走る走るおれたち ◆xR8DbSLW.w


さてはて何もこの二人。
『魔法使い』使いこと供犠創貴と、
『冥土の蝙蝠』こと真庭蝙蝠は悪ふざけをするためだけにここにいるわけではない。
当たり前の話だが、計画に参加するためにここいる。
反乱をおこそうがそれもまたよし。
殺戮をためそうがそれもまたよし。
どんな形であれども、彼らもまたこの計画の一端を参加者と言う形で担う。

「………ぁあ、だりぃな……」

そんなわけで放送前。
彼らは診療所で粗方な探索を終えたところでとっととその場を退散する。
元々、死体から発する異臭や目にこそ見えぬが徒ならぬ物々しさを前にはあまりいたくないのは
あまり上手くかみ合わない、ある意味では正統な関係を契んでいる彼らには珍しく意見が合致したところで、
彼らは、否。
創貴はある一つの施設を指し示す。

「文句ばかり言うな―――それに蝙蝠にとっても無益なことばかりじゃないはずだ」
「………ま、別に。いいけどよ」

蝙蝠は創貴を肩に乗せて走る。
一応は落ちない様に支えながら、一つの施設へと急ぐ。
今の彼らには知る由もないがあと一時間二時間と経てばおのずと分かるであろう事実をまだ知らず。
彼らは駆けつける。

「きゃはきゃは……」

力ない笑みの下で。
しかし速度を落とすこともなく、例の双識の姿に戻り坦々と走る。
服装は再度諫早の背丈の合わないジャージに戻し、嘆息しつつに、されど歩みは一向に止めず。

上を見上げれば、高い、高い時計塔が立ちつくす。
さながら私立上総園学園の時計台の如く、巨大で、壮観なその時計台の元。
何か重要な《物語》の起点の様な、発生源の様な。そんなものを感じさす


要は、箱庭学園。


彼らはそこを目指して走っていた。



 ☆


小話。

ナース服に身を包まれていた頃の蝙蝠―――とはいってもつい数分前のことだが。と創貴の診療所での会話である。
ナース服を着ているということはイコールして蝙蝠の姿は「とがめ」のものであり、先ほどまでの姿。
所謂零崎双識の姿とはおよそ程遠い可憐な弱々しい細い線により
組み合わされる、少女と言っても差支えない姿で診療所のもの探しをしながら二人はまだ対面している。

さて、そんな中。
供犠の方も落ち着き始めたのか、観察するように蝙蝠の舐めまわす様に眺める(変な意味ではない、大体彼は小学生だ)。
そこで、ふとして供儀はとある可能性を二つほど見つけるに至った。

まず一つ。
蝙蝠で言うところの『忍法・骨肉細工』。
創貴で言うところの『魔法・属性「肉」、種類「変態」』について。

「蝙蝠、その『骨肉細工』って忍法とやらはどんな姿にでも変えることは可能なのか?」
「言ってどうするんだよ、おれに得はあんのか?」
「大いにある、つべこべ言ってないで言ってみろよ」

軽口も一切癇に障ることもなく、
事務的な口調で創貴は問い詰める。
そんな様子につまらなそうに蝙蝠も蝙蝠で返しておく。

「――――ぁあ、ある程度なら可能だぜ。ただある程度の制限ってのを掛けられちまったけどな」

だからこそ、彼は《鬼》―――殺人鬼を相手取る羽目となってしまったのだが、
その辺りの事情をまだ創貴は詳しくは知らない。精々考えつけると言うのであれば―――より優秀な「魔法使い」なのだろう、そんな程度。

ともあれと言ったところで、
創貴は、肝心でありながら今まで聞けずにいた言葉を訊く。

「………ならば、ぼくの姿になることも、また可能なのか?」

今まで聞けなかったのは、現実へ対処しきれていなかったというものさることながら、
訊くまでもない、そう言った感じなのであったのが少しばかり事情が変わったのであった。

「きゃはきゃは――――よーやくその結論に至ったか。結論から言っちまえばできるっちゃできるぜ。
 しっかし先行き不安だなあ、おれはおまえが才に恵まれてるっていうから組んでやってるっつーわけだがその考えに今頃至ってるんじゃ甚だ怪しいねえ」

