探サガシモノ物ガタリ語 いのじワード ◆8nn53GQqtY
【0】
『まるで並行世界に生まれた同一人物のように似通っている『きみ』と僕との絶対とも言える最大の共通点――』
『それは『きみ』がどうしようもなく救えないほど『優しい』ことに尽きるだろう』
『『きみ』はその優しさゆえに、自身の『弱さ』を許せなかった――つまりはそういうことだ』
『だから『きみ』は孤独にならざるをえない』
『『きみ』の間違い、『きみ』の間抜けは、その『優しさ』を他人にまで適用したことだ』
『素直に自分だけを愛していればそれでよかったのに』
『無論僕が言うまでもないように『優しさ』なんてのは利点でも長所でもなんでもない』
『むしろ生物としてはどうしようもない『欠陥』だ。それは生命活動を脅かすだけでなく進化をすらも阻害する』
『それはもう生命ではなく単純な機構の無機物みたいなものだね。とてもとても、生き物だなんて大それたことは言えない』
『だから僕は『きみ』のことをこう呼ぶことにするぜ――『欠陥製品』と』
「そう、きみも『優しい』。
だが『きみ』はその優しさゆえに、自身の『弱さ』を許してしまった。
孤独に平気でいられないという自身の『弱さ』を、どうしようもなく許してしまった。
優しいってのはつまり、自分も優しくされたいってことだからね。
どこまで堕ちても、どれだけ他者を害しても『ぼくは悪くない』と言うきみを、どうして人間だなどと言える?
生物ってのはそもそも群体で生きるからこその生物だ。
群体として生きることを望みながら決して群体になじもうとしない、なじめない、生物として『過負荷(マイナス)』だ。
こいつはとんだお笑い種だね。きみと『ぼく』は同一でありながらも――出てくる結果は対局だっていうんだから。
ぼくは価値ある命を奪うが、『きみ』は命を無価値にする。自身どころか他人をすらも活かさない、なにもかも絶対的に活かさない。
社会生活の『活』の字がここまでそぐわない人外物体にして障害物体。
だから、『きみ』のことは暫定的に、こう呼ぶことにするよ――『人間未満』とでも、ね」
【1】
さて、回想シーンはここまで。
ここから先は、現在進行形の物語。
ぼくの後ろからは、真宵ちゃんが付いて来る。
そして、ぼくの行く先には――
「向こう側が見えませんね……日本にこんな広い砂漠があったでしょうか」
「鳥取砂丘を見たことはあるけど、ここまで広くはなかったね」
地の果てまで、砂漠が広がっていた。
『地の果てまで』という文字どおりに、この『因幡砂漠』の向こうには海しかないのだけれど、その水平線さえ茶色い砂丘に遮られている。
「時に、ざれれ言さん」
「真宵ちゃん、れが一個多いよ」
「失礼、噛みました」
「違う、わざとだ」
「かみまみた」
「わざとじゃない!?」
「食(は)みました」
「その噛みかた何かエロい!?」
「ごほん……砂漠を行くことになったのはいいのですけど、いきなり出て来たこの『支給品』は何なのでしょう。
こんなに大きな車が、何の伏線もなしにどこから出て来たのでしょう」
「ディパックの中から、としか説明しようがないね。
いいんじゃない? 《怪異》があるんだから、四次元リュックがあっても」
「確かに、メタ発言はボケ突っ込みの手法として有効ですけど、ロワのお約束にいちいちめくじらを立ててもいられませんからね」
「その台詞自体がアウトに近い何かだよね」
そう言えば真宵ちゃんは、この劣化四次元ポケットみたいなディパックをよく見ていなかったのだった。
ぼくら今まで、支給品の見せ合いとか、ろくに済ませなかったからなぁ。
言いわけさせてもらうと、ぼくも真宵ちゃんも、当初は『バトルロワイアル』に対する実感がなかったし、
『とりあえず阿良々木くん探しに付き合おう』ぐらいの考えしかなかったから、認識が甘かったということなのだろう。
地図を取り出した時に、支給品らしき道具が見えたけれど、いまいち使えそうにないものだったし、
戯言使いであるぼくに至っては、真庭鳳凰という忍も、翼ちゃんの時も、七実ちゃんの時も、口を使って切り抜けてきたわけだし。
ただ、ぼくの荷物は真宵ちゃんが気絶していた間に、だいたいの荷物確認を済ませていたりする。
ちなみに、ぼくが取り出したばかりの赤いフィアット500は、気絶する前は入っていなかったものだ。
たぶん、あの大男が残していってくれたのだろう。
こんな便利な移動手段があったなら使えばよかったのにとも思ったけど、学ランの件といい、あれでまだ高校生だったのかもしれない。
何だか車内の感じとか、鍵についているキーホルダーの形とかが、あのみい子さんから貰ったフィアットとそっくりなのだけど、偶然だろうか。
ともかく、ぼくが何の伏線もなく車を出してきたのにも、理由はある。
「ここまで広い砂漠を、徒歩で、しかも女の子を連れて移動するのは厳しいと思ったからね。
さっきまでは目立つといけないと思って出さなかったけど、砂漠なら視界が開けてるから徒歩でも目立つのに変わりないし」
「なるほど。では、なぜ進路をこちらの方向に?
