第二回放送 ◆0UUfE9LPAQ
コンコン。
「おう、入れよ」
ガチャ。
「ん、お前だったのか」
「あら、不知火理事長はいらっしゃらないんですか?」
バタン。
「あいつなら、『今回の放送はあなたがた二人にお任せします』とか言って出て行っちまったよ」
「そうでしたか。私には伝えず……いや、出て行ったということはただの順番の差ですね。しかし、どうしましょう……」
「何がだ?」
「どちらが放送を読み上げるかですよ、正直二人いる意味がわかりませんし」
「そんなことで悩んでたのか。ならお前が読み上げればいいだろ」
「いいのですか?そんな簡単に決めてしまって」
「俺は酔狂で来ただけだからな。本来はお前の仕事のはずだ」
「では、お言葉に甘えて。ちょうど時間になりましたし」
カチッ。
「時間になりましたので二回目の放送を始めます。
何人か疑っている方がいるようなので先に言っておきますが、内容に嘘はありませんよ。
虚偽があるようでは実験にならないではないですか。
それでは、死亡者の発表です。
一度しか言いませんから聞き逃しのないように。
以上、七名です。
残り二十八名、まあまあ悪くないペースですね。
この後もこのペースを維持……更に加速してくれることをお願いします。
続いて、禁止エリアの発表です。
一時間後の十三時から、A-4。
三時間後の十五時から、D-7。
五時間後の十七時から、H-5。
以上、三ヶ所です。
一応殺し合いなのですから禁止エリアに誤って入ってしまわないように。
設定するなという意見は聞きませんよ。
一ヶ所に閉じ籠もられては実験が進みませんから。
それでは六時間後、私か、私ではない誰かの声を聞けるといいですね。」
カチッ。
「上出来じゃねーか」
「決まっているものを読み上げるだけで出来を問われたくはないものです」
「そう言うなって。ところで警備は万全だろうな?」
「当然ですよ。私を誰だと思っているのです?」
「わかってるさ。策士――萩原子荻ちゃん」
「私を『生き返らせて』くれた対価としては安いくらいですよ。ねえ、伝説の刀鍛冶――四季崎記紀さん?」
「なーに、俺は技術を提供しただけだ。実際どうなんだい?死ぬ感触ってのは」
「思い出したくないとだけは言えるでしょうね。ただし、その記憶が本当に私のものだとしたら――ですが」
「くく、そんなこと言ってたらそもそも記憶だと思っているものが正しいなんて保証はどこにもないぜ?」
「然り、ですね。せっかくですからお聞きしますがうちの玉藻は私とは違って死んではいないんですよね?」
「おかしなことを聞くもんだな。全員の情報は確認してるはずだろ」
「わかっているからこそ聞いているのですよ。あのとき、私が策として使った玉藻の首は本物だったのか――って」
「そんなものどっちがどっちだったところで何か変わるわけでもないだろうに」
「まあ、それもそうですね。今の質問は忘れてください」
「気にするなって。しかし、この俺に『完全』を作る協力をさせた上に変体刀をよこせってんだから何をしでかすのかくらいは聞きたくなるさ」
「選ぶことができるというのはいいものですね。私も、あの子も選択肢は用意されていませんでしたもの」
「選択肢なら用意されてるだろ、『選ばない』っつー選択肢がな」
「屁理屈ですね」
「だが理屈だ。それじゃあ俺は失礼するぜ」
「ではまた後で」
「おう」
ガチャ。
バタン。
「……しかし不知火理事長も人が悪い」
「あんな言い方をされては誤解してしまうではありませんか」
「四季崎さんがいらっしゃった結果と考えれば仕方のないことではありますが」
「それでも与えられた任務は遂行しなければなりませんし」
「例え相手が人外であろうとも、私の名前は萩原子荻。私の前では悪魔だって全席指定、正々堂々手段を選ばず真っ向から不意討ってご覧に入れましょう」
「なんて、モニターを眺めながら言っても何の意味もありませんね」
「………………………あは」
最終更新:2023年07月09日 21:33