ただそんな彼の事情など露も知らない蝙蝠はまたしても軽口をたたく。
言ってしまえば確かに半分はそうではあるのだが、逆言うと半分は違うわけなのであり、言ってしまえばここは接客好きの『冥土の蝙蝠』。
彼の性格から、嫌味たらしくとがめの身体と負けず劣らず幼き体つきの相手と目線を同じにして言っておく。

「別に。考え自体は至るに容易いよ。―――ただ一つ聞きたいことがあったからついでに聞いておいた」
「面白い事言うねぇ。詰まるところなんだ、何がやりてぇんだよ、間抜けな創貴君はよ」

完全にその小学生相応の体格もあり馬鹿にした雰囲気なのだが、
供儀は一向として構っていない。むしろそうしたければそうしていろ、そのような申し出が心の中で爆発しているのかもしれない。

とにかくとして、彼は考える。
それは二つの可能性。

「だったらさ、僕に一回変身してみてくんない?」
「……てめーも中々変わった趣味してんだな。―――まぁここは変身しといてやるぜ。でなきゃおれの異名が廃れちまうぜ。きゃはきゃは」

先ほどまでとは打って変わり、つまんなそうな、そして嫌味たらしい声色とは違い、
とても面白そうに純粋に楽しそうに笑いながら蝙蝠は言い、言葉通り実行を試みる。

そんな蝙蝠の奇妙な変わりようを見て、数秒。
創貴は何がそんなに面白いのか考え―――更に数秒。
そして浮かんできた一つの結果。云うのであれば夢に出てきそうなほど最悪な結論に辿りつく。

「――――ちょ、待てっ!」

創貴は反射的に声を荒げる。
先ほどのナース服を持っていったときよりも大きな声で。
だが、そんな制止の声など時すでに遅し。
彼の変身は、終了の工程に難なく辿りつき、瞬間。

「っぷ……、っっ―――」

笑い堪えながら、創貴に変身した蝙蝠が診療所に参上する。
髪型も全く同じ。顔も全く同じ。身長も全く同じで、声まで同じ。
そこにいるのは正しく「供犠創貴」であり、誰がどう見てもこれは「供犠創貴だ」と答えるだろう。


―――――異様にサイズの合ったナース服を着用してなければ。


一言で言うのであれば創貴は吐き気を催した。
ネット上でよく見る「orz」。そんな姿勢に近い体勢で咳き込む。
ちなみに追記しておくとならば、無論として創貴自体はこのような自身の姿を見たくてそうさせたわけではない。

一方でしてやったり顔で蝙蝠と言えば、
そんな創貴の新鮮な反応に満足したのかご機嫌な様子で本来の旨を聞く。

「で、おめーさんは何がしたかったんだよ」
「―――――ゴホッゴホ……ぁあ、えーとそうだな」

と、ようやく立ち直り、されど直接蝙蝠のことを視界に入れることはせず。
どこぞの鶴喰鴎さんのように徹底して目を合わせることはしなかった。幾ら彼と言えども男の子。
自身の女装姿など好き好んでみたいわけがないだろう。
ナース服は創貴の心を揺さぶるには万能だったのであった。

「いや、さすがに首輪のサイズは変更しないんだな、ってことを確認を取りたかったんだ。
 まあ態々しなくてもさっきの女の姿でも首輪がブカブカってことは分かってたんだがな、
 けれどぼくの目の前で変身をしたわけじゃない。―――だからこの首輪がれっきとした物質だってことが分かれば十分だ」

そう、この首輪。
元はと言えば、彼の名も知れない元の姿に合わせて作られておる。
ようするに成人男性の首まわりに合わせ作られていた。
さすがにそれをヘルメットを取り外す時のように上に引っ張って取り外すには小さすぎるわけなのだが、
それが改めて実感できるだけでも十分な成果と言えよう。