戯言さんのことですから、誰も来ない場所に逃げるのでもないのでしょう?」
「それは過大評価だね。ぼくはこれでもけっこう怖がりで、卑怯ものだぜ?」
「だとしても、無思慮ではないでしょう」
にこりん、と笑顔を向ける真宵ちゃん。
何だろう。彼女が目覚めてからだけれど、ずいぶんとフレンドリーさが増している気がする。
ぼくはそんなに、信頼を獲得されるようなことをしただろうか。
出会った当初は、かなり警戒されていたはずだけれど。
『嫌いです』言われたし。
軽妙な言い回しは元からだったけど、こんな弾んだ会話することだってなかったはずだし。
まぁ、真宵ちゃんからすれば、阿良々木君亡き今、この環境で頼れる人間はぼくしかいないのか。
そんなぼくに対して、何かしらの感情が芽生えてもおかしくはないんだろう。
いや、変な意味じゃないぞ。
仮に真宵ちゃんがこの体型で、ぼくより年上だったりしたら、喜んでフラグと解釈したところだけれど。
「名簿に書かれてたぼくの知り合いを探したいって、さっき話したよね。
そいつとの合流を前提に、これからの進路を色々と考えてみたんだ」
「ほほう、その女性とは、戯言さんのヒロインに当たる方ですか?」
「いや、大事な人じゃないと言えば嘘になるけど。なんでそこで《ヒロイン》の話になるのかな」
秋までのぼくなら『違うよ』と否定していたところだけれど、今さらそういうわけにもいかないな。
……結婚の約束までしちゃったし。
「なら、戯言さんはどうして《主人公》を目指そうと思ったのですか?」
「それは、安心院さんに言われたから……」
「それは安心院さんの方から頼んできたことで、戯言さんが引き受けた理由にはなりませんよね。
ここから生きて帰りたいだけなら、必ずしも《主人公》を目指す必要はありませんから。
確かに《主人公》という立ち位置は他のキャラより生存率が高いですけれど、《主人公》にならなければ生き残れないわけでもありません」
ずばりと突いて来た。
けっこう、ぼくの深いところを。
なるほど。
《主人公》になる明確な方法など存在しないけれど、《主人公》を目指す理由は明確に必要だ。
それは言うなれば、物語を作る上で、主人公を作る上で、不確定な事項。
主人公の戦う、動機づけ。
その動機で言えば。
ぼくは確かに、玖渚に死んでほしくないと、強く思っている。
真宵ちゃんも、死なせたくないと思っている。
真心も、哀川さんも、死ぬなんて許容できないでいる。
まさしく『女の子のためなら何でもしたい、ライトノベル型の主人公』だっけか。
「《主人公》を目指すなんて野望はとても大それたものですけど、
しかし、《主人公》になりたいと思うほど、誰かを想えるのは、とても素晴らしいことだと思います。とてもとても、いい事です」
まるでよくよく知っている人を語るみたいに、真宵ちゃんは言い切った。
真宵ちゃんにとっての《主人公》――阿良々木君も、そういう少年だったのだろうか。
「阿良々木さんにもヒロインがいました。
戦場ヶ原ひたぎさんと言う人です」
戦場ヶ原ひたぎ。
名簿にいた。
つまり、ここに来ているということだ。
そうなると、翼ちゃんが嫉妬していた『彼女』が、そのひたぎちゃんになるのか。
「放送を聞いてどうなってしまったのか。仲良くはありませんでしたけど、心配ではありますね」
そりゃあ……他ならぬ真宵ちゃん自身が、あんなことになったのだ。
もっと近しい位置にいた女性なら、ずっと酷いことになったっておかしくない。
戦場ヶ原ひたぎ、ね。
捜索対象、および要注意人物に、戦場ヶ原ひたぎ、一名を追加。
「その人とまた会う為にも、まずは生きのびることを考えないとね」
