしな。
 可能性としては監視カメラはある可能性が高いな。
 随分と動きに気を払ってたから。
 さて、あいつを繋ぎ止める鎖である人質。
 行橋未造って言ってたな。
 あれで随分と入れ込んでる風だったから女なのかも知れないが……関係無いな。
 どっちでも良いとして、あそこまで言ったらそいつに危害が及ぶ可能性が――もし僕が不知火の立場だったら――間違いなくある、と言うか及ぼす。
 だから僕は盗聴器がないって結論に到った訳だが、質問は?

 よし、次に王刀・鋸の話に移るぞ。
 毒気を抜くとか言う能力ってのは怪しい話だが、ある程度は本当の話だろう。
 まだ僕は中身を確認してないから木刀なのか知らない。
 …………うん、どう見ても木刀だな。
 詳しくはないが木刀以外の何物でもない。
 まあそれを袋に入れてるよりも出して持ってた方が威嚇としての意味を持てる。
 なのに袋に入れて持ち歩いていたのはなぜか?

 多分、直接掴まないようにするためだろう。
 つまり本当に毒気を抜くかどうかは別として、持てば何かが起こる可能性は高い。
 少なくとも、不利になる可能性のある現象の起きる可能性が。
 質問はあるか?

 ……四季崎、記紀?

 なんだそれ、人の名前か何かか?

 ……独り言ってお前、変な奴だな――元からだったな。

 さて、最後に、警戒すべき四人について。
 これも本当だと思う。
 蝙蝠とさっき話したが、あの男が己の価値を下げる嘘を付くとは思えない。
 ってのもあるけど、最も足るは表現の具体性だ。
 人間は完全な嘘を付く事が、ほぼ、出来ない。
 ない物を作り出す事はなかなかできない。
 「あー、分かる」って……何か心当たりでもあるのか?

 ――個人的な事だからさっさと続きを言え?

 勝手な奴だな……まあ良いけど。
 とりあえずあいつの言ってた人間は特徴がある程度分かり易く具体的だった。
 一目で分かるように配慮して何だろうが、この特徴を捉える、って事自体嘘だと難しい。
 学生服の最悪最低って所は今一分からないが、まあ、あいつは少し考えはしたが言えた。

 だから信用できる。
 少なくとも、今の所はな。
 今後の情報次第では変わるだろうが。

 しかし、厄介な事になったな。
 ……なにがだって?
 あいつの探し人を見付けられないとあいつが敵になるだろう、って事がだよ。
 あんたが言うには相当強い奴なんだろ?
 それが敵になるのは遠慮したい。

 だから、今後の予定はおおよそ決まった」



「異論はないな、蝙蝠?」

 殆ど息を付く事も無く喋り終えた創貴が、蝙蝠に聞く。
 途中途中で相槌を入れていただけの蝙蝠だったが、話は全て聞いていた。
 だから他をどうこう考えず、先に一度願いを叶えて貰って一度叶えたのだから簡潔に、ただ己の安全と利益を考える。

 どうすれば生き残れるかを頭の中でじっくりと巡らせる。
 どうせならあるだろう他の完成形変体刀を探す事も含め。
 最終的にまだ未知の何かを持っていそうなあの男と対峙する可能性と、危険を冒してでもこちらが人質を手に出来る可能性。
 更に足す事の味方を増やせる可能性と零崎双識と出会い殺し遂せる可能性。
 引く事の動き回って狙われる可能性とただ見付かり不意を狙われる可能性。
 更に足し、更に引き、足して足して足して、引いて引いて引いて、足して引いて足してつまり結果、

「それで良いんじゃねえか?」

 探す。
 生憎、暗殺専用だから得意分野ではないが自信はある。
 見付からなかったとしてもあの男よりも強いのが最低でも四人いるのだ。
 遠目に見る事さえできれば真似が出来、勝てる可能性が出来る。
 探し人を見付けられた上で見れれば上々。
 完成形変体刀十一本も入手できれば最上、と。