「………そういや、そうだな」

こうして蝙蝠もそんなことを気づけたこともあり。

ただ、さすがに創貴としては確かめたかったのはそれだけではない。
それがもう一つ確かめたかったもの。

彼ならば、りすかの魔法式なんかも変態させることは可能なのではないか、と言う話。

そもそもりすかの魔法式やらは血に刻まれているもの。
それらが作用してあわよくば、りすかの『属性「水」、種類「時間」、顕現「操作」』の魔法をショートカット有りの状態で使えたりするのではないか?
そこまで言わずとも魔法式は正常に作用して、蝙蝠の言うところである『忍法』に影響を出してくれるんじゃないかと云う淡い希望。
叶ったらどうこうという話ではないが、それならそれで使い方の幅も広がる(無論のことりすかも手中に収めながら)。

そうなったのであれば、相手方。
主催側の存在にも大ダメージを与えることもさながら夢ではない。

ついでにいうのであれば、『属性「水」、種類「時間」、顕現「操作」』の魔法が使えたのであれば、
首輪が問答無用で一個手に入り、それなりの解析も可能になるのかもしれない。なにせ、首を切ったところで死なないのだから――――。
もう一つ追記しておくとならば、それは別にツナギでも恐らく構わないだろう。
彼女なら爆発云々言うよりも前に、その口を首から生やしパクリと喰っちまえばそれで済む。

「ともあれだ、それが分かっただけでも僥倖だ。この首輪が、ただの爆弾―――普通の物質だってことが分かればな。
 『魔法』がかかってない――もしくは爆発形の『魔法』以外がないとだけと分かっただけでも今は十分だと思う」
「さっきからてめぇはおれの知らない言葉ばかり発するな、………さてはこの国から違う奴の人間だったりするのか」
「まあ、凡そ外れてはないかもしれんな。おまえが本島出身者であればそれも同等と考えてもおかしくないけどさ。
 ただそうなると、おまえのその『魔法』―――いや『忍法』だったっけ。そしたら今度はぼくの方がそれの存在を疑わざる負えないな」
「ならばそれは問題ない、よ―――なにせこれは忍法だぜ? そうやすやすと他に噂が渡るようじゃあまだまだ半人前の証ってやつだ」

一方は、囲まれた魔法の国、長崎県より。
一方は、遥か昔のとある国、真庭の里から。
このふたつの世界観の違い。
今はまだ、波紋は小刻みなもので済んでいるが、それに一石大きなものが投じられた時。
彼らがどのような行動を取るか、それはやはり例の如く誰にも知る由はない。

「ま、いいだろう。互いに信用に足りてねえって証拠だろ」

なんて蝙蝠は自嘲は愚か、逆に見る見る内にテンションが上がり、
思わずきゃはきゃは、といつもの甲高い笑い響かせる―――無論のこと創貴の声で。

「………はあ」

そんな姿を見て、溜息。
本当にこいつは大丈夫なのか?
そんな事を再び思っていた。


 ☆


小話。
その弐。

時刻は、四時の弐拾分ごろ。
ようするに今までの話が全て終わったその直後。
蝙蝠は創貴に尋ねてみる。

「ところでよ、今度は何処へ向かうんだよ。
 さっきはおれの願いを聞いてもらっちまったしな。ここは公平に順番こでおまえの番と行ってもいいぜ」

次の目的地についてだ。
蝙蝠がナース服に着替えたのが四時の頃。
何か成果があったかと言えばそれは御想像にお任せするが、
会話と作業が終わったのが四時弐拾分。つまりたった今ぐらいのこと。

基本的に退屈は性に合わない蝙蝠としてはさっさとこんな鬱屈しそうな場所など退散したいところであった。
先も言った通り創貴の方にしたところでその事実は変わらない。
必要性もないのに、死体のある診療所などと言う三流のホラー映画の様なシチュエーションに立ち会いたいかと言われたら答えはいいえ。
そもそも人探しをしていると言うのにその人物とは縁の程遠そうな場所にいて何も得はないのは目に見えている。

というわけで、壱分ほど地図を見渡し、
決心したようで(まだナース服創貴の)蝙蝠の顔(だけ)を見てこう言った。


「なら、箱庭学園とやらに行こう」


と。
言った。

「ぼくの顔見知りがいるならの話だが。りすかのことだ。どうせぼくがいると思いこんで、
 人がいそうだとかでこの『施設』とやらの中心の巨大施設に向かっているんだろうよ。それにあいつがぼく以外の言うことに素直に動くとも思えんしな」