「そうですね」
話を戻そう。
真宵ちゃんが言うところの《ヒロイン》――
玖渚友の話をした。
青い目で、青い髪で、小さくて、――そして《サヴァン》なのだということ。
どこか、パソコンのある施設で引きこもっている可能性が高いこと。
ぼくも真宵ちゃんが目覚める前に、目的地を絞り込んでいたこと。
診療所、豪華客船、ネットカフェ、斜堂卿一郎研究施設、そのいずれかに絞られること。
「だから、地図の東側に行ってみることにしたんだ。ネットカフェと研究施設の二つが割と近い位置にあるから、まとめて寄りたいところだし。
廃墟から向かうと、スーパーマーケット手前で曲がるルートを使えば、途中で診療所も抑えられるからね」
「なるほど、効率的に施設を回れますね。でも、それならどうして砂漠を迂回するんですか?
先に豪華客船に寄ってから、診療所、ネットカフェ、研究施設の順で回るということですか?」
「診療所を通るルートでネットカフェに向かうには、いったん来た道を戻らなきゃいけないからね。
つまり、『骨董アパート』に戻る道を通ることになるね」
「そうなりますね」
「さっきのおっかない2人組を遠ざける方便で、『骨董アパートに行けばいいですよ』って言っちゃったんだよね」
「…………………」
つまり、素直に道路ぞいに南下すれば、またあの2人と出くわしてしまう可能性が高いのだ。
言いわけさせてもらうと、その時点では次の目的地を考える余裕などなかった。
「今のぼくたちが球磨川君たちに会うのは危険だし……それ以前に会いたくないしね」
いや、『会いたくない』というのは、半分ぐらい方便。
本当に会いたくないのは、ぼくではなく真宵ちゃんの方だろう。
出会いがしらに自分を殺そうとした挙句に、庇って戦ってくれた男性を眼の前で虐殺した一味だ。
「球磨川さん……というのですか。あの男の人は」
真宵ちゃんが、声のトーンを低くして呟いた。
「あの人たちは……殺し合いに乗っていたんです、よね?」
「いや、少なくとも球磨川君の方は乗っていないようだったよ。
『殺さないで』って言ったら、彼女を止めてくれたし」
「殺し合い否定派なのに……あの人の仲間をしていたんですか?」
あの人。
七実ちゃんのことだろう。
声が震えている。思い出したくない対象なのは明らかだ。
それでも追求してくるのは、勇気なのか、彼女らと会話が通じた僕に対する警戒心も少しあるのか。
「ぼくも……彼と話した時間は長くなかったけど、それでも安全な人物ではなさそうだったよ。
気分の向くまま行動するし、何をするか分からない。
殺し合いが起こらなくても、生来の危険人物に見えた。そこは、女性の方も同じだと思う。
だから一緒に行動しているのかもしれないね。」
球磨川禊。
大嘘つき。
人間、未満。
人間として、足りていない。極端な過不足。過負荷(マイナス)。
こんな殺し合いが起こらなくても、いずれ、誰かを殺す計画を立てていたんじゃないかと思える。
「ただ、殺し合い自体は肯定していないようだった。不知火理事長もぶっ殺すとか言っていたし」
「不知火――最初の広い場所で演説してた、主催者さんですよね」
「そうだね。つまり球磨川君は、主催者の手がかりを何かしら持っているのかもしれないけど――それでも、再会したい相手じゃないな」
《縁》があったら、また会えるのだろうけど。
先送りにできることなら、先に見送りたい。
……前々回、ぶっとい因縁フラグを立ててしまった気がしないでもないが。
「そういうわけで、砂漠を迂回することにしたんだ」
ここから先の話しは車の中でと、鍵をさしこんでドアを開けた。
炎天下でこれ以上立ち話を続けても、体力を浪費するだけだろう。