「――きゃはきゃは」

 蝙蝠は楽しそうに笑う。
 創貴はそれを呆れたように見ていた。



【1日目/午前/D-5】
【供犠創貴@りすかシリーズ】
[状態]健康
[装備]グロック@現実
[道具]支給品一式×2、ランダム支給品(0~1)、銃弾の予備多少、耳栓
   A4ルーズリーフ×38枚、書き掛けの紙×1枚、「診療所で見つけた物(0~X)」、箱庭学園パンフレット@オリジナル
[思考]
基本:みんなを幸せに。それを邪魔するなら容赦はしない
 1:蝙蝠と行動
 2:りすか、ツナギ、行橋未造を探す
 3:このゲームを壊せるような情報を探す
 4:機会があれば王刀の効果を確かめる
 5:蝙蝠の目的をどう利用して駒として使おうか
[備考]
※九州ツアー中からの参戦です
※蝙蝠と同盟を組んでいます
※診療所でなにか拾ったのかは後続の書き手様方にお任せします



【真庭蝙蝠@刀語】
[状態]健康、零崎双識に変身中
[装備]エピソードの十字架@化物語、諫早先輩のジャージ@めだかボックス
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0~2)、書き掛けの紙×1枚、ナース服@現実、王刀・鋸×1
[思考]
基本:生き残る
 1:創貴と行動
 2:双識をできたら殺しておく
 3:強者がいれば観察しておく
 4:完成形変体刀の他十一作を探す
 5:行橋未造も探す
 6:危なくならない限りは供犠の目的を手伝っておく
[備考]
※創貴と同盟を組んでいます
※現在、変形できるのはとがめ、零崎双識、供犠創貴、阿久根高貴、都城王土、元の姿です
※都城王土の『異常』を使えるかは後の書き手の方にお任せします



 都城王土は箱庭学園を歩いていた。
 目的は一つ。
 投げ落とされた携帯電話の回収のため。
 不知火との連絡手段、と言っても一方的に掛けられるに過ぎない、なのだ。
 それがない以上、下手に動けない。
 下手な行動が反乱を企てていると思われればどうなるか。
 想像するまでもない。
 苦々しい事だが理解していた。
 だからあたかも隙を突いて逃げ遂せた上で、携帯電話の回収に向かっている殊勝な姿を見せる。
 逆らう気が毛頭もないかのように見せかけるために。

「忌々しい」

 不機嫌そうに言いながら歩く。
 死んで欲しくない人間。
 そのためならば一時の苦汁も舐めるに値する。
 理事長室前の、割れた窓ガラスが見え始めた。
 周囲を見渡してみれば、それなりに離れた所に転がる携帯電話が目に入る。
 近付き、土を払いながら拾い上げて見る。
 まだ使えるかどうかは見ただけでは分からない。
 軽く周囲を見渡すと、携帯電話が震え始めた。
 画面に浮かぶのは非通知。
 少し残念そうな笑みを浮かべながらボタンを押し、耳を当て、言った。

「俺だ」

 変わらぬ口調のまま。



【1日目/午前/D-4】
【都城王土@めだかボックス】
[状態] 健康
[装備] 携帯電話@現実
[道具] なし
[思考]
基本:不知火の指示を聞く
 1:行橋未造の安全が確認が出来れば裏切る
[備考]
※「十三組の十三人」編より後からの参加です
※首輪は付いていません
※行橋未造が人質に取られているため不知火に協力しています
※行橋未造が何処にいるかは分かりません



つばさゴースト 時系列順 帰り道
つばさゴースト 投下順 帰り道
走る走るおれたち 供犠創貴 神に十字架、街に杭
走る走るおれたち 真庭蝙蝠 神に十字架、街に杭
START 都城王土 ――かもしれない何かの話

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年05月16日 11:46