奇しくもそれは、鑢七花に対し鑢七実が感じたそれと同じであり。
水倉りすかと鑢七花は彼らの思惑通りに邂逅を果たしている。
ただ、どちらにせよ判断が遅かった。
というよりも蝙蝠の意見に従ってしまったが為にその判断も少々遅かったと言わざる負えないが。

「………」
「ま、おまえのいうところの双識ってやつも流石にもういないだろう。
 ―――仮にいたとしても、ぼくの頭脳があれば話は別だし、それに蝙蝠は一目散に逃げるんだろう?」

挑発するかのように、攻撃的な口調で創貴は押し立てる。
弱気で言うことではないにしろ、あんまりにも演技じみてないか? と思わせるほどの安い挑発。
世界は広いとはよく言うが、そんなのに乗るのは――――。

「きゃはきゃは! いいねぇ! いいよ。行ってやるぜ」

――――接客好きの蝙蝠と、圧倒的主人公である哀川潤ぐらいのものだろう。
このあたりは、しのびにあるのかは定かではないがプロ根性と言う奴なのかもしれない。

「そんなわけで、蝙蝠。さっきのやつの姿になってくれないか」
「命令はしてんじゃねぇよ」

もはやこの二人の間では定番となりつつあるそんな台詞を吐きつつも、
やはり逆らうことはせずに例の如く零崎双識の姿に変身しつつ、ナース服の脱ぎ捨てる。
ただ、捨てることはしなかった。
理由はただ一つ。

「あ、これはこのガキには有効だったから持っていくとでもしようかね」
「おい待て」

きゃはきゃは、とそんなくだらないこと呟きナース服をディパックへと静かにしまった。
創貴と言えば、微妙な顔をするほかなく、呆然とぼくは何なんだろう、と珍しく自分を問い詰める。



 ☆



場面と時間は移り、六時直前にして、箱庭学園時計台前。
彼らは悩んでいた。
手には職員室で入手したパンフレット。
簡単な施設紹介と、簡易的な職員紹介が書かれていた。
だが今現在の彼らの注目は明らかにそこには向いていない。
彼らの注目はこの扉。
この目の前の扉を見て、愕然―――あるいは放心していた。

「……どうしたらこういう風に腐るんだろうな」
「……さあな」

目の前の時計台の中に入るためのものだと思われる時計台の扉。
通称『拒絶の扉』。
その扉が、見るからに腐っている。
面白いぐらいに、見事なまでに。
近くにあった電子パネルなんて一切無視して、問答無用に扉としての役割を終えていた。

余談だが、蝙蝠に至ってはどうしてこんな鉄みたいなのが扉としての役割を果たせているのか。
そこから疑問だったのだが、その疑問が創貴に伝わる訳もなく、影からつまらなそうにボーッとしている。

「………駄目だ、分からない。―――魔法にするなら属性「土」、種類は「時間」で顕現が「腐敗」。―――そんな感じかな」
「ちなみにおれの知り合いには、んな芸当できる奴なんかいなかったと思うぜ」

そんな風に悩んでいたところで、事態は発展していかない。
そのように思ったところで、一つの異変が起こる。


『実験の最中だが、放送を始める』


ずばりそのまま。
六時間に一回の放送。その記念すべき第一回目が訪れた。



 ☆


放送が終わった。
既に十人死んだというある種の絶望感。
創貴は知り合いこそ死んでいないが、自称ピースメーカー。
みんなを幸せにする者たるもの、既に人がこんなに死んだという事実が彼を苛むだろう。
蝙蝠に至っては、仲間が二人ほど死んでいるのである。
その時訪れる絶望感と言ったらないだろう。
よってこの二人の間でも嫌な沈黙が――――。