「いったん豪華客船に寄ってから、診療所への道に向かうよ。
車で移動すれば、次の放送までには公道に戻って来られるだろうし」
【2】
「ざれれれ言さん!」
「真宵ちゃん、ぼくは別にバカボンの家の隣近所に住んでるおじさんじゃないからね」
砂煙をあげて直進するフィアットのハンドルを、ダボダボの制服からはみだした両手で握りながらぼくは返事した。
ザシャザシャザシャと、砂煙がフィアットの小さな車体を乱暴に汚していく。
路面は走りにくいけれど、障害物のない開けた場所だから、事故を起こす心配もない。
話しかける真宵ちゃんは、助手席。
シートベルトをしてちょこんと座りこんだ膝の上には、樹木の伐採に使うような、大きな剪定バサミが握られていた。
これも元々、ぼくの支給品だったものだ。
フィアットに乗り込んだ後、この際だからと互いの支給品はすべて公開して、使いやすい道具は交換した。
ジャキンジャキンと、切れ味を確かめるように、大きな両刃をゆっくり開閉させている。
小学生が持つにはずいぶんと物騒な武器だけれど、不思議とその鋏は、真宵ちゃんの両手にぴったりだと思えた。
まるで、元からそういう幼女の手持ち武器だったみたいに。
では、ここいらでぼくらの手持ち武器を公開しておこう。
まず、日之影空洞青年がぼくに譲渡してくれたらしい支給品。
フィアットの他にも、拳銃一丁が新しくディパックに入っていた。
これはどう考えても当たり武器だと思うのだが、ぼくなんかに渡したまま飛び出していって良かったのだろうか。あの大男は。
けれど、拳銃というメインウエポンが手に入ったのは良かった。
ジェリコ941。
八月の――
匂宮出夢君との戦いで使っていた拳銃だ。使い方はしっかりと覚えている。
他の支給品――ぼくに支給された元からの道具は、ハズレとは言わないまでも、使いどころが難しそうだったから。
まず、真宵ちゃんに交換で譲渡した剪定ハサミ。
『ウォーターボトル』と書かれた魔法の水……と説明書が付いているけれど、
どっからどう見ても濃硫酸にしか見えない液体の入った瓶。
そして『巻菱(まきびし)指弾』と書かれた、小さいネジのような金属片が、三つほど。
この巻菱一つに、大の男をしばらく行動不能にできるだけの毒物が仕込んであるらしい。
しかし当然ながら、ぼくは巻菱を指で弾き飛ばして、狙った人間の体に命中させるなんて真似はできない。
だからそうなると、人間の肌に直接触れて埋め込ませるぐらいしか使い道はなく、
そこまで接近する危険を冒すぐらいなら、戯言のひとつでも振るう方がよほどリスクが少ない。
(ハサミや濃硫酸をイマイチと見なしていたのも、同様の理由による)
そう見込んで扱いかねていた代物だけど、一応ズボンのポケットにいれておく。
そして、真宵ちゃんに支給された道具は二つ。
ひとつは、『柔球』という、楕円形の鉄球。ちなみに二個一組み。
説明書によると、標的に直撃しない限りは何度でもバウンドし、なおかつバウンドするごとにスピードが増していく、室内戦闘用の武器らしい。
……味方に当たったらどうするんだろう。
真宵ちゃんが今まで危ない目にあっても、使おうとしなかった理由が納得だ。
そしてもう一つが、剪定ハサミと交換で、僕の手に渡ったものだ。
真宵ちゃんは使い方が分からない、と自己申告をしたので。
「失礼、噛みました」
「違う、わざとだ」
「かみまみた」
「わざとじゃない!?」
「かけますか?」
「支給品にかこつけて上手いこといったつもりになってる!」
「ともかく、です。車を運転しながら電話をかけるのは、危なかったと聞いています」
どこにでもある、携帯電話だった。
アンテナが、ちゃんと3本立っている。
一応、助けをよぼうと手当たり次第にかけたけれど、それは繋がらなかった。
会場内限定で電波が繋がっている仕組み、らしい。
電話帳には、幾つか登録された番号があった。
施設の名前で。
『一戸建て』
『喫茶店』
『クラッシュクラシック』
『西東診療所』
『展望台』
『病院』
『マンション』
どれも地図の北側、A~Cに当たるエリアの施設だ。
ぼくたちが向かおうとしていた施設のどれもが該当しないのは残念。
けれど、そうなると他にも携帯を支給された参加者がいて、他の施設の番号が登録されているのかもしれない。
「危な『かった』っていうのは、どういうこと?」
「私が生きていた時には、携帯電話はそこまで普及していませんでしたから」
ああ、そう言えばこの子、幽霊(自己申告)だったよ。
「すると、真宵ちゃんが亡くなったのは、けっこう昔なのかな……」
「生きていれば21歳になります」
「マジかよ」
やばい。
ぼくより年上だった。
この姿で、年上だった。
思いっきり、ぼくのストライクゾーンど真ん中だった。
「まぁ、確かにこの道は悪路だけど、行動はなるべく迅速に起こしたいしね」
「それは――禁止エリアの情報を聞き逃したからですか?」
「それも聞き出したいことだけど、それだけじゃないよ」
申し訳なさそうな顔をした真宵ちゃんに、ぼくはきっぱりと言った。
真宵ちゃんは放送の死者をかろうじて覚えていたものの、禁止エリアまでは記憶していなかった。
そこを責めるのはあまりにも酷だ。阿良々木君の名前が呼ばれた直後のことだったのだから。
だから、早い内に他者と連絡を取り、放送の情報を補完しておきたい。
それが、さっそくとばかりに電話をかけようとする、一つの理由。
「まず、聞いておきたいんだけど――真宵ちゃんは、《主人公》って何をする人だと思う?」
「また《主人公》を目指そう、というお話ですか?」
「ううん、これは、ぼくが《主人公》になれるかとは全く別の問題だよ。
つまり、『このバトルロワイアルに主人公がいるとすれば、それは何をする人だと思う?』という意味になるかな」
「なるほど、確かに主人公の定義は曖昧ですが、ジャンルを搾れば、ある程度絞り込むことはできますね。
推理小説の主人公なら殺人事件を解決すべきですし、ライトノベルの主人公ならハーレムを作らねばなりません」
つまりぼくは、推理小説の主人公にはなれないってことか。
「そうですね。主人公さんを選べるなら、私は――」
「――殺し合いを止めさせて、皆を家に帰してくれる人がいいです」
そんな風に、言った。
そんな真摯で、とても切実な回答を。
「うん、ぼくもそう思うよ。それに主人公云々を抜きにしても、脱出する方法は見つけないといけない。
知り合いを探して守るだけじゃ、究極的には殺し合いは止まらないからね」
動機付けとして《ヒロイン》が必要なら、目標として《打倒すべき存在》は必要だ。
それすなわち、殺し合い。
あの大嘘つきは、《欠陥製品》が殺し合いを止めると言ったら、嗤うかもしれないけれど、
それでも、ぼくは彼のように、破滅による物語の終わりを望まない。
「でも、だからと言って、ぼくに『首輪を解除して脱出する』なんて技術はないんだよね。
それをするなら、ぼくよりずっと向いた人たちがいるし」
最強の請負人とか、死線の蒼とか。
「ぼくは一介の
戯言遣いに過ぎないし――いつも通り、フィジカル面より、メンタル面から攻めていくしかないんだ」
「メンタル面――話し合いで解決するということですか」
「交渉になるかもしれないし、取引になるかもしれないし、恐喝になるかは分からないけど――主催者、あの『不知火理事長』と接触してみたい」