「きゃはきゃはきゃはきゃはっっ!」

訪れることは叶わなかった。
あきらかなフラグありがとうございます、そのようなくだりだった。

「なっさけねぇったらねぇなっ! 真庭忍軍十二頭領の名が聞いてあきれるぜ!」

本来の歴史ならば彼は先陣を切っていの一番に殺されるはずだったのはここでは伏せておこう。
―――無論のことそれを伝えれる人物などここにはいないのだが。
ともあれ。
蝙蝠は大層面白そうにしながら双識の姿で爆笑する。
家族――いわば戦友の様なものを何よりも大事にする双識の姿で仲間の死を笑うとはなんとも皮肉めいたものを感じさせる

「とはいいつつも、頭領っていうぐらいなんだからそれなりには強かったんだろう?」
「ま、それなりには――な。ようするにかませ犬になったんだろうよ。可哀相にねぇ」

口ではそうは言ったものの一切の同情をかけず、かつての仲間を切り捨てた。
それはもうバッサリと。
思わず感心してしまいそうになるぐらいに。

そして一方の創貴も創貴で。

「そうか……。だがどうせ『忍者』なんだろ? ―――まあ死んで惜しい人材ではないな。いるならいるでいいんだがな」

簡単に、何ら感慨も込めず思ったことをそのまま口にした。
どこまでも哀れな真庭忍軍である。

と。
そこで創貴は話題を変える。
思うこともないわけでもないが、死んでしまったものは仕方が無い。
そう言った感じで割り切り、次に生かそうと一応彼は彼なりに頑張っているのだ。

で、だ。

「さて、そんなこともさることながらぼく達にはもう一つ重要な事実を突きつけられた」
「ん? なんかあったか?」
「馬鹿か、おまえは。禁止エリアだよ。禁止エリア」
「ああ、んなこといってな。きゃはきゃは」

何が面白いのか、つまんなそうに言葉を返す蝙蝠。
だが、やはり先あたってはこの箱庭学園。
ここを含むD-4が禁止エリアになるという事実は変わりなく。
このままのそのそと探索をしていたら確実にこの首輪は容赦もなく爆発し、首がはじけ飛ぶだろう。
それは避けたい。両名は愚かここにいる参加者ほとんど共通の思いと言えよう。

ただし。


「けどよ、今から撤退すりゃあ別に何ら脅威じゃねえぜ?」

そう。
そうはいっても今からここをでようと試みれば、
歩いてでも最悪間に合う。そんな距離にある。

そして、だからこそ今からここを出ようというのが
『普通』の考えであり、正攻法。常套手段である。

が。
この場合、それは常套手段なだけだった。

「……あのなあ。云っておくがギリギリまでぼくたちはここにいるぞ」

『特別』―――はたは『異常』の持ち主であるところの、
供犠創貴をもってすれば、そんな常識じみた有り触れた回答を持ちあわすことは叶わなかった。

「………ぁあ?」

当然ながら、蝙蝠からは不服の声。
もしくは疑問の声。はたまたは興味津々の歓喜の声。

「ちょっとは考えてみろよ蝙蝠。
 なんで主催者どもがいの一番にこの箱庭学園を禁止エリアに設定した理由を。
 考えてみれば簡単だろ。――――姿を隠すためだろ。だからこそ、真っ先に禁止エリアにして、
 自らの巣を絶対的に安全な位置として確保するんだよ」
「ならよ、最初からこんな『施設』のなかにいなきゃいいだろ。
 例の――――とうちょうき……だったけか。それがあればここにいなくてもいいだろうが」
「別にそれでも構わないが、万が一のこと考えて、こちらにいたほうが安全―――という場合もあるだろう?
 たとえばおまえの所属する真庭忍軍の残りが別の場所にいたとしてその所在を突き止める可能性がある。
 そうなった場合主催の方に反抗する手段があるとも限らないだろう? ならば態々別の場所に隠れるのではなく、
 最悪首輪と言う枷に、おまえのいうところの能力の制限が何なのかぼくには分からないが、もしも電磁波みたいなものだったら、
 その乱入者たちもその電磁波みたいな無差別攻撃を食らう可能性だって大いにある。そうなるとすれば、相手取るのも比較的簡単になる」
「………まあ、云わんことは分からんでもないけどな」
「それに加えて言うならば、あの最後に挨拶をした男、というよりも一番最初に挨拶をしていた男。
 不知火袴。あの老人の――――本拠地だぜ? ここは」