いつまでも、マーダーに襲われて、見逃してもらっての繰り返しじゃいられない。
いい加減、攻守交代をはかりたい。
この回り道が、家への帰り道に続くように。
「でも、接触すると言ったって、ぼくはあの人のことを何も知らないし、どこにいるのかも分からない。
だから、もっと情報が必要なんだ。不知火理事長を知っている人とか、そういう参加者に接触した人とか」
「そうですね。現状、私たちと主催者にある繋がりと言えば、お孫さんと私の声がよく似ていることぐらいですし」
「よく知っているね。ぼくはあの人に孫がいるなんて初めて聞いたんだけど」
閑話休題。
この局面で『電話』というアイテムが転がり込んできたのも、何かの《縁》だと考えよう。
直接的に対峙することなく、声だけが聞こえるというシチュエーション。
ここで何も仕掛けないでは、戯言遣いの名に恥じるというものだ。
「そういうわけで、ぼくは電話をかけるから。真宵ちゃんはひとまず、黙ったままでいてくれるかな。
人数が特定されていない方が、有利に立ちやすいからね」
「分かりました。では、電話は私が持ちますから。戯言さんはちゃんと両手で運転して、前を見ながら話してください」
「ありがとう。じゃあ、安全運転させてもらうよ」
携帯電話を、再び真宵ちゃんに返す。
どの施設にかけようかと少しだけ考えて、いや、適当でいいのかと思いなおした。
一件ずつ、順番にかけてみればいいだけだ。
ぼくは、施設名を頭の中で反復して、適当に思いついた施設を選んで、
言うなれば、《縁》を感じた電話番号を。
真宵ちゃんに、押してもらった。
【3】
人間未満、大嘘つき、球磨川禊。
さっきはああ言ったけれど、訂正しておくことがある。
ぼくはたくさん殺してきたけれど、これからは生かす道を行く。
君が一人じゃないように、ぼくはもう独りじゃない。
【一日目/午前/F-3】
【戯言遣い@戯言シリーズ】
[状態]健康、
[装備]箱庭学園制服(日之影空洞用)@めだかボックス(現地調達)、巻菱指弾×3@刀語、ジェリコ941@戯言シリーズ
[道具]支給品一式×2(うち一つの地図にはメモがされている)、ウォーターボトル@めだかボックス、お菓子多数、缶詰数個、
赤墨で何か書かれた札@物語シリーズ、ミスドの箱(中にドーナツ2個入り)
[思考]
基本:「主人公」として行動したい。
0:電話をかける
1:真宵ちゃんと行動
2:玖渚、できたらツナギちゃんとも合流
3:豪華客船へと迂回しつつ、診療所を経由し、ネットカフェ、斜道卿一郎研究施設 いずれかに向かう
4:不知火理事長と接触する為に情報を集める。
[備考]
※ネコソギラジカルで
西東天と決着をつけた後からの参戦です。
※
第一回放送を聞いていません。ですが内容は聞きました。
※夢は徐々に忘れてゆきます(ほぼ忘れかかっている)
※地図のメモの内容は、安心院なじみに関しての情報です。
※どこに電話をかけたかは、次の書き手さんにまかせます。
※携帯電話から
掲示板にアクセスできることには、まだ気が付いていません。
【
八九寺真宵@物語シリーズ】
[状態]健康、精神疲労(中)
[装備] 携帯電話@現実、人吉瞳の剪定バサミ@めだかボックス
[道具]支給品一式、 柔球×2@刀語
[思考]
基本:生きて帰る
1:戯言さんと行動
[備考]
※傾物語終了後からの参戦です。
※真庭鳳凰の存在とツナギの全身に口が出来るには夢だったと言う事にしています。
※日之影空洞を覚えていられるか、次いで何時まで覚えていられるかは後続の書き手様方にお任せします
最終更新:2012年10月02日 16:35