と、パンフレットを広げながら。
ある一か所。『理事長挨拶』の欄を見る。
そこには、きちんと不知火袴の挨拶が載せられていた。

「何故、主催がこんなものを置いていったのか趣旨がよく分からないが
 ただ一つ言うならば、ここは十分に怪しい。調べるに値する場所だと言うことだ」
「なるほどねぇ……」
「まあとはいえ一歩間違えば首輪も爆発させられる。
 そんな危険性を伴うからな、さすがにここまでの危険をほとんど何も知らないおまえといえども……」
「あぁあぁ、もうそのくだりはいい。飽きたぜ」
「……じゃあ、どうするんだ蝙蝠は」


「無論、おれも乗ってやるぜ。あのふざけた主催に《命乞い》をさせるもってこいの機会。見す見す逃すわけねえだろ」


「おまえなら、そう言うと思ってたよ。蝙蝠」

口角をあげて、こちらも面白そうに。創貴は言う。

「ほぼ言わせたようなおまえが言ってんじゃねえよ」

蝙蝠の方も軽口は減ることもなく、
一応は同盟関係となっている創貴を見て笑う。

「ふん、まあいいだろう。じゃあ残りのタイムミリっトは出る時間も考えて参拾分だ」
「おう、で何処を探せばいいんだ?」

と言う風に言われたので。
創貴も再度パンフレットを眺める。
―――そして。

「まあ普通に考えれば『理事長室』ってのがまんまだが怪しいな。
 だが、この時計塔ってやつも捨てがたい。
 一番見晴らしが良い場所と言えば見晴らしが良いし、なにより一番上までのぼりつめよう。
 なんて考える奴はそうそういないだろうそう言う意味では身を隠すにはもってこいと言えるかもしれんな」
「つまるところどっちだ」

せかす蝙蝠を傍目に。
創貴は決心したかのように腕を動かし、指を定める。


「………じゃあここは――――――」



「こっちにしよう」



そして、創貴は指を指す。
それは地図に描かれた理事長室なのか時計塔なのか。


次の瞬間。
蝙蝠は創貴を肩に乗せて駆け出していた。




【1日目/朝/D-4 箱庭学園内】
【供犠創貴@りすかシリーズ】
[状態]健康
[装備]グロック@現実
[道具]支給品一式×2、ランダム支給品(0~1)、銃弾の予備多少、耳栓、
   A4ルーズリーフ×38枚、書き掛けの紙×1枚、「診療所で見つけた物(0~X)」、箱庭学園パンフレット@オリジナル
[思考]
基本:みんなを幸せに。それを邪魔するなら容赦はしない
 1:蝙蝠と行動
 2:箱庭学園時計塔、及び理事長室を30分で探す
 3:りすか、ツナギを探す
 4:このゲームを壊せるような情報を探す
 5:蝙蝠の目的をどう利用して駒として使おうか
[備考]
※九州ツアー中からの参戦です
※蝙蝠と同盟を組んでいます
※診療所でなにか拾ったのかは後続の書き手様方にお任せします


【真庭蝙蝠@刀語】
[状態]健康、零崎双識に変身中
[装備]エピソードの十字架@化物語、諫早先輩のジャージ@めだかボックス
[道具]支給品一式、ランダム支給品(0~2)、書き掛けの紙×1枚、ナース服@現実
[思考]
基本:生き残る
 1:創貴と行動
 2:箱庭学園時計塔、及び理事長室を30分で探す
 3:双識をできたら殺しておく
 4:強者がいれば観察しておく
 5:危なくならない限りは供犠の目的を手伝っておく
[備考]
※創貴と同盟を組んでいます
※現在、変形できるのはとがめ、零崎双識、供犠創貴、阿久根高貴、元の姿です



第一回放送 時系列順 傀 コヨミモノ 物 ガタリ 語
この世に生きる喜び -Theory that can be substituted- 投下順 僐物語-ヒトモノガタリ-
属性は「肉」、種類は「変態」 供犠創貴 泰平に向けて
属性は「肉」、種類は「変態」 真庭蝙蝠 泰平に向けて

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最終更新:2012年10月02日 